« 原点回帰のアルバム | トップページ | 良くも悪くも職人的だが、時折見せるコアな部分も。 »

2023年10月 7日 (土)

35年の時を超えて

Title:Sweet Love Songs+
Musician:加藤いづみ

1991年にデビュー。90年代のガールズポップムーブメントのミュージシャンの一人として人気を博した加藤いづみ。現在でも活動を続けている彼女ですが、1993年にリリースされた彼女の最大のヒット作「Sweet Love Songs」が、リリース35周年を記念してリマスターされたのが本作。リアルタイムでも聴いていた本作ですが、懐かしさもあり久々に聴いてみました。

35年も前のアルバムになるのですが、今回久々に聴いてみて感じたのは、今聴いても、全く違和感がなく聴けるアルバムだった、という点でした。エバーグリーンな作品と言えばその通りで、清涼感ありキュートさを感じる彼女のボーカルは今聴いてもやはり大きな魅力。彼女の楽曲のプロデュースも手掛けてた高橋研の書く、シンプルながらも暖かみのあるメロディーも非常に魅力的。「エバーグリーン」という表現もピッタリくるポップアルバムになっています。

ただ、それ以上にこのアルバムが時代を超えて魅力を感じるのは、アコースティック主体のサウンドメイキングに依るところが大きいようにも感じます。得てして、メロディーライン以上にサウンドというのは時代を感じてしまいます。本作でも典型的なのが2曲目の「星空のジェットプレイン」と3曲目の「おちょこの傘につかまって」で、「おちょこの傘」という表現自体も時代を感じてしまうのですが、途中に入るフュージョン風のサックスが完全に90年代風。聴いていて時代を感じてしまいます。

一方、このアルバムで主体になるピアノやアコースティックギターのサウンドは時代を超えて変化がありません。本作にも収録されており、彼女の代表曲とも言える「好きになって、よかった」はアコギを爪弾きつつ、ストリングスが入る音色は、90年代特有のサウンドではなく、2020年代の今となっても変わることがありません。それだけにサウンドは時代を超えても違和感なく、35年経った今でも、時代を考えずに聴くことが出来ると思います。

他にもラテン風なリズムを入れつつ、キュートなガールズポップな「シャンプー」やラテンパーカッションとギターで、エキゾチックでちょっと不思議な歌詞も魅力的な「オットーの動物園」、加藤いづみ本人が作曲を手掛けた爽快なポップチューン「みんなパレードのせい」、エキゾチックな雰囲気をスケール感をもって聴かせる「If-2つの想い-」などバリエーションを持たせつつ、アコースティック主体のサウンドと彼女の清涼感あるキュートな歌声を軸に、最後までシンプルなポップソングを聴かせてくれる魅力的なアルバムになっています。

ラストは、彼女の代表曲「好きになって、よかった 2023」として、再録音版を収録。30年以上経ても色あせない歌声を聴かせてくれています。原曲に比べると、ストリングスのサウンドをより強調して、スケール感を出した構成になっており、個人的にはシンプルだった原曲の方がよかったかも、とは思うのですが・・・それでも新録は新録で魅力的な曲に仕上がっていました。

今でも変わらない加藤いづみの魅力をあらためて認識したアルバム。リアルタイムでも聴いていた作品なだけに、懐かしさも感じつつ、そのような思い出補正がなくても十分お勧めできる傑作だと思います。是非、今の世代の方にも聴いてほしい作品です。

評価:★★★★★

加藤いづみ 過去の作品
MUSIC


ほかに聴いたアルバム

斉藤和義 弾き語りツアー「十二月~2022」Live at 日本武道館 2022.12.21/斉藤和義

ツアー毎に恒例の斉藤和義のライブアルバム。今回は2022年10月から行われた弾き語りライブツアー「十二月~2022」のうち、2022年12月21日に開催された日本武道館公演の模様を収録したライブアルバム。基本的にアコースティックギターによる弾き語りのステージで、先日リリースされた「ROCK’N ROLL Recording Session at Victor Studio 301」が斉藤和義のロックな側面にスポットをあてた作品とすれば、ベスト的な選曲となった本作は、ある意味、同作と比べて斉藤和義の別の側面にスポットをあてた作品と言えるかもしれません。ただ、歌詞と歌が主軸となったこのアルバムの方が個人的に好みだったことを考えると、斉藤和義の書くメロディーと、そしてなによりも歌詞に自分は惹かれていたんだな、ということを再認識しました。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020
55 STONES
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2020 "202020" 幻のセットリストで2日間開催!~万事休すも起死回生~ Live at 中野サンプラザホール 2021.4.28
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31
PINEAPPLE
ROCK’N ROLL Recording Session at Victor Studio 301

世界/クレイジーケンバンド

ほぼ毎年のようにアルバムをリリースし続け、活発な活動を続けるクレイジーケンバンド。今回も前作から1年というインターバルでのニューアルバムリリースとなりました。全体的にホーンセッションも入りつつ、メロウなソウルが展開される作品。ただ、1曲1曲のクオリティーは間違いなく高いものの、良くも悪くもいつものクレイジーケンバンドらしい作品といった印象。ちょっとマンネリさを感じてしまい、印象が薄く感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW
好きなんだよ
樹影

|

« 原点回帰のアルバム | トップページ | 良くも悪くも職人的だが、時折見せるコアな部分も。 »

アルバムレビュー(邦楽)2023年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 原点回帰のアルバム | トップページ | 良くも悪くも職人的だが、時折見せるコアな部分も。 »