変らぬ魅力的なメロディーライン
Title:Nothing Lasts Forever
Musician:TEENAGE FANCLUB
デビューから30年以上を経た今でも精力的に活動を続けるイギリスのギターポップバンド、TEENAGE FANCLUB。2018年にソングライターの一人、ジェラード・ラヴが脱退を表明。バンドとしての活動が心配されたものの、2021年にはニューアルバム「Endless Arcade」を発表。さらにメンバー脱退がバンドに影響がないことをあえて示すかのように、前作からわずか2年。早くもニューアルバムがリリースされました。
とはいえ、もともとメンバーのうち3人がソングライターとして活動を続けていた彼ら。メインライターの一人が脱退したとはいえ、いまだにソングライターを2人抱えている点が大きな強みで、今回も残ったノーマン・ブレイクとレイモンド・マッギンリーの2人が、ちょうど交互に楽曲を書いている構成となっています。
基本的に楽曲はメロディアスでちょっと切ないギターポップというTEENAGE FANCLUBのいつものスタイルは変わりありません。特に前作と同様、メインライターが2人になったからこそ、2人の違いが際立つような楽曲構成になっています。まずやはり何よりTFCらしいと言えるのは、ノーマン・ブレイクの書いた楽曲群でしょう。暖かみのある優しくも、聴いていてちょっとキュンとなるようなメロディーラインが大きな魅力のノーマンの楽曲は、TEENAGE FANCLUBといってイメージされるような作風になっています。アルバムの冒頭を飾る「Foreign Land」はまさにいかにもTFCらしい作品。ほどよくノイジーなギターサウンドにアコギの爽やかな音色が加わり、暖かみのあるメロディーラインが大きな魅力。ピアノとコーラスラインでメランコリックに聴かせつつ、暖かみのあるメロディーラインが魅力的な「I Left A Light On」もノーマンの作品。アルバム後半の核となっているのもノーマンの作品で「Back To The Light」。暖かくもメロディアスなギターポップチューンが耳に残ります。
一方、ダウナー気味でちょっとひねったメロが魅力的なのがレイモンドの作品。「Tired Of Being Alone」ではギターサウンドにメランコリックなメロディーラインが大きな魅力ですし、ゆっくりとメランコリックなメロディーを聴かせる「Middle Of My Mind」も魅力的。「See The Light」のような優しくメロディアスな曲もしっかりと聴かせてくれており、もちろん彼の作品もTFCらしさを形作る大きな要素である点は間違いないでしょう。
正直なところアルバム全体としての目新しさはありません。大いなるマンネリと言ってもいいかもしれません。ただ、そんな印象を覆すだけの魅力的な美メロが大きな特徴の彼ら。メロディーラインの美しさゆえに、アルバムの最初から最後まで全く飽きることなく、聴くことが出来る傑作アルバムに仕上がっていました。そんな作風とは裏腹に「どんなものもいつかは終わる」という意味のアルバムタイトルがちょっと気になるのですが、ただ、彼らの活動はまだまだ続くものと信じて。この魅力的なメロディーラインに酔いしれたい、そんな1枚でした。
評価:★★★★★
TEENAGE FANCLUB 過去の作品
Shadows
Here
ENDLESS ARCADE
ほかに聴いたアルバム
The Enduring Spirit/Tomb Mold
カナダ出身のデスメタルバンドによる4枚目のアルバム。基本的にダイナミックなバンドサウンドにデス声というスタイルは聴いていて素直にカッコよさを感じますし、そのサウンドはメタリックなサウンドながらも一方でどこか繊細さも感じられて魅力的。ただ一方、曲調的には全部、同じような感じになってしまっている点が若干残念な感じも・・・。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事
- マッドチェスタームーブメントの楽曲を網羅的に収録(2023.12.24)
- 全盛期oasisの充実ぶりを物語る名盤(2023.12.15)
- 荒々しさを感じる初期ライブ盤(2023.12.12)
- 新曲が加わり大幅にボリュームアップ!(2023.12.11)
- 本来の意味での・・・「エモい」アルバム(2023.12.03)
コメント