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2023年10月

2023年10月31日 (火)

ノスタルジーを感じながら

今回も先日見た、音楽関連の映画の紹介です。

今年はEPICレーベルの創立45周年。その節目の年を記念して、EPICレーベルで発表されたライブ・フィルムを、毎週木曜日の7時から一夜限定で上映するイベント「EPIC レコード創立45周年記念 毎木7ライヴ・フィルム・フェスティヴァル2023 -THE LIVE IS ALIVE!-」が開催されました。今回見たのは、そのうちの6回目。10月26日(木)に行われた「渡辺美里『misato born IV 愛と感動の超青春ライブ』」を見てきました。

私が見てきたのは、東京品川の「T・ジョイ PRINCE 品川」。122席の会場で、半数弱程度の人の入りといった感じでしたでしょうか。一夜限りとはいえ、平日の夜ということを考えると、そこそこの客の入りといった感じ。やはり彼女の最盛期は80年代後半から90年代前半でしたので、観客層はおそらくほとんどが50代以上。渡辺美里のライブへ行ってもいつもそうなのですが、40代後半の私の年代が、むしろ「若手」になってしまっています・・・。

今回のイベント、「映画」というよりも、過去に発売された映像作品を映画館という空間で大音量・高音質で楽しむというイベント。この日流されたのも、1990年にVHSでリリースされた同タイトルの映像作品をそのまま流しただけのイベントで、今回のイベントに合わせた特典映像があるわけでもありません。このVHSこそ持っていませんが、映像自体は一度は見たことある映像ばかりでした。

ちなみに特殊なイベントということで、映画だと恒例の予告編はなし。例の「映画泥棒」のCMもなく、いきなり本編からスタートしたのにはかなり違和感が・・・。

ちなみにこの「born IV」の映像は1989年7月26日の西武球場でのライブの模様と、11月に行われた東京ドームでのライブの模様を収録したもの。ファンにはおなじみの話なので、映像には一切説明もなかったのですが、この7月26日のライブ、豪雨と落雷に見舞われて、ライブが途中で中止になったファンには有名なライブ。その後、その埋め合わせ的に「史上最大の学園祭」と題して、東京ドームワンマンライブが行われたもの。時期的にはアルバム「Flower bed」リリース後のライブで、秋の東京ドームライブは、シングル「虹をみたかい」がチャート1位を獲得した直後のステージ。まさに彼女の全盛期のライブで、1986年から2005年まで毎年行われていた西武スタジアムでのライブですが、この年は唯一、2日間公演だったという点も、その当時の人気のほどがうかがえます。

そんな訳で、正直なところ、映像自体は特に目新しいものではありません。ただ、それを映画館という場所で、大音量・高音質で聴けるという点、非常に貴重な体験をすることが出来たひと時でした。彼女の曲については、ベスト盤リリースや「30周年記念盤」リリースのタイミングで聴いていたり、時々、今でも曲を聴いていたりしています。ただ、こういうイベントで、当時の映像、当時の歌声で集中しながら聴いていると、(この映像の頃はまだ、渡辺美里を聴きはじめる前なのですが)ふと自分がはじめて渡辺美里と出会って、はまって、そして何度も聴いた、中学生や高校生の頃を思い出してしまいました。聴いていて、その当時の事、渡辺美里に関する、友人や、その当時好きだった女の子の事も思い出してきてしまったりして、とても甘酸っぱい気持ちになりながら、渡辺美里の歌に耳を傾けていました。

また、そんなノスタルジックな気持ちから離れて、客観的な気持ちで彼女の歌を聴いていても、やはりあらためて、圧倒的な声量、歌の上手さを感じます。彼女はこの時、若干23歳。でも、その年齢を感じさないすごみを感じさせます。もっとも、この時点でかなり完成されすぎてしまっていて、その後、正直、ほとんど変化がない、という点も良くも悪くも気になってしまうのですが。

さらに会場の盛り上がりのすごさも、その当時の渡辺美里人気とその勢いを感じさせます。西武球場のライブが雨で中止になった時に「青春のバカヤロー」と叫ぶシーンがあって、率直な感想として少々痛いのですが(苦笑)、ただ、そのちょっと痛々しい発言がそのまま受け入れてしまうだけの勢いと盛り上がりが映像を通じて、30年以上たった今でも伝わってくるようでした。

渡辺美里全盛期の彼女の勢い、実力、そして魅力を感じさせてくれるイベント。全13曲1時間11分。決して長くはないものの、充実感のある内容になっていました。そして、私自身はちょっと中学生や高校生の頃に戻り、ノスタルジックな気持ちにひたった、そんな夜でした。

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2023年10月30日 (月)

エド・シーランの魅力満載

Title:Autumn Variations
Musician:Ed Sheeran

本国イギリスのみならず、アメリカや日本でも高い人気を誇り、現在、おそらくもっとも人気のある男性シンガーソングライターの一人とも言えるエド・シーラン。いままでアルバムタイトルを算術記号とする「マスマティックス・プロジェクト」を続けてきましたが(そんなプロジェクトだったんですね・・・)、今年3月にその最後のタイトルとなる「ー」をリリース。そのプロジェクトに終止符を打ちました。しかしそこからわずか6か月、早くも今年2枚目となるニューアルバムがリリース。今回のタイトルは「ルート」でも「コサイン」でもなく、「Autumn Variations」。秋をテーマとした、タイトル通りバリエーションある14曲を収録したアルバムとなっています。

ただ、「バリエーションがある」と言っても、アルバムは基本的にエド・シーランらしい優しくもメランコリックな雰囲気を加味した、シンプルなポップソングが並ぶアルバムになっています。特に、「マスマティックス・プロジェクト」の作品ではエレクトロサウンドを取り入れて今風に仕上げた作品も目立ったのですが、今回のアルバムはあくまでもシンプルに歌を聴かせるポップチューンに注力した作品に仕上がっています。

冒頭を飾る「Magical」はアコギのアルペジオにストリングスで分厚く味付けしたアレンジと、メランコリックなメロディーにコーラスを加えてこれまた分厚く仕上げた歌のマッチの美しさが耳を惹くポップチューン。「Amazing」も爽快なピアノチューンの軽快なポップチューンで、今風な雰囲気を感じさせつつ、基本的にはシンプルでメランコリックなメロを聴かせる彼らしい楽曲に仕上げています。

先行シングルともなっている「American Town」もアコースティックなサウンドをベースにしつつ、軽快で暖かさを感じさせるポップなメロが心地よい楽曲に。アルバムの中で、唯一エレクトロ的な要素が強いのが「Midnight」で、四つ打ちのリズムのこのアルバム唯一のダンスチューン。ただ、楽曲の中ではアコギの音が流れており、フォーキーな歌がアルバムの中での統一感を与えています。

前半もアコースティックテイストで暖かさを感じさせるポップチューンが多かったのですが、その傾向がより顕著になるのが後半。ある意味、アルバムタイトルと相反するようなタイトルの「Spring」はアコギとストリングスでフォーキーに聴かせる楽曲。その後も「Punchline」「When Will Be Alright」とシンプルなアコースティックアレンジのフォーキーな作品が続きます。そして終盤もメランコリックなミディアムチューン「The Day I Was Born」と続き、ラストを飾る「Head>Heels」もリズムマシーンのリズムながらも、ピアノをバックにメランコリックに歌い上げる美しいポップチューンで締めくくっています。

そんな感じで、14曲、確かにバリエーションのある曲ではあるものの、基本的にはシンプルなポップチューンという意味合いでは、むしろバラエティー豊富というよりも、統一感のある内容という印象を受けるアルバムになっています。ただ、それでも最後まで全く飽きることなく、エド・シーランのポップミュージシャンとしての魅力を存分に感じされるアルバムになっていたように感じます。ある意味、変な装飾なしにエド・シーランの魅力をそのままパッケージしたアルバム、と言えるのかもしれません。なぜ彼がこれだけ高い人気を誇るシンガーソングライターなりえているのか、その理由を実感できる傑作でした。

評価:★★★★★

Ed Sheeran 過去の作品
+
÷
No.6 Collaborations Project


ほかに聴いたアルバム

Live in Japan 1973, Live in London 1974/Beck, Bogert & Appice

今年1月に亡くなった、3大ギタリストのひとり、ジェフ・ベックが、バニラ・ファッジで活動していたティム・ボガート、カーマイン・アピスを誘って結成したハードロックバンド、ベック・ボガート&アピス。ただ、この手のバンドの常として活動期間は短く、オリジナルアルバムはわずか1枚のみ。そしてライブアルバムとして1973年の「Live in Japan」がリリースされていました。その「Live in Japan」の発売50周年を記念して、このたび、1974年のロンドン・レインボー・シアター公演の模様を収録した未発表ライブ音源を加えて4枚組アルバムとしてリリースされています。

