「地味」な印象もあるけれど
Title:The Land Is Inhospitable and So Are We
Musician:Mitski
現在、最も注目を集める女性シンガーソングライターの一人、ミツキ・ミヤワキのソロプロジェクト、Mitskiの7枚目となるニューアルバム。前々作「Be the cowboy」で大きな注目を集め、前作「Laurel Hell」は全米チャートで5位にランクインし、一気にブレイク。約2年半ぶりとなる本作は、チャートアクション的には全米チャート12位と少々ダウンしてしまいましたが、イギリスでは自己最高位の4位を記録。
私自身も彼女のアルバムを聴くのはこれが3作目。ただ、今回のアルバムを聴いて、まず感じてしまったのは「非常に地味なアルバム」という印象でした。いままでの彼女のアルバムは、エレクトロサウンドやギターサウンドを入れつつ、雑食性の高いサウンドにポップなメロディーが印象的なミュージシャンでした。ただ、今回のアルバムは、いままでのアルバムとはうって変わって、全体的にアコースティックなサウンドが主体となるアルバムに仕上がっていました。
まずアルバムの冒頭を飾る「Bug Like an Angel」は、静かなギターの弾き語りからスタートします。途中、ピアノやコーラスラインが入って、重厚なサウンドを聴かせる部分もありますが、全体的にアコースティックな味付けに。続く「Buffalo Replaced」は力強いバンドサウンドは入るのですが、こちらもダウナーなメロとボーカルの落ち着いた曲調に。「Heaven」もゆっくりとカントリー風の曲調ですし、「I Don't Like My Mind」も同様に、牧歌的な作風が印象的な曲となっています。
その後もオーケストラアレンジの「When Memories Show」や、分厚いギターノイズが埋め尽くす「I Love Me After You」などダイナミックな曲も垣間見れるものの、基本的にはアコースティックなサウンド主体のダウナーな作品がメイン。いままでの作品に比べると、率直なところ「地味」と感じてしまいました。
とはいうものの、メランコリックで荘厳さも感じさせる歌声をゆっくりと聴かせる楽曲のスタイルは以前のアルバムと同様。先行シングルとなった「My Love Mine All Mine」のように、フォーキーな作風でゆっくりと心に染み入るような美メロも聴かせてくれており、地味な作風ゆえに最初は正直ピンとこない部分もあったのですが、聴き進めるうちに、以前のアルバム同様の魅力的な傑作であることに気が付かされました。
ちなみにこのアルバム、本人曰く「最もアメリカ的なアルバム」と述べているようですが、カントリーな作風といい、アメリカの田舎を彷彿とさせるような作品といった感じになるのでしょうか。どこか日本人にとっても郷愁感を覚えるような作品になっていた点も大きな魅力のように感じます。
ご存じのように、三重県出身の日系2世の彼女。注目を集めて活躍を続けるのはうれしい限り。この作品でさらにその魅力と実力を感じることが出来ました。これからの活躍も非常に楽しみです。
評価:★★★★★
Mitski 過去の作品
Be the Cowboy
LAUREL HILL
ほかに聴いたアルバム
Isn't It Now?/Animal Collective
アメリカのインディーロックバンド、Animal Collectiveの約1年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。このアルバムに収録されている曲は、前作「Time Skiffs」と同時期に作成されたそうで、このうち、コロナ禍でリモートでも録音しやすいような曲は前作に収録され、バンドサウンドが重視される曲は、コロナ禍も事実上終わった後に録音された本作に収録されたとか。前作はサイケな色合いが薄くなってポップ色が濃くなったのは、そういう理由があったのでしょう。一方本作は、前作と比べるとサイケな色合いが強く、作風もよりダイナミックになった感じも。とはいえ、いままでの彼らの作品同様、ドリーミーなポップチューンという主軸は変りませんので、文句なく楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。まあ、こちらの方が前作以上にAnimal Collectiveらしいと言えるかもしれませんが。
評価:★★★★★
Animal Collective 過去の作品
Merriweather Post Pavilion
CENTIPEDE HZ
Painting With
The Paniters EP
Tangerine Reef
Time Skiffs
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