今、大注目のフィメールラッパー
Title:Like...?
Musician:Ice Spice
今回紹介するのは、現在、アメリカでもっとも注目されている女性ラッパー、Ice Spice。本作がデビュー作となるLP盤。もともと1月に6曲入りのEP盤としてリリースされたものを7月にデラックスエディションとして全11曲入りとし、曲順も入れ替えて再リリース。今回、少々遅ればせながら、このデラックスエディションを聴いてみました。
彼女はニューヨーク・ブロンクスという、まさにHIP HOPの本場中の本場出身の23歳。アフリカ系アメリカ人の父親とドミニカ人の母親の間に生まれたそうです。ちなみに父親も、もともとアンダーグラウンドシーンで活動していたラッパーだったとか。2021年にシングル曲「Bully Freestyle」でデビューした彼女は徐々に注目を集め、特に本作でも収録された「Munch(Feelin'U)」はあのラッパーのDrakeに絶賛されたそうです。さらに本作では「Princess Diana」であのニッキー・ミナージュをフューチャーしています。
そんな彼女のラップはトラップから発展したドリル・ミュージックというジャンルだそうで、細かいビートが特徴的。もともと犯罪を描写した歌詞が特徴的で、社会問題になったこともあるそうです。ただし、彼女の歌詞は、ドラッグについて綴っているものもあるものの、どちらかというと、この強烈なジャケット写真からも彷彿とさせるような強烈なセクシャリティーを前面に押し出したものが多いものとなっています。
ただ、そういう話も前提としつつ、アルバム全体としてはいい意味でポップと表現できる聴きやすさを感じる内容になっていました。ちょっとケダるさも感じさせるダウナー気味のラップも耳に残るのですが、例えば1曲目の「How High?」など軽快なリズムが聴きやすく、いい意味での「ポップ」さを感じさせる楽曲になっていますし、前述のニッキー・ミナージュをフューチャーした「Princess Diana」も不穏な感じを漂わせつつ、リズミカルなラップがいい意味での聴きやすさを感じさせます。
他にもトライバルなリズムが特徴的な「Deli」は疾走感のあるリズムにインパクトがありますし、「Gangsta Boo」も軽快なリズムとトラックがどこかメロディアスにも感じます。そして注目を集めた「Munch(Feelin'U)」はドリル・ミュージックのビートを前面に押し出したリズミカルなナンバー。急くようなラップがリズムとピッタリとマッチし、聴き手に強い印象を与える作品になっています。
注目のラッパーとはいえ、本作はまだビルボードでは最高位15位に留まっており、本格的なブレイクはまだこれから、といった感じもします。それだけに、アルバムとしてはデビュー間もないミュージシャンらしい勢いも感じさせる内容になっており、今後にも期待できそう。日本でも今後、その名前を聴く機会が増えていきそうな予感もします。間違いなく、注目しておきたいラッパーです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
World Music Radio/Jon Batiste
昨年のグラミー賞では、自身のアルバム「We Are」と映画「ソウルフル・ワールド」の音楽で、11部門にノミネートし、5部門を受賞するという驚異的な結果を残したシンガーソングライター、ジョン・バティステ。その話題作に続く新作は、「すべての音楽はワールドミュージックではないのか?」という彼の本質的な問いに基づくコンセプチャルな作品に。タイトル通り、テーマ性を持ったラジオを聴いているように、レゲエ、ジャズ、R&B、ロック、ソウル、ブルースなど、様々なジャンルを織り込みつつも、しっかりと統一感を持たせた作風になっています。前作で見せた実力は伊達ではないことを証明した新作。バラエティー富んだ作風で最後まで飽きずに楽しめる作品でした。
評価:★★★★★
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