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2023年11月

2023年11月30日 (木)

またアイドル系が並ぶチャートに・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も再びアイドル勢が、特にK-POP勢が占めるチャートとなっています。

まず1位は韓国の男性アイドルグループENHYPEN「ORANGE BLOOD」が獲得。韓国盤のミニアルバム。CD販売数1位、ダウンロード数8位。先週、26位にランクインしましたが、今週はCD販売数が加わり、2週目にして1位獲得となっています。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上18万7千枚で1位初登場。前作「DARK BLOOD」の初動16万3千枚(1位)からアップしています。

2位にはLDH所属のダンスグループ、GENERATIONS from EXILE TRIBE「beyond the GENERATIONS」がランクイン。6曲入りのミニアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数19位。オリコンでは初動売上3万7千枚で2位初登場。直近のフルアルバム「X」の初動2万2千枚(2位)からアップしています。

3位初登場は22/7「旅人算」。秋元康プロデュースによるアニメキャラを押し出した声優アイドルグループ。CD販売数3位、ダウンロード数63位。オリコンでは初動売上3万3千枚で3位初登場。前作「11という名の永遠の素数」の初動5万2千枚(2位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にWayV「On My Youth」が初登場。韓国の男性アイドルグループNCTから派生したグループで、中国人メンバーから構成され、中国を拠点にして活動しているグループだそうです。CD販売数4位。オリコンでは輸入盤ということでリリース日の関係で今週、ランクイン3週目にして、1万7千枚を売り上げて5位初登場。直近のミニアルバム「Phantom」の初動9千枚(4位)からアップしています。

8位初登場は戌亥とこ「Telescope」。にじさんじ所属のバーチャルYouTuberによる5曲入りのミニアルバム。CD販売数11位、ダウンロード数6位。オリコンでは初動売上5千枚で12位初登場。本作がアルバムでのデビュー作となります。

また、今週はベスト10返り咲きも。韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「The Name Chapter: FREEFALL」が先週の17位から10位にランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。特にCD販売数が13位から8位にアップ。オリコンでも今週7千枚を売り上げて6位にランクインしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年11月29日 (水)

新譜は少なめ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は比較的新譜が少なめのHot100となっています。

Ado_show

そして今週も1位はAdo「唱」。これで5週連続通算9週目の1位獲得。ダウンロード数が2週連続、ストリーミング数は10週連続、YouTube再生回数も8週連続の1位を獲得。これで12週連続のベスト10ヒット&11週連続のベスト3ヒットとなりました。

さらに新曲が少ないと目立つのがロングヒット曲の盛り返し。YOASOBI「アイドル」が2位にランクアップ。こちらもストリーミング数は10週連続、YouTube再生回数も2週連続の2位を獲得。ダウンロード数も12位から10位にアップ。これで33週連続のベスト10ヒット&通算31週目のベスト3ヒットとなりました。さらに「勇者」も5位から4位にアップ。ダウンロード数は4位から2位、YouTube再生回数も4位から3位にアップ。ストリーミング数のみ4位から5位にダウンしていますが、これで9週連続のベスト10ヒットとなりました。

3位には初登場。元ジャニーズ系アイドルグループNEWS「ギフテッド」がランクイン。東海テレビ×WOWWOW共同制作連続ドラマ「ギフテッド」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上12万8千枚で1位初登場。前作「LOSER」の初動13万2千枚(1位)からダウンしています。

続いて4位以下ですが、初登場曲は1曲のみ。6位に韓国の女性アイドルグループKep1er「Grand Prix」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは同曲が収録された「<FLY-HIGH>(Grand Prix)」が初動売上5万3千枚で2位初登場。前作「<FLY-BY>」の初動5万1千枚(3位)からアップしています。

また、ベスト10返り咲きも何曲か。まず藤井風「花」が13位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。ダウンロード数が11位から8位にアップしたほか、YouTube再生回数が31位から6位に大幅にアップ。ミュージックビデオを11月24日にプレミアム公開した影響でしょう。その影響もあり、ベスト10復帰を果たしています。

またAKB48「アイドルなんかじゃなかったら」がベスト50圏外から10位にランクアップ。8週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。これはオフィシャルショップ通販の第11期販売が行われ、握手会目当ての購入が相次いだ模様。

続いてロングヒット曲ですが、まずKing Gnu「SPECIALZ」が6位から5位に再度アップ。ダウンロード数は10位から6位、ストリーミング数も5位から4位、YouTube再生回数も9位から4位にアップ。これで13週連続のベスト10ヒットとなりました。

またシャイトープ「ランデヴー」が今週7位にランクイン。これで通算9週目のベスト10ヒットとなっています。関西を中心に活動するスリーピースロックバンドの4月に配信リリースしたシングル。TikTokを中心に話題となり徐々に順位を伸ばし、ロングヒットを記録しています。特にストリーミング数では今週で3週連続の3位を記録。ダウンロード数は24位、YouTube再生回数は28位と伸び悩んでいますが、ここらへんのチャートがさらに上位に入ってこれば、総合順位でも上位を狙えそうな感じです。

先週、ベスト10に返り咲いたVaundy「怪獣の花唄」は先週と変わらず8位をキープ。これで通算46週目のベスト10ヒットを記録。カラオケ歌唱回数は5週連続の1位を記録しています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年11月28日 (火)

シューゲイザーからの影響がストレートなインディーロック

Title:Cartwheel
Musician:Hotline TNT

Cartwheel

今回紹介するバンドは、ミネソタ州出身で、ニューヨークはブルックリンを拠点に活動を行っているシンガーソングライター、ウィル・アンダーソンによるソロプロジェクト、Hotline TNTの2枚目となるアルバム。Hotline TNTというバンドの名前はもちろん、ウィル・アンダーソンの名前を聞くのもはじめてだったのですが、Pitchforkをはじめとして、メディアで高い評価をうけているようでしたので、今回、はじめて聴いてみました。

そして楽曲のタイプとしては、一言で言えば、完全に私好みのもの。シューゲイザーからの影響をストレートに受けたインディーロックで、ギターのホワイトノイズにポップなメロディーラインという、いい意味でひねりのない、ダイレクトなシューゲイザー系のギターロックを聴かせてくれています。

まず1曲目「Protocol」のギターの爽やかなストロークから耳を惹きますが、その後はまさにシューゲイザーからの影響が顕著なギターのホワイトノイズに、ゆっくりとしたメロディーラインで「歌」を聴かせる楽曲になっています。続く「I Thought You'd Change」も同様に、ノイジーなギターサウンドにメロディアスでポップな歌が心地よい楽曲。さらに「Beauty Filter」はダイナミックなサウンドが魅力的な楽曲となっています。

その後も基本的に、楽曲を埋め尽くすようなノイジーなギターサウンドをバックにメロディアスな歌が流れるというシューゲイザー系のインディーロックバンドの本家本流を行くような楽曲が並びます。間違いなく、この手のギターロックが好きなら気に入りそうな作品でしょうし、個人的にも壺に入りまくりな1枚でした。

ただ・・・若干物足りなさを感じたのは、シューゲイザー好きにとってはたまらないギターノイズを楽しめる内容ながらも、メロディーラインの弱さが気にかかった点でした。比較的、淡々とした歌がメインとなっていて、「美メロ」と言ってしまうにはちょっと物足りない内容に。後半の、疾走感あるポップソングの「Out of Town」やミディアムテンポで聴かせる「Maxine」などは悪くはないとは思ったのですが・・・。ちょっとメロの弱さは気にかかりました。

もっともその点を差し引いても、アルバム全体として十分「傑作」と言えるだけの内容でしたし、なによりも個人的に非常に「壺」にはまったアルバムでその点でも非常に楽しめた作品でした。シューゲイザー好きなら間違いなく気に入るであろう1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Titanic/Vidrio

Vidrio

メキシコ在住のグアテマラ人チェリストのMabe FrattiがHector Tostaと組んだユニット、Vidrioのデビューアルバム。といっても、どちらの方も全くはじめて聞く名前で、Hector Tostaに至っては、どんなミュージシャンなのかいまひとつ不明だったのですが・・・チェロの音色をはじめ、ストリングスやウッドベース、ピアノを取り入れた、ジャジーな感じながらもフリーキーさも併せ持ったサウンドに、Mabe Frattiの伸びやかで美しい歌声が魅力的。ジャズをベースにしながらも、フォーキーな要素やトライバルな要素も感じさせる独特のサウンドが魅力的。日本ではほとんど紹介されていないようですが、その独自のサウンドに惹かれる1枚でした。

評価:★★★★★

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2023年11月27日 (月)

ジブリソングを素直に楽しめる

Title:スタジオジブリトリビュートアルバム「ジブリをうたう」

何月号か忘れたのですが、「rockin'on」で、サマソニで来日するblurデーモン・アルバーンのインタビュー記事が載っていたのですが、そこで、来日した際に足を運びたい場所として「ジブリパーク」の名前があげられていました。以前なら、観光地的にはほとんど無視されがちだった名古屋近辺でしたが、「ジブリパーク」が世界的な観光地として名前があがることになった点、地元民としては非常にうれしかったのですが、それ以上に「ジブリ」というブランドが世界的に浸透している点をあらためて感じたインタビュー記事でした。

本作は、そんなスタジオジブリの作品を彩る楽曲を、様々なミュージシャンたちがカバーしたトリビュートアルバム。武部聡志プロデュースによる作品だそうですが、豪華なメンバーがジブリの楽曲をカバーしています。ただ、参加しているミュージシャンは、家入レオやYOASOBIの幾田りら、ももクロの玉井詩織や木村カエラといった、どちらかというと「ポップ寄り」のミュージシャンが占める中、ちょっと目を惹いたのがくるり岸田繁。それもカバーした楽曲が「となりのトトロ」と、ともすればジブリ楽曲の人気No.1を誇りそうな曲なだけに、特に目立ちました。

ただ、「ポップ寄り」のミュージシャンが並んでいることからも予想は出来るのですが、基本的には原曲に沿ったカバーとなっており、このカバーで雰囲気がガラリと変わったような目新しいカバーはありません。あえて言えば、前述の「となりのトトロ」は、原曲の女性ボーカルが、男性ボーカルにガラリと変わった点くらいでしょうか。もっとも岸田繁はシンプルにポップにまとめあげており、「となりのトトロ」のイメージを大きく変わるものではありませんでした。

その他に目立ったカバーとしてはLittle Glee Monster「テルーの唄」で、もともと原曲から伸びやかなボーカルを聴かせる、ボーカリストの力量が試される曲なのですが、その点はさすが彼女たちがしっかりと原曲の魅力を伝えています。またWakanaの「もののけ姫」も、原曲の幽玄な雰囲気をしっかり伝えるカバーに。Wakanaというミュージシャンははじめて知ったのですが、Kalafinaの元メンバーなんですね。その実力がしっかりと伝わるカバーでした。

幾田りらの「いのちの名前」も清涼感あるボーカルが魅力的ですし、家入レオの「君をのせて」もエキゾチックな雰囲気のカバーは彼女のイメージにもピッタリとマッチ。玉井詩織の「風の谷のナウシカ」も、アイドルっぽい雰囲気となっているのですが、もともとからアイドルっぽさを感じる楽曲だっただけに彼女のボーカルにもピッタリとマッチ。また、木村カエラの「ルージュの伝言」もカエラらしい明るいカバーに仕上がっています。

「テルーの唄」「もののけ姫」のようなボーカルの力量が問われる曲は、しっかりと力のあるボーカリストを配しており、さらに他の曲に関しても、ボーカルのタイプと曲の雰囲気がピッタリとマッチ。ここらへんの差配に関しては、プロデューサーの武部聡志の力を感じさせますし、だからこそ聴いていて全く違和感なく楽しめるカバーアルバムに仕上がっていました。

ただ逆に、そういった意味では意外性がない、という点はマイナスだったようにも感じます。1曲2曲は、例えば原曲の雰囲気をガラリと変えるようなロックやパンクなカバーだったり、原曲をバラバラに解体するようなエレクトロやポストロック系のカバーがあったらおもしろかったなぁ、とは強く感じました。

もっとも、おそらくこのトリビュートアルバムの趣旨としては、音楽的なおもしろさを求める音楽ファン向けというよりは、素直に聴いてみて無難に楽しめるような、ライトリスナー層向けだからこそ、このようなプロダクションとなったのでしょう。そういう意味では私の感じたマイナス点については、企画の趣旨からすると的外れなのかもしれませんが・・・ただ、それでもやはり1、2曲は冒険してほしかったなぁ、とは感じました。

もちろん、もっともそれだけからこそ、原曲の雰囲気を崩すことなく、素直に聴いていて楽しめるポップアルバムに仕上がっていたと思います。参加ミュージシャンに興味がある方はお勧めのアルバム。またジブリソングが好きなら素直に楽しめるトリビュートアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Journey/SPECIAL OTHERS

スペアザの9枚目となるオリジナルアルバム。毎月25日に「ニコニコの日」と題してリリースしてきた配信シングルをすべて含む作品。スペアザといえば、陽気で明るいインストバンドというイメージがあるのですが、今回はやはり「ニコニコの日」にリリースした作品が中心だからでしょうか。いつも以上に陽気で明るいインストポップが並んだ作品となっていました。気軽に楽しめる1枚です。

評価:★★★★

SPECIAL OTHERS 過去の作品
QUEST
PB
THE GUIDE
SPECIAL OTHERS
Have a Nice Day
Live at 日本武道館 130629~SPE SUMMIT 2013~
LIGHT(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WINDOW
SPECIAL OTHERS II
Telepathy(SPECIAL OTHERS ACOUSTIC)
WAVE
Anniversary

Blue Birds/SING LIKE TALKING

SING LIKE TALKING約2年ぶりの新作は、表題曲を含む新曲3曲+ライブ音源3曲の計6曲入りのEP盤。実質的なシングルのような作品ですが。ただ、新曲に関しては、悪くはないけども微妙・・・といった感じ。彼ららしいメランコリックでメロディアスな作品なのですが、楽曲のインパクトという面では平凡。聴いた後、いまひとつ印象に残らなかった・・・。ただ、良かったのは初回限定盤についてくるDisc2で、こちらは架空のラジオ局"radio JAOR"による、SING LIKE TALKINGの代表曲をFMラジオ風でノンストップでつなげたアルバム。よくあるDJ Mix盤のように、途中でブツ切りになっている感じではなく、基本的に全曲ほぼフルで収録されており、ベスト盤的な感覚で楽しめるアルバムになっていました。こちらは素直にSING LIKE TALKINGの曲の良さを楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology
Heart of Gold
3rd REUNION

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2023年11月26日 (日)

TOWA TEI 3作。ちょっと遅くなったものも含みます。

今回は、先日、2枚同時にアルバムをリリースしたTOWA TEIの新作の紹介です。

Title:TOUCH
Musician:TOWA TEI

まず全12曲入りのアルバム「TOUCH」。全編軽快なエレクトロのインストアルバムなのですが、全曲、バラエティー富んだ作風で様々なサウンドを取り入れた、TOWA TEIの広い音楽的嗜好を感じさせる作品でした。「EAR CANDY」ではファンキーなリズムにキュートな女性ボーカルの入ったキュートなポップチューン。「HAND HABBIT」ではトランペットが哀愁感あるフレーズを奏でながらも、どこか和風なサウンドが魅力的。「SEA CHANGE」は、タイトル通り、海の中にいるかのようなドリーミーなサウンドが特徴的ですし、「SNOW SLOW」では軽快なピコピコサウンドが楽しい楽曲に。「AKASAKA」も様々なサウンドをサンプリングして、どこかユーモラスなポップに仕上がっています。

