シューゲイザーからの影響がストレートなインディーロック
Title:Cartwheel
Musician:Hotline TNT
今回紹介するバンドは、ミネソタ州出身で、ニューヨークはブルックリンを拠点に活動を行っているシンガーソングライター、ウィル・アンダーソンによるソロプロジェクト、Hotline TNTの2枚目となるアルバム。Hotline TNTというバンドの名前はもちろん、ウィル・アンダーソンの名前を聞くのもはじめてだったのですが、Pitchforkをはじめとして、メディアで高い評価をうけているようでしたので、今回、はじめて聴いてみました。
そして楽曲のタイプとしては、一言で言えば、完全に私好みのもの。シューゲイザーからの影響をストレートに受けたインディーロックで、ギターのホワイトノイズにポップなメロディーラインという、いい意味でひねりのない、ダイレクトなシューゲイザー系のギターロックを聴かせてくれています。
まず1曲目「Protocol」のギターの爽やかなストロークから耳を惹きますが、その後はまさにシューゲイザーからの影響が顕著なギターのホワイトノイズに、ゆっくりとしたメロディーラインで「歌」を聴かせる楽曲になっています。続く「I Thought You'd Change」も同様に、ノイジーなギターサウンドにメロディアスでポップな歌が心地よい楽曲。さらに「Beauty Filter」はダイナミックなサウンドが魅力的な楽曲となっています。
その後も基本的に、楽曲を埋め尽くすようなノイジーなギターサウンドをバックにメロディアスな歌が流れるというシューゲイザー系のインディーロックバンドの本家本流を行くような楽曲が並びます。間違いなく、この手のギターロックが好きなら気に入りそうな作品でしょうし、個人的にも壺に入りまくりな1枚でした。
ただ・・・若干物足りなさを感じたのは、シューゲイザー好きにとってはたまらないギターノイズを楽しめる内容ながらも、メロディーラインの弱さが気にかかった点でした。比較的、淡々とした歌がメインとなっていて、「美メロ」と言ってしまうにはちょっと物足りない内容に。後半の、疾走感あるポップソングの「Out of Town」やミディアムテンポで聴かせる「Maxine」などは悪くはないとは思ったのですが・・・。ちょっとメロの弱さは気にかかりました。
もっともその点を差し引いても、アルバム全体として十分「傑作」と言えるだけの内容でしたし、なによりも個人的に非常に「壺」にはまったアルバムでその点でも非常に楽しめた作品でした。シューゲイザー好きなら間違いなく気に入るであろう1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Titanic/Vidrio
メキシコ在住のグアテマラ人チェリストのMabe FrattiがHector Tostaと組んだユニット、Vidrioのデビューアルバム。といっても、どちらの方も全くはじめて聞く名前で、Hector Tostaに至っては、どんなミュージシャンなのかいまひとつ不明だったのですが・・・チェロの音色をはじめ、ストリングスやウッドベース、ピアノを取り入れた、ジャジーな感じながらもフリーキーさも併せ持ったサウンドに、Mabe Frattiの伸びやかで美しい歌声が魅力的。ジャズをベースにしながらも、フォーキーな要素やトライバルな要素も感じさせる独特のサウンドが魅力的。日本ではほとんど紹介されていないようですが、その独自のサウンドに惹かれる1枚でした。
評価:★★★★★
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