もともと名盤の誉れ高いアルバムなだけに、その内容については言うまでもないかもしれません。ギターサウンドを中心にダイナミックに聴かせるそのサウンドは迫力満点。というよりも、イメージとして典型的な70年代のハードロックといった印象も強いかもしれません。まあ、「典型的」というよりも、彼らの奏でるようなサウンドがオリジナルであり、模倣するようなグループが多かったため、「70年代の典型例」になっていくのでしょうが。そのカッコいいグルーヴに酔いしれる、文句なしのライブアルバムの名盤です。

評価:★★★★★

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2023年10月29日 (日)

オリジナルメンバーでのレコーディング風景を捉えた映画

映画「くるりのえいが」を見てきました。

タイトルそのままなのですが、文字通り、ロックバンドくるりのドキュメンタリー映画。ただし、バンド「くるり」の軌跡を追ったドキュメンタリーではなく、先日リリースされたニューアルバム「感覚は道標」のレコーディングに密着したドキュメンタリーとなっています。この新作「感覚は道標」は、くるりのオリジナルメンバー、森信行が参加したことでも大きな話題となったアルバム。このドキュメンタリーでは、そんなオリジナルくるりのメンバー3人の友情を描いたドキュメンタリーにもなっていました。

個人的にくるりというとデビュー作「さよならストレンジャー」以来のファンであるだけに、オリジナルくるりの3人が並んでいる姿を見るだけで胸が熱くなってきます。実は、この映画を見る時点では、オリジナルアルバム「感覚は道標」をまだ聴いていなかっただけに、アルバム音源に対しても、白紙の気持ちでこの映画にのぞむことが出来ました。

今回の映画は、あくまでも新作「感覚は道標」の制作過程を追ったドキュメンタリーとなっていました。全編は伊豆でのスタジオでの制作風景。その後、今年3月に京都のライブハウス「拾得」で行われたライブの模様が収録され、そのライブから「尼崎の魚」、新曲の「California coconuts」、そして「東京」の3曲の演奏が映画には収録されていました。後半は、京都市内や伊豆のスタジオで行われたレコーディングの模様が収録され、特にアルバム収録曲「In Your Life」が完成するまでの過程を追った構成となっています。

この映画の大きな特徴としては、この手のドキュメンタリー映画にナレーションがつくのが一般的なのですが、この映画にはそんなナレーションは一切ありませんでした。そのため、基本的には映画全体として淡々とレコーディングの模様を追った構成となっており、そういう意味では、映画的な部分はちょっと薄く、よくCDに付随するDVDに収録されているようなレコーディングドキュメンタリーに近い内容になっていました。その点、「映画的」なものを求めるとすると、ちょっと物足りなさも感じてしまうかもしれません。

ただ、とはいってもやはり、オリジナルメンバー3人でのレコーディングの模様を追ったドキュメンタリー映像は貴重。くるりの音楽がどのように出来てくるのかが、そのまま収録された内容は見ごたえはありますし、またオフショット映像などでのオリジナルくるりの3人の関係性を垣間見れる映像もまた、貴重なショットと言えると思います。

途中、くるりの昔のMVも挿入され、昔のオリジナルくるりの3人との比較もまた興味深い構成に。というか、あらためて見ると、やはり20代のメンバーは若いなぁ・・・というか、私自身もくるりの3人と同じ年なので、あの頃はあれだけ自分も若かったんだよなぁ・・・と、リアルタイムでくるりを追っていた身からすると、非常に感慨深く見てしまいました。

くるりの楽曲の完成の過程を興味深く見つつ、かつ、オリジナルくるりの3人が一緒に活動しているだけに胸が熱くなりながら見ていたのですが、ただ、最後に収録されているメンバー3人の、特に森信行のインタビューを聴いて、やはりもうくるりはあくまでも岸田、佐藤2人のバンドなんだな、ということを感じてしまいました。おそらく、インタビューの内容から考えると、森信行本人がそのことを一番強く感じているようですし、今回のレコーディングではメンバー3人が、ある意味、デビュー当初に戻った感覚でレコーディングを行っていたのですが、それと同時に、もう本当の意味でのデビュー当初には戻れないんだ、ということを実感してしまう内容にもなっていたように感じました。

ある意味、卒業後、20年以上経ってから、学生時代の仲間たちと久しぶりに集まった飲み会、そんなイメージでしょうか。その場では、まるで学生時代に戻ったかのような錯覚を覚えます。しかし、それと同時に、かなり変わってしまった自分たちは、もう本当の意味では昔には戻れない・・・そんな寂しさもどこか感じてしまう。最初は3人が一緒に楽曲を作っている姿に、素直に懐かしさを感じつつも、最後まで映画を見て、そんな感情が残ってしまいました。

おそらく、森信行を含めてのレコーディングはこれ1枚で、再び2人のくるりに戻るのでしょう。もう昔には戻れないという寂しさを感じさせつつも、ただきっと、また何年か後に、この3人でのプレイがくるりの歩みに必要となる時期がやってくるのではないか、映画を見ていてそうも感じました。また、そんな機会を期待しつつ、オリジナルくるり3人での貴重な風景が楽しめる、そんな映画。どちらかというと初心者にくるりを紹介する、というよりもファンズムービー的な要素が強いのですが、ファンであるのならば、というよりも、デビュー当初、くるりを聴いていた方ならば、是非チェックしてほしい、そんな映画でした。

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2023年10月28日 (土)

彼女の歌詞の魅力がより鮮明に

Title:Acoustic -Self Cover Album-
Musician:阿部真央

あまりにもそのままなタイトルのような気がするのですが・・・阿部真央の最新作は、タイトル通り、アコースティックアレンジによるセルフカバーアルバム。阿部真央が、ポニーキャニオンIRORI Recordsと提携し、プライベートレーベル「KAGAYAKI RECORDS」を設立。本作はその第1弾アルバムとなるそうです。

基本的に、内容としてはあべまのアコースティックアルバムとして、イメージ通りのものであり、良くも悪くも「そのまま」なアルバムです。選曲も「貴方の恋人になりたいのです」「boyfirend」「じゃあ、何故」「お前が求める私なんか全部壊してやる」「I wanna see you」・・・とベスト盤的なセレクト。最後に唯一、新曲「I've Got the Power」が収録されていますが、選曲としては非常にオーソドックスな選曲となっています。

アレンジにしても、アコースティックアルバムであるので当たり前なのですが、基本的にはシンプルなアレンジ。アコースティックギターやピアノをベースに、「MY BABY」や「お前が求める私なんか全部壊してやる」ではパーカッションを入れてバリエーションをもたせつつも、あくまでも歌を聴かせる構成になっていました。

ただ、今回のアコースティックアルバムの最大の魅力はなんといっても阿部真央の書く歌詞の魅力が最前面に押し出されているという点のように感じます。アコースティックアルバムであり、かつアレンジとして非常にシンプルだからゆえに、彼女の書く歌詞がよりクリアに響いてきたいるのですが、あらためて彼女の歌詞の魅力を強く感じるアルバムとなっていました。

確かにいままでのアルバムでも、阿部真央の書く歌詞は彼女の楽曲の中の大きな魅力であり、彼女の個性として位置づけられていました。それがアコースティックアレンジとなることによって、よりストレートにリスナーの耳に届くような楽曲に変化していたように感じます。彼女の歌詞の大きな特徴としては、切ない恋心を、時として情熱的に綴った歌詞。それも決して「乙女心」といった感じではなく、むしろ男女に共通するような、恋しい人を思う本質的な感情をストレートに歌っているため、男女どちらのリスナーも共感できるような内容になっています。

それをアコースティックアレンジとすることによって、本質的な部分をよりえぐられるような印象を受ける歌い方になっていたようにも感じます。例えば「じゃあ、何故」のオープニングは、原曲でもギターのアルペジオをバックに静かなアレンジになっているのですが、本作では、完全にアカペラ。オープニングの印象的な歌詞が、そのままダイレクトに伝わるようなアレンジになっており、強い印象を受けます。