ちなみにゲスト陣もなかなか豪華で、「HOLD ON!」でタイトルを叫んでいるのはかの細野晴臣。「EAR CANDY」でキュートなボーカルを聴かせてくれるのはクラムボンの原田郁子。さらに本作唯一の歌モノとなっている「RADIO(DJ)」でボーカルを取っているのは、今年、残念ながら鬼籍に入ってしまった高橋幸宏。豪華なゲスト陣が参加している点も大きな魅力でした。

全体的にどこかユーモラスで、ちょっとひねくれて、でもとてもポップで楽しいラウンジ風のインストアルバムに仕上がっていた本作。実にTOWA TEIらしいアルバムと言える作品だったと思います。聴いていて、素直に楽しくなる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

Title:ZOUNDTRACKS
Musician:TOWA TEI

そして本作は、その「TOUCH」と同時リリースとなったもう1枚のアルバム。こちらも「TOUCH」同様、TOWA TEIの幅広い音楽性が楽しめるアルバムに。ちょっとスペーシーな「MUSE」からスタートし、「FRESH!」は様々な音をサンプリングした楽しくコミカルな曲に。不気味でちょっとトライバルな要素のある「2BAD」は、どこかゲームソング風。「OPEN」の後半ではチップチューン的なサウンドも取り入れています。

ただ「TOUCH」と大きく異なる点は、「TOUCH」が多彩なゲストが参加したのに対して、本作ではすべてテイ・トウワ一人の手によってつくられたという点。彼一人のみによって作成されるという点も、これはこれで非常に挑戦的、と言えるかもしれません。

また、「ZOUNDTRACKS」というタイトルの通り、アルバム全体として、どこか映画やゲームのサントラ盤のような、そんな楽曲が目立ったような感じがします。しっかりとしたフレーズを持ったポップな歌を聴かせるというよりも、ワンアイディアを具体化した作品に仕上がっている、そんな印象でしょうか。テイ・トウワ一人の手によるものだからこそ、その点はより「挑戦的」になった作風だったのではないでしょうか。

そのため、ポピュラリティーという点では「TOUCH」よりも薄かったかもしれませんが、それはそれとしてTOWA TEIらしさがしっかりと発揮されたアルバムだったと思います。こちらも聴いていて素直に楽しくなる1枚でした。

評価:★★★★

で、実はもう1枚、2021年にリリースしたアルバムが聴き漏れていたので、いまさらながら聴いてみたのですが・・・

Title:LP
Musician:TOWA TEI

今年リリースされた「TOUCH」は、基本的にこの2021年にリリースされた「LP」の続編的な扱いだそうで、確かに方向性としてはこの2枚、とても近いアルバムだったと思います。どちらも様々な音楽や様々な音を取り込んでポップにまとめあげていますし、また、豪華なゲスト陣の参加も特徴となっています。

こちらもラテンのリズムを取り入れた「BIRTHDAY」からスタートし、キュートでメロウな女性ボーカルが特徴的な「FABULOUS」。音数を減らしてダイナミックに聴かせる「EMEZ」に、哀愁感あるトランペットを加えてドリーミーにまとめあげている「NOMADOLOGIE」とバラエティー富んだエレクトロチューンを楽しめます。

ゲスト陣も「BIRTHDAY」では細野晴臣、「CONSUMER ELECTRONICS」では高橋幸宏と、こちらも「TOUCH」と同様にYMOの2人が参加。その特徴的な歌声を聴かせてくれています。全体的には「TOUCH」と同様、どこかコミカルさも感じる軽快なエレクトロチューンがメインの作品。そして「TOUCH」と同じく、聴いていて素直に楽しくなるような1枚でした。

評価:★★★★★

TOWA TEI 過去の作品
BIG FUN
MACH2012
LUCKY
CUTE
EMO
ARBEIT

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2023年11月25日 (土)

優しさを感じさせるボーカルとサウンドが魅力的

Title:Madres
Musician:Sofia Kourtesis

Madras

今回紹介するのは、ベルリンを拠点にして活動するペルーのDJ、Sofia Kourtesis(ソフィア・コルテシス)のデビューアルバム。各種メディアで非常に高い評価を受けている作品で、彼女に関しては、音源はもちろん、名前を聴くのも初めてだったのですが、今回、その評判のデビューアルバムをチェックしてみました。

楽曲的には、リズミカルなエレクトロチューンがメイン。リズミカルなサウンドが聴いていて心地よさを感じさせるのですが、その「心地よさ」を決定づけているのが彼女のボーカルでしょう。基本的にはエレクトロなリズムトラックが主軸となるサウンドで、彼女のボーカルはこの手のエレクトロアルバムではよくあるパターンなのですが、サウンドのひとつ、として位置づけられている構成となっています。ただ、優しく暖かみのあるサウンドは、アルバムの中でも大きな魅力となっているのは間違いありません。また、その結果として、エレクトロサウンド全体としても暖かみの感じさせる音色となっており、エレクトロのアルバムながらも、どこか暖かみを感じさせるという点が本作の大きな魅力となっていました。

アルバムは、いきなりタイトルチューンの「Madres」からスタート。壮大な印象もある伸びやかなサウンドには、どこかトライバルな雰囲気も感じさせます。本作は彼女の母親について書いた曲だとか。伸びやかな清涼感あるボーカルも魅力的な楽曲に仕上がっています。また、3曲目の「Vajkoczy」は、癌と診断された彼女の母親の命を救った、著名な神経外科医の名前から取られた作品だとか。リズミカルで軽快なエレクトロサウンドが魅力的な楽曲となっています。

前半は、そんなリズミカルで清涼感もあるエレクトロチューンがメイン。基本的にはストレートにリズミカルな楽曲がメインとなっており、いい意味で聴きやすさが印象に残る楽曲が並びます。四つ打ちのリズミカルなサウンドがメインながらも、どこかトライバルな要素も見え隠れする点もひとつの魅力に感じました。

一方、ダウナーな歪んだサウンドに語りにようなボーカルが入る「Moving Houses」を挟んで、終盤は少々違った雰囲気に。続く「Estacion Esperanza」では、かのManu Chaoも参加。前半でも隠し味のように入っていたトライバルな要素をより前に押し出した作品に。続く「Cecilia」も疾走感あるエレクトロチューンながらもトライバルな要素が入った作品になっていますし、ラストを飾る「El Carmen」も同様。最後は、アルバム全体に流れているトライバルな要素を押し出した締めくくりとなっていました。

優しいボーカルとリズムトラックが魅力的な前半と、前半から隠し味的に加わりつつも、後半でより鮮明になるエッジの効いたトライバルなリズムが魅力的なアルバム。いい意味で聴きやすさがありつつも、どこかひっかかる癖のような要素も入っている、魅力的なエレクトロサウンドの作品でした。広いリスナー層にもアピールできる傑作アルバムだったと思います。ライブで聴いても気持ちよさそうですが、CDや配信で聴いてもその魅力に魅了される、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Lahai/Sampha

イギリスはロンドン出身のシンガーソングライター、Samphaの約6年ぶりとなるニューアルバム。エレクトロベースなサウンドにしんみりとメランコリックに聴かせるソウルなボーカルが載るスタイル。全編的にエレクトロビートを取り入れつつも、どこかオーガニックな色合いすら感じさせる暖かみのある楽曲が大きな魅力。ソウルミュージックがベースながらも、メロはシンプルなポップという点、いかにもUKソウルという印象も受ける1枚。幅広いリスナー層が楽しめそうな暖かみのあるソウルアルバムでした。

評価:★★★★★

1989 (Taylor's Version)/Taylor Swift

"Taylor's Version"としてリリースしている過去作のリメイク最新作は2014年にリリースしたアルバム「1989」のリメイク。同作は、いままでカントリーという枠内で活躍していた彼女が、その壁を取り払い、ポップミュージシャンとして大きく飛躍した1枚でした。今回、久々に同作を聴いてみたのですが、いい意味でポップミュージシャンらしい、明るく、広いリスナー層が楽しめる楽曲が並ぶアルバムだと、改めて気がつかされました。ポップミュージシャンとしての本領発揮の1枚とも言えるのではないでしょうか。今や、世界的な人気を誇るポップシンガーである彼女ですが、ある意味、その一歩を踏み出したアルバムと言えるでしょう。

評価:★★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)
RED(Taylor's Version)
Midnights
Speak Now(Taylor's Version)

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2023年11月24日 (金)

amazarashiらしい

Title:永遠市
Musician:amazarashi

コロナ禍の中で、いや、むしろコロナ禍の中でこそ、積極的に作品を発表し続けていた感のあるamazarashi。特に、2020年末にリリースした「令和二年、雨天決行」はコロナ禍に対して正面から対応したアルバムの中でも、特に名盤として名高く感じさせる1枚でしたし、昨年リリースした「七号線ロストボーイズ」も、青森出身の彼だからこそ歌えるような、そんな内容の歌詞が印象的な名盤に仕上がっていました。

その前作から約1年半。相変わらず精力的な活動が目立つamazarashiのニューアルバムがリリースされました。コロナ禍というテーマ性のあった「令和二年~」、出身地がテーマだった「七合線~」に比べると、今回のアルバムはテーマ性という観点からはあまり明確ではなかったような印象を受けます。ただ一方で、それだけにamazarashiというバンド自体の活動の方向性が、より明確になっている印象を受ける作品になっていました。

まさに1曲目「インヒューマンエンパシー」などは、まさにamazarashiらしい歌詞が特徴的と言えるのではないでしょうか。

「今夜
美しい過去を持てなかった僕らは
失敗ばかりだったけど 悪くない失敗だったと
疚しさなく言えるように 見知らぬ船に乗り込む」
(「インヒューマンエンパシー」より 作詞 秋田ひろむ)

という歌詞は、まさに現在の社会に上手く適用できないものの、なんとか前を向いて生きていこうともがく、amarashiの得意とするテーマ性にピッタリとマッチします。続く「下を向いて歩こう」なんて、楽曲のタイトルからしてそのまんまといった感じですし、

「一秒も耐え難い痛みを知るなら 逃げろ、自由に向かって」
(「自由に向かって逃げろ」より 作詞 秋田ひろむ)

と歌う「自由に向かって逃げろ」なんかも、まさに後ろ向きな感情と前向きな感情が同居した、実にamazarashiらしい世界観が繰り広げられています。

また、メロやサウンドについては、メランコリックなメロディーラインを前に押し出し、サウンドもそんなメロを押し出すようなギターロックにピアノも入れた叙情的なものがメイン。良くも悪くもamazarashiらしい楽曲が特徴的。ともすれば大いなるマンネリ感は否めないものの、ただやはり、彼らの歌詞の世界観にマッチしたメロやサウンドというと、こういうものになるんだよな、ということも感じる楽曲となっていました。

全体的には、そんな訳で、実にamazarashiらしいアルバムに仕上がった1枚。良くも悪くも若干大いなるマンネリ気味な部分は否めないものの、おそらくファンならば文句なしに満足する作品に仕上がっていましたし、大いなるマンネリさを差し引いても、十分「傑作」レベルに達している作品だったと思います。いい意味での「安定感」も感じますし、自分なりの世界観を確立しているミュージシャンは、強いなぁ、とも感じさせる作品でした。amazarashiの実力を感じさせる、そんな作品です。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病
メッセージボトル
地方都市のメメント・モリ
ボイコット
令和二年、雨天決行
七号線ロストボーイズ


ほかに聴いたアルバム

恋愛小説4~音楽飛行/原田知世

原田知世のラブソングカバーアルバム第4弾。今回は洋楽のカバー集。「ラブソング集」というと、ともすればいかにもな「暑苦しい」感じのラブソングが並びがちなのですが、選曲はビートルズやカーペンターズ、ビリー・ジョイルなどいった有名処のスタンダードナンバーばかり。それを彼女が、アコースティックなアレンジにより優しく歌い上げています。一方で、この手のアコースティックカバーというと、無難なBGM的なものに終わってしまいそうですが、しかし彼女の優しくも表現力あるボーカルにより、単純なイージーリスニング的な作品に落とし込まれていません。しっかりと聴きこめる大人なラブソングカバーアルバムの傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

原田知世 過去の作品
eyja
原田知世のうたと音楽

Tokyo Emotional Gakuen/BIGMAMA

約5年ぶりのニューアルバム。学校をテーマとして、曲のタイトルをそれぞれの教科とリンクさせたコンセプチャルなアルバム。「青春はエモい」という今どきな言葉をテーマに、「エモい」の本来的な使い方である「エモロック」な作風に仕上げています。全体的にかなり分厚いサウンドでメランコリックなメロがちりばめられている、文字通り「エモい」ロックを聴かせてくれる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

BIGMAMA 過去の作品
Dowsing For The Future
君がまたブラウスのボタンを留めるまで
君想う、故に我在り
Synchronicity(HY+BIGMAMA)
Fabula Fibula
BESTMAMA
-11℃

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2023年11月23日 (木)

相変わらずアイドル系が目立つ中、非アイドル系も

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も、多くのアイドル系が初登場してきまいたが、一方で非アイドル系のランクインも目立ちました。

まず1位初登場は&TEAM「First Howling:NOW」。韓国の音楽事務所HYBEの日本法人、HYBE LABELS JAPAN所属の男性アイドルグループ。CD販売数1位、ダウンロード数3位。本作が初のフルアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上9万9千枚で2位初登場。前作のEP盤「First Howling:WE」の初動15万3千枚(1位)からダウンしています。

2位はVaundy「replica」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数1位。「怪獣の花唄」が実に今年1年間に渡ってロングヒットを続けた彼の、待望のニューアルバム。オリコンでは初動売上5万6千枚で3位初登場。前作「strobo」の5千枚(5位)より大きくアップしています。ただ、前作から初動売上が約10倍増といっても、初動売上5万枚というのは、「怪獣の花唄」のヒットと比べると、思ったより寂しい感も。というか、もうアイドルグッズとしてアルバムを買う人たち以外は、基本的に配信でアルバムは聴いて、CDをわざわざ買わないのでしょう。

3位にはWACK所属の女性アイドルグループGANG PARADE「The Night Park E.P.」が初登場。CD販売数3位。オリコンでは初動売上3万2千枚で4位初登場。前作「OUR PARADE」の2万8千枚(1位)よりアップ。

続いて4位以下の初登場盤ですが、5位にはRockon Social Club「Don't Worry Baby」がランクイン。こちらは元ジャニーズ系アイドルグループ「男闘呼組」所属のメンバーを中心に、寺岡呼人プロデュースによって結成された新バンド。CD販売数5位。オリコンでは初動売上1万4千枚で7位初登場。ちなみに今週、「アイドル系、非アイドル系」とわけた中、このバンドがどちらに属するものなのかは迷うところですが・・・まあ、どちらかといえば間違いなく「アイドル系」なのでしょう。ただ、CDアルバムが完全にアイドルグッズの「アイテム」と化し、ファンから集金するツール程度のものに成り下がってしまった他のアイドル系と比べると、こちらは間違いなく、本来あるべき「アルバム」と言えるでしょう。しかし寺岡呼人はどこにでも登場するなぁ・・・。

そして6位からはロック系がズラリと並んでいます。6位にはユニコーン「クロスロード」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数11位。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。前作「ツイス島&シャウ島」の1万4千枚(6位)からダウン。

さらに8位にはヤバイTシャツ屋さん「BEST of the Tank-top」が初登場。こちら、タイトル通り、人気ロックバンドヤバイTシャツ屋さんの初となるベストアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数39位。オリコンでは初動売上7千枚で10位初登場。直近のオリジナルアルバム「Tank-top Flower for Friends」の初動1万枚(5位)よりダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年11月22日 (水)

Adoの1位が続く

今週のHot100

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Hot100の1位争いは、今週もAdoが制しています。

Ado_show

今週1位もAdo「唱」。これで4週連続通算8週目の1位獲得。ストリーミング数が9週連続、YouTube再生回数も7週連続の1位をキープ。さらに今週ダウンロード数も2位から1位にアップしています。これで11週連続のベスト10ヒット&10週連続のベスト3ヒットとなりました。

