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2023年10月20日 (金)

「日本最古のロックバンド」のよるベストアルバム

Title:50th Anniversary The Very Best of SENTIMENTAL CITY ROMANCE
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス

1973年に結成され、その後、「1度も解散していない日本最古のロックバンド」とされるセンチメンタル・シティ・ロマンス。まあ「日本最古のロックバンド」ということ自体は、誰も具体的に検証した訳ではないので本当かどうか微妙ですが、非常に長寿なロックバンドであることは間違いありません。今年はそんな彼らの結成50周年。本作は、そんな彼らの50年の歴史を振り返る、メンバーが楽曲をセレクトしたオールタイムベストとなります。

彼らについては決して詳しい訳ではなく、2011年にリリースされた現時点での最新アルバムを聴いたことある程度。彼らの楽曲をまとめて聴いたのは今回がはじめてなのですが、長い間活動を続け、多くのリスナーの支持を受けていることも納得の、彼らの実力を強く感じさせるベストアルバムになっていました。

特に今回のベストアルバムでは、彼らの楽曲はほぼ発表順に並べられており、彼らの歩みを知ることの出来る構成になっています。ユニークなのは、デビュー以降は彼らなりに音楽的な模索を続けていた点。デビューシングル「うちわもめ」はまずフォークロックの様相の強い作品になっていますが、2枚目のシングルに収録されている「あの娘の窓灯り」はブルージーな作風に。「マンボ・ジャパン」はタイトル通り、ラテン風なパーカッションが特徴的な楽曲となっています。

ただ、比較的、早い時点の作品から特徴的なのは、ウェストコーストサウンドをはじめとしたアメリカのロックからの影響。「U.S.タイムマシーン」などはタイトルからしていかにもアメリカを意識した作品になっていますし、「ハイウェイ・ソング」などもカントリーからの影響が顕著な作品。

このような彼らの音楽性が花開いたのが、ちょうどDisc1の終盤の頃のように感じます。「カモンベイブ」のようにサザンロックからの影響が顕著な洋楽テイストが強い作品が並んでおり、非常にクオリティーの高い作品が並びます。一方で「風景」のような和風な郷愁感を覚える作品もあったりして、洋楽的なテイストを主軸としつつ、和風な作風も加味した、いい意味で日本のロックバンドとしての特質を生かしたような名曲が並んでいました。

また、彼らのもうひとつ大きな特徴なのが名古屋を拠点として活動を続けてきた点でしょう。「うちわもめ」など思いっきり歌詞の中に名古屋弁を入れてきますし、名古屋近郊の著名な海水浴場の名前をタイトルにつけた「内海ラブ」などという曲もあります。博多出身のバンドを「めんたいロック」などを称することがありますが、ロックバンドでこれだけ地域性を押し出すのも珍しい感じもします。

一方、Disc2になると80年代テイストを取り入れた作品が目立ってきます。ここらへん、時代に応じて変化していった点も彼らの実力とも言えるでしょう。ただ、フュージョンのサウンドを取り入れたこの頃の作品は、シティポップの先駆け的な魅力はあるものの、時代を感じさせる曲が多く、率直なところ、今聴くと、古臭く感じてしまう部分も事実。「ルーシー」のような、TEENAGE FANCLUBを彷彿とさせるような爽やかなギターポップのような魅力的な曲もあるのですが、ちょっと失速気味といった印象も。さらに時代を下ると、全盛期は絶妙なバランスを保っていた洋楽的な部分と歌謡曲的な部分の両立が、悪い意味で歌謡曲的な部分に偏ってしまい、よくありがちな「マンネリ気味のベテランバンド」的になってしまっているのは残念にも感じました。

残念ながら最初から最後まで名曲揃い・・・とまではいかないものの、特に全盛期に関しては、間違いなく日本のポップ史上に残りうるバンドだった実力を感じさせます。バンド歴が長いという点が実力に直結する訳ではないのですが、それだけ長く、ファンを魅了してきた点を加味すると、やはりその長いバンド歴に裏付けされたキャリアは伊達じゃない、という印象を受けるベストアルバムでした。残念ながらメインボーカルの中野督夫はおととしに逝去してしまいましたが、残ったメンバーで活動は続けている模様。「日本最古のロックバンド」の記録はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

センチメンタル・シティ・ロマンス 過去の作品
やっとかめ


ほかに聴いたアルバム

GUITARHYTHM Ⅶ/布袋寅泰

布袋寅泰のライフワークともなっている「GUITARHYTHM」シリーズの第7弾。いきなりオーケストラアレンジの曲からスタートするなど、タイトルとは裏腹に、ギター色が薄いのか、と思いきや、その後はバリバリのギターサウンドを聴かせてくれます。ただ、基本的にオルタナ寄りの曲があったり、ハードロックの曲があったり、エレクトロを取り入れたり、フュージョン風の曲があったりと、ギターと一言で言ってもその音楽性の広さはさすがと言った感じ。しかし一方で、メロディーラインがどうもJ-POP路線に走ってしまっているあたりは、ちょっと陳腐な部分もあったりして、残念な感じも・・・。

評価:★★★★

布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-
Paradox
GUITARHYTHM VI
Soul to Soul
Still Dreamin'

One for the show/竹原ピストル

全編弾き語りの竹原ピストルによるライブアルバム。全57曲3時間半、CDにして3枚組というボリューミーな内容ながらも、弾き語りということもあり、アコギ一本で聴かせるその歌は、とにかく歌詞が突き刺さってくるような内容。それだけに、これだけボリューミーな内容ながらも、意外とダレることなく最後まで一気に聴き切れるようなアルバムになっていました。ただ、聴き終わった後はどっぷりと疲れますが・・・。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT
GOOD LUCK TRACK
It's my Life
STILL GOING ON
悄気る街、⾆打ちのように歌がある。

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