もともと阿部真央についてその歌詞の魅力は認識していたものの、このアコースティックアルバムで、その歌詞の魅力について、より強く認識し、そして惹きつけられた、そんな作品になっていました。ある意味、アコースティックという特性をもっとも生かした魅力的なカバーアルバムと言えるかもしれません。阿部真央の魅力のわかる1枚でした。

評価:★★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU
阿部真央ベスト
まだいけます
MY INNER CHILD MUSEUM
Not Unusual

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2023年10月27日 (金)

ハードコアやパンクに乗せて、よりメッセージが明確に

Title:INSAINT
Musician:春ねむり

Insaint_harunemuri

今、徐々に話題となっている女性シンガーソングライター、春ねむり。直近のオリジナルアルバム「春火燎原」は日本以上に海外で大きな注目を集め、最近は徐々に日本でもその名前を聞く機会が増えてきました。本作は、彼女が一気に注目を集めるきっかけとなった前作のフルアルバムから約1年5カ月ぶりにリリースされた全6曲入りのEP盤となります。

もともと彼女は、ジャンル的にはラップ、ポエトリーリーディングに属するミュージシャンとされていました。実際、前作では「キュートな感じのアイドルテイストもある女性ボーカルが、ラップあるいはポエトリーリーディング的に歌うスタイル」という記載をしています。それに対して今回のアルバムで大きく取り入れているのはパンクロックやハードコア。そのため、前作に比べると、その印象はかなり異なるのではないでしょうか。

実際、1曲目「ディストラクション・シスターズ」は全編、ノイジーなギターサウンドをバックに疾走感もって歌い上げるパンクロック風な楽曲。「わたしは拒絶する」もギターノイズが埋もれる中、彼女がその主張をゆっくりと歌い上げるハードコア風のナンバー。タイトルも印象的な「生存は抵抗」もサビではデス声でタイトルのスローガンをシャウトするハードコアの楽曲。「サンクチュアリを飛び出して」もアップテンポなパンクチューン。「インフェルノ」もポエトリーリーディング的な歌になっているものの、ノイジーなギターサウンドが全面的に展開されていますし、ラストの「No Pain,No Gain is Shit」もハイテンポなバンドサウンドにシャウト気味のボーカルが重なるハードコアのナンバーに。全編、ヘヴィーなバンドサウンドが重なるロックなアルバムに仕上がっています。

ただし、彼女は前作でもギターロックナンバーやハードコアの作風を取り入れているため、パンクやハードコアを大きく取り入れた今回のアルバムでも、彼女に対するイメージは大きく異なるものではありません。また加えて、やはり彼女の大きな特徴はその歌詞の世界。前作と同様、現実社会でのギャップに悩むような人たちに対してのエールとも感じられる歌詞が大きな魅力となっています。実際、彼女はこのアルバムに対するコメントとして「システムや『普通』の枠から取りこぼされ、自分がおかしいのではないかと自分を疑い続け苦しみながら今を生きる全ての人のため」と語っており、そのメッセージ性の強さも感じる作品となっています。

楽曲タイトルそのままが大きな主張となっている「生存は抵抗」なども、まさにそんなメッセージ性を強く感じますし、最後の「No Pain,No Gain is Shit」は、「No Pain,No Gainなんてクソだ!」という主張が歌詞の中で繰り返されています。この「No Pain,No Gain」はまさに現在の、「自己責任」論を唱えがちな特に「新自由主義」的な論者が好みそうな表現。それに対してアンチを叫ぶ本作は、春ねむりの明確なメッセージを感じさせます。

また、この彼女の強いメッセージには、ハードコアやパンクロックのような強いサウンドがマッチされているように感じます。そういう意味でも春ねむりのメッセージがかなり強く前に押し出されたEP盤になったように感じます。6曲入りという内容ながらも春ねむりの主張と魅力を存分に感じられた作品でした。

評価:★★★★★

春ねむり 過去の作品
春火燎原

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2023年10月26日 (木)

ネット発グループが上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

また「アイドルグッズ」の人気ランキング化となっているアルバムチャートですが、今週はネット発のグループが上位に並んでいます。

まず1位にはバーチャルライバーグループにじさんじに所属するVTuberユニットROF-MAO「Overflow」が1位獲得。CD販売数1位、ダウンロード数4位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上6万5千枚で1位初登場。本作がフルアルバムでは初のリリースとなりますが、ミニアルバムの前作「Crack Up!!!!」の初動4万9千枚(1位)からアップしています。

2位初登場はAfter the Rain(そらる×まふまふ)「アイムユアヒーロー」。動画投稿サイトの歌唱動画で人気となったそらるとまふまふによるユニットの3枚目となるアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数24位。オリコンでは初動売上4万5千枚で2位初登場。前作「イザナワレトラベラー」の初動8万2千枚(2位)からはダウンしています。

3位には韓国の男性アイドルグループSEVENTEENのベストアルバム「SEVENTEEN JAPAN BEST ALBUM『ALWAYS YOURS』」が31位からランクアップ。5週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。主にCD販売数が25位から3位に大幅ランクアップ。ランクアップの理由は不明ですが、ミニアルバムのリリースや日本ツアー先行販売の影響でしょうか。

続いて4位以下の初登場盤ですが、今週、やはり最大の注目は4位に初登場してきたこのアルバムでしょう。The Rolling Stones「
Hackney Diamonds」。ご存じ、レジェンド中のレジェンドによるニューアルバム。アルバムとしては2016年の「Blue&Lonesome」以来。前作はカバーアルバムだったので純然たるオリジナルアルバムとしては、実に2005年の「A Bigger Bang」以来、約18年ぶりのアルバムとなります。

The Rolling Stonesといえば、2021年にドラマーのチャーリー・ワッツが亡くなり、その後の動向が注目されましたが、バンドは継続。メンバーのうちミック・ジャガーは既に80歳(!)という年齢にも関わらず、ここに来て純粋なニューアルバムリリースと、いまだに精力的な活動を続けているのは驚くべき限りです。CD販売数6位、ダウンロード数2位。ストーンズのファン層でも、もうCDではなくダウンロードで済ます人が多いんだ・・・とちょっと意外にも感じてしまうのですが・・・。

オリコンでは初動売上2万5千枚で6位初登場。前作「Blue&Lonesome」の初動2万2千枚(3位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「A Bigger Bang」の4万枚(5位)からはダウンしていますが、「A Bigger Bang」が、まだCD全盛期の18年も前のアルバムということを考えると、大健闘といった感じの結果でしょう。レジェンドとして、その根強い人気のほどを示した結果となりました。

5位には韓国の女性アイドルグループITZY「RINGO」がランクイン。日本盤でのオリジナルアルバムとしては1枚目のアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数16位。オリコンでは初動売上2万1千枚で7位初登場。直近作は韓国盤のミニアルバム「KILL ME DOUBT」で、同作の2千枚(22位)からアップ。日本盤では以前、ベストアルバム「IT'z ITZY」をリリースしていますが、同作の初動3万枚(4位)からはダウンしています。

8位には女性アイドルグループPeel the Apple「Apple bobbing」がランクイン。CD販売数7位。オリコンでは初動売上7千枚で12位初登場。前作「勇敢JUMP!」の初動8千枚(11位)から微減。

9位初登場は「Paradox Live-Road to Legend-FINAL "REVOLUTION"」。アニメキャラによるHIP HOPプロジェクト「Paradox Live」の楽曲をまとめたアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数30位。オリコンでは初動売上5千枚で16位初登場。同シリーズの前作「Paradox Live - Road to Legend - Consolation Match"SHOWDOWN"」の8千枚(10位)からダウン。

最後10位にはExWHYZ「HOW HIGH?」がランクイン。WACK所属の女性アイドルグループのEP盤。CD販売数9位。オリコンでは初動売上1万1千枚で8位初登場。前作「xANADU」の初動6千枚(8位)よりアップ。

ちなみに、先週で通算28週目のベスト10ヒットを記録したYOASOBI「THE BOOK」は今週は22位にまでダウン。ただし、YOASOBI「THE BOOK 3」は今週も7位にランクインしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年10月25日 (水)

久々にCD販売数1位の曲が1位を獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100はYOASOBI「アイドル」、Ado「唱」と配信シングルの1位が続いていましたが、今週は久々にCD販売数1位の曲が総合順位で1位を獲得しています。

