代表曲を網羅したメモリアルライブをそのまま収録
Title:谷山浩子50周年イヤーフィナーレ ~コンサート2023~
Musician:谷山浩子
1972年のデビュー以来、決して大きなヒット曲には恵まれなかったものの、独特の世界観に基づく曲により、熱烈な支持を得てきたシンガーソングライター谷山浩子。昨年はデビュー50周年ということで様々な企画が行われたようで、50周年記念のオールタイムベスト「ネコとコバン」がリリース。また、50周年記念のコンサートも実施。彼女の代表曲を披露したコンサート「谷山浩子デビュー50周年コンサート」が実施されました。本作は、そのフィナーレとなる、今年4月に東京で実施されたコンサートの模様を収録されたライブアルバム。MCまで収録されたこのライブアルバムは、おそらく当日のコンサートをそのままフルに収録した内容となっており、当日の雰囲気をそのままパッケージした1枚となっています。
彼女の代表曲を披露したコンサートの模様を収録したアルバム・・・ということになっているのですが、非常にユニークなのは、昨年リリースされたオールタイムベスト「ネコとコバン」や、5年前にリリースされたシングル集「HIROKO TANIYAMA 45th シングルコレクション」と、さほど曲がかぶっていない点。例えばMCで、「人気投票でいつも1位になる」と言っていた「海の時間」はシングル曲のため「シングルコレクション」には収録されているのですが、「ネコとコバン」には収録されていません。また、ファンクラブ人気投票で2位となった「冷たい水の中をきみと歩いていく」に至ってはどちらのアルバムにも収録されていません。
それだけ50年という長きにわたって活動を続けている彼女だけに、「代表曲」「人気曲」といっても様々な曲があって、アルバム1枚2枚では網羅しきれない、ということはあるのでしょう。一方でこのライブアルバムでは彼女の他のミュージシャンへの提供曲でヒットを記録した「MAY」「テルーの唄」のセルフカバーも収録。おそらく一般的にはもっとも知名度があると思われる「みんなのうた」に提供した「恋するニワトリ」「まっくら森の歌」も収録されており、しっかり押さえるところは押さえられた選曲になっています。
また、御年67歳という大ベテランの彼女。しかしボーカリストとして、全く声の艶やハリにも衰えはありません。いい意味で非常に安定感もあって、アレンジについても基本的に原曲に忠実(と思われます)。そのため、基本的にベスト盤と同じような感覚で聴けるようなアルバムになっていました。
そしてなによりユニークなのはMCを完全に収録されているという点。それも比較的MCも多めで、彼女自身による代表曲の曲紹介で、選曲の背景についても知ることが出来ます。もともと作家志望だったという、彼女のデビューにまつわる話なども、ファンにとっては有名かもしれませんが、熱心なファンではない自分としては新鮮な話でした。
そういう選曲に加えて、MCで知ることが出来る情報を含めて、ライブアルバムでありながらも、なにげに谷山浩子入門盤としては最適なアルバムではないか、と感じた作品。ほんわかした彼女のトークからもライブの雰囲気も感じることが出来ましたし、とても魅力的なライブアルバムでした。しかし楽曲を聴いていると、いい意味で非常に個性的なミュージシャンだな、ということをあらためて感じるライブアルバム。ただ一方、個性的であるがゆえに、昔の曲を聴いても、全く時代を感じることがありません。それだけ普遍的な楽曲の魅力を昔から持っていたということを、時代を経たからこそ感じることが出来ます。
前述のように、彼女自身、残念ながらいままでヒット曲というものに恵まれていません。ただ、昔よりも様々なタイプのミュージシャンが出てきた今の時代ならば、ひょっとしたらもっとヒット曲がリリースできたのでは、とも思ってしまいました。もっとも彼女もまだまだ現役のミュージシャン。これからも十二分の大ヒットの可能性もあるかも?これからの活躍も楽しみですし、なによりも一度ライブに足を運びたいな、とも思わせてくれるライブアルバムでした。
評価:★★★★★
谷山浩子 過去の作品
ひろコーダー☆栗コーダー(谷山浩子と栗コーダーカルテット)
HIROKO TANIYAMA 45th シングルコレクション
谷山浩子ベスト ネコとコバン
ほかに聴いたアルバム
バットリアリー/Saucy Dog
約1年ぶり、7枚目となるSaucy Dogのミニアルバム。ほどよくロックなギターサウンドに、メランコリックに聴かせるメロディーラインが特徴的。ヒットした「シンデレラボーイ」のイメージよりはロック寄りな感じはするのですが、基本的には切なく聴かせるラブソングという路線は「シンデレラボーイ」で定着した彼らのイメージの延長線的な感じ。それなりに器用さを感じる反面、楽曲にはもうちょっとバリエーションも欲しいような。
評価:★★★★
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