一方、YOASOBI「アイドル」は今週4位から3位にアップ。再びベスト3入りを果たしています。ストリーミング数は9週連続の2位。YouTube再生回数も4位から2位にアップ。ダウンロード数も15位から12位にアップと、全体的には持ち直しています。これで32週連続のベスト10ヒット&通算30週目のベスト3ヒットとなりました。また「勇者」も6位から5位にアップ。こちらも今週で8週連続のベスト10ヒットを記録。「アイドル」ほどの派手なヒットはないものの、こちらもロングヒットを記録しています。

その間に割り込んで2位初登場は旧ジャニーズ系男性アイドルグループなにわ男子「I Wish」。TBS系ドラマ「マイ・セカンド・アオハル」主題歌。CD販売数1位獲得で、総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでも初動売上37万枚で1位初登場。前作「Make Up Day」の初動39万4千枚からダウンしています。

続いて4位以下の初登場ですが、まず4位に瀬戸内地域を拠点に活動する秋元康系女性アイドルグループSTU48「君は何を後悔するのか?」がランクイン。CD販売数2位。オリコンでは初動売上17万6千枚で2位初登場。前作「息をする心」の初動売上21万7千枚(2位)よりダウンしています。

9位には韓国の男性アイドルグループStray Kids「LALALA」が先週の33位からランクアップし、2週目にしてベスト10初登場。ダウンロード数29位、ストリーミング数6位、YouTube再生回数5位で総合順位では9位にランクインしています。

また今週はベスト10返り咲き組も。まずはVaundy「怪獣の花唄」が13位から8位にランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。これで通算45週目のベスト10ヒット。カラオケ歌唱回数は4週連続の1位。先週11位にダウンしたストリーミング数も8位にアップしています。

また韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「Perfect Night」が先週の11位から10位にランクアップ。こちらも2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

その他のロングヒット曲としては、King Gnu「SPECIALZ」が8位から6位に再びアップ。ダウンロード数は10位から8位、ストリーミング数は先週から変わらず5位、YouTube再生回数も10位から9位にアップ。これでベスト10ヒットは12週連続となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年11月21日 (火)

「隠れた名盤」が大胆にリプロダクション

Title:Fork in the Road
Musician:金延幸子

女性シンガーソングライターの先駆け的存在として知られる金延幸子。特に1972年にリリースしたアルバム「み空」は、J-POP史上に残る名盤として名高い1枚だったりします。ただ、その後は結婚・出産により音楽活動を一時停止。再び音楽活動を行うのは、1993年のアルバム「SEIZE FIRE」まで待たなくてはいけませんでした。

本作はもともと1998年にリリースされたアルバム。もともと伊豆のプライベイトスタジオでデモ音源的に録音した作品を、今回、久保田麻琴プロデュースにより、大胆にリプロダクション。伊藤大地、ASA-CHANG、幾何学模様のメンバーらも加わり、大幅に生まれ変わった1枚となったそうです。

もっとも、とはいえオリジナルの方を聴いていないので、どの程度「大幅に生まれ変わったのか」はよくわかりません。ただ、比較的シンプルなアレンジに、特に彼女の声やギターに関しては、ある種の生々しさを感じるあたり、もともとデモ音源的な部分が垣間見れる一方、音圧は強く、サウンド的にもクリアになっており、プロダクション的にはデモ音源的な部分はありません。デモ音源的な生々しさと、しっかりとプロダクションされたような端正さがバランスよく両立されたサウンドプロダクションに感じました。

また、金延幸子というと、いままで「み空」しか聴いたことがなく、イメージ的には70年代的なフォーク、という印象を強く持っていたミュージシャンでした。実際、今回のアルバムでも、そんなイメージそのままのフォーキーな作品も目立ちます。例えばタイトルチューンの「Fork in the Road」はそのままフォークな楽曲ですし、冒頭の「とべたら本こ」もアコギ1本でシンプルに聴かせるフォーキーな楽曲に仕上がっています。

ただ一方、今回のアルバムを聴くと、フォークシンガーという単純な括りが出来ない、ロックやブルースからの影響を強く受けたミュージシャンなんだということを強く感じます。例えば「I Need You」はバンドサウンドを入れてフォークロックという色合いの濃い作品になっていますし、「夕陽を見た時」「何を待つのか」は、ブルースからの影響がストレートな曲となっています。「不思議なメロディー」はタイトル通り、フォーキーな作風ながらも、幻想感あるメロが独特の魅力を醸し出している曲になっていますし、「Dreamer」などはエキゾチックな要素が魅力的な曲と仕上がっています。

「Woman in the Rain」のようなムーディーで哀愁感たっぷりの曲もありつつ、全体的には洋楽テイストも強いあか抜けた音楽性が魅力的。98年の作品でありながらも、全体的には70年代的な要素が強いのですが、幅広い音楽性を取り入れた楽曲は、時代を超えた普遍的な魅力を強く感じさせる1枚となっています。「隠れた名盤」という言い方をされているようですが、確かに名盤の「み空」に勝るとも劣らない名盤と感じました。金延幸子の魅力をあらためて実感した1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

SO BAD,IT'S REAL/ZIGGY

森重樹一の60歳の誕生日にリリースされたZIGGYのニューアルバム。ヘヴィーなハードロックナンバーの「その琥珀の水に」や、続くグラムロック風の「崖っぷちの夜でさえ」など、文句なくカッコいいのですが、後半は、ちょっとベタに歌謡曲に寄せすぎじゃない?と思うような曲があって、ちょっとガクっと来てしまった感も。全体的にはカッコいいアルバムだとは思うのですが、もうちょっとストレートなロックチューンを貫いてほしかった感じもします。

評価:★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW
HOT LIPS
SDR

フォーピース/ストレイテナー

バンド結成25周年、メジャーデビュー20周年、ギターの大山純が加入して15周年を迎えたストレイテナーの、「周年」記念でリリースされたベストアルバム。タイトル通り、現在の4人編成となった2008年以降の楽曲から、ファン投票で選べれた上位26曲を収録しています。ファン投票のベストといっても、時々、「ファン投票を参考に」程度の選曲がなされているケースもある中、上位26曲と選曲している点はいさぎよい感じも。ストレイテナーは、シンプルでストレートなオルタナ系ギターロックなのですが、楽曲によって結構、出来に差がある印象があります。特に英語詞は文句なしにカッコいい反面、日本語詞に関しては、悪い意味でのJ-POP的要素が強い印象も。そういう意味でも、全26曲、出来には差があったような印象も受けます。ただ、ダイナミックでカッコいい、いい意味でひねりのないギターロックは聴いていて素直に気持ちよく、ロックを聴いた、という満足度も感じるアルバムになっていました。入門版としてもピッタリなベスト盤です。

評価:★★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack
BEST of U -side DAY-
BEST of U -side NIGHT-
Black Map
Applause
Crank Up

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2023年11月20日 (月)

メランコリックなメロとほどよいバリエーションのある曲調が心地よい

Title:哀愁演劇
Musician:indigo la End

ご存じ、ゲスの極み乙女で活躍している川谷絵音の別バンド、indigo la End。いや、設立の経緯から考えると、こちらのバンドがむしろ川谷絵音の「本籍」であり、ゲスの極み乙女が「別働バンド」になるのですが・・・。ただ、彼はほかにもジェニーハイなど様々なバンドを兼務。そのワーカホリックぶりが目立ちます。ただ、その影響なのか今回のアルバム、前作から約2年8ヶ月ぶりと、若干インターバルのあるリリースとなっています。

indigo la Endの特徴として、哀愁感たっぷりのメロディーの歌をしっかりと聴かせる歌モノのバンド、という特徴があります。ただメロディーライン的には正直、「哀愁メロ一本やり」な部分があり、メロのインパクトによりアルバムの出来が大きく左右される部分があります。特に「PULSATE」は、まさに脂ののった1枚となっていたのですが、前作「夜行秘密」は若干、メロに物足りなさを感じる作品になっていましたが、今回のアルバムは川谷絵音のメロディーセンスが炸裂した、美メロをしっかりと聴かせてくれる作品となっていました。

先行シングルになった「名前は片想い」は、まさにそんなセンスが光る切ないメロディーラインが魅力的なアップテンポチューン。メロウで切ないメロが印象的な「春は溶けて」や、ファルセット気味のボーカルでメランコリックに聴かせる「邦画」など、魅力的なメロの曲が並びます。基本的にマイナーコードの哀愁メロ路線が続くのですが、ともすればメランコリックなメロはインパクトを与えやすい反面、似たような曲が多いという印象を受けてしまいがちな中、同じような路線の曲で最後までしっかりと聴かせるあたり、川谷絵音のメロディーセンスの良さを強く感じる作品となっています。

また加えて、同じタイプのメロディーラインの曲が並ぶ中、ほどよく楽曲にバリエーションがある点もアルバムの魅力に大きく貢献しています。「名前は片想い」「忘れっぽいんだ」と先行シングルの歌モノの曲が続いた後に、ファンキーなリズムの「芝居」「愉楽」と展開していくのも大きなインパクトに。「ラブ」ではファンキーなビートに加えてラップも取り入れた曲に。「Gross」ではノイジーなハードロック調のバンドサウンドも入っており、他の曲に比べて、より「ロック」のテイストの強い曲調に。全体的にはメランコリックな歌モノポップで統一感のある中、ほどよくファンクやラップ、ロックの要素を取り込んだバラエティーのある展開もアルバム全体のインパクトを与える点となっています。

メロディーもサウンドも、決して目新しい訳ではありませんが、切ないメロディーラインがインパクト十分の、「PULSATE」以来の傑作とも言える脂ののった作品に仕上がっていました。ここ最近、ゲスの極み乙女としての作品のリリースもちょっと減ってしまった感もありますが、川谷絵音のミュージシャンとしての才は全く衰えていないことを感じさせるアルバム。メランコリックなメロに酔いしれたい1枚でした。

評価:★★★★★

Indigo la End 過去の作品
あの街レコード
幸せが溢れたら
藍色ミュージック
Crying End Roll
PULSATE
塗れゆく私小説
夜行秘密


ほかに聴いたアルバム

Re-Birth/04 Limited Sazabys

フォーリミの最新アルバムは、結成15周年を記念したセルフカバーアルバム。全体的にアコースティック形式な中、ラテンやボサノヴァ、フォークなどの要素を取り入れたバラエティー富んだ作風が魅力的。ただなによりも爽やかなサウンドの中、フォーリミの書くメロディーラインの良さをより際立たせたようなセルフカバーが多く、バンドの楽曲自体の魅力をしっかりと発揮させたアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

04 Limited Sazabys 過去の作品
CAVU
eureka
SOIL
Harvest

"超"究極ベスト-全員優勝Edition-/サンボマスター

サンボマスターが2011年にリリースしたベストアルバムに、新たなコンテンツを加えてリリースしたリメイク版。ただ、リメイクといっても、Disc3にカバー曲集の4曲を加えただけで、さらに初回盤の映像特典で「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 05」の映像を加えたくらい。正直、前作から12年も経過しているのだから、その間の曲をまとめたベスト盤を、もう1枚、追加するくらいは対応してほしかった感じもするのですが。内容的には文句なしに5つなのですが、リメイク版としての物足りなさに1つマイナスで。

評価:★★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES
はじまっていく たかまっていく E.P.

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2023年11月19日 (日)

現役感あふれるまさかのオリジナルアルバム

Title:HACKNEY DIAMONDS
Musician:The Rolling Stones

おそらく、本年度最大の音楽ニュースの一つであることは間違いないでしょう。ローリングストーンズが完全オリジナルのニューアルバムをリリース!2021年にオリジナルドラマーであるチャーリー・ワッツが逝去。その後の動向も気になっていたのですが、正直なところ、こんなに早いタイミングでオリジナルアルバムをリリースしてくるとは思いませんでした。2016年にはアルバム「Blue&Lonesome」をリリースしているのですが、こちらはブルースのカバーアルバム。純然たるオリジナルアルバムとしては2005年の「A Bigger Bang」以来、実に18年ぶりのニューアルバムとなります。

ロック史に名を残す大レジェンドのストーンズも、ミック・ジャガーはなんと今年80歳。キース・リチャーズも79歳。若干年下のロン・ウッドでも76歳と、まだまだお元気とはいえ、一般的にはすっかり「おじいちゃん」になってしまっています。しかし、そんな年齢を全く感じさせない、現役感あふれる演奏をこのアルバムでも聴かせてくれています。まずアルバムを聴き始めて最初に飛び込んでくる「Angry」からして、80歳を過ぎて、色艶さえ感じさせるミック・ジャガーのボーカルに驚かされます。続く「Get Close」で聴かせてくれるギターの力強いこと・・・。そのギターに負けないミックのボーカルの力強さも驚くべき限りです。

特に前半では「Bite My Head Off」「Whole Wide World」など、かなり分厚いバンドサウンドを前に押し出した、力強い「ロック」な曲が目立ち、メンバー全員が80歳に手が届く年になっても、変わらず元気であることをアピールするかのような曲が並びます。その後もブルースナンバーの「Dreamy Skies」や、ストーンズ流のダンスチューン「Mess It Up」、ストーンズの十八番とも言えるバラードナンバー「Tell Me Straight」は、こちらもおなじみのキースボーカルの曲と、バラエティー富んだ展開が続いていきます。

またゲスト陣も非常に豪華で、「Bite My Head Off」では、こちらも元気な「おじいちゃん」のポール・マッカートニーが、「Live By The Sword」ではエルトン・ジョンが、「Sweet Sounds Of Heaven」ではスティーヴィー・ワンダーとLady Gagaが、とレジェンドたちがズラリと参加し、さすがストーンズ・・・といった豪華な面子が名前をそろえています。この並びの中では、さすがのLady Gagaも「若手」になってしまいそう。ちなみに「Mess It Up」「Sweet Sounds Of Heaven」ではチャーリー・ワッツのドラムプレイが使われているほか、「Live By The Sword」ではビル・ワイマンもベースで参加しており、こちらもちょっとうれしくも懐かしいゲスト参加となっています。

楽曲としてはバリエーションがあるものの、全体的には目当たらしい感じはなく、かつての経験からストーンズが手元に持っている手札を並べた感のある構成になっており、新たな挑戦といった感はありません。まあ、この年齢になってオリジナルアルバムを作ること自体が挑戦、と言えるかもしれませんが・・・。ただ、この年齢になっても、ある意味「年齢」を全く言い訳にしていない現役感あるアルバムを作り上げている点自体が驚きと言えるかもしれません。少なくとも80年代90年代あたりの作品と並べても、遜色ないどころか、むしろ上回る出来の内容とすら言えるかもしれません。

ちょっと気にかかるのがアルバムラストを締めくくるのが、彼らのバンド名の元となったブルースの巨人、Muddy Watersの「Rolling Stone Blues」のカバーという点。このアルバムがラストであることを意識して最後の最後に・・・なんてことも考えてしまいます。年齢からすると、確かにこれが最後になってしまっても不思議ではないのですが、まだまだ元気に現役を続けて、90歳になっても新作を作り続ける、そんな姿を期待してしまうのですが。

ともすれば最近のベテランミュージシャンのニュースというと、過去作のリメイクだったり、ビートルズのように未発表音源の発掘だったり、さらにはもっと残念なニュースとして訃報が飛び込んでくるケースも少なくない中、ストーンズほどの大レジェンドが、バリバリの現役ミュージシャンとして「ニューアルバムリリース」というニュースが飛び込んでくるのはやはりうれしい限り。確かに往年のアルバムに比べると、というのはあるかもしれませんが、あのストーンズの新作という点を差し引いても、十分「傑作」と言えるだけのクオリティーのアルバムだったと思います。次回作、さらにその次も期待できちゃいそうな、パワフルなアルバムでした。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!
Licked Live In NYC