今週1位は秋元康系アイドルグループ櫻坂46「承認欲求」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数13位、ストリーミング数5位、ラジオオンエア数51位。今どきっぽいワードチョイスが、いかにも秋元康らしい楽曲タイトルですが・・・。オリコン週間シングルランキングでは初動売上44万9千枚で1位初登場。前作「Start over!」の初動43万9千枚(1位)からアップしています。

先週まで4週連続1位をキープしてきたAdo「唱」は今週2位にダウン。ただストリーミング数は5週連続、ダウンロード数も2週連続、さらにYouTube再生回数も3週連続の1位をキープ。勢いは止まっておらず、来週以降の1位返り咲きの可能性も高そうです。ただ、先週ベスト10入りしてきた「クラクラ」は今週16位にダウン。残念ながら2曲同時ランクインは1週のみとなりました。

YOASOBI「アイドル」は先週と変わらず3位をキープ。ストリーミング数及びYouTube再生回数は先週と変わらず2位。カラオケ歌唱回数も19週連続の1位をキープ。ただダウンロード数は8位から10位にダウン。これで28週連続のベスト10ヒット&通算27週目のベスト3ヒットとなりました。ちなみにYOASOBIのもう1曲、「勇者」は先週からワンランクダウンながらも5位にランクインしており、こちらは今週も2曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下のベスト10ヒットですが、まず4位に男性アイドルグループMAZZEL「Carnival」がランクイン。SKY-HIが主催する音楽事務所BMSG所属の、BE:FIRSTに続く男性アイドルグループ。CD販売数2位、ダウンロード数4位、ラジオオンエア数3位、YouTube再生回数13位。オリコンでは初動売上3万6千枚で2位初登場。前作「Vivid」の初動3万7千枚(1位)から微減。

7位には藤井風「花」が先週の11位からランクアップし、2週目にしてベスト10初登場。フジテレビ系ドラマ「いちばんすきな花」主題歌。ちょっと懐かしさも感じるメランコリックなメロディーラインが、いかにもドラマ主題歌っぽさも感じます。ダウンロード数5位、ストリーミング数12位、ラジオオンエア数2位、YouTube再生回数21位。

一方、ロングヒット曲ですが、King Gnu「SPECIALZ」が今週8週目のベスト10ヒットを記録しています。テレビアニメ「呪術廻戦」第2期「渋谷事変」オープニングテーマ。特にストリーミング数が3位を記録。ダウンロード数7位、YouTube再生回数5位と上位をキープ。全体的には若干下落傾向ではあるものの、まだまだ勢いが感じられ、今後のさらなるロングヒットも期待できそうです。

キタニタツヤ「青のすみか」は今週6位から8位にダウン。YouTube再生回数こそ11位から10位にアップしているものの、ストリーミング数は5位から7位、ダウンロード数も10位から14位と全体的には下落傾向。ただし、これで16週連続のベスト10ヒットとなりました。

なかなかしぶといVaundy「怪獣の花唄」は先週と変わらず9位をキープ。ストリーミング数は10位から9位に、YouTube再生回数も15位から11位とここに来てアップ。カラオケ歌唱回数も22週連続2位を記録。ダウンロード数は17位から21位にダウンしています。これで43週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年10月24日 (火)

君島大空らしさがより明確に

Title:no public sounds
Musician:君島大空

現在、最も注目を集める男性シンガーソングライターの一人、君島大空。今年1月にアルバム「映帶する煙」をリリースしましたが、前作から約8か月、早くもニューアルバムがリリースされました。前作「映帶する煙」は、今年上半期の私的ベストアルバムで4位に選ぶほどの傑作アルバムに仕上がっていましたが、今回のアルバムは前作に勝るとも劣らない傑作に仕上がっており、脂ののった彼の仕事の充実ぶりをうかがわせる結果となっていました。

彼は過去のEP盤によって、アコースティックなサウンドを取り入れたり、アバンギャルドなサウンドを取り入れたり、様々な顔を見せてきました。前作に関しては、そんな多様な音楽性を幅広く取り入れた集大成的なアルバムに仕上がっていました。それに対して今回は、ファンタジックでアバンギャルドな側面によりスポットがあてられた作風のように感じました。ただ、そのような作品の中でも、ダイナミックさと繊細さ、アバンギャルドとポップスを両立させた、君島大空にしか出来ないようなサウンドの世界を作り上げた、そんなアルバムに仕上がっていました。

例えばアルバムの冒頭を飾る「札」は、最初いきなりダイナミックでヘヴィーなギターリフが印象的なロックなイントロからスタートしますが、歌がスタートすると一転、ファルセットボーカルを聴かせるポップなメロを聴かせてくれます。続く「c r a z y」もまさにダイナミックさと繊細さを同居させたような楽曲。ダイナミックなバンドサウンドを聴かせつつ、途中ではバンドサウンドが後ろにさがり、繊細な歌声を聴かせてくれる楽曲に仕上がっています。

ファンタジックなエレクトロサウンドでポップに聴かせるのが、記号も使ったタイトルが独特な「˖嵐₊˚ˑ༄」。4つ打ちのリズミカルなダンスチューンはポップな印象を受けつつ、時折見せるサイケなサウンドはアバンギャルドな側面も同居させています。「映画」もサイケ気味のダイナミックなサウンドを聴かせつつ、切なさを感じさせる歌にポピュラリティーを同時に感じさせる独特の世界観を作り上げています。

ファンタジックなサウンドという点では「賛歌」も印象的。ファンタジックでアバンギャルドさを感じさせるサウンドを聴かせつつ、切ないメロや歌詞が印象に残る、こちらもアバンギャルドとポップスを同居させたサウンドに。ラストを締めくくる「沈む体は空へ溢れて」もヘヴィーでダイナミックなサウンドを聴かせつつ、メランコリックに聴かせる歌との対比もユニークな作品となっています。

一方では今回のアルバムでも「– – nps – –」のようにアコギで聴かせるフォーキーな作品も収録されており、フォーキーな彼の側面もしっかりと感じさせるアルバムとなっていました。

様々な作風を取り入れて自由さを感じさせた前作に比べて、今回のアルバムはより君島大空らしさを目指した、そんなアルバムのように感じます。前作が彼のその段階での集大成といった感じでしたが、本作は、そこからさらに彼らしさに注力し、新たな一歩を目指すアルバム、そう感じさせる作品でした。前作に引き続き、今年を代表する傑作の1枚であることは間違いないでしょう。彼の活躍からはますます目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

君島大空 過去の作品
縫層
袖の汀
映帶する煙


ほかに聴いたアルバム

SCARECROWS/The Ravens

不倫騒動で悪い意味で話題となってしまったDragon Ashの降谷建志の別プロジェクト、The Ravensの2枚目となるアルバム。「コロナで動きが制限された人々をカカシ(Scarecrows)に例え、そのカカシに絡み付くがんじ絡めのツタをThe Ravens(ワタリガラス)が啄み、呪縛から解放するというコンセプト」だそうですが、kjにとって呪縛は奥さんだったのか?という皮肉も言いたくなってしまいますが、楽曲的にはピアノにバンドサウンドを絡ませつつ、これでもかといったほど哀愁感あふれるメロディーを聴かせる楽曲。メロの良さはさすがではあるものの、ちょっと一本調子な感は否めない感じも。ある意味、哀愁メロと分厚いサウンドというのはベタではあるものの、聴いていて素直に心地よさはあるのですが。

評価:★★★★

The Ravens 過去の作品
ANTHEMICS

PLAYDEAD/SiM

レゲエの要素を取り入れた独特のハードコアサウンドを聴かせてくれるSiMのオリジナルアルバムとしては約3年3ヶ月ぶりのアルバム。アルバム紹介に「今年海外マネージメント・エージェント・レーベルとの契約を発表」とだけ書いてあり、詳細が一切書いていなかったのですが、今年3月に海外マネージメントとしてShelter Music Groupと、海外エージェンシーとしてUnited Talent Agencyとの契約を発表しています。ちなみにアメリカではタレントの仕事の獲得やスケジュール管理はマネージメント会社が行う一方、仕事を獲得するのはエージェンシーが行うようで、それぞれ別の会社と契約しているのはそういう事情によるもののようです。どうも本格的に海外進出を目指しているようで、その第1弾となるアルバムだそうです。

