吉井和哉の音楽性がより明確になった2枚目のベスト盤
Title:20
Musician:吉井和哉
ソロデビュー20周年を記念してリリースされた、THE YELLOW MOKEYのボーカリスト、吉井和哉のベストアルバム。今回のアルバムは2013年にリリースされたベストアルバム「18」に続く2作目のベストアルバム。そのため、収録曲としては前回のベストアルバム以降の曲を中心に集めたアルバムとなります。ただ、YOSHII LOVINSON時代の曲も「SWEET CANDY RAIN」「JUST A LITTLE DAY」の2曲を収録。この2曲は前のベストアルバムに収録されていなかったので、今回、あえてピックアップした、ということでしょうか。
吉井和哉、というかTHE YELLOW MONKEYから続く音楽的な特徴として、グラムロックをはじめとする洋楽テイストの強いロックチューンを奏でつつも、メロディーラインには色濃く歌謡曲の要素を感じさせる点が大きなポイントでした。この洋楽テイストのロックを奏でつつも、メロディーラインは歌謡曲的という特徴は、正直なところ、J-POPの中では珍しくありません。むしろありふれている、といってもいいかもしれません。
ただ、えてして多くのJ-POPミュージシャンは、この歌謡曲的な部分に関しては非常に無意識なように感じます。その結果として、洋風のサウンドに対して歌謡曲的なメロがチグハグだったり、あるいはベタなメロディーラインが単調に聴こえたりといった感があり、正直、楽曲としておもしろくない、と感じたことは多々ありました。
そんなJ-POPミュージシャンと吉井和哉の大きな違いは、歌謡曲的であることに彼が自覚的である、という点のように感じます。特に吉井和哉は2014年に歌謡曲のカバーアルバム「ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~」をリリースしています。もともとTHE YELLOW MONKEYの初期から歌謡曲的な部分は大きく注目されていましたが、今回のベストアルバム、そのカバーアルバムリリース後の作品がメインということもあって、より自覚的に歌謡曲的な方向性がはっきりとしたベストアルバムだったようにも感じます。
「みらいのうた」もしんみりメランコリックなメロディーが和風な郷愁感を覚える楽曲になっていますし、ヘヴィーなバンドサウンドが展開される「〇か×か」なども、完全に哀愁感たっぷりのメロディーラインが歌謡曲的。YOSHII LOVINSON時代の収録曲「SWEET CANDY RAIN」も歌謡曲的なメランコリックさがあふれるミディアムチューンナンバーなのですが、それだけに歌謡曲テイストという方向性がより明確になった今回のベストアルバムに収録されたのでしょうか。
ちなみに今回のベストアルバム、「ヨシー・ファンクJr.」からもピンク・レディーの「ウォンテッド(指名手配)」が収録されていますが、これが非常にカッコいい!力強いギターサウンドが刻む、ヘヴィーロックなカバーとなっており、まさに歌謡曲の王道を行くような原曲が、吉井和哉の手により、いい意味での「歌謡ロック」にまとめあげられています。
ある意味、ソロ20年目のベストアルバムということで、吉井和哉の音楽性がより明確になったベストアルバムと言えるのかもしれません。ただ、全曲、THE YELLOW MONKEYでもよかったのでは?とも思ってしまうあたりはちょっと気になってしまいます。再結成後もアルバム1枚しかリリースしていませんし・・・。それはともかく、文句なしに吉井和哉の魅力を認識できるベストアルバム。これからの彼の活躍も非常に楽しみです。
評価:★★★★★
吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL
ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
STARLIGHT
SUPERNOVACATION
ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~
SOUNDTRACK~Beginning&The End~
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