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2023年10月17日 (火)

わずか5か月での新作

Title:Laugh Track
Musician:The National

4月にリリースした前作「First Two Pages of Frankenstein」からわずか約5か月。USインディーバンドの雄とも言えるThe Nationalの新作が早くもリリースされました。ただ、今回のアルバム、ジャケット自体、前作とほぼ同じようなジャケット・・・というよりも、こちらのジャケットを加工したのが前作のジャケット写真と思われるような写真を使用しています。実際、今回のアルバムは前作「First Two Pages of Frankenstein」の時のセッションで作られた作品が元となっているとか。そういう意味では前作とは「兄弟」のような立ち位置のアルバムと言えるかもしれません。

実際、楽曲の方向性としては前作と同じような作風の曲が並んでいます。前作ではピアノやストリングスを使いメランコリックに聴かせる一方、時折入るダイナミックなバンドサウンドとの対比が印象に残るような作品でしたが、今回のアルバムも同様、ピアノやストリングスを用いたメランコリックな優しいメロディーを聴かせつつ、一方ではダイナミックなバンドサウンドが印象に残る作風になっていました。

例えば「Turn off the House」など、ピアノやエレクトロサウンドを用いてメランコリックにかつドリーミーに聴かせつつ、ドラムの力強いリズムにダイナミック作品になっています。また「Space Invador」などもピアノも入ってメランコリックに聴かせつつ、バンドサウンドを加えた分厚いサウンドでダイナミックに聴かせるナンバーに仕上がっています。後半の「Crumble」もブルージーなギターを入れつつ、哀愁感たっぷりに聴かせるブルースロックのナンバーに仕上がっています。

ただ、全体的には前作以上にメランコリックで、かつダウナーな作品が目立ったのが今回の作品。前作と同じセッションで収録されつつも、前作には収録されなかった曲、ということもあって、前作よりも地味な作品が多かったといった感じでしょうか。ちょっとインパクトという面では一歩下がってしまっている点は否めませんでした。

もっとも、とはいえ美しいメロディーラインが印象的なThe Nationalの楽曲。インパクトは弱めでも、聴いているうちに味が出てくるような、そんな作品が並びます。特にBon Iverが参加した「Weird Goodbyes」などは、Bon Iverのボーカルも印象的な、聴いていて胸がキュンとなりそうな切ない歌が魅力的な楽曲。前作にも参加したPhoebe Bridgersも参加した、タイトルチューンの「Laugh Track」もフォーキーな作風の、切なくメロディアスな歌が強く印象に残る作品に。その他にも決して派手さはないものの、メランコリックなメロが魅力的な歌が並んでおり、The Nationalの魅力を存分に味わえるような作品が並んでいました。

確かに名曲揃いで、ちょっと地味な感はあるものの、このまま埋もれておくには惜しすぎる作品ばかり。そういう意味で前作からわずか5か月でニューアルバムをリリースしてきた点には納得がいきます。これだけの傑作を続けてリリースしてくるあたりにも、バンドとして脂がのっているような印象も受ける彼ら。その魅力を存分に味わえた作品でした。

評価:★★★★★

The National 過去の作品
Sleep Well Beast
I Am Easy To Find
First Two Pages of Frankenstein

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