ヘヴィーなサウンドに、時折、レゲエ的なリズムが入る部分が個性的なSiMのサウンドがさく裂している今回のアルバム。ある意味、良くも悪くもSiMらしいアルバムに仕上がっている反面、それだけちょっと意外性みたいなものは薄く、またメロディーラインのインパクトもちょっと弱かったかな、という印象を受けました。海外への紹介的な意味合いから、あえてSiMらしいサウンドで構成し、またJ-POP的なベタなインパクトも避けたということなのでしょうか。カッコいいアルバムではあるものの、前々作、前作に比べると、ちょっと物足りなさを感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

SiM 過去の作品
PANDORA
i AGAINST i
THE BEAUTiFUL PEOPLE
THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES
BEWARE

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2023年10月23日 (月)

キュートなポップはどこかJ-POPっぽさも

Title:softscars
Musician:yeule

シンガポール出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動を続けているシンガーソングライター、ナット・チミエルのソロプロジェクトyeuleの3枚目となるニューアルバム。前作「Glitch Princess」ではじめて彼女の作品を聴いたのですが、そのドリーミーなサウンドとキュートなメロディーに一気にはまってしまい、昨年の年間私的ベストアルバムの6位に選ぶほどの傑作になっていました。本作は、その傑作からわずか1年というインターバルでリリースされたニューアルバムとなります。

今回のアルバムも前作同様、ドリーミーなサウンドとキュートなメロディーが魅力的な作風。特にフォーキーなサウンドでメランコリックに聴かせたかと思えば、一転、分厚いエレクトロサウンドやダイナミックなバンドサウンドを取り入れて、アバンギャルドな感触すらある曲風に変化する、バラエティー富んだ作風が特徴的。。例えば「ghosts」は最初、アコースティックなアレンジでフォーキーに聴かせつつ、後半はフォーキーなメロそのままに、ギターのホワイトノイズが埋め尽くされるようなアレンジになっていますし、続く「dazies」はシューゲイザーからの影響を感じさせるノイジーなギターサウンドになっていますし、「software update」もメランコリックなメロをゆっくり聴かせる歌モノながらも、突如、ギターノイズが場面を切り裂くようなアレンジが耳を惹きます。

ほかにも静かなピアノインスト曲「fish in the pool」があったり、エレクトロサウンドでリズミカルな「inferno」があったり、「cyber meat」のような軽快なポップチューンを聴かせるギターロックナンバーがあったりとバラエティー豊か、というよりもポップなメロを軸に、かなり自由度の高い音楽性が特徴的となっています。

ポップであることを主軸に、バラエティー富んだ捉えどころのない音楽性が魅力的とも言える彼女。良く言えば自由度の高い、ちょっと悪く言えば節操のなさを感じさせるのですが、そんな音楽性に、とにかく音を詰め込んだようなサウンドメイキングとポップなメロディーという点は、J-POP的なものを感じます。そもそも彼女の作品からは様々な日本的な要素が見え隠れしており、まずは前作でも紹介しましたが、彼女の名前自体、ファイナルファンタジーXIIIのキャラクターから取られたもの。前作では日本人ラッパーのTohjiが参加していましたが、本作では、前述の「fish in the pool」は岩井俊二監督のアニメ映画「花とアリス殺人事件」に使われた楽曲のカバー。全体的にどこか日本的なものが漂い作風となっています。

そのため、ポップなメロといいサウンドといい、私たち日本人には耳なじみやすいのではないでしょうか。わかりやすいメロディーラインにはいい意味でのベタさも感じますし、個人的には前作に続いて、年間ベスト候補の傑作アルバムに仕上がっていたように思います。本作も高い評価を集めて注目の彼女。日本でももっともっとヒットを飛ばしそうな予感のするアルバムでした。

評価:★★★★★

yeule 過去の作品
Glitch Princess

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2023年10月22日 (日)

変らぬ魅力的なメロディーライン

Title:Nothing Lasts Forever
Musician:TEENAGE FANCLUB

デビューから30年以上を経た今でも精力的に活動を続けるイギリスのギターポップバンド、TEENAGE FANCLUB。2018年にソングライターの一人、ジェラード・ラヴが脱退を表明。バンドとしての活動が心配されたものの、2021年にはニューアルバム「Endless Arcade」を発表。さらにメンバー脱退がバンドに影響がないことをあえて示すかのように、前作からわずか2年。早くもニューアルバムがリリースされました。

とはいえ、もともとメンバーのうち3人がソングライターとして活動を続けていた彼ら。メインライターの一人が脱退したとはいえ、いまだにソングライターを2人抱えている点が大きな強みで、今回も残ったノーマン・ブレイクとレイモンド・マッギンリーの2人が、ちょうど交互に楽曲を書いている構成となっています。

基本的に楽曲はメロディアスでちょっと切ないギターポップというTEENAGE FANCLUBのいつものスタイルは変わりありません。特に前作と同様、メインライターが2人になったからこそ、2人の違いが際立つような楽曲構成になっています。まずやはり何よりTFCらしいと言えるのは、ノーマン・ブレイクの書いた楽曲群でしょう。暖かみのある優しくも、聴いていてちょっとキュンとなるようなメロディーラインが大きな魅力のノーマンの楽曲は、TEENAGE FANCLUBといってイメージされるような作風になっています。アルバムの冒頭を飾る「Foreign Land」はまさにいかにもTFCらしい作品。ほどよくノイジーなギターサウンドにアコギの爽やかな音色が加わり、暖かみのあるメロディーラインが大きな魅力。ピアノとコーラスラインでメランコリックに聴かせつつ、暖かみのあるメロディーラインが魅力的な「I Left A Light On」もノーマンの作品。アルバム後半の核となっているのもノーマンの作品で「Back To The Light」。暖かくもメロディアスなギターポップチューンが耳に残ります。

一方、ダウナー気味でちょっとひねったメロが魅力的なのがレイモンドの作品。「Tired Of Being Alone」ではギターサウンドにメランコリックなメロディーラインが大きな魅力ですし、ゆっくりとメランコリックなメロディーを聴かせる「Middle Of My Mind」も魅力的。「See The Light」のような優しくメロディアスな曲もしっかりと聴かせてくれており、もちろん彼の作品もTFCらしさを形作る大きな要素である点は間違いないでしょう。

正直なところアルバム全体としての目新しさはありません。大いなるマンネリと言ってもいいかもしれません。ただ、そんな印象を覆すだけの魅力的な美メロが大きな特徴の彼ら。メロディーラインの美しさゆえに、アルバムの最初から最後まで全く飽きることなく、聴くことが出来る傑作アルバムに仕上がっていました。そんな作風とは裏腹に「どんなものもいつかは終わる」という意味のアルバムタイトルがちょっと気になるのですが、ただ、彼らの活動はまだまだ続くものと信じて。この魅力的なメロディーラインに酔いしれたい、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

TEENAGE FANCLUB 過去の作品
Shadows
Here
ENDLESS ARCADE


ほかに聴いたアルバム

The Enduring Spirit/Tomb Mold

カナダ出身のデスメタルバンドによる4枚目のアルバム。基本的にダイナミックなバンドサウンドにデス声というスタイルは聴いていて素直にカッコよさを感じますし、そのサウンドはメタリックなサウンドながらも一方でどこか繊細さも感じられて魅力的。ただ一方、曲調的には全部、同じような感じになってしまっている点が若干残念な感じも・・・。

評価:★★★★

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2023年10月21日 (土)

代表曲を網羅したメモリアルライブをそのまま収録

Title:谷山浩子50周年イヤーフィナーレ ~コンサート2023~
Musician:谷山浩子

1972年のデビュー以来、決して大きなヒット曲には恵まれなかったものの、独特の世界観に基づく曲により、熱烈な支持を得てきたシンガーソングライター谷山浩子。昨年はデビュー50周年ということで様々な企画が行われたようで、50周年記念のオールタイムベスト「ネコとコバン」がリリース。また、50周年記念のコンサートも実施。彼女の代表曲を披露したコンサート「谷山浩子デビュー50周年コンサート」が実施されました。本作は、そのフィナーレとなる、今年4月に東京で実施されたコンサートの模様を収録されたライブアルバム。MCまで収録されたこのライブアルバムは、おそらく当日のコンサートをそのままフルに収録した内容となっており、当日の雰囲気をそのままパッケージした1枚となっています。

彼女の代表曲を披露したコンサートの模様を収録したアルバム・・・ということになっているのですが、非常にユニークなのは、昨年リリースされたオールタイムベスト「ネコとコバン」や、5年前にリリースされたシングル集「HIROKO TANIYAMA 45th シングルコレクション」と、さほど曲がかぶっていない点。例えばMCで、「人気投票でいつも1位になる」と言っていた「海の時間」はシングル曲のため「シングルコレクション」には収録されているのですが、「ネコとコバン」には収録されていません。また、ファンクラブ人気投票で2位となった「冷たい水の中をきみと歩いていく」に至ってはどちらのアルバムにも収録されていません。

