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2023年11月 7日 (火)

素直にワクワクできるエレクトロ作

Title:Changing Channels
Musician:Pangaea

イギリスのダブステップのミュージシャン、Kevin McAuleyのソロプロジェクト、Pangaeaのフルアルバムとしては2枚目となる作品。もともと、Pangaeaとしてデビューしたのは2010年のセルフタイトルのEP盤だそうで、その後2016年にはフルアルバム「In Drum Play」をリリースう。本作はそれから7年のインターバルを経てリリースされたアルバムで、今回、Pitchforkで高評価を得ていたことをきっかけに、はじめて本作を聴いてみました。

ダブステップのエレクトロアルバムである本作なのですが、一言で言うと、いい意味で王道路線ど真ん中。四つ打ちのリズムを難しいこと抜きとして素直に楽しめるアルバムに仕上がっていました。

アルバムは女性ボーカルも入れて疾走感あるエレクトロチューン「Installation」からスタート。ミニマル的な女性ボーカルのトラックがトリップ感を誘いつつ、軽快なエレクトロビートが心地よいナンバーに。同じくミニマル的な女性ボーカルのトラックが軽快な「Hole Away」から、「If」はトライバル的なビートが心地よいナンバーに仕上がっています。

中盤の「The Slip」とタイトルチューンでもある「Changing Channels」もミニマル的なエレクトロビートが心地よいナンバー。特に「Chaning Chennels」は7分にも及びこのアルバム一番の長尺ナンバーで、中盤には高揚感のあるビートも登場し、クラブでかかったら盛り上がりそうなナンバーに。音源で聴いていても気分がアガル楽曲となっています。

このアルバムの中では比較的BPMが遅めの「Squid」に繋がり、ラストの「Bad Lines」は逆にアルバムの中で最も最速のBPMとなっているトランスのナンバー。こちらもちょっとベタな感じのするトランスチューンなのですが、アルバムの最後を締めくくるにふさわしい高揚感のある楽曲となっています。

アルバムとしては率直に言って目新しさはないものの、逆に、その目新しさのなさが素直にアルバムを楽しめる大きな要素ともなっており、アルバム全7曲、最後までその軽快なエレクトロのリズムにワクワクしながら楽しむことが出来るアルバムになっていました。聴いていて、これだけワクワクしながら楽しめるアルバムも珍しいかもしれません。今年のベスト盤候補の1枚とも言えるほどの傑作アルバムだったと思います。文句なしに楽しめる作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

For All The Dogs/Drake

For_all_the_dogs_drake

ハイペースなリリースが続くDrakeによるニューアルバム。Drake単独名義の前作「Honestly,Nevermind」ではハウスの要素を取り込んだ異色作となっていたのですが、今回は再びHIP HOPの作品として回帰。ただ、全体としてトラップなリズムを取り入れつつ、メランコリックなメロの入った歌モノの曲が目立つ作品。ただ、ここらへん、歌モノの傾向が強いのはかつてからのDrakeのアルバムの方向性だっただけに、基本的にはDrakeらしいと言えるアルバムになっています。HIP HOPリスナーに留まらない幅広いリスナー層が楽しめそうな内容なのはDrakeらしさを感じる作品になっていました。

評価:★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life
SCORPION
Care Package
Dark Lane Demo Tapes
Certified Lover Boy
Honestly, Nevermind

Javelin/Sufjan Stevens

Javelin

アメリカのシンガーソングライター、Sufjan Stevensのニューアルバム。単独名義としての前作「The Ascension」では打ち込みを用いたドリーミーな作風となっていましたが、今回のアルバムはアコギやピアノを用いてしんみり聴かせるアコースティックな作風になっています。ただ一方で、「Goodbye Evergreen」では途中からサイケなサウンドに展開したり、タイトルチューンの「Javelin (To Have And To Hold)」でも後半にはエレクトロサウンドが顔を見せたりと、単なるフォーキーな作品とは一線を画するユニークな構成になっているのが彼らしい感じ。フォーキーな作風とサイケな作風の様々なパターンでアルバムを作ってくる彼ですが、今回の作品はフォーキーな作風をメインに、サイケな要素がちょっとした隠し味的な味付けとなっている、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Planetarium(Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister)
The Ascension
A Beginner’s Mind(Sufjan Stevens&Angelo De Augustine)

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