ほかに聴いたアルバム

AUDIOBOOK/Sam Gendel

マルチ・インストゥルメンタル奏者、サム・ゲンデルのニューアルバム。かなりのワーカホリックぶりで、昨年は3枚(!)ものオリジナルアルバムをリリースし、今年もこれが2枚目(!)。あまりにワーカホリックぶりで、全てのアルバムを追い切れていません・・・。本作は、基本的にエレクトロサウンドをメインに、ウッディーなリズムを入れてきたり、ジャジーな要素を入れてきたり、トライバルなリズムを入れたりとバラエティー豊富な展開が楽しめるアルバムに。楽曲タイトルは「AB」からスタートし、最後は「YZ」と、アルファベットを2文字づつ並べただけ、というそっけないものなのですが、タイトルをつけるよりもアイディアが先行してしまっているといった感じでしょうか。そのワーカホリックぶりはまだまだ止まらなさそうです。

評価:★★★★

Sam Gendel 過去の作品
Satin Doll
AE-30
Superstore
blueblueblue

Utopia/Travis Scott

今、もっとも人気のあるラッパーの一人、Travis Scottの、実に約5年ぶりとなるニューアルバム。本作も本国アメリカはもちろんのこと、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアなど世界各国で1位を獲得。その強さを見せつけています。ただ、いままでトラップの代表的なラッパーといった感じだった5年前の作品とは異なり、トラップの楽曲は少なめ。聴きやすいメランコリックなサウンドはそのままに、強いビートを聴かせるような曲が多く、そのビートが非常にカッコいい作品。いい意味で耳障りのよい、幅広いリスナー層が惹きつけられそうな作品となっており、確かにその高い人気は伊達じゃない、そう感じる作品でした。

評価:★★★★★

Travis Scott 過去の作品
ASTROWORLD

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2023年11月18日 (土)

世界とリンクした少年少女の物語

Title:8
Musician:ROTH BART BARON

Rbr_8

毎年のようにアルバムをリリースし、精力的な活動が目立つ三船雅也のソロプロジェクト、ROTH BART BARONの8枚目となるニューアルバム。前作から1年弱。タイトル通り、8枚目のオリジナルアルバムとなるのですが、これで実に6年連続でのアルバムリリースとなり、その精力的な活動ぶりがうかがえます。

ソロプロジェクトということもあって、基本的に宅録的に、エレクトロサウンドやホーンセッション、ピアノやアコギなども取り入れた多彩なサウンドに、三船雅也のファルセット気味なハイトーンボイスでドリーミーに聴かせるというスタイルは前作から変わりありません。一方、タイアップ曲が多かった前作に比べると今回はタイアップ曲はありません。初回盤にはCDにBlu-rayもついていた前作と比べると、本作はLPと配信のみでのリリース。明らかに「売り」に来ていた前作と比べると、「内向き」な作品となっています。

ただし、楽曲的には前作に比べて明らかに内向き・・・という印象は受けません。ホーンセッションも入って明るさと爽やかさを感じる「Kid and Lost」、ファルセットボーカルでメランコリックに聴かせる「Exist Song」、エレクトロサウンドでドリーミーに聴かせる「Closer」、アコースティックギターで幻想的な「Krumme Lanke」などバラエティー富んだ楽曲が展開されます。

インパクトという面でも「BLOW」は軽快なギターサウンドに、ちょっとメランコリック気味が切なさを醸し出しているメロにはインパクトがありますし、パーカッションのリズムが軽快な「MOON JUMPER」はライブでも盛り上がりそう。「売り方」は前作に比べると内向きな感は否めませんが、確かにポピュラリティーという面で前作に軍配はあがるものの、楽曲自体は「内向き」という印象は受けませんでした。

また今回のアルバムは「世界との接続を再開した2023年に描かれる10編の『ジュブナイル物語』を描き出すこと」というテーマ性があり、コンセプチャルな内容ともなっています。ただ今回、コロナ禍が終わり「世界との接続を再開した」という内容であるため、全体的には未来への明るさを感じさせます。

「何度でもあたらしい扉を開けてみせましょう」と歌う「Kid and Lost」や「次の冒険へ出かけよう/誰も見たことのない景色」と歌う「Boy」など、まさに世界と接続されてどんどん希望のある外へ飛び出していく少年少女たちの物語が描かれています。そんな歌詞の世界観にピッタリとリンクするのが祝祭色も強い音楽性。もともと祝祭色の強い音楽性がROTH BART BARONの特徴でしたが、歌詞のコンセプトが前向きだからこそ、その特徴がより強調されているようなアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムも申し分ない年間ベストクラスの傑作アルバム。これだけハイペースでリリースを続けながら、クオリティーが全く落ちていないのは驚くべき限り。それだけ今、三船雅也が脂にのりまくっている状況ということなのでしょうね。この傾向はまだまだ続くのでしょうか。これからの活躍もとても楽しみです。

評価:★★★★★

ROTH BART BARON 過去の作品
無限のHAKU
HOWL


ほかに聴いたアルバム

THE BOOK 3/YOASOBI

おそらく今、日本で最も人気のあるミュージシャン、といえるYOASOBIの4枚目となるミニアルバム。2023年を代表するヒット曲となった「アイドル」や現在もヒット中の「勇者」を含む、基本的に前作「THE BOOK 2」以降のリリースした配信シングルをまとめて収録しただけの作品になっています。ある意味、シングルをまとめただけ、というあたりも、もう最近のミュージシャンにとってアルバムの意味がなくなってきているという訳なのでしょうか。

インパクトあるメロディーラインはさすがといった感じ。単純なラブソングに留まらない歌詞の傾向もいかにも今どきなのでしょうか。ただ、全体として音があまり整理されておらず、音をつめこんでまとまって聴こえるようなルーツレスなサウンドは、良くも悪くもJ-POPらしい感じ。シティーポップやら、時としてトラップ的なサウンドを入れてくるような、良くも悪くも節操のなさもJ-POPらしさも感じます。いろんな意味で「今どきの売れ線」といったイメージを受けるアルバムでした。

評価:★★★★

YOASOBI 過去の作品
THE BOOK
E-SIDE
THE BOOK 2
E-SIDE 2

OLD ROOKIE EP.1/田我流

Oldrookie

田我流の新作は、11月11日に行われた日比谷野音ワンマンのタイトルを冠したEP盤。活動25周年の節目としてリリースされた作品で、「自己のルーツへの回帰、自分の頭の中にある新しい音楽に向きあう」をテーマに制作されたとなっており、トランぺッターの黒田卓也とのコラボなどもあり、新しいサウンドへの挑戦も感じさせます。ただ、社会派的なリリックもあったものの、いままでの彼の作品に感じられた強いメッセージ性は少々後退してしまったかも。その点はちょっと物足りなさも感じました。

評価:★★★★

田我流 過去の作品
B級映画のように2
Ride On Time
More Wave(田我流&KM)

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2023年11月17日 (金)

検閲制度について考える

今回も、最近読んだ音楽関連の書籍です。

「幻のレコード 検閲と発禁の『昭和』」。音楽評論家で、特に戦前歌謡に詳しい毛利眞人氏による著作となります。彼の著書をここで取り上げるは戦前ジャズの歴史を綴った「ニッポン・スウィングタイム」、SPレコードの入門書となる「SPレコード入門〜基礎知識から史料活用まで」に続いてこれで3冊目となりますが、音楽の、特にSPレコードや日本の戦前歌謡に対する深い愛情を感じさせる内容が印象的な著作となっています。

そんな中で今回の著作も戦前の日本歌謡を取り上げた著作となるのですが、特に戦前の日本のレコードに対する検閲・発禁をテーマとした1冊となります。ご承知おきの通り、戦前の日本といえば出版法や新聞紙法、治安維持法などにより表現・出版の自由が厳しく取り締まられており、出版物は当局による検閲を受け、たびたび発禁の処理が行われていたというのは、よく知られている事実だと思います。その反省を受け、現在の日本国憲法では第21条2項により、政府による検閲が堅く禁じられています。

その検閲・発禁をテーマとした今回の著書ですが、そのため内容的には「音楽の本」というよりも、むしろ「歴史の本」という色合いが濃い1冊となっています。ただし一方、「検閲」という堅いテーマではあるものの、決して大上段に戦前の横暴な政府権力を批判的に取り上げるような内容ではなく、どちらかというと戦前に行われたレコードに対する検閲・発禁の歴史を、客観的な事実に基づいて淡々と描いている、そんな著作となっています。

そのため、あくまでも「検閲・発禁」に対する事実を追及していくこの著書では、興味深い事実を知ることが出来ます。検閲が行われた当初は、政府批判というよりも公序良俗に反するという点で、「エロ」に対する規制がまずは強く行われていた点。そして、そんな「エロ」を押し出したレコードに対する規制が、むしろ世論の側から要求されていた部分もあった点。また、著作権法がいまほど整備されていなかった当時は、ヒット曲をそのままパクったレコードが多くリリースされ、こちらもレコード会社の側からパクリのレコードに対する規制が求められていた点なども記載されており、太平洋戦争に突入した後こそ、かなり理不尽な発禁も増えてくるのですが、当初はむしろ、世論の中で検閲・発禁はレコード会社と持ちつ持たれつ的な側面があったこともうかがわせます。

またこの著書では、戦前のレコードの検閲を一手に担った小川近五郎という官吏が物語の主人公として登場してきます。ただ、この小川近五郎なる人物は大の音楽好き。健全な流行歌をレコード会社が作るように善導していく使命に燃えているという、いかにも戦前の官僚的な側面もある一方で、流行歌に対しては比較的寛容的で、特に流行歌にある程度の猥雑さがある点は仕方ないという考え方の持ち主だったようで、一部の世論よりも時として流行歌に対して寛容であったことも非常に興味深く感じました。

ただ一方では、この戦前の検閲・発禁の事実を通じて、この問題が必ずしも今の自分たちには関係ない、と言い切れない部分も強く感じました。特に流行歌が公序良俗に反する表現を用いる時に、その規制を求めるような動きは、現在でも無縁とは言い切れません。さらに「エロ」の表現に関しては、今日ではむしろ女性の人権という側面から規制をされるようなケースも少なくなく、そのような規制と表現の自由の問題は非常に難しい議論となっています。

さらに今回の著書では、戦前の検閲官、小川近五郎の物語ともなっており、彼の人柄については比較的好意的に描かれていますし、確かに、読んでいて、基本的には音楽が好きないいおじさんだったんだろうなぁ、とも感じられます。ただ一方で、一人の検閲官の人柄により、検閲の内容が左右されている点にも恐ろしさも感じました。そして、この検閲制度の持つ、一種の「主観性」もまた、検閲の大きな問題点だと感じました。

全体的に検閲や発禁制度に対する問題提起を行う、というよりも、戦前のレコードに対する検閲制度の事実を追及するという1冊だったのですが、それでも検閲制度に関して、決して過去の遺物ではなく、今の時代に通じる部分があることを感じ、いろいろと考えさせられる1冊であった点も間違いありません。どちらかというと音楽というよりも歴史の本という要素が強いだけに音楽ファンなら是非、といった感じではないのですが・・・歴史が好きな方、また戦前歌謡に興味がある方はもちろん、「表現の自由」とはなにかということをあらためて考えるにも最適な1冊だったと思います。読み応えのある良書でした。

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2023年11月16日 (木)

アイドル系が目立つ中、大レジェンドが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も、アイドル系、特に韓国勢が目立つ中、あのレジェンドが貫録のベスト10入りです。

ただし1位は日本の女性アイドルグループ。日向坂46「脈打つ感情」が1位を獲得。CD販売数1位、ダウンロード数5位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上14万8千枚で1位初登場。前作「ひなたざか」の初動20万8千枚(1位)からダウンしています。

2位は韓国の男性アイドルグループNCT127「Fact Check」が先週の3位からワンランクアップ。3位には先週1位だった同じく韓国の男性アイドルグループBTCのJung Kookのソロ作「GOLDEN」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位にValkyrie「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数15位。男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」のキャラクターソングCD。オリコンでは初動売上1万8千枚で5位初登場。同シリーズの前作fine「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」の初動8千枚(6位)からアップしています。

そして、今週の「目玉」とも言えるのが「The Beatles 1962~1966」「The Beatles 1967~1970」でしょう。ご存じ「赤盤」「青盤」の名前でもおなじみのビートルズのベストアルバム。今回、ジョン・レノンの歌唱音源が残されており、以前、ビートルズでの音源化を試みたものの、当時の技術では上手くいかず、未発表のまま残されていた新曲「Now And Then」が、現在のAI技術によって無事、音源としてリリースできる水準までよみがえり、彼らの27年ぶり、かつ「最後の」新曲としてリリース。同曲を含めてあらたな曲を追加した新規ミックス音源として再リリースされました。結果、「Now And Then」が収録された「1967~1970」がCD販売数5位、ダウンロード数7位で6位に、「1962~1966」がCD販売数6位、ダウンロード数10位で8位に初登場。オリコンでも「1967~1970」が初動売上1万7千枚で6位に、「1962~1966」が初動売上1万5千枚で7位に初登場しています。

ビートルズは昨年も同じ時期に「Revolver」のスペシャルエディションをリリースしていますが、同作の初動1万4千枚(5位)よりアップ。毎年のようにビートルズはこの時期に新たな「ネタ」をリリースしてきています。その都度、チャート上位に食い込んでくるあたり、その人気のすごさを感じさせますが、そろそろネタが切れていている感も・・・。ただ、この「Now And Then」のように技術の進歩により、いままでリリースできなかったような音源が発掘されるケースが今後もありうると思うので、そこは期待半分、不安半分で見守っていきたいところでしょう。

初登場もう1作は9位に韓国の男性アイドルグループStray Kids「ROCK-STAR」がランクイン。韓国盤のミニアルバムですが、ダウンロード数で3位を獲得し、総合順位でもベスト10入りとなりました。

一方、今週はベスト10返り咲きも。まずMr.Children「miss you」が先週の24位から5位にアップし、4週ぶりのベスト10返り咲き。こちらは今週、配信が解禁となり、ダウンロード数で1位を獲得した影響。ミスチルの人気のほどをあらためて感じる結果となりました。

また韓国の男性アイドルグループTREASURE「Reboot」も19位から10位にランクアップ。6週ぶりにベスト10返り咲きとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年11月15日 (水)

Adoが今週も1位を獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週まで続いたAdoとYOASOBIのトップ争い。今週はAdoが一歩リードです。

Ado_show

Ado「唱」が今週で3週連続通算7週目の1位を獲得。ダウンロード数は1位から2位にダウンしたものの、ストリーミング数は8週連続、YouTube再生回数も6週連続の1位をキープ。これで10週連続のベスト10ヒット&9週連続のベスト3ヒットとなります。

一方、YOASOBI「アイドル」は今週、2位から4位にダウン。ストリーミング数は8週連続の2位をキープしたものの、YouTube再生回数は3位から4位、ダウンロード数は13位から15位にダウンと、全体的にダウン傾向。とはいえ、これで31週連続のベスト10ヒットに。また、YOASOBIは「勇者」も3位から6位にダウン。ただ、今週も2曲同時ランクインとなっています。

2位には、男性アイドルグループIMP.「CRUISIN'」がランク圏外から大きくランクアップ。8月30日付チャート以来、11週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。IMP.は、もともとジャニーズ事務所でIMPACTorsとして活動をしていたグループがメンバー全員、ジャニーズ事務所を脱退。その後、滝沢秀明が設立した芸能事務所TOBEに移籍し、再デビューしたもの。先行配信でベスト10入りしていましたが、今回、CDがリリースされ、CD販売数が2位にランクイン。ラジオオンエア数も1位を獲得し、総合順位でベスト10返り咲きを果たしています。ただ、リリースがTOBE OFFICIAL STORE限定でのリリースだったため、オリコンでは対象外に。ビルボードのTop Single Salesでは9万8千枚の売上を記録していますので、オリコン週間シングルランキングでは今週、2位相当となります。ご存じの通り、元ジャニーズ事務所が大変なことになっているだけに、彼らには追い風が吹いている感じも。ある意味、大きなチャンスの時期と言えるでしょう。