それだけ50年という長きにわたって活動を続けている彼女だけに、「代表曲」「人気曲」といっても様々な曲があって、アルバム1枚2枚では網羅しきれない、ということはあるのでしょう。一方でこのライブアルバムでは彼女の他のミュージシャンへの提供曲でヒットを記録した「MAY」「テルーの唄」のセルフカバーも収録。おそらく一般的にはもっとも知名度があると思われる「みんなのうた」に提供した「恋するニワトリ」「まっくら森の歌」も収録されており、しっかり押さえるところは押さえられた選曲になっています。

また、御年67歳という大ベテランの彼女。しかしボーカリストとして、全く声の艶やハリにも衰えはありません。いい意味で非常に安定感もあって、アレンジについても基本的に原曲に忠実(と思われます)。そのため、基本的にベスト盤と同じような感覚で聴けるようなアルバムになっていました。

そしてなによりユニークなのはMCを完全に収録されているという点。それも比較的MCも多めで、彼女自身による代表曲の曲紹介で、選曲の背景についても知ることが出来ます。もともと作家志望だったという、彼女のデビューにまつわる話なども、ファンにとっては有名かもしれませんが、熱心なファンではない自分としては新鮮な話でした。

そういう選曲に加えて、MCで知ることが出来る情報を含めて、ライブアルバムでありながらも、なにげに谷山浩子入門盤としては最適なアルバムではないか、と感じた作品。ほんわかした彼女のトークからもライブの雰囲気も感じることが出来ましたし、とても魅力的なライブアルバムでした。しかし楽曲を聴いていると、いい意味で非常に個性的なミュージシャンだな、ということをあらためて感じるライブアルバム。ただ一方、個性的であるがゆえに、昔の曲を聴いても、全く時代を感じることがありません。それだけ普遍的な楽曲の魅力を昔から持っていたということを、時代を経たからこそ感じることが出来ます。

前述のように、彼女自身、残念ながらいままでヒット曲というものに恵まれていません。ただ、昔よりも様々なタイプのミュージシャンが出てきた今の時代ならば、ひょっとしたらもっとヒット曲がリリースできたのでは、とも思ってしまいました。もっとも彼女もまだまだ現役のミュージシャン。これからも十二分の大ヒットの可能性もあるかも?これからの活躍も楽しみですし、なによりも一度ライブに足を運びたいな、とも思わせてくれるライブアルバムでした。

評価:★★★★★

谷山浩子 過去の作品
ひろコーダー☆栗コーダー(谷山浩子と栗コーダーカルテット)
HIROKO TANIYAMA 45th シングルコレクション
谷山浩子ベスト ネコとコバン


ほかに聴いたアルバム

バットリアリー/Saucy Dog

約1年ぶり、7枚目となるSaucy Dogのミニアルバム。ほどよくロックなギターサウンドに、メランコリックに聴かせるメロディーラインが特徴的。ヒットした「シンデレラボーイ」のイメージよりはロック寄りな感じはするのですが、基本的には切なく聴かせるラブソングという路線は「シンデレラボーイ」で定着した彼らのイメージの延長線的な感じ。それなりに器用さを感じる反面、楽曲にはもうちょっとバリエーションも欲しいような。

評価:★★★★

Saucy Dog 過去の作品
レイジーサンデー
サニーボトル

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2023年10月20日 (金)

「日本最古のロックバンド」のよるベストアルバム

Title:50th Anniversary The Very Best of SENTIMENTAL CITY ROMANCE
Musician:センチメンタル・シティ・ロマンス

1973年に結成され、その後、「1度も解散していない日本最古のロックバンド」とされるセンチメンタル・シティ・ロマンス。まあ「日本最古のロックバンド」ということ自体は、誰も具体的に検証した訳ではないので本当かどうか微妙ですが、非常に長寿なロックバンドであることは間違いありません。今年はそんな彼らの結成50周年。本作は、そんな彼らの50年の歴史を振り返る、メンバーが楽曲をセレクトしたオールタイムベストとなります。

彼らについては決して詳しい訳ではなく、2011年にリリースされた現時点での最新アルバムを聴いたことある程度。彼らの楽曲をまとめて聴いたのは今回がはじめてなのですが、長い間活動を続け、多くのリスナーの支持を受けていることも納得の、彼らの実力を強く感じさせるベストアルバムになっていました。

特に今回のベストアルバムでは、彼らの楽曲はほぼ発表順に並べられており、彼らの歩みを知ることの出来る構成になっています。ユニークなのは、デビュー以降は彼らなりに音楽的な模索を続けていた点。デビューシングル「うちわもめ」はまずフォークロックの様相の強い作品になっていますが、2枚目のシングルに収録されている「あの娘の窓灯り」はブルージーな作風に。「マンボ・ジャパン」はタイトル通り、ラテン風なパーカッションが特徴的な楽曲となっています。

ただ、比較的、早い時点の作品から特徴的なのは、ウェストコーストサウンドをはじめとしたアメリカのロックからの影響。「U.S.タイムマシーン」などはタイトルからしていかにもアメリカを意識した作品になっていますし、「ハイウェイ・ソング」などもカントリーからの影響が顕著な作品。

このような彼らの音楽性が花開いたのが、ちょうどDisc1の終盤の頃のように感じます。「カモンベイブ」のようにサザンロックからの影響が顕著な洋楽テイストが強い作品が並んでおり、非常にクオリティーの高い作品が並びます。一方で「風景」のような和風な郷愁感を覚える作品もあったりして、洋楽的なテイストを主軸としつつ、和風な作風も加味した、いい意味で日本のロックバンドとしての特質を生かしたような名曲が並んでいました。

また、彼らのもうひとつ大きな特徴なのが名古屋を拠点として活動を続けてきた点でしょう。「うちわもめ」など思いっきり歌詞の中に名古屋弁を入れてきますし、名古屋近郊の著名な海水浴場の名前をタイトルにつけた「内海ラブ」などという曲もあります。博多出身のバンドを「めんたいロック」などを称することがありますが、ロックバンドでこれだけ地域性を押し出すのも珍しい感じもします。

一方、Disc2になると80年代テイストを取り入れた作品が目立ってきます。ここらへん、時代に応じて変化していった点も彼らの実力とも言えるでしょう。ただ、フュージョンのサウンドを取り入れたこの頃の作品は、シティポップの先駆け的な魅力はあるものの、時代を感じさせる曲が多く、率直なところ、今聴くと、古臭く感じてしまう部分も事実。「ルーシー」のような、TEENAGE FANCLUBを彷彿とさせるような爽やかなギターポップのような魅力的な曲もあるのですが、ちょっと失速気味といった印象も。さらに時代を下ると、全盛期は絶妙なバランスを保っていた洋楽的な部分と歌謡曲的な部分の両立が、悪い意味で歌謡曲的な部分に偏ってしまい、よくありがちな「マンネリ気味のベテランバンド」的になってしまっているのは残念にも感じました。

残念ながら最初から最後まで名曲揃い・・・とまではいかないものの、特に全盛期に関しては、間違いなく日本のポップ史上に残りうるバンドだった実力を感じさせます。バンド歴が長いという点が実力に直結する訳ではないのですが、それだけ長く、ファンを魅了してきた点を加味すると、やはりその長いバンド歴に裏付けされたキャリアは伊達じゃない、という印象を受けるベストアルバムでした。残念ながらメインボーカルの中野督夫はおととしに逝去してしまいましたが、残ったメンバーで活動は続けている模様。「日本最古のロックバンド」の記録はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

センチメンタル・シティ・ロマンス 過去の作品
やっとかめ


ほかに聴いたアルバム

GUITARHYTHM Ⅶ/布袋寅泰

布袋寅泰のライフワークともなっている「GUITARHYTHM」シリーズの第7弾。いきなりオーケストラアレンジの曲からスタートするなど、タイトルとは裏腹に、ギター色が薄いのか、と思いきや、その後はバリバリのギターサウンドを聴かせてくれます。ただ、基本的にオルタナ寄りの曲があったり、ハードロックの曲があったり、エレクトロを取り入れたり、フュージョン風の曲があったりと、ギターと一言で言ってもその音楽性の広さはさすがと言った感じ。しかし一方で、メロディーラインがどうもJ-POP路線に走ってしまっているあたりは、ちょっと陳腐な部分もあったりして、残念な感じも・・・。

