外部プロデューサーを起用した意欲作
Title:Cousin
Musician:Wilco
アメリカのインディーロックバンド、Wilcoの13枚目となるアルバム。デビュー以来、精力的な活動が続いており、アルバムも数年に1枚のペースでコンスタントなリリースが続いています。本作も前作「Crule Country」から、わずか約1年半というインターバルを経てのリリース。バンドとしての精力的な活動ぶりがうかがえます。
今回のアルバムは「Cousin」(=いとこ)というタイトルですが、このタイトルについてボーカルのジェフ・トゥイーディーは「僕は世界のいとこなんだ。血のつながりは感じないけど、結婚して、いとこになったのかもしれない」と語っています。ウム、よくわかりませんがそれだけ世界とのつながりを意識してつくられた作品、ということなのでしょうか。そんな「つながり」の一環なのかよくわかりませんが、今回のアルバムでは外部プロデューサーとしてウェールズの女性ミュージシャン、Cate Le Bonを起用した点も話題となっています。
前作「Crule Country」はアコースティックなサウンドとポップなメロディーを主軸としつつ、時折入るバンドサウンドやサイケな音作りがユニークな作品となっていました。このアコースティックテイスト作風とポップなメロディーが主軸という大きな枠組みの点においては今回のアルバムも以前と変わらずWilcoらしさを感じます。ただ本作は、以前の作品よりもよりバンドサウンドの色合いが強くなり、サウンドメイキングの点でも凝っている作風に仕上がっていました。
1曲目「Infinite Surprise」から、いきなりノイジーなギターと力強いドラムのビートからスタートし、ちょっと不穏な雰囲気のするギターロックの楽曲となっていますし、中盤の「Sunlight Ends」なども幻想的な雰囲気を感じさせるサウンドで不思議な音像を作り出しています。タイトルチューンである「Cousin」もポップなメロが流れるものの力強いバンドサウンドを聴かせる楽曲となっていますし、最後を締めくくる「Meant To Be」もスケール感を覚える爽やかなバンドサウンドの流れるポップチューンに仕上げています。
もちろん、アコースティックなアレンジを施された美しい歌モノのポップチューンも健在。冒頭の「Infinite Surprise」に続く「Ten Dead」はピアノ弾き語りで美しく聴かせる歌モノのポップスですし、「Evicted」もアコギを軽快に聴かせる爽やかなギタポチューン。アルバムを締めくくる終盤の「Pittsburgh」「Soldier Child」も、いずれもアコギで聴かせるフォーキーなポップチューンとなっていました。
外部プロデューサーを起用したことによって、音のバリエーションがより増えて、Wilcoのサウンドの領域がより広がったといった感じでしょうか。もちろん、いままでのWilcoらしさも健在。デビューから30年近いベテランバンドの彼らですが、その精力的な活動ぶりには感心してしまいます。そんなWilcoの魅力を強く感じさせてくれる傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
WILCO 過去の作品
Wilco(This Album)
THE WHOLE LOVE
Star Wars
Schmilco
Ode To Joy
Crule Country
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