一方、それに続いて3位は、こちらは元ジャニーズ系、King&Prince「愛し生きること」がランクイン。CD販売数1位、YouTube再生回数21位。オリコンでは初動売上34万8千枚で1位初登場。前作「なのもの」の初動54万4千枚(1位)からダウンしています。IMP.に比べてCD販売は大きく上回っていますが、IMP.はダウンロード数でも12位にランクインしており、ジャニーズ系と辞めジャニの対決では、IMP.がビルボードでは順位が上回る結果となりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、こちらも非ジャニーズ系の男性アイドルグループの代表格、BE:FIRSTの配信限定シングル「Glorious」が7位初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数29位、ラジオオンエア数9位、YouTube再生回数6位。「第102回全国高校サッカー選手権大会」応援歌。

そして今週5位に、LDH所属の男性ダンスグループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「片隅」が先週の80位から大きくランクアップし、ベスト10初登場。CD販売数3位、ストリーミング数46位、ラジオオンエア数7位。オリコンでは初動売上3万9千枚で2位初登場。前作「Summer Riot~熱帯夜~」の初動22万8千枚(1位)から大きくダウンしています。

またロングヒット曲ですが、今週、King Gnu「SPECIALZ」は4位から8位にダウン。ダウンロード数は先週と変わらず10位をキープしたものの、ストリーミング数は4位から5位、YouTube再生回数も6位から10位にダウンしています。ただ、これで11週連続のベスト10ヒットとなっています。

ただし、今週のロングヒット曲はこれだけ。先週、ベスト10に返り咲いたVaundy「怪獣の花唄」は再び13位にダウンし、ベスト10返り咲きは1週のみ。ベスト10ヒットも通算44週でストップです。また、キタニタツヤ「青のすみか」も今週17位までダウン。こちらもベスト10ヒットは連続18週でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年11月14日 (火)

井上陽水の「天才」ぶりを感じる

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

ノンフィクション作家、辻堂真理による「最強の井上陽水 陽水伝説と富澤一誠」。ご存じ「傘がない」「夢の中へ」「リバーサイドホテル」など数多くのヒット曲を持つ、日本を代表するシンガーソングライター井上陽水と、その彼をデビュー当初から高く評価し、「俺の井上陽水」というタイトルの評論本までリリースしながら、その後、袂を分かった音楽評論家の富澤一誠。その両者を対比させつつ、井上陽水について描いた1冊です。

率直に言うと、熱心な井上陽水のファンではない私が今回の本を手に取った理由は、彼と音楽評論家富澤一誠の絡みに興味があったから。富澤一誠というと、私は彼が企画し、自らもMCとして参加していたラジオ番組「JAPANESE DREAM」を愛聴していたことがあります。この番組、日本でリリースされる全シングルを紹介した上で、リスナーの人気投票にかけるという番組。「いい曲を書いているけど売れていない」ようなミュージシャンをピックアップしようという企画で、個人的にもこの番組をきっかけに知ったミュージシャンは少なくなく、私の音楽趣味の幅を広げるひとつのきっかけとなった番組でもあります。

ただ一方、「メロディーと歌」のみを評価し、サウンド重視の曲をほとんど評価しない富澤一誠の旧態依然とした姿勢に徐々に疑問を抱きだし、同番組から徐々に興味をなくしていきました。その後も富澤一誠のメディアにのるコメントといえば、いかにも団塊の世代が言いそうな偏見たっぷりの「最近の音楽」に対するものが目立ち、日刊ゲンダイや夕刊フジのような、団塊世代のおやじ向けメディアの太鼓持ち、というイメージが強く持っています。そんな彼が井上陽水とどのような関係にあり、さらに袂を分かったのか・・・興味を持ち、この本を読んできました。

さて、そのように読みだした同書の感想ですが、「最強の井上陽水」と井上陽水を押し出したタイトルとなっていますが、内容的には井上陽水と富澤一誠の若き日の歩みが並行して描かれたもの・・・もっと言えば、むしろ富澤一誠を軸に描かれているようにすら感じました。ただ、非常におもしろかったのが若き日の富澤一誠は非常に尖っていて、世間に対して反抗的であったという事実。特に歌謡曲や演歌に対してつまらなく感じており、さらには当時あった音楽雑誌「新譜ジャーナル」のフォーク評が気に入らず、フォーク評に対する強烈な批判と、それに対して自分の評論をのせろ、と迫る手紙を送りつけたという点は、すっかり保守的になってしまった今の彼からは想像できないほどの尖りぶりで、とても興味深く感じました。

ただし、その後の井上陽水との出会いと井上陽水に対する絶賛、さらには井上陽水のブレイクから袂を分かつまでを読むと、この本で意図していたのは、井上陽水と富澤一誠の、ある意味対照的な両者の対比。もっと言ってしまうと、「天才」井上陽水を、ある意味、「凡人」である富澤一誠と対比させることによって、井上陽水の天才ぶりを際立たせている・・・そんなイメージすら受けました。

富澤一誠のことを「凡人」と言ってしまうと、怒られてしまうかもしれません。少なくとも彼は音楽評論家として確固たる地位を築いた人物であることは間違いありません。ただ、この本を読むと、井上陽水がデビュー以来、自分のスタイルをどんどんと変えて、その可能性を広げていっているのに対して、富澤一誠は、そんな井上陽水の変化を理解できず、いつまでもデビューアルバムの頃のイメージに固執し、さらには「フォークはかくあるべき」的なイメージにも固執しています。それが結果として両者が袂を分かつ原因にもつながっているのですが、今という視点から振り返ると、とかく富澤一誠の保守的な考え方が目立ち、結果として井上陽水の先見性、天才ぶりがより一層わかる記述となっていたように感じました。

もっとも、これは富澤一誠が特に「保守的で考えが堅かった」という訳ではないように思います。むしろ世間一般が井上陽水に対して感じていたイメージの、彼が代弁者であったのではないでしょうか。実際、アルバムの売上で言えば1973年にリリースされた「氷の世界」がミリオンセラーを記録したものの、その後、彼が自由にそのスタイルを変えていったアルバムは、「氷の世界」から比べると大きく売上を落としています。おそらく富澤一誠と同様、世間一般も、井上陽水の天才ぶりが当初は理解できなかったのでしょう。そういう意味でも富澤一誠の意見というのは、当時の世間一般のリスナーの意見でもあったのではないでしょうか。

この本を読んで、あらためて井上陽水のすごさを感じましたし、そしてデビュー当初の彼のアルバムをあらためて聴いてみたくもなる一冊でした。ただ、単純に広くお勧めできるか、と言われると、どちらかというと富澤一誠に焦点があたりすぎているため、純粋に井上陽水の評伝として読むのならば、他の本にあたった方がよいような印象を受けました。ある程度、井上陽水について詳しい方が、次の一冊として読むような本といった感じでしょうか。読みやすい文体で興味深く読める一冊ではありましたが。

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2023年11月13日 (月)

結成50周年を記念したスペシャル盤

「日本最古のロックバンド」なる異名を持つセンチメンタル・シティ・ロマンス。結成50周年を迎えた今年、様々な企画が用意されているみたいですが、先日紹介したベストアルバムに続き、今回紹介するのは、彼らのデビューアルバム「センチメンタル・シティ・ロマンス」と、2ndアルバム「ホリディ」の50周年記念盤となります。

Title:センチメンタル・シティ・ロマンス Special Edition
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス

まずこちらは1975年にリリースされた彼らのデビューアルバム。先日紹介したベストアルバムにも、このアルバムの楽曲が多く収録されていますが、デビュー作にして彼らの代表作であり、なおかつ、日本ポップ史の名盤として紹介されることも少なくない1枚です。

ベストアルバムの収録曲としては聴いたことある曲も多いのですが、アルバムを通じて聴くのは今回がはじめて。そしてアルバムを通じて聴いて感じるのはその完成度の高さでした。アメリカのウェストコースト・ロックをベースとしたカラッとしたサウンドを軸にしつつ、時には日本的なウェットさも見え隠れするバラエティー富んだ作風が大きな魅力。1曲目に収録されている「うちわもめ」はまさに彼ららしいウエストコースト風のサウンドですし、かと思えば「あの娘の窓灯り」はメランコリックでフォーキーな作品に。「暖時」は、今で言えばシティポップ的な作風になっていますし、「小童」ではジャズ的な要素も感じます。

全体的に洋楽テイストは強いものの、一方では「庄内慕情」みたいなタイトルそのままベタな歌謡曲みたいな曲もあったりして、この和洋折衷的な曲作りもユニーク。また、センチメンタル・シティ・ロマンスは名古屋出身・在住のバンドという点も大きな特徴なのですが、1曲目「うちわもめ」ではベタな名古屋弁が登場していたりしますし、前述の「庄内慕情」も山形県の庄内平野ではなく、名古屋市内の庄内川の模様。また最後に収録されている「ロスアンジェルス大橋Uターン」は、いかにもウェストコーストに影響を受けた彼ららしいタイトルですが、名古屋市とロスアンジェルスは姉妹友好都市となっており、このアルバムリリース直後に名古屋市長のメッセージを携えて渡米したとか。「めんたいロック」のように出身地でジャンルをくくるケースもあるのですが、楽曲自体にこれだけ地方性を出しているのも珍しい感じもします。

ちなみにこのアルバム、もともとかの細野晴臣をプロデューサーに迎えて制作する予定だったそうですが、楽曲の出来のよさに彼がプロデュースを辞退。代わりに「Chief Audience=観客の長」としてクレジットされたというエピソードがあるそうですが、それも納得の完成度の高いデビューアルバムでした。

評価:★★★★★

Title:ホリディ Special Edition
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス

こちらはその翌年、1976年にリリースされた彼らの2ndアルバム。このアルバムからドラムスが元シュガーベイブの野口明彦に変更。新生メンバーによるアルバムとなっています。

アルバム全体としてはギターサウンドがロック色がより強くなっている点が特徴的。さらにそれに加えて「内海ラブ」ではシティポップの様相が、さらに「マンボ・ジャンボ」「魅惑のサンバ流るる今宵」では、タイトルそのままラテンのサウンドが加わり、前作以上にバリエーションが増えた内容に。一方で、1曲目の「ムーンシャイン&サンシャイン」では哀愁たっぷりのギターサウンドを聴かせるブルージーなロックになっているのですが、前作のような歌謡曲的な曲はなく、和洋折衷的な要素は残しつつも、基本的にはより洋楽寄りにシフトしているようにも感じました。

ちなみに、この2枚のSpecial Editionにはボーナスディスクとして1975年8月21日に、東京の日仏会館で行われた彼らのデビューライブの模様を収録したライブ盤が、2枚にわけて収録されています。公式サイトの紹介でも書いてありますが、オーディエンス録音のため、録音状況は決して良くはありません。ただ、どこかデビューアルバムであるため緊張した面持ちのライブは新鮮味もあり、また初々しさも感じられる点も貴重な音源といった感じ。途中の司会の当時のノリに時代を感じさせつつも、デビュー当初の彼らを想像しつつ、楽しめるライブアルバムとなっていました。

評価:★★★★★

で、結成50周年を記念してリイシューしたアルバムがもう1組。

Title:20th Memorial Live -half century edition-
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス

こちらは結成20周年を記念して、1993年6月25日に、池袋METホールで開催されたライブの模様を収録したライブアルバム。もともと1993年にリリースされたアルバムなのですが、全20曲中9曲までが、今回、追加収録された楽曲となっており、オリジナルのライブアルバムとは、かなり様相の変化したアルバムとなっています。また、このライブでは当時、メンバーだったドラムスの近藤文雄に加えて、元メンバーの野口明彦も参加。近藤はこのライブを最後に脱退し、その後は野口がサポートとして参加するらしいのですが、貴重なツインドラムでの演奏となっています。

なんといっても、前述のSpecial Editionのデビューライブとこのアルバムの聴き比べが楽しいところ。ツインドラムということもあり、こちらのアルバムはかなり音が分厚くなっている点も大きな特徴。デビューライブはオーディエンス録音のため録音状態が悪いという違いも大きいのですが、やはり20年という月日によるバンドの成長は一目瞭然。安定したベテランらしい演奏を楽しむことの出来るライブアルバムとなっています。

ちなみにセンチメンタル・シティ・ロマンスは2021年にボーカルの中野督夫が逝去しており、当時のメンバーでのステージももう叶わなくなってしまいました。ただ、残ったメンバーでバンドとしての活動は続けており、「日本最古のロックバンド」の記録はまだまだ伸びそう。いずれのアルバムも今聴いても、全く違和感なく楽しめるアルバムになっているため、これを機にチェックしたいアルバムです。

評価:★★★★★

センチメンタル・シティ・ロマンス 過去の作品
やっとかめ
50th Anniversary The Very Best of SENTIMENTAL CITY ROMANCE

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2023年11月12日 (日)

オリジナルくるりが再結成

Title:感覚は道標
Musician:くるり

くるりのニューアルバムについて、くるりのファン、特に昔からのオールドファンにとっては、まずはこのジャケット写真からして胸熱になるのではないでしょうか。くるりの現メンバー、岸田繁と佐藤征史の2人の間にいるのは、オリジナルメンバーである森信行。デビュー当初のドラマーであったものの、2002年7月にアルバム「THE WORLD IS MINE」を最後に脱退。今でこそ、くるりはメンバーの脱退・加入を繰り返していますが、当時は大村達身の加入はあったものの、メンバー脱退は初。それもオリジナルドラマーの脱退ということもあって、森信行脱退はショッキングなニュースでした。

それから約20年超。もともと大学時代の友人同士ということで脱退後も交流があったことはファンには周知の事実。2010年にはくるり・ザ・セッションと題して、森信行を加えてのライブパフォーマンスも行われています。ただ、やはりオリジナルメンバーが揃い、アルバムが制作されているというのは、非常に大きなニュースであり、昔からのファンにとっては胸が熱くなるような出来事なのは間違いありません。今回のアルバム、原点回帰ということもあるのでしょうが、くるりの、特に岸田繁の「モード」として、デビュー当初のように、3人のバンド形態で楽曲を作り上げるという形を取りたかったのだとか。以前ここでも紹介した映画「くるりのえいが」では、そんな3人でのレコーディングの模様も取り上げられています。

実際、今回のアルバムは、楽曲が精緻に組み上げられていったオリジナルアルバムとしての前作「天才の愛」とはある意味対極にあるとも言えるアルバムで、バンドのセッションの形で作られたような作品の並んでいます。映画でも本作に収録されている「In Your Life(Izu Mix)」の制作の過程が収録されていますが、例えば1曲目「happy turn」もいきなり岸田繁のくしゃみから入るなど、ラフな雰囲気を作り出しつつ、バンドサウンドを主軸としたブルースロックな曲を聴かせてくれていますし、先行の配信シングルとなった「California coconuts」も爽やかなくるりらしいポップなメロが流れているものの、基本的にはバンドサウンドを中心に据えたような作品になっています。

またもっともセッション的なのが中盤の「LV69」で、メタ視線のアイロニックな歌詞もユニークなナンバー。どこか自由さを感じさせるロックなサウンドは、気の置けない仲間たちとのセッションだからこそ生まれたように感じる曲になっています。また最後を締めくくる「aleha」も波の音が録音されたフォーキーな雰囲気のナンバー。本当の波の音なのかどうかは不明ですが・・・ただ、映画で取り上げられていた伊豆の録音の中での情景を思い起こされるような楽曲で締めくくられています。