評価:★★★★

布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-
Paradox
GUITARHYTHM VI
Soul to Soul
Still Dreamin'

One for the show/竹原ピストル

全編弾き語りの竹原ピストルによるライブアルバム。全57曲3時間半、CDにして3枚組というボリューミーな内容ながらも、弾き語りということもあり、アコギ一本で聴かせるその歌は、とにかく歌詞が突き刺さってくるような内容。それだけに、これだけボリューミーな内容ながらも、意外とダレることなく最後まで一気に聴き切れるようなアルバムになっていました。ただ、聴き終わった後はどっぷりと疲れますが・・・。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT
GOOD LUCK TRACK
It's my Life
STILL GOING ON
悄気る街、⾆打ちのように歌がある。

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2023年10月19日 (木)

まだ「アイドルグッズ」のチャートに逆戻り・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は久しぶりに非アイドル系の活躍が目立ったHot Albumsでしたが、今週は残念ながら再び「アイドルグッズのチャート」に逆戻りしてしまっています・・・。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「The Name Chapter:FREEFALL」。CD販売数1位、ダウンロード数3位。韓国盤の3枚目となるフルアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上22万5千枚で1位初登場。直近作は日本盤のアルバム「SWEET」で、同作の初動30万3千枚よりダウンしています。

2位はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループBUDDiiS「BRiLLiANT」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数40位。本作がデビューアルバム。オリコンでは初動売上5万1千枚で2位初登場。

そんな「アイドルグッズ」のチャートの中、気を吐いているのがYOASOBI「THE BOOK 3」が先週からワンランクダウンしたものの今週もベスト3入りを記録。CD販売数3位、ダウンロード数は先週から変わらず1位をキープしています。YOASOBIは「THE BOOK」も先週と変わらず10位をキープ。こちらはこれで通算28週目のベスト10ヒットとなりました。

続いて4位以下のベスト10ヒットですが、まずアイドル系。4位にハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juice「Juicetory」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数2位。10周年を記念したベストアルバム。オリコンでは初動売上1万8千枚で4位初登場。直近作はオリジナルアルバムの「terzo」で、同作の初動1万9千枚(1位)より若干のダウンとなっています。

7位には韓国の男性アイドルグループEXOのメンバーD.O.「期待」がランクイン。CD販売数7位。ソロ2作目となるミニアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場(名義は原題の「Expectaion」)。前作「共感(Empathy):1st Mini Album」では発売日の関係で2週目にベスト10入りしていますが、その際の売上枚数1万4千枚(4位)からはダウンしています。

アイドル系はあと1枚。9位に鷲尾伶菜「For My Dear」が初登場。CD販売数9位、ダウンロード数24位。元E-Gairlsのメンバーによるソロ2枚目のアルバム。オリコンでは初動売上5千枚で10位初登場。伶名義でリリースした前作「Just Wanna Sing」(8位)から初動枚数は横バイ。

一方、とは言うものの今週はロック系のランクインも。まず5位にパンクロックバンドWANIMA「Catch Up」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上1万7千枚で5位初登場。直近作がMONGOL800とのスピリットEP「愛彌々」で、同作の初動1万枚(8位)よりはアップ。前作でミニアルバム「Cheddar Flavor」の3万枚(2位)からはダウンしています。

もう1枚。8位にロックバンドflumpoolのベストアルバム「The Best flumpool 2.0 ~ Blue[2008-2011] & Red[2019-2023] ~」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数58位。「花になれ」や「星に願いを」のヒット曲を放ちつつ、紅白へ3年連続出場も果たした人気バンドの彼らでしたが、2017年に活動を休止。その後、2019年から活動を再開し、今回、2枚目のベスト盤である本作をリリースしています。本作は10月9日リリースということで、オリコンでは先週のランキングで初動売上5千枚で9位にランクイン。直近のオリジナルアルバム「A Spring Breath」(14位)からは初動売上は横バイ、ベストアルバムとしての前作「The Best 2008-2014『MONUMENT』」の初動売上4万1千枚(3位)からは大きくダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年10月18日 (水)

Adoが新たなロングヒットか?

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も見事に1位をキープしています。

Ado_show

今週も1位はAdo「唱」が獲得。これで4週連続の1位獲得となりました。ストリーミング数は4週連続、YouTube再生回数も2週連続の1位。ダウンロード数も今週2位から1位にアップし、圧倒的な強さを見せています。またここに来て、カラオケ歌唱回数も48位から18位へと一気にアップしています。「アイドル」に続く大ヒット曲になりそうです。

Adoは今週、「クラクラ」が先週の19位から9位にランクアップ。ダウンロード数5位、ストリーミング数19位、ラジオオンエア数8位、YouTube再生回数17位。テレビ東京系アニメ「『SPY×FAMILY』Season 2」オープニングテーマ。これでAdoはベスト10圏内に2曲同時ランクインとなっています。

2位は男性アイドルグループINI「HANA 花」が獲得。CD販売数及びラジオオンエア数1位、ダウンロード数4位、ストリーミング数77位、YouTube再生回数26位。韓国発祥のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2」から誕生した韓国製J-POPアイドル。オリコンでは同作も収録している「TAG ME」が初動30万6千枚で1位初登場。前作「DROP That」の初動34万6千枚(1位)からダウンしています。

3位には、まだまだ強いYOASOBI「アイドル」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数及びYouTube再生回数がここに来て3位から2位にアップ。ダウンロード数も10位から8位にアップと、ここに来て、アップ基調となっています。カラオケ歌唱回数も18週連続の1位をキープ。これで27週連続のベスト10ヒット&通算26週目のベスト3ヒットとなっています。YOASOBIは先週2位にランクインした「勇者」も、2ランクダウンながらも今週4位にランクイン。Adoと同様、2曲同時のベスト10入りとなっています。

続いて4位以下ですが、今週の4位以下初登場曲は上記のAdo「クラクラ」のみ。ロングヒット曲が並んでいます。まず6位にはキタニタツヤ「青のすみか」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず5位、YouTube再生回数も変わらず11位をキープ。一方、ダウンロード数は7位から10位にダウンしています。これで15週連続のベスト10ヒット。

Vaundy「怪獣の花唄」は9位から8位にワンランクアップ。ストリーミング数は先週と変わらず10位、YouTube再生回数は12位から15位にダウン。一方、ダウンロード数は21位から17位にアップしているほか、カラオケ歌唱回数は21週連続の2位となっています。これで42週連続のベスト10入り。

BTSのメンバーJung Kookのソロシングル「Seven(feat.Latto)」も先週と変わらず10位をキープしており、これで通算13週目のベスト10ヒットに。ただ、ストリーミング数は7位から8位、ダウンロード数も56位から66位、YouTube再生回数も16位から25位にダウンと、全体的には下落傾向となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年10月17日 (火)

わずか5か月での新作

Title:Laugh Track
Musician:The National

4月にリリースした前作「First Two Pages of Frankenstein」からわずか約5か月。USインディーバンドの雄とも言えるThe Nationalの新作が早くもリリースされました。ただ、今回のアルバム、ジャケット自体、前作とほぼ同じようなジャケット・・・というよりも、こちらのジャケットを加工したのが前作のジャケット写真と思われるような写真を使用しています。実際、今回のアルバムは前作「First Two Pages of Frankenstein」の時のセッションで作られた作品が元となっているとか。そういう意味では前作とは「兄弟」のような立ち位置のアルバムと言えるかもしれません。

実際、楽曲の方向性としては前作と同じような作風の曲が並んでいます。前作ではピアノやストリングスを使いメランコリックに聴かせる一方、時折入るダイナミックなバンドサウンドとの対比が印象に残るような作品でしたが、今回のアルバムも同様、ピアノやストリングスを用いたメランコリックな優しいメロディーを聴かせつつ、一方ではダイナミックなバンドサウンドが印象に残る作風になっていました。

例えば「Turn off the House」など、ピアノやエレクトロサウンドを用いてメランコリックにかつドリーミーに聴かせつつ、ドラムの力強いリズムにダイナミック作品になっています。また「Space Invador」などもピアノも入ってメランコリックに聴かせつつ、バンドサウンドを加えた分厚いサウンドでダイナミックに聴かせるナンバーに仕上がっています。後半の「Crumble」もブルージーなギターを入れつつ、哀愁感たっぷりに聴かせるブルースロックのナンバーに仕上がっています。

