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2023年10月30日 (月)

エド・シーランの魅力満載

Title:Autumn Variations
Musician:Ed Sheeran

本国イギリスのみならず、アメリカや日本でも高い人気を誇り、現在、おそらくもっとも人気のある男性シンガーソングライターの一人とも言えるエド・シーラン。いままでアルバムタイトルを算術記号とする「マスマティックス・プロジェクト」を続けてきましたが(そんなプロジェクトだったんですね・・・)、今年3月にその最後のタイトルとなる「ー」をリリース。そのプロジェクトに終止符を打ちました。しかしそこからわずか6か月、早くも今年2枚目となるニューアルバムがリリース。今回のタイトルは「ルート」でも「コサイン」でもなく、「Autumn Variations」。秋をテーマとした、タイトル通りバリエーションある14曲を収録したアルバムとなっています。

ただ、「バリエーションがある」と言っても、アルバムは基本的にエド・シーランらしい優しくもメランコリックな雰囲気を加味した、シンプルなポップソングが並ぶアルバムになっています。特に、「マスマティックス・プロジェクト」の作品ではエレクトロサウンドを取り入れて今風に仕上げた作品も目立ったのですが、今回のアルバムはあくまでもシンプルに歌を聴かせるポップチューンに注力した作品に仕上がっています。

冒頭を飾る「Magical」はアコギのアルペジオにストリングスで分厚く味付けしたアレンジと、メランコリックなメロディーにコーラスを加えてこれまた分厚く仕上げた歌のマッチの美しさが耳を惹くポップチューン。「Amazing」も爽快なピアノチューンの軽快なポップチューンで、今風な雰囲気を感じさせつつ、基本的にはシンプルでメランコリックなメロを聴かせる彼らしい楽曲に仕上げています。

先行シングルともなっている「American Town」もアコースティックなサウンドをベースにしつつ、軽快で暖かさを感じさせるポップなメロが心地よい楽曲に。アルバムの中で、唯一エレクトロ的な要素が強いのが「Midnight」で、四つ打ちのリズムのこのアルバム唯一のダンスチューン。ただ、楽曲の中ではアコギの音が流れており、フォーキーな歌がアルバムの中での統一感を与えています。

前半もアコースティックテイストで暖かさを感じさせるポップチューンが多かったのですが、その傾向がより顕著になるのが後半。ある意味、アルバムタイトルと相反するようなタイトルの「Spring」はアコギとストリングスでフォーキーに聴かせる楽曲。その後も「Punchline」「When Will Be Alright」とシンプルなアコースティックアレンジのフォーキーな作品が続きます。そして終盤もメランコリックなミディアムチューン「The Day I Was Born」と続き、ラストを飾る「Head>Heels」もリズムマシーンのリズムながらも、ピアノをバックにメランコリックに歌い上げる美しいポップチューンで締めくくっています。

そんな感じで、14曲、確かにバリエーションのある曲ではあるものの、基本的にはシンプルなポップチューンという意味合いでは、むしろバラエティー豊富というよりも、統一感のある内容という印象を受けるアルバムになっています。ただ、それでも最後まで全く飽きることなく、エド・シーランのポップミュージシャンとしての魅力を存分に感じされるアルバムになっていたように感じます。ある意味、変な装飾なしにエド・シーランの魅力をそのままパッケージしたアルバム、と言えるのかもしれません。なぜ彼がこれだけ高い人気を誇るシンガーソングライターなりえているのか、その理由を実感できる傑作でした。

評価:★★★★★

Ed Sheeran 過去の作品
+
÷
No.6 Collaborations Project


ほかに聴いたアルバム

Live in Japan 1973, Live in London 1974/Beck, Bogert & Appice

今年1月に亡くなった、3大ギタリストのひとり、ジェフ・ベックが、バニラ・ファッジで活動していたティム・ボガート、カーマイン・アピスを誘って結成したハードロックバンド、ベック・ボガート&アピス。ただ、この手のバンドの常として活動期間は短く、オリジナルアルバムはわずか1枚のみ。そしてライブアルバムとして1973年の「Live in Japan」がリリースされていました。その「Live in Japan」の発売50周年を記念して、このたび、1974年のロンドン・レインボー・シアター公演の模様を収録した未発表ライブ音源を加えて4枚組アルバムとしてリリースされています。

もともと名盤の誉れ高いアルバムなだけに、その内容については言うまでもないかもしれません。ギターサウンドを中心にダイナミックに聴かせるそのサウンドは迫力満点。というよりも、イメージとして典型的な70年代のハードロックといった印象も強いかもしれません。まあ、「典型的」というよりも、彼らの奏でるようなサウンドがオリジナルであり、模倣するようなグループが多かったため、「70年代の典型例」になっていくのでしょうが。そのカッコいいグルーヴに酔いしれる、文句なしのライブアルバムの名盤です。

評価:★★★★★

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