バリエーションとしてはハードロック風の「世界はこのまま変わらない」やラテンなリズムを入れた哀愁たっぷりの「お化けのピーナッツ」のような曲もあったりするのですが、全体的にはバンドのセッションから誕生したようなロックチューンがメインということもあって、くるりのアルバムとしては比較的、統一感のある内容になっています。また、メロディーラインについても岸田繁のセンスが光る曲も多いものの、インパクトのある派手な曲というのは基本的にはありません。そういう意味でも、いかにもバンドのセッションの中で生み出されたアルバムという印象を強く受ける作品になっていました。

ただ一方、原点回帰とも異なる点もまた興味深いところ。佐久間正英をプロデューサーに迎えて、「整理された」デビューアルバム「さよならストレンジャー」とも、逆に若いバンドゆえの荒々しさを感じさせる2枚目の「図鑑」とも全くことなるアルバムとなっています。くるりの2人のメンバーはもちろん、森信行も、くるり脱退後もドラムプレイヤーとして成長を続け、3人ともミュージシャンとしても人間的にも、ひとまわりもふたまわりも大きくなった今だからこそ出来た「大人な」アルバムとも言えるかもしれません。オリジナルくるりの3人によるアルバムでしたが、原点回帰とも全く異なる、今のくるりにしか出来ないアルバムという点も大きな特徴であり大きな魅力に感じました。

映画の時も感じたのですが、おそらく、くるりの、特に岸田繁の「モード」がこういうアルバムを作りたいモードであり、それが故のオリジナルくるり再結成なのでしょうから、次のアルバムは再び2人でのくるりに戻っていくのでしょう(これで大村達身が加わり4人組となったりしたらおもしろいのですが(笑))。ただ、森信行脱退後、20年以上を経た今、こういうアルバムが作られるのは大きいと思いますし、また、くるりとしても、あらためてバンドとしての原点の3人組に戻ったからこそ、新たな一歩を踏み出せるのでしょう。おそらく、次からはまた、くるりの2人と森信行は再び別の道を歩みだすのでしょうが、またおそらく何年か後には、再び3人でアルバムを作りそうな気がします。くるりとしての原点を確かめるかのように・・・。

評価:★★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER
くるりとチオビタ
琥珀色の街、上海蟹の朝
くるりの20回転
ソングライン
thaw
天才の愛
愛の太陽 EP


ほかに聴いたアルバム

脳内魔法/安藤裕子

デビュー20周年になる今年、新レーベル「AND DO RECORD」を発足。本作は、その第1弾アルバムとなります。レーベル発足直後に配信シングルとしてリリースされ、本作にも収録された「さくらんぼみたいな恋をしたい」はかの大塚愛の「さくらんぼ」のオマージュだそうで、MVには大塚愛本人も出演。同時期にデビューした2人は盟友とも言える間柄だそうで、楽曲の方向性やファン層も異なる2人なのでちょっと意外。ただ、以前リリースされた「頂き物」では、大塚愛が作曲として参加していて、ちょっと意外に感じたことを覚えています。

新レーベル設立によるアルバムということもあってか、アルバム全体としては趣味性の強い内容。全体的にどこかふわふわとしたドリーミーな雰囲気が特徴的で、そんな中にノイジーなギターサウンドが組み込まれていたり、エレクトロサウンドを入れていたり、アコースティックなサウンドで構成されていたり、曲によっては沖縄民謡的な雰囲気やラテンも取り入れていたりと、かなり自由度も高い内容。またそれを彼女のハイトーンなボーカルでまとめあげています。正直、インパクトあるポップチューンもないですし、地味な印象も強いのですが、聴けば聴くほど、徐々に味が出てくるようなアルバム。最初は取っつきにくさを感じるのですが、安藤裕子の魅力のしっかりと詰まったアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物
ITALAN
Barometz
Kong Tong Recordings

unpeople/蓮沼執太

多彩な活動を続ける蓮沼執太の新作は、エレクトロサウンドのインストアルバム。かなり実験的な作品で、ギターを取り入れたり、フュージョン風に仕上げたり、ピアノの音色を入れて清涼感を持たせたり、様々な実験を行っている印象を受けるアルバムになっています。ただ、「純粋に自分のための音楽」と自ら語るように、ポップス的な要素は薄く、そういう意味ではちょっと聴きにくいアルバムだったような印象も。どちらかというとファン向けといった感のあるアルバムでした。

評価:★★★★

蓮沼執太 過去の作品
2 Tone(蓮沼執太&U-zhaan)
Good News(蓮沼執太&U-zhaan)

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2023年11月11日 (土)

等身大のミスチル

Title:miss you
Musician:Mr.Children

2022年にメジャーデビュー30周年を迎えたMr.Children。昨年は周年記念となるベストアルバムをリリースしましたが、オリジナルアルバムのリリースはなく。本作は前作「SOUNDTRACKS」から2年10ヶ月ぶりとなるニューアルバムとなります。

今回のアルバムの特徴は主にメンバー4人だけがプライベートスタジオに集結し、録音したオリジナルアルバムであるという点。ある意味、30周年を経て、新たな一歩を踏み出す彼らが、あらためてMr.Childrenは4人によるバンドである点を見つめなおした、という意味合いがあるのかもしれません。ただその結果として、非常にシンプルな構成のアルバムとなっており、ミスチルのコアな部分が抽出された作品と言えるかもしれません。

1曲目の「I MISS YOU」はまずピアノとアコギで哀愁たっぷりに歌い上げるナンバー。続く「Fifty's map~おとなの地図」はストリングスを入れてスケール感を持たせつつ、必要以上に仰々しさもないシンプルなポップソングになっています。さらに「青いリンゴ」についてはシンプルなアレンジのメロディアスなポップチューンになっており、初期を彷彿とすらさせるようなミスチルらしいポップチューンに仕上がっています。

「雨の日のパレード」もメロウな作風ながらも、シンプルなエレピで奏でる等身大のポップチューンに仕上がっていますし、「Party is over」もアコギのみで聴かせるシンプルでフォーキーな作品に。「黄昏と積み木」についても、こちらも非常にシンプルなポップス。恋人同士(というよりも夫婦同士?)の日常を描いたほっこりとした暖かみのあるポップスがとても魅力的です。

最後を締めくくる「deja-vu」「おはよう」も等身大な歌詞も魅力的ですし、シンプルなアレンジの等身大のポップソングになっているのも、初期の彼らを彷彿とさせるようなナンバー。ちなみにこの2曲、ピアノは小谷美紗子が参加しており、個人的にはかなりその点もトピック的な作品になっています。

一方、歌詞についても落ち着いた作風の曲が多く、特にタイトルそのまま「Fifty's map~おとなの地図」だったり、「LOST」や「Party is over」のような、主人公が大人、もっと言えば、ミスチルメンバーと同年代の50代あたりを想像させるような歌詞の曲も目立ちます。楽曲的にもシンプルなアレンジの等身大的な作風がメインでしたが、歌詞についても、彼ら自身をそのままに描いた等身大な作風の歌詞が目立ったような印象を受けました。

ちなみに歌詞と言えば印象的だったのは中盤に配され、ラップ的な歌がインパクトのある「アート=神の見えざる手」で、社会派な歌詞の作品。ミスチルは以前から社会派的な曲もチラホラ歌ってきたのですが、ただ立場的なものもあるのか、社会派とはいえ比較的無難な内容にとどまっていた歌詞が多かった印象も受けます。ただ、この曲に関しては

「中華人民共和国と北朝鮮のアンビリーバブルな行動
非常識だと報道するけれど
じゃあどの国が常識的だと
あの金髪女は言うのでしょう?」
(「アート=神の見えざる手」より 作詞 桜井和寿)

と、かなり具体的な内容にまで踏み込んでいるのが印象的。中国や北朝鮮を批判しつつも、同時に、彼らに対する安易な差別的発言も戒めるような歌詞は、同国に対して批判というよりも差別的な言動まで行う、一部の人たちに対する非難まで至っているもの印象的でした。

そんな挑戦的な歌詞もありつつも、ただ全体的には4人のみでのセッションを中心とするアルバムということで全体的にシンプルな作風となっている本作。ミスチルというと、特にモンスターバンドとなっているここ最近、必要以上にスタジアムバンド的なスケール感のある曲が目立ったように感じます。そんな中、ある意味原点回帰的とも言える、非常にシンプルで、ポップバンドとしての彼らの魅力を感じさせる作品に仕上がっていました。正直、無駄にスケール感だけを感じさせる作品については、ファンとして嫌いではないもののどこかよそよそしさを感じる部分もあったのですが、今回のシンプルなポップソングを聴いて、自分が中学生以来好きだったミスチルはこれだよ、これ!!と心から感じ、あらためて自分はミスチルというバンドが好きなんだな、ということを実感する、そんなアルバムに仕上がっていました。個人的には、2015年の「REFLECTION」以来の、年間ベストクラスの傑作アルバムだと思っている本作。やはりミスチルは素晴らしいバンドだなぁ、そう感じさせてくれた1枚でした。

評価:★★★★★

Mr.Children 過去の作品
SUPERMARKET FANTASY
SENSE
Mr.Children 2001-2005<micro>
Mr.Children 2005-2010<macro>

[(an imitation) blood orange]
REFLECTION
重力と呼吸
SOUNDTRACKS
Mr.Children 2011-2015
Mr.Children 2015-2021&NOW


ほかに聴いたアルバム

LaiLa/大西ユカリ

前作から約5年3ヶ月ぶり、久々となった大西ユカリのニューアルバム。ジャケット写真からわかるように、ラテンのテイストたっぷりのタイトルチューン「Laila」「贖罪天国」からスタート。全体的にはラテンのテイストの強いムーディーな作風となっている作品に。また力強い彼女のボーカルもムード感たっぷり。ねっとりとしたいい意味での泥臭く、暑苦しさを感じる大西ユカリらしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

大西ユカリ 過去のアルバム
HOU ON
やたら綺麗な満月
直撃!韓流婦人拳(韓国盤)
直撃!韓流婦人拳

ニガイナミダが100リットル
肉と肉と路線バス
EXPLOSION
BLACK BOX

Catch Up/WANIMA

途中、MONGOL800とのスプリットEPやサブスク用の企画盤のリリースはあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては実に約4年ぶりとなるWANIMAのニューアルバム。彼ららしい陽性の強い、ポップなパンクチューンがズラリと並ぶ作品になっているのですが、全20曲1時間強という、かなりボリューミーな内容に。サブスク全盛の今、比較的、サブスクに対して否定的だった彼らですが、結局、サブスク解禁せざる得なくなった今、アルバムとして聴かせるのならば、やはりCDに収録できる精一杯の作品を詰め込みたい、そんな意思も感じるオリジナルアルバムでした。

評価:★★★★

WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!
Cheddar Flavor
Fresh Cheese Delivery
愛彌々(MONGOL800×WANIMA)

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2023年11月10日 (金)

前作に続くエレクトロ作ながらも、出来はより進化

Title:CHAI
Musician:CHAI

フルアルバムとしての前作「WINK」で、インディーレーベル、サブポップと契約。「世界」を視野として活動を開始した4人組ガールズバンド、CHAI。本作は、そんな彼女たちの、途中ミニアルバムを挟みつつ、約2年ぶりとなるフルアルバムとなります。

もともとデビュー以来、ニューウェーヴのテイストも強いタイトなバンドサウンドを押し出したロックチューンが魅力的だった彼女たち。ただ、世界進出を意図した前作「WINK」ではエレクトロサウンドを取り入れたサウンドを前面に押し出し、またR&Bテイストを取り入れて、良くも悪くも今風のサウンドを取り入れたアルバムに仕上がっていました。個人的には率直なところあまり彼女たちらしさを感じない作品であり、ちょっと残念な作品、という印象を受けました。

その後リリースされたミニアルバム「ジャジャーン」もエレクトロサウンドを押し出した作品となっており、今回の作品に関しても正直なところ不安を感じながらアルバムを聴いていたのですが・・・今回のアルバムも残念ながら基本的には前作と同様、エレクトロサウンド路線を押し出した作品に仕上がっていました。

ただ、とはいえ楽曲の出来としては前作「WINK」よりもグッと進化して良くなっていた印象を受けます。ダウナーな「MATCHA」からスタートし、軽快なエレクトロファンクチューン「PARA PARA」「GAME」はテンポよいリズムが軽快で心地よさを感じる楽曲に。終盤のエレクトロチューン「Like,I Need」もメランコリックなメロディーラインでのリズミカルなサウンドが気持ちよいポップスに仕上がっていました。サウンド的にも、流行のサウンドをただ模倣していた感があった前作から、グッとタイトさを増したエレクトロファンクなリズムは、CHAIとしてのサウンドを模索していた印象を受けます。

さらに今回のアルバム、中盤「We The Female!」「Neo Kawaii,K?」では、以前の彼女たちらしいバンドサウンドが前面に押し出されたロックチューンに。力強くエッジの効いたバンドサウンドはやはり文句なしにカッコよく、ロックバンドとしての彼女たちの実力を感じさせる楽曲に仕上がっています。エレクトロチューンは彼女たちなりの新たな一歩を志したのかもしれませんが、やはりCHAIの魅力を感じるのはこういう楽曲だな・・・ということを再認識した楽曲になっていました。

全体的にはエレクトロという方向性も含めてアルバムの出来としては前作よりも明らかに良くなったアルバムだと感じます。特にエレクトロサウンドの出来としては前作よりもグッと良くなったように感じます。ただそれでも、CHAIとしての魅力がしっかりと確立されているのは間違いなくバンドサウンドを取り入れたロックチューンだと感じますし、そのようなロックナンバーと比べるとエレクトロチューンに関しては、凡作とまではいかないもののもう一歩と感じてしまいました。

そういうこともあり、前作と同様、傑作というには今一歩物足りなさも感じてしまうアルバム。ただ、出来としては良くなっているのは間違いないので、次回作にはさらに期待したいところ。個人的にはやはりバンドサウンドを前に押し出したロックな楽曲を聴きたい、とは思うのですが・・・。

評価:★★★★

CHAI 過去の作品
PINK
わがまマニア
PUNK
WINK
WINK TOGETHER
ジャジャーン


ほかに聴いたアルバム

Undercurrent/細野晴臣

Undercurrent

細野晴臣が、映画「アンダーカレント」に提供した劇伴曲を再構成したアルバム。エレクトロサウンドやピアノのサウンドを取り入れつつも、全体的にはメタリックなテイストが強いアンビエント作品に。非常に挑戦的にも言える内容で、現在、御年76歳という年齢ながらも、全く衰えることのない音楽的意欲も感じさせるアルバムになっていました。劇伴曲というと、ワンアイディアのみの短い作品が多いのですが、こちらはそれを再構成ということで、1曲1曲が映画を見ていない人も聴くことを前提とした曲となっているので、映画のサントラ的な要素よりも、純粋に細野晴臣の新作としても聴ける1枚となっています。

評価:★★★★★

細野晴臣 過去の作品
細野晴臣アーカイヴスvol.1
HoSoNoVa
Heavenly Music
Vu Ja De
HOCHONO HOUSE
HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN
HOSONO HARUOMI Compiled by OYAMADA KEIGO
あめりか/Hosono Haruomi Live in US 2019
Music for Film 2020-2021

HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-/GLAY

今年2月にリリースしたシングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/ 限界突破-」の続編となる作品。前編はシングル曲でしたが、続編は全7曲入りのEP盤としてのリリースとなりました。全体的にはいつも以上に軽快なポップが目立つ作品となっているほか「THE GHOST(80KIDZ Remix)」ではタイトルからもわかる通り、ギターサウンドに打ち込みを取り入れた楽曲に。直近のオリジナルアルバム「FREEDOM ONLY」は、ポップに振り切った彼らを聴くことが出来ましたが、本作もその方向性を維持した、ポップなGLAYを楽しめるEPとなっていました。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~
REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜
FREEDOM ONLY

