80年代に一世を風靡したポップスバンドのシングルコレクション
Title:C-C-B THE SINGLE COLLECTION
Musician:C-C-B
1985年にリリースされた「Romanticが止まらない」が大ヒットを記録し一躍ブレイク。その後、1989年の解散まで、わずか4年という期間でしたが、リリースしたシングルは次々とヒットを記録し、ポップスロックバンドとして一世を風靡したC-C-B。今年はデビューから40周年という記念の年ということで、全シングル曲をカップリングを含めて網羅したシングルコレクションがリリースされました。正直なところ、C-C-Bは特にリアルタイムで聴いていたバンド・・・ではないのですが、80年代を代表するポップスロックバンドということでこのシングルコレクションもチェックしてみました。
まず彼らのシングル曲を網羅的に聴いて感じるのは、やはり「Romanticが止まらない」がいろいろな意味で圧倒的だな、ということでした。シンセからはじまるスタートといい、電子ドラムを取り入れたセットといい、80年代という時代に「近未来」的なものを感じます。また、メンバーの髪をカラフルに染めたスタイルもまた、どこか近未来的。日本の経済がどんどん良くなっていた80年代という時代において、彼らの未来的なイメージは時代にピッタリとマッチしたのでしょうし、その「近未来」感はどこか今の時代でも通じる部分があります。
ただ、そんな「近未来」的なイメージとは裏腹に、歌詞とメロディーライン自体は保守的。歌詞はよくありがちな切ない片思いを歌ったラブソングですし、なによりも筒美京平の書くメロディーラインはメランコリックな王道歌謡曲路線。サウンドやバンド自体の近未来的なイメージと、メロディーと歌詞の保守的な歌謡曲路線の微妙にアンマッチ感があるものの、ただ、目新しさを感じさせるルックスやサウンドと、聴きなじみのあるメロディーラインや歌詞という組み合わせだったからこそ、あれだけの大ヒットを記録したのでしょう。そのバランスの見事さは、今聴いても舌を巻いてしまいます。
その後も彼らは1988年にリリースされた「信じていれば」までの計12枚のシングルをベスト10に送り込んでいます。それだけ一世を風靡したグループだったのですが、残念ながら「Romanticが止まらない」を超える曲はその後なかったように思います。また、「Romanticが止まらない」と同じく、松本隆-筒美京平という日本を代表する作詞・作曲家のコンビによるその後のシングル曲は、出来としては申し分ないものの、シングルコレクションを聴いてもC-C-Bの目指す核となる音楽性の方向性が若干ぼやけていたように感じました。
実際、もともとC-C-Bは「和製ビーチボーイズ」を目指していたようで、「Romanticが止まらない」以前のシングルに関しては、まさにビーチボーイズ直系のポップ路線の曲になっていたものの、この路線はあっさり放棄。その後は近未来的な雰囲気のポップス路線を目指していたのですが、音楽的なルーツレスが良くも悪くも歌謡曲的といった感じ。最後の方になって「信じていれば」のような80年代のスタジアムロック風な方向性を感じるさせる曲も目立ちだしたのですが、残念ながら1989年にリリースされた「Love Is Magic」を最後に解散してしまいました。
「Romanticが止まらない」のヒットから解散までわずか4年。昔は、いまよりエンタテイメント界の入れ替わりが激しく、バンドは10年活動してれば長い方、といった感じだったので、驚くほど短い・・・といった感じではないのですが、ただそれでもわずか4年という解散まで比較的短いスパンとなってしまったのは、この音楽性がどこか曖昧だった点も要因だったのではないか、とも感じてしまいました。
ある意味、デジタルサウンドを用いた近未来風なイメージとベタな歌謡曲風の曲調という組み合わせはいかにも80年代的ですし、それだけに時代にマッチして一世を風靡したのでしょう。C-C-B自体はその後何度か、期間限定で再結成されているようですが、メンバー全員がまだ60代前半という若さながらも、メンバーのうち2人が鬼籍に入ってしまっており、残念ながらフルメンバーでの再結成は不可能となってしまいました。リアルタイムで聴いていた方には懐かしさを感じるようなシングルコレクションですので、興味ある方は是非。いろいろな意味で80年代という時代を感じさせるアルバムでした。
評価:★★★★
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