現役感あふれるまさかのオリジナルアルバム
Title:HACKNEY DIAMONDS
Musician:The Rolling Stones
おそらく、本年度最大の音楽ニュースの一つであることは間違いないでしょう。ローリングストーンズが完全オリジナルのニューアルバムをリリース!2021年にオリジナルドラマーであるチャーリー・ワッツが逝去。その後の動向も気になっていたのですが、正直なところ、こんなに早いタイミングでオリジナルアルバムをリリースしてくるとは思いませんでした。2016年にはアルバム「Blue&Lonesome」をリリースしているのですが、こちらはブルースのカバーアルバム。純然たるオリジナルアルバムとしては2005年の「A Bigger Bang」以来、実に18年ぶりのニューアルバムとなります。
ロック史に名を残す大レジェンドのストーンズも、ミック・ジャガーはなんと今年80歳。キース・リチャーズも79歳。若干年下のロン・ウッドでも76歳と、まだまだお元気とはいえ、一般的にはすっかり「おじいちゃん」になってしまっています。しかし、そんな年齢を全く感じさせない、現役感あふれる演奏をこのアルバムでも聴かせてくれています。まずアルバムを聴き始めて最初に飛び込んでくる「Angry」からして、80歳を過ぎて、色艶さえ感じさせるミック・ジャガーのボーカルに驚かされます。続く「Get Close」で聴かせてくれるギターの力強いこと・・・。そのギターに負けないミックのボーカルの力強さも驚くべき限りです。
特に前半では「Bite My Head Off」「Whole Wide World」など、かなり分厚いバンドサウンドを前に押し出した、力強い「ロック」な曲が目立ち、メンバー全員が80歳に手が届く年になっても、変わらず元気であることをアピールするかのような曲が並びます。その後もブルースナンバーの「Dreamy Skies」や、ストーンズ流のダンスチューン「Mess It Up」、ストーンズの十八番とも言えるバラードナンバー「Tell Me Straight」は、こちらもおなじみのキースボーカルの曲と、バラエティー富んだ展開が続いていきます。
またゲスト陣も非常に豪華で、「Bite My Head Off」では、こちらも元気な「おじいちゃん」のポール・マッカートニーが、「Live By The Sword」ではエルトン・ジョンが、「Sweet Sounds Of Heaven」ではスティーヴィー・ワンダーとLady Gagaが、とレジェンドたちがズラリと参加し、さすがストーンズ・・・といった豪華な面子が名前をそろえています。この並びの中では、さすがのLady Gagaも「若手」になってしまいそう。ちなみに「Mess It Up」「Sweet Sounds Of Heaven」ではチャーリー・ワッツのドラムプレイが使われているほか、「Live By The Sword」ではビル・ワイマンもベースで参加しており、こちらもちょっとうれしくも懐かしいゲスト参加となっています。
楽曲としてはバリエーションがあるものの、全体的には目当たらしい感じはなく、かつての経験からストーンズが手元に持っている手札を並べた感のある構成になっており、新たな挑戦といった感はありません。まあ、この年齢になってオリジナルアルバムを作ること自体が挑戦、と言えるかもしれませんが・・・。ただ、この年齢になっても、ある意味「年齢」を全く言い訳にしていない現役感あるアルバムを作り上げている点自体が驚きと言えるかもしれません。少なくとも80年代90年代あたりの作品と並べても、遜色ないどころか、むしろ上回る出来の内容とすら言えるかもしれません。
ちょっと気にかかるのがアルバムラストを締めくくるのが、彼らのバンド名の元となったブルースの巨人、Muddy Watersの「Rolling Stone Blues」のカバーという点。このアルバムがラストであることを意識して最後の最後に・・・なんてことも考えてしまいます。年齢からすると、確かにこれが最後になってしまっても不思議ではないのですが、まだまだ元気に現役を続けて、90歳になっても新作を作り続ける、そんな姿を期待してしまうのですが。
ともすれば最近のベテランミュージシャンのニュースというと、過去作のリメイクだったり、ビートルズのように未発表音源の発掘だったり、さらにはもっと残念なニュースとして訃報が飛び込んでくるケースも少なくない中、ストーンズほどの大レジェンドが、バリバリの現役ミュージシャンとして「ニューアルバムリリース」というニュースが飛び込んでくるのはやはりうれしい限り。確かに往年のアルバムに比べると、というのはあるかもしれませんが、あのストーンズの新作という点を差し引いても、十分「傑作」と言えるだけのクオリティーのアルバムだったと思います。次回作、さらにその次も期待できちゃいそうな、パワフルなアルバムでした。
評価:★★★★★
The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES)
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!
Licked Live In NYC
ほかに聴いたアルバム
AUDIOBOOK/Sam Gendel
マルチ・インストゥルメンタル奏者、サム・ゲンデルのニューアルバム。かなりのワーカホリックぶりで、昨年は3枚(!)ものオリジナルアルバムをリリースし、今年もこれが2枚目(!)。あまりにワーカホリックぶりで、全てのアルバムを追い切れていません・・・。本作は、基本的にエレクトロサウンドをメインに、ウッディーなリズムを入れてきたり、ジャジーな要素を入れてきたり、トライバルなリズムを入れたりとバラエティー豊富な展開が楽しめるアルバムに。楽曲タイトルは「AB」からスタートし、最後は「YZ」と、アルファベットを2文字づつ並べただけ、というそっけないものなのですが、タイトルをつけるよりもアイディアが先行してしまっているといった感じでしょうか。そのワーカホリックぶりはまだまだ止まらなさそうです。
評価:★★★★
Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30
Superstore
blueblueblue
Utopia/Travis Scott
今、もっとも人気のあるラッパーの一人、Travis Scottの、実に約5年ぶりとなるニューアルバム。本作も本国アメリカはもちろんのこと、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアなど世界各国で1位を獲得。その強さを見せつけています。ただ、いままでトラップの代表的なラッパーといった感じだった5年前の作品とは異なり、トラップの楽曲は少なめ。聴きやすいメランコリックなサウンドはそのままに、強いビートを聴かせるような曲が多く、そのビートが非常にカッコいい作品。いい意味で耳障りのよい、幅広いリスナー層が惹きつけられそうな作品となっており、確かにその高い人気は伊達じゃない、そう感じる作品でした。
評価:★★★★★
Travis Scott 過去の作品
ASTROWORLD
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事
- マッドチェスタームーブメントの楽曲を網羅的に収録(2023.12.24)
- 全盛期oasisの充実ぶりを物語る名盤(2023.12.15)
- 荒々しさを感じる初期ライブ盤(2023.12.12)
- 新曲が加わり大幅にボリュームアップ!(2023.12.11)
- 本来の意味での・・・「エモい」アルバム(2023.12.03)
コメント