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2023年11月 9日 (木)

K-POP系アイドルグループが上位に並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も、上位5位までが韓国の男性アイドル勢が占めるチャートとなりました・・・

まず1位は韓国のアイドルグループBTSのJung Kookによるソロデビューアルバム「GOLDEN」が獲得。CD販売数及びダウンロード数共に1位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上20万7千枚を獲得し、1位初登場となっています。

2位は韓国のアイドルグループStary Kids「Social Path (feat. LiSA)/Super Bowl -Japanese ver.-」が先週と同順位をキープ。CD販売数2位。

3位には、同じく韓国の男性アイドルグループNCT 127「Fact Check」が先週の15位からランクアップし、初のベスト10入り。CD販売数が3位にランクインし、総合順位でベスト10入り。もともと輸入盤で10月11日にリリースされていたのですが、日本限定盤が10月31日にリリース。同盤の売上がビルボードチャート上、加味されたものと思われます。オリコンでは10月23日付チャートで初動売上8千枚で7位にランクイン。前作「2 Baddies」の初動9万枚(2位)からダウン。ただ今週は3万7千枚を売り上げて2位にランクインしています。

さらに4位には元東方神起のメンバー、ジェジュンによるJ-POPのカバーアルバム「Love Covers Ⅲ」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数5位。第3弾となる同シリーズで、いままではJ-POPや歌謡曲のスタンダードナンバーのカバーだったのですが、本作はUruの「あなたがいることで」や中島美嘉の「僕が死のうと思ったのは」と、マニアックとまでは言えないまでも、いままでの曲と比べると知る人ぞ知る的な曲が並んでいます。オリコンでは初動売上2万4千枚で4位初登場。前作「Fallinbow」の初動2万8千枚(2位)よりダウン。同シリーズの前作「Love CoversⅡ」の初動4万4千枚(1位)からも大きくダウンしています。

5位には先週1位のSEVENTEEN「SEVENTEENTH HEAVEN」がランクインしており、これで上位5枚がK-POPの男性アイドル勢となりました。

そしてようやく6位に日本勢。JUJU「スナックJUJU 〜夜のRequest〜 『帰ってきたママ』」がランクイン。彼女がライフワーク的に続けているカバーアルバムシリーズの最新作で、タイトル通り、ムーディーな歌謡曲のカバーが並んでいます。CD販売数7位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。直近作は同じくカバーアルバム「ユーミンをめぐる物語」で同作の初動2万9千枚(5位)からはダウンしています。

7位初登場はMyGO!!!!!!「迷跡波」。CD販売数6位、ダウンロード数10位。アニメキャラによるバンドプロジェクト「BanG Dream!」から登場した架空のガールズバンドによる1stアルバム。オリコンでは初動売上1万8千枚で5位初登場。

最後10位にはロックバンドHEY-SMITH「Rest In Punk」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数24位。約5年ぶり、久々となるニューアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で10位初登場。前作「Life In The Sun」の初動1万枚(7位)からダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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Ado vs YOABOSIが続く

今週のHot100

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先週に引き続き、AdoとYOASOBIのトップ争いが続いています。

Ado_show

まず1位はAdo「唱」が先週に引き続き、2週連続通算6週目の1位を獲得。ダウンロード数は2位から1位にアップ。ストリーミング数は7週連続、YouTube再生回数も5週連続の1位を獲得しています。これでベスト10ヒットは9週連続、ベスト3入りは8週連続となっています。

そしてAdoに続くのがYOASOBI「アイドル」で、今週も2位をキープ。ストリーミング数は7週連続の2位。ただYouTube再生回数は2位から3位に、ダウンロード数も11位から13位にダウン。全体的には若干の下落傾向が続いています。ただこれで30週連続のベスト10入り。ベスト3ヒットは通算29週目となっています。

さらにYOASOBIは「勇者」が5位から3位にランクアップ。4週ぶりのベスト3返り咲きとなっており、今週もYOASOBIは2曲同時にベスト10ヒットを記録しています。ただし、ダウンロード数3位、YouTube再生回数5位は先週と変わらないものの、ストリーミング数は4位から5位と若干のダウンとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週はいずれも韓国系の女性アイドルグループ。まず7位に韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIMの配信限定シングル「Perfect Night」が初登場。ダウンロード数14位、ストリーミング数7位、ラジオオンエア数10位、YouTube再生回数7位を記録し、総合順位では7位初登場となりました。

10位には、韓国製日本人女性アイドルグループNiziUの配信限定シングル「HEARTRIS」が初登場。ダウンロード数6位、ストリーミング数30位、ラジオオンエア数58位、YouTube再生回数2位。本作は韓国でのデビューシングルだそうです。

また今週、Vaundy「怪獣の花唄」が11位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。ストリーミング数は3週連続の9位、カラオケ歌唱回数も先週から変わらず1位をキープ。ダウンロード数も12位から10位と若干アップしています。これで通算44週目のベスト10ヒットとなっています。

その他のロングヒット曲では、まずKing Gnu「SPECIALZ」が6位から4位にアップ。ただし、YouTube再生回数は3週連続の6位をキープしているものの、ダウンロード数は5位から10位、ストリーミング数も3位から4位にダウンしています。これで10週連続のベスト10ヒット。

キタニタツヤ「青のすみか」は9位から8位に再びアップ。ストリーミング数は先週から変わらず6位。ダウンロード数は20位から21位に若干のダウン。一方、YouTube再生回数は14位から12位にアップしています。これで18週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年11月 7日 (火)

素直にワクワクできるエレクトロ作

Title:Changing Channels
Musician:Pangaea

イギリスのダブステップのミュージシャン、Kevin McAuleyのソロプロジェクト、Pangaeaのフルアルバムとしては2枚目となる作品。もともと、Pangaeaとしてデビューしたのは2010年のセルフタイトルのEP盤だそうで、その後2016年にはフルアルバム「In Drum Play」をリリースう。本作はそれから7年のインターバルを経てリリースされたアルバムで、今回、Pitchforkで高評価を得ていたことをきっかけに、はじめて本作を聴いてみました。

ダブステップのエレクトロアルバムである本作なのですが、一言で言うと、いい意味で王道路線ど真ん中。四つ打ちのリズムを難しいこと抜きとして素直に楽しめるアルバムに仕上がっていました。

アルバムは女性ボーカルも入れて疾走感あるエレクトロチューン「Installation」からスタート。ミニマル的な女性ボーカルのトラックがトリップ感を誘いつつ、軽快なエレクトロビートが心地よいナンバーに。同じくミニマル的な女性ボーカルのトラックが軽快な「Hole Away」から、「If」はトライバル的なビートが心地よいナンバーに仕上がっています。

中盤の「The Slip」とタイトルチューンでもある「Changing Channels」もミニマル的なエレクトロビートが心地よいナンバー。特に「Chaning Chennels」は7分にも及びこのアルバム一番の長尺ナンバーで、中盤には高揚感のあるビートも登場し、クラブでかかったら盛り上がりそうなナンバーに。音源で聴いていても気分がアガル楽曲となっています。

このアルバムの中では比較的BPMが遅めの「Squid」に繋がり、ラストの「Bad Lines」は逆にアルバムの中で最も最速のBPMとなっているトランスのナンバー。こちらもちょっとベタな感じのするトランスチューンなのですが、アルバムの最後を締めくくるにふさわしい高揚感のある楽曲となっています。

アルバムとしては率直に言って目新しさはないものの、逆に、その目新しさのなさが素直にアルバムを楽しめる大きな要素ともなっており、アルバム全7曲、最後までその軽快なエレクトロのリズムにワクワクしながら楽しむことが出来るアルバムになっていました。聴いていて、これだけワクワクしながら楽しめるアルバムも珍しいかもしれません。今年のベスト盤候補の1枚とも言えるほどの傑作アルバムだったと思います。文句なしに楽しめる作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

For All The Dogs/Drake

For_all_the_dogs_drake

ハイペースなリリースが続くDrakeによるニューアルバム。Drake単独名義の前作「Honestly,Nevermind」ではハウスの要素を取り込んだ異色作となっていたのですが、今回は再びHIP HOPの作品として回帰。ただ、全体としてトラップなリズムを取り入れつつ、メランコリックなメロの入った歌モノの曲が目立つ作品。ただ、ここらへん、歌モノの傾向が強いのはかつてからのDrakeのアルバムの方向性だっただけに、基本的にはDrakeらしいと言えるアルバムになっています。HIP HOPリスナーに留まらない幅広いリスナー層が楽しめそうな内容なのはDrakeらしさを感じる作品になっていました。

評価:★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life
SCORPION
Care Package
Dark Lane Demo Tapes
Certified Lover Boy
Honestly, Nevermind

Javelin/Sufjan Stevens

Javelin

アメリカのシンガーソングライター、Sufjan Stevensのニューアルバム。単独名義としての前作「The Ascension」では打ち込みを用いたドリーミーな作風となっていましたが、今回のアルバムはアコギやピアノを用いてしんみり聴かせるアコースティックな作風になっています。ただ一方で、「Goodbye Evergreen」では途中からサイケなサウンドに展開したり、タイトルチューンの「Javelin (To Have And To Hold)」でも後半にはエレクトロサウンドが顔を見せたりと、単なるフォーキーな作品とは一線を画するユニークな構成になっているのが彼らしい感じ。フォーキーな作風とサイケな作風の様々なパターンでアルバムを作ってくる彼ですが、今回の作品はフォーキーな作風をメインに、サイケな要素がちょっとした隠し味的な味付けとなっている、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Planetarium(Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister)
The Ascension
A Beginner’s Mind(Sufjan Stevens&Angelo De Augustine)

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2023年11月 6日 (月)

バラエティー富んだサウンドに遊び心も感じられる歌詞が魅力

Title:Almost there
Musician:GRAPEVINE

約2年4か月ぶりとなるGRAPEVINEのニューアルバム。デビューから既に25年以上を経過したベテランバンドの彼ら。基本的にロックを主軸としながらもR&Bやソウルミュージックの要素を強く取り込んだ音楽性でグルーヴィーに聴かせるサウンドが大きな魅力のバンドで、デビュー当初からその方向性に大きな違いはないものの、アルバム毎に微妙にその方向性を変化させることによって、常に現役感あふれる作品を作り続けてきました。

デビュー以来、コンスタントにアルバムをリリースしてきているものの、毎作安定感ある傑作をリリースし続けているのも大きな特徴。そんな中でも前作「新しい果実」はバラエティー富んだ作風が魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。今回の作品で言えば、比較的、ロック色の強いアルバムだったように感じます。そしてその一方、前作同様、バラエティー富んだ音楽性も大きな特徴となっていました。

今回のアルバムにしても、ヘヴィーな「Ub(You bet on it)」からスタートし、リズムマシーンを取り入れた「雀の子」、爽快路線の「それは永遠」、軽快でポップなギターロックチューン「Ready to get started?」、さらには80年代を彷彿とさせるムーディーなダンスチューン「実はもう熟れ」へと続いていきます。

後半は正統派とも言えるオルタナ系ギターロックチューン「Goodbye,Annie」や、ノイジーなギターサウンドを前面に押し出した「Ophelia」などギターロック系の楽曲が並んでおり、アルバム全体としてロックな作風という印象を受ける大きな要因となっています。ただ最後はムーディーでメロウな、タイトルそのまま「SEX」という曲で締めくくり。バラエティー富んだこのアルバムらしい締めくくりとなっています。

加えて今回のアルバムでユニークだったのは歌詞。毎回、深読みの出来る文学性の高い歌詞の世界もGRAPEVINEの大きな魅力なのですが、今回のアルバムに関しては比較的わかりやすい歌詞が多かったような印象を受けます。1曲目「Ub(You bet on it)」では

「新しい果実には当然
熟す時が訪れる」
(「Ub(You bet on it)」より 作詞 田中和将)

と、前作のタイトルからの続きをイメージするようなフレーズが登場。「雀の子」ではコテコテな大阪弁を取り入れた歌詞がユニーク。競馬ですったおっちゃんの描写も悲哀たっぷりでユーモラスかつ独特な作風になっていました。また「Ready to get started?」はうってかわって比較的ストレートな前向きの歌詞が特徴的ですし、さらに遊び心があるのが「実はもう熟れ」で、こちら中森明菜の「ミ・アモーレ」をモチーフにした曲(タイトルも、読みは「みはもううれ」ですね)。内容も熟年期の夫婦を情熱的な「ミ・アモーレ」の歌詞のパロディー的に描いており、こちらも非常にユニークな歌詞となっています。

後半の「アマテラス」と「Goodbye,Annie」は社会派な歌詞が特徴的。どちらも今の日本を皮肉的な視点でとらえた歌詞になっており、若干、賛否両論が起こりそうな部分はありつつもユーモラスさも感じされる歌詞は耳を惹きます。ラストのストレートなタイトル「SEX」では、タイトル通りの愛の歌が歌われる中、最近話題の性の多様性を示すキーワードである"LGBTQQIAAPPO2S"というワードも登場。意図的に愛の多様性を歌っているのではないものの、広く愛について歌い上げている点も彼ららしさを感じさせます。

そんな感じで、遊び心のある歌詞も含めて非常に印象的でバラエティーに富んだ今回のアルバム。正直、出来という点では前作の方がよかったかな、とは思うのですが、今回のアルバムも、いつもクオリティーの高い作品を作り続ける彼ららしい傑作アルバムに仕上がっていました。さすがの一言といった感じの安定のアルバム。歌詞にサウンドに、その実力を魅了された1枚でした。

評価:★★★★★

GRAPEVINE 過去の作品
TWANGS
MALPASO(長田進withGRAPEVINE)
真昼のストレンジランド
MISOGI EP
Best of GRAPEVINE
愚かな者の語ること
Burning Tree
BABEL,BABEL
ROADSIDE PROPHET
ALL THE LIGHT
新しい果実


ほかに聴いたアルバム

HIgh Tide/Radio Caroline

元GYOGUN REND'SのPATCHが、元ミッシェル・ガン・エレファントのウエノコウジ、元THE NEATBEASTの楠部真也と組んだガレージロックバンド。2009年に活動を休止させたものの、2014年に活動再開。ただし、その後はアルバムのリリースはなかったのですが、このほど結成20周年を記念し、過去のコンピレーションアルバムへの参加曲やスタジオライブ音源、さらには新曲1曲を加えたレア音源集をリリースしました。

基本的にはシンプルなガレージロックや、曲によってはパンクロック寄りの曲がメイン。ある意味、かなり懐かしさを覚えるような曲もあり、目新しさはないものの、王道ともいえるガレージロックやパンクロックが心地よいアルバムに仕上がっています。これで本格的に活動再開するのでしょうか。次は久々のオリジナルアルバムに期待したいところです。

評価:★★★★★

Radio Caroline 過去の作品
DEATH or GLORY
Portrait~THE BEST OF Radio Caroline~

ひかり/川本真琴

約4年ぶり、川本真琴単独名義では5枚目となるニューアルバム。本作ではドイツのオルタナ系ブラスバンド、ホッホツァイツカペレと、テニスコーツの植野隆司が全面的に参加したアルバムに。そのため、全面的にホーンセッションが導入され、そこにストリングスも加わり、全体的に分厚く、そして暖かみを感じるサウンドが特徴。そんなサウンドを背景とした、ゆっくりと聴かせる川本真琴のメロやボーカルもピッタリとマッチしています。率直なところ、メロディーラインとしてのインパクトはさほど強くなく、ここ最近のアルバムと同様、あえてフックの効いたフレーズを避けようとしている印象すら受けてしまうのですが、しっかりと歌を聴かせようとする彼女の意思と、そして暖かさの感じられるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

