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2023年10月23日 (月)

キュートなポップはどこかJ-POPっぽさも

Title:softscars
Musician:yeule

シンガポール出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動を続けているシンガーソングライター、ナット・チミエルのソロプロジェクトyeuleの3枚目となるニューアルバム。前作「Glitch Princess」ではじめて彼女の作品を聴いたのですが、そのドリーミーなサウンドとキュートなメロディーに一気にはまってしまい、昨年の年間私的ベストアルバムの6位に選ぶほどの傑作になっていました。本作は、その傑作からわずか1年というインターバルでリリースされたニューアルバムとなります。

今回のアルバムも前作同様、ドリーミーなサウンドとキュートなメロディーが魅力的な作風。特にフォーキーなサウンドでメランコリックに聴かせたかと思えば、一転、分厚いエレクトロサウンドやダイナミックなバンドサウンドを取り入れて、アバンギャルドな感触すらある曲風に変化する、バラエティー富んだ作風が特徴的。。例えば「ghosts」は最初、アコースティックなアレンジでフォーキーに聴かせつつ、後半はフォーキーなメロそのままに、ギターのホワイトノイズが埋め尽くされるようなアレンジになっていますし、続く「dazies」はシューゲイザーからの影響を感じさせるノイジーなギターサウンドになっていますし、「software update」もメランコリックなメロをゆっくり聴かせる歌モノながらも、突如、ギターノイズが場面を切り裂くようなアレンジが耳を惹きます。

ほかにも静かなピアノインスト曲「fish in the pool」があったり、エレクトロサウンドでリズミカルな「inferno」があったり、「cyber meat」のような軽快なポップチューンを聴かせるギターロックナンバーがあったりとバラエティー豊か、というよりもポップなメロを軸に、かなり自由度の高い音楽性が特徴的となっています。

ポップであることを主軸に、バラエティー富んだ捉えどころのない音楽性が魅力的とも言える彼女。良く言えば自由度の高い、ちょっと悪く言えば節操のなさを感じさせるのですが、そんな音楽性に、とにかく音を詰め込んだようなサウンドメイキングとポップなメロディーという点は、J-POP的なものを感じます。そもそも彼女の作品からは様々な日本的な要素が見え隠れしており、まずは前作でも紹介しましたが、彼女の名前自体、ファイナルファンタジーXIIIのキャラクターから取られたもの。前作では日本人ラッパーのTohjiが参加していましたが、本作では、前述の「fish in the pool」は岩井俊二監督のアニメ映画「花とアリス殺人事件」に使われた楽曲のカバー。全体的にどこか日本的なものが漂い作風となっています。

そのため、ポップなメロといいサウンドといい、私たち日本人には耳なじみやすいのではないでしょうか。わかりやすいメロディーラインにはいい意味でのベタさも感じますし、個人的には前作に続いて、年間ベスト候補の傑作アルバムに仕上がっていたように思います。本作も高い評価を集めて注目の彼女。日本でももっともっとヒットを飛ばしそうな予感のするアルバムでした。

評価:★★★★★

yeule 過去の作品
Glitch Princess

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