「日本最古のロックバンド」なる異名を持つセンチメンタル・シティ・ロマンス。結成50周年を迎えた今年、様々な企画が用意されているみたいですが、先日紹介したベストアルバムに続き、今回紹介するのは、彼らのデビューアルバム「センチメンタル・シティ・ロマンス」と、2ndアルバム「ホリディ」の50周年記念盤となります。
Title:センチメンタル・シティ・ロマンス Special Edition
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス
まずこちらは1975年にリリースされた彼らのデビューアルバム。先日紹介したベストアルバムにも、このアルバムの楽曲が多く収録されていますが、デビュー作にして彼らの代表作であり、なおかつ、日本ポップ史の名盤として紹介されることも少なくない1枚です。
ベストアルバムの収録曲としては聴いたことある曲も多いのですが、アルバムを通じて聴くのは今回がはじめて。そしてアルバムを通じて聴いて感じるのはその完成度の高さでした。アメリカのウェストコースト・ロックをベースとしたカラッとしたサウンドを軸にしつつ、時には日本的なウェットさも見え隠れするバラエティー富んだ作風が大きな魅力。1曲目に収録されている「うちわもめ」はまさに彼ららしいウエストコースト風のサウンドですし、かと思えば「あの娘の窓灯り」はメランコリックでフォーキーな作品に。「暖時」は、今で言えばシティポップ的な作風になっていますし、「小童」ではジャズ的な要素も感じます。
全体的に洋楽テイストは強いものの、一方では「庄内慕情」みたいなタイトルそのままベタな歌謡曲みたいな曲もあったりして、この和洋折衷的な曲作りもユニーク。また、センチメンタル・シティ・ロマンスは名古屋出身・在住のバンドという点も大きな特徴なのですが、1曲目「うちわもめ」ではベタな名古屋弁が登場していたりしますし、前述の「庄内慕情」も山形県の庄内平野ではなく、名古屋市内の庄内川の模様。また最後に収録されている「ロスアンジェルス大橋Uターン」は、いかにもウェストコーストに影響を受けた彼ららしいタイトルですが、名古屋市とロスアンジェルスは姉妹友好都市となっており、このアルバムリリース直後に名古屋市長のメッセージを携えて渡米したとか。「めんたいロック」のように出身地でジャンルをくくるケースもあるのですが、楽曲自体にこれだけ地方性を出しているのも珍しい感じもします。
ちなみにこのアルバム、もともとかの細野晴臣をプロデューサーに迎えて制作する予定だったそうですが、楽曲の出来のよさに彼がプロデュースを辞退。代わりに「Chief Audience=観客の長」としてクレジットされたというエピソードがあるそうですが、それも納得の完成度の高いデビューアルバムでした。
評価:★★★★★
Title:ホリディ Special Edition
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス
こちらはその翌年、1976年にリリースされた彼らの2ndアルバム。このアルバムからドラムスが元シュガーベイブの野口明彦に変更。新生メンバーによるアルバムとなっています。
アルバム全体としてはギターサウンドがロック色がより強くなっている点が特徴的。さらにそれに加えて「内海ラブ」ではシティポップの様相が、さらに「マンボ・ジャンボ」「魅惑のサンバ流るる今宵」では、タイトルそのままラテンのサウンドが加わり、前作以上にバリエーションが増えた内容に。一方で、1曲目の「ムーンシャイン&サンシャイン」では哀愁たっぷりのギターサウンドを聴かせるブルージーなロックになっているのですが、前作のような歌謡曲的な曲はなく、和洋折衷的な要素は残しつつも、基本的にはより洋楽寄りにシフトしているようにも感じました。
ちなみに、この2枚のSpecial Editionにはボーナスディスクとして1975年8月21日に、東京の日仏会館で行われた彼らのデビューライブの模様を収録したライブ盤が、2枚にわけて収録されています。公式サイトの紹介でも書いてありますが、オーディエンス録音のため、録音状況は決して良くはありません。ただ、どこかデビューアルバムであるため緊張した面持ちのライブは新鮮味もあり、また初々しさも感じられる点も貴重な音源といった感じ。途中の司会の当時のノリに時代を感じさせつつも、デビュー当初の彼らを想像しつつ、楽しめるライブアルバムとなっていました。
評価:★★★★★
で、結成50周年を記念してリイシューしたアルバムがもう1組。
Title:20th Memorial Live -half century edition-
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス
こちらは結成20周年を記念して、1993年6月25日に、池袋METホールで開催されたライブの模様を収録したライブアルバム。もともと1993年にリリースされたアルバムなのですが、全20曲中9曲までが、今回、追加収録された楽曲となっており、オリジナルのライブアルバムとは、かなり様相の変化したアルバムとなっています。また、このライブでは当時、メンバーだったドラムスの近藤文雄に加えて、元メンバーの野口明彦も参加。近藤はこのライブを最後に脱退し、その後は野口がサポートとして参加するらしいのですが、貴重なツインドラムでの演奏となっています。
なんといっても、前述のSpecial Editionのデビューライブとこのアルバムの聴き比べが楽しいところ。ツインドラムということもあり、こちらのアルバムはかなり音が分厚くなっている点も大きな特徴。デビューライブはオーディエンス録音のため録音状態が悪いという違いも大きいのですが、やはり20年という月日によるバンドの成長は一目瞭然。安定したベテランらしい演奏を楽しむことの出来るライブアルバムとなっています。
ちなみにセンチメンタル・シティ・ロマンスは2021年にボーカルの中野督夫が逝去しており、当時のメンバーでのステージももう叶わなくなってしまいました。ただ、残ったメンバーでバンドとしての活動は続けており、「日本最古のロックバンド」の記録はまだまだ伸びそう。いずれのアルバムも今聴いても、全く違和感なく楽しめるアルバムになっているため、これを機にチェックしたいアルバムです。
評価:★★★★★
センチメンタル・シティ・ロマンス 過去の作品
やっとかめ
50th Anniversary The Very Best of SENTIMENTAL CITY ROMANCE
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