川本真琴 過去の作品
音楽の世界へようこそ(川本真琴feat.TIGAR FAKE FUR)
The Complete Single Collection 1996~2001
願いがかわるまでに
川本真琴withゴロニャンず(川本真琴withゴロニャンず)
ふとしたことです
新しい友達

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2023年11月 5日 (日)

くすんだ味わいあるボーカルが大きな魅力

Title:falling or flying
Musician:Jorja Smith

イギリスの女性シンガーソングライター、(日本人にとってはちょっと読みにくい名前ですが)ジョルジャ・スミスのニューアルバム。本作が2枚目となるアルバムですが、2019年のブリッド・アワーズでは「British Female Solo Artist」を獲得しているほか、同じくグラミー賞ではベストニューアーティストにノミネートされるなど、高い評価を受けています。

楽曲的にはメロウなソウルチューンを聴かせてくれる彼女。トライバルなリズムに不気味な雰囲気を醸し出している「Try Me」からスタート。男性ラッパーJ Husとのコラボで哀愁たっぷりの歌声を聴かせてくれる「Feelings」や、メランコリックに歌い上げるタイトルチューンの「Falling or Flying」、ギターサウンドで哀愁感たっぷりにスモーキーに歌い上げる「Lately」など、ムーディーで雰囲気たっぷりのメランコリックなソウルチューンが大きな魅力となっています。

ただ一方では「GO GO GO」のような、むしろギターロック寄りのポップチューンがあったりと、全体的に雑食性も感じさせるのが、イギリスのソウルシーンらしさを感じさせますし、彼女の幅広い音楽性も感じさせます。そんな中でもインパクトがあるのが先行シングルにもなっている「Little Things」で、軽快でリズミカルなパーカッションのリズムも耳を惹く、UKガラージなナンバー。思いっきりクラブ寄りに振り切ったナンバーになっており、アルバムの中でも大きなインパクトとなっています。

また、そんなバラエティー富んだ音楽性の中で、アルバム全体をまとめあげているのが彼女のボーカルでしょう。くすんだ感じで味のある、ちょっと大人なビターな雰囲気のあるそのボーカルは、ムーディーな彼女の曲にもピッタリとマッチ。アルバム全体をジョルジャ・スミスの色に染め上げている大きな要素となっています。この彼女のボーカルの魅力も、本作の大きな要素となっている点も間違いないでしょう。

ちなみに2018年のサマーソニックに既に来日済ということですが、日本でも今後、さらに注目が集まりそう。メランコリックなメロディーラインはいい意味でインパクトもあり、日本人にとっても聴きやすさを感じる点も大きな魅力でした。まだまだこれからの活躍が期待できそうなシンガーソングライター。その魅力的な歌声に強くひかれた1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Again/Oneohtrix Point Never

ニューヨークで活動をするミュージシャン、ダニエル・ロパティンのソロプロジェクトによる約3年ぶりとなるアルバム。エレクトロサウンドを中心に、時にはストリングスやホーンも取り入れたバラエティーある音像で、サイケでアバンギャルドな音の世界を作り出している実験性も高い音楽が魅力的。ただ、楽曲自体にはどこか人なつっこいポップな要素も強く、意外と聴きやすいという印象も受けます。前作同様、実験性も高い音楽だったのですが、一方では前作に比べるといい意味での取っつきやすさを感じる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of
Magic Oneohtrix Point Never

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2023年11月 4日 (土)

「地味」な印象もあるけれど

Title:The Land Is Inhospitable and So Are We
Musician:Mitski

Mitsuki

現在、最も注目を集める女性シンガーソングライターの一人、ミツキ・ミヤワキのソロプロジェクト、Mitskiの7枚目となるニューアルバム。前々作「Be the cowboy」で大きな注目を集め、前作「Laurel Hell」は全米チャートで5位にランクインし、一気にブレイク。約2年半ぶりとなる本作は、チャートアクション的には全米チャート12位と少々ダウンしてしまいましたが、イギリスでは自己最高位の4位を記録。

私自身も彼女のアルバムを聴くのはこれが3作目。ただ、今回のアルバムを聴いて、まず感じてしまったのは「非常に地味なアルバム」という印象でした。いままでの彼女のアルバムは、エレクトロサウンドやギターサウンドを入れつつ、雑食性の高いサウンドにポップなメロディーが印象的なミュージシャンでした。ただ、今回のアルバムは、いままでのアルバムとはうって変わって、全体的にアコースティックなサウンドが主体となるアルバムに仕上がっていました。

まずアルバムの冒頭を飾る「Bug Like an Angel」は、静かなギターの弾き語りからスタートします。途中、ピアノやコーラスラインが入って、重厚なサウンドを聴かせる部分もありますが、全体的にアコースティックな味付けに。続く「Buffalo Replaced」は力強いバンドサウンドは入るのですが、こちらもダウナーなメロとボーカルの落ち着いた曲調に。「Heaven」もゆっくりとカントリー風の曲調ですし、「I Don't Like My Mind」も同様に、牧歌的な作風が印象的な曲となっています。

その後もオーケストラアレンジの「When Memories Show」や、分厚いギターノイズが埋め尽くす「I Love Me After You」などダイナミックな曲も垣間見れるものの、基本的にはアコースティックなサウンド主体のダウナーな作品がメイン。いままでの作品に比べると、率直なところ「地味」と感じてしまいました。

とはいうものの、メランコリックで荘厳さも感じさせる歌声をゆっくりと聴かせる楽曲のスタイルは以前のアルバムと同様。先行シングルとなった「My Love Mine All Mine」のように、フォーキーな作風でゆっくりと心に染み入るような美メロも聴かせてくれており、地味な作風ゆえに最初は正直ピンとこない部分もあったのですが、聴き進めるうちに、以前のアルバム同様の魅力的な傑作であることに気が付かされました。

ちなみにこのアルバム、本人曰く「最もアメリカ的なアルバム」と述べているようですが、カントリーな作風といい、アメリカの田舎を彷彿とさせるような作品といった感じになるのでしょうか。どこか日本人にとっても郷愁感を覚えるような作品になっていた点も大きな魅力のように感じます。

ご存じのように、三重県出身の日系2世の彼女。注目を集めて活躍を続けるのはうれしい限り。この作品でさらにその魅力と実力を感じることが出来ました。これからの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

Mitski 過去の作品
Be the Cowboy
LAUREL HILL


ほかに聴いたアルバム

Isn't It Now?/Animal Collective

アメリカのインディーロックバンド、Animal Collectiveの約1年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。このアルバムに収録されている曲は、前作「Time Skiffs」と同時期に作成されたそうで、このうち、コロナ禍でリモートでも録音しやすいような曲は前作に収録され、バンドサウンドが重視される曲は、コロナ禍も事実上終わった後に録音された本作に収録されたとか。前作はサイケな色合いが薄くなってポップ色が濃くなったのは、そういう理由があったのでしょう。一方本作は、前作と比べるとサイケな色合いが強く、作風もよりダイナミックになった感じも。とはいえ、いままでの彼らの作品同様、ドリーミーなポップチューンという主軸は変りませんので、文句なく楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。まあ、こちらの方が前作以上にAnimal Collectiveらしいと言えるかもしれませんが。

評価:★★★★★

Animal Collective 過去の作品
Merriweather Post Pavilion
CENTIPEDE HZ
Painting With
The Paniters EP
Tangerine Reef
Time Skiffs

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2023年11月 3日 (金)

外部プロデューサーを起用した意欲作

Title:Cousin
Musician:Wilco

アメリカのインディーロックバンド、Wilcoの13枚目となるアルバム。デビュー以来、精力的な活動が続いており、アルバムも数年に1枚のペースでコンスタントなリリースが続いています。本作も前作「Crule Country」から、わずか約1年半というインターバルを経てのリリース。バンドとしての精力的な活動ぶりがうかがえます。

今回のアルバムは「Cousin」(=いとこ)というタイトルですが、このタイトルについてボーカルのジェフ・トゥイーディーは「僕は世界のいとこなんだ。血のつながりは感じないけど、結婚して、いとこになったのかもしれない」と語っています。ウム、よくわかりませんがそれだけ世界とのつながりを意識してつくられた作品、ということなのでしょうか。そんな「つながり」の一環なのかよくわかりませんが、今回のアルバムでは外部プロデューサーとしてウェールズの女性ミュージシャン、Cate Le Bonを起用した点も話題となっています。

前作「Crule Country」はアコースティックなサウンドとポップなメロディーを主軸としつつ、時折入るバンドサウンドやサイケな音作りがユニークな作品となっていました。このアコースティックテイスト作風とポップなメロディーが主軸という大きな枠組みの点においては今回のアルバムも以前と変わらずWilcoらしさを感じます。ただ本作は、以前の作品よりもよりバンドサウンドの色合いが強くなり、サウンドメイキングの点でも凝っている作風に仕上がっていました。

1曲目「Infinite Surprise」から、いきなりノイジーなギターと力強いドラムのビートからスタートし、ちょっと不穏な雰囲気のするギターロックの楽曲となっていますし、中盤の「Sunlight Ends」なども幻想的な雰囲気を感じさせるサウンドで不思議な音像を作り出しています。タイトルチューンである「Cousin」もポップなメロが流れるものの力強いバンドサウンドを聴かせる楽曲となっていますし、最後を締めくくる「Meant To Be」もスケール感を覚える爽やかなバンドサウンドの流れるポップチューンに仕上げています。

もちろん、アコースティックなアレンジを施された美しい歌モノのポップチューンも健在。冒頭の「Infinite Surprise」に続く「Ten Dead」はピアノ弾き語りで美しく聴かせる歌モノのポップスですし、「Evicted」もアコギを軽快に聴かせる爽やかなギタポチューン。アルバムを締めくくる終盤の「Pittsburgh」「Soldier Child」も、いずれもアコギで聴かせるフォーキーなポップチューンとなっていました。

外部プロデューサーを起用したことによって、音のバリエーションがより増えて、Wilcoのサウンドの領域がより広がったといった感じでしょうか。もちろん、いままでのWilcoらしさも健在。デビューから30年近いベテランバンドの彼らですが、その精力的な活動ぶりには感心してしまいます。そんなWilcoの魅力を強く感じさせてくれる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

WILCO 過去の作品
Wilco(This Album)
THE WHOLE LOVE
Star Wars
Schmilco
Ode To Joy
Crule Country

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2023年11月 2日 (木)

K-POPが上位に並ぶ中、3位に食い込んだのは・・・

今週のHot Albums

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今週はまた、K-POPアイドルグループが上位に並んでいます。

まず1位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEENのミニアルバム「SEVENTEENTH HEAVEN」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上45万8千枚を獲得し、1位初登場。直近作は「SEVENTEEN JAPAN BEST ALBUM『ALWAYS YOURS』」で、同作の初動51万1千枚(1位)からダウン。ミニアルバムとしての前作「FML」の初動55万1千枚(1位)からもダウンしています。

2位は同じく韓国のアイドルグループStary Kids「Social Path (feat. LiSA)/Super Bowl -Japanese ver.-」が先週の58位からランクアップ。5週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。特にCD販売数が40位から2位に大幅アップ。オリコンでも今週6万7千枚を売り上げて、2位にランクアップしています。東京ドームでのライブが先日行われたようですが、その影響でしょうか。

そんなK-POPアイドル勢に対して3位に食い込んできたのがロックバンド、amazarashi。ニューアルバム「永遠市」が3位に初登場です。CD販売数4位、ダウンロード数3位。ただ、オリコンでは初動売上1万枚で7位に留まっており、ちょっとBillboardの結果とは差が出ています。前作「七号線ロストボーイズ」の初動1万2千枚(4位)からはダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはやはりK-POP。3人組バンドCNBLUE「PLEASURES」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数10位。メンバーの兵役や脱退などを経て、約6年ぶりとなるニューアルバム。オリコンでは初動売上1万2千枚で3位初登場。直近作はベストアルバム「Best of CNBLUE / OUR BOOK [2011 - 2018] 」で、同作の初動1万9千枚(6位)よりダウン。オリジナルアルバムとしての前作「STAY GOLD」の初動2万8千枚(3位)からもダウンしています。

8位には「さだまさしデビュー50周年記念トリビュート みんなのさだ」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数20位。タイトル通りのトリビュートアルバムで、ゆず、槇原敬之、福山雅治、MISIAのような大物から、折坂悠太、MOROHA、T字路sなどといったミュージシャンまで幅広く参加しています。オリコンでは初動売上7千枚で10位初登場。

最後、10位にはindigo la End「哀愁演劇」がランクイン。CD販売数11位、ダウンロード数16位。ゲスの極み乙女の川谷絵音の別バンド・・・というよりも、どちらかというとこちらが彼の「本籍」なのですが。オリコンでは初動売上5千枚で16位初登場。前作「夜行秘密」の初動6千枚(6位)から若干のダウンとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年11月 1日 (水)

AdoとYOASOBIのトップ争い

今週のHot100

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AdoとYOASOBIがトップ争いを繰り広げています。

Ado_show

今週1位はAdo「唱」。先週の2位からワンランクアップで、2週ぶりの1位返り咲きとなりました。ストリーミング数は6週連続の1位、YouTube再生回数も4週連続の1位、ダウンロード数のみ1位から2位に若干のダウンとなっています。これで8週連続のベスト10ヒットに。1位獲得は通算5週目、ベスト3ヒットは7週連続となっています。

2位はYOASOBI「アイドル」が3位からワンランクアップ。ただし、ストリーミング数は6週連続、YouTube再生回数は3週連続の2位。ダウンロード数は10位から11位にダウン。さらに今週は18週連続で1位をキープしてきたカラオケ歌唱回数が1位から2位にダウンしています。ちなみにYOASOBIは「勇者」もワンランクダウンながらも5位をキープ。今週も2曲同時ランクインとなっています。

3位は初登場。WEST.「絶体絶命」。旧ジャニーズ系アイドルグループで「ジャニーズWEST」を名乗っていましたが、WEST.名義へ変更を発表。こちらはCDリリースは旧名義の「ジャニーズWEST」となっていますが、ビルボード上の表記は「WEST.」と改名後の名前を使っています(ちなみにオリコンはジャニーズWEST名義)。CD販売数で1位を獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上29万9千枚で1位初登場。前作「しあわせの花」の初動21万6千枚(1位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位にモーニング娘。'23「すっごいFEVER!」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数12位。オリコンでは初動売上10万4千枚で2位初登場。前作「Swing Swing Paradise」の初動9万8千枚(1位)よりアップしています。

今週の初登場曲は1曲のみ。続いてはロングヒットですが、まずKing Gnu「SPECIALZ」が先週から変わらず6位をキープ。ストリーミング数は3週連続の3位、YouTube再生回数も2週連続の5位、ダウンロード数も7位から5位にアップ。これで9週連続のベスト10ヒット。なにげに根強い人気を見せています。

また、キタニタツヤ「青のすみか」は8位から9位にダウン。ダウンロード数は14位から20位、YouTube再生回数も10位から14位にダウンしていますが、ストリーミング数はここに来て7位から6位に若干アップしています。これで17週連続のベスト10ヒット。ただし、後がなくなってきました。

さて、今週のベスト10ヒットは以上。なんと今週、今年の1月11日付チャートから、実に43週にわたってベスト10をキープしてきたVaundy「怪獣の花唄」が11位にランクダウン。ベスト10落ちとなっています。最高位は2位で1位に届かず、ベスト3入りもわずか2週のみながらも、ベスト10下位で驚異的な粘り強さを見せてきましたが、ついに今週、ベスト10陥落となってしまいました。ただし、ストリーミング数は先週と変わらず9位をキープしているほか、今週、カラオケ歌唱回数が19週ぶりの1位返り咲きを果たしており、来週以降のベスト10返り咲きも可能性がありそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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