ただ、全体的には前作以上にメランコリックで、かつダウナーな作品が目立ったのが今回の作品。前作と同じセッションで収録されつつも、前作には収録されなかった曲、ということもあって、前作よりも地味な作品が多かったといった感じでしょうか。ちょっとインパクトという面では一歩下がってしまっている点は否めませんでした。

もっとも、とはいえ美しいメロディーラインが印象的なThe Nationalの楽曲。インパクトは弱めでも、聴いているうちに味が出てくるような、そんな作品が並びます。特にBon Iverが参加した「Weird Goodbyes」などは、Bon Iverのボーカルも印象的な、聴いていて胸がキュンとなりそうな切ない歌が魅力的な楽曲。前作にも参加したPhoebe Bridgersも参加した、タイトルチューンの「Laugh Track」もフォーキーな作風の、切なくメロディアスな歌が強く印象に残る作品に。その他にも決して派手さはないものの、メランコリックなメロが魅力的な歌が並んでおり、The Nationalの魅力を存分に味わえるような作品が並んでいました。

確かに名曲揃いで、ちょっと地味な感はあるものの、このまま埋もれておくには惜しすぎる作品ばかり。そういう意味で前作からわずか5か月でニューアルバムをリリースしてきた点には納得がいきます。これだけの傑作を続けてリリースしてくるあたりにも、バンドとして脂がのっているような印象も受ける彼ら。その魅力を存分に味わえた作品でした。

評価:★★★★★

The National 過去の作品
Sleep Well Beast
I Am Easy To Find
First Two Pages of Frankenstein

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2023年10月16日 (月)

吉井和哉の音楽性がより明確になった2枚目のベスト盤

Title:20
Musician:吉井和哉

ソロデビュー20周年を記念してリリースされた、THE YELLOW MOKEYのボーカリスト、吉井和哉のベストアルバム。今回のアルバムは2013年にリリースされたベストアルバム「18」に続く2作目のベストアルバム。そのため、収録曲としては前回のベストアルバム以降の曲を中心に集めたアルバムとなります。ただ、YOSHII LOVINSON時代の曲も「SWEET CANDY RAIN」「JUST A LITTLE DAY」の2曲を収録。この2曲は前のベストアルバムに収録されていなかったので、今回、あえてピックアップした、ということでしょうか。

吉井和哉、というかTHE YELLOW MONKEYから続く音楽的な特徴として、グラムロックをはじめとする洋楽テイストの強いロックチューンを奏でつつも、メロディーラインには色濃く歌謡曲の要素を感じさせる点が大きなポイントでした。この洋楽テイストのロックを奏でつつも、メロディーラインは歌謡曲的という特徴は、正直なところ、J-POPの中では珍しくありません。むしろありふれている、といってもいいかもしれません。

ただ、えてして多くのJ-POPミュージシャンは、この歌謡曲的な部分に関しては非常に無意識なように感じます。その結果として、洋風のサウンドに対して歌謡曲的なメロがチグハグだったり、あるいはベタなメロディーラインが単調に聴こえたりといった感があり、正直、楽曲としておもしろくない、と感じたことは多々ありました。

そんなJ-POPミュージシャンと吉井和哉の大きな違いは、歌謡曲的であることに彼が自覚的である、という点のように感じます。特に吉井和哉は2014年に歌謡曲のカバーアルバム「ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~」をリリースしています。もともとTHE YELLOW MONKEYの初期から歌謡曲的な部分は大きく注目されていましたが、今回のベストアルバム、そのカバーアルバムリリース後の作品がメインということもあって、より自覚的に歌謡曲的な方向性がはっきりとしたベストアルバムだったようにも感じます。

「みらいのうた」もしんみりメランコリックなメロディーが和風な郷愁感を覚える楽曲になっていますし、ヘヴィーなバンドサウンドが展開される「〇か×か」なども、完全に哀愁感たっぷりのメロディーラインが歌謡曲的。YOSHII LOVINSON時代の収録曲「SWEET CANDY RAIN」も歌謡曲的なメランコリックさがあふれるミディアムチューンナンバーなのですが、それだけに歌謡曲テイストという方向性がより明確になった今回のベストアルバムに収録されたのでしょうか。

ちなみに今回のベストアルバム、「ヨシー・ファンクJr.」からもピンク・レディーの「ウォンテッド(指名手配)」が収録されていますが、これが非常にカッコいい!力強いギターサウンドが刻む、ヘヴィーロックなカバーとなっており、まさに歌謡曲の王道を行くような原曲が、吉井和哉の手により、いい意味での「歌謡ロック」にまとめあげられています。

ある意味、ソロ20年目のベストアルバムということで、吉井和哉の音楽性がより明確になったベストアルバムと言えるのかもしれません。ただ、全曲、THE YELLOW MONKEYでもよかったのでは?とも思ってしまうあたりはちょっと気になってしまいます。再結成後もアルバム1枚しかリリースしていませんし・・・。それはともかく、文句なしに吉井和哉の魅力を認識できるベストアルバム。これからの彼の活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18
AT THE SWEET BASIL
ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!!~
STARLIGHT
SUPERNOVACATION
ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~
SOUNDTRACK~Beginning&The End~

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2023年10月15日 (日)

プレイヤーの表現力が光る新プロジェクト

Title:Sonicwonderland
Musician:上原ひろみ Hiromi's Sonicwonderland

アルバム毎に様々なミュージシャンとコラボを組んでアグレッシブな活動を続けているジャズピアニスト、上原ひろみ。今回は、新たにHiromi's Sonicwonderlandと名付けたプロジェクトをスタート。ベースには新進気鋭のジャズベーシストとして注目を集めているアドリアン・フェロー、ドラムには、ラリー・カールトンのツアードラマーとしても活躍しているジーン・コイ、そしてトランペットにキューバを代表する作曲家、チコ・オファーリルの孫、アダム・オファリルを迎えての豪華メンバーによるカルテットとなりました。

毎回、様々なミュージシャンとコラボを組んで挑戦的な試みを行っている彼女。今回のアルバムについては、「彼女としては」という鍵カッコはつきますが、比較的、王道のモダンジャズ路線の楽曲が並ぶアルバムになっていたように思います。1曲目の「Wanted」はメランコリックさを感じるトランペットの響きは印象的ながらも、シンプルなジャズ。「Polaris」は郷愁感たっぷりのトランペットとピアノで静かに聴かせるムード感あふれるナンバーに。「Utopia」もメンバーがそれぞれの音で会話しているかのようなメランコリックなサウンドが印象的なジャズナンバーに。正直なところ目新しさのようなものは少ないながらも、一方では表現力あふれるフレーズを要所要所に組み込み、シンプルがゆえにプレイヤーの実力がダイレクトに伝わるようなアルバムに仕上がっていたように感じました。

特にユニークなのが「Up」で、どこかで聴いたことあるような・・・と思ったら、こちら、映画「BLUE GIANT」の曲をブラッシュアップさせて完成させた曲だそうで、映画で聴いたことあるフレーズが登場してきます。こちらも勢いあるピアノの音色が上原ひろみらしい楽曲なのですが、9分近くに及ぶ長尺の楽曲に聴かせるメンバーの表現力あるプレイが印象的。彼女の刺激的なフレーズを奏でるピアノソロにも惹き込まれます。

また、そんなアルバムの中にもユニークな作風の曲が織り込まれており、アルバムにインパクトを加えています。タイトルナンバー的な「Sonicwonderland」ではユーモラスなエレピの音が入り、疾走感あふれる楽曲に。ファンクネスを感じるリズムもあわせて、ロッキンな要素を感じさせる楽曲になっています。また「Go Go」でもシンセの音を取り入れてスペーシーな雰囲気も。こちらも独特なタイム感のある上原ひろみのピアノソロが印象的な作品になっています。

その後もシンガーソングライターのオリー・ロックバーガーを迎えた「Reminiscene」では、彼のだみ声のボーカルが加わった郷愁感あふれる歌モノのポップチューンに仕上げていますし、最後を締めくくる「Bonus stage」では、いままでの雰囲気とは打って変わって、ニューオリンズ風の軽快でコミカルな、楽しいサウンドを聴かせてくれる楽曲に。タイトル通り、Sonicwonderlandにとってのボーナスステージ的な作品に仕上がっています。

ある意味、王道的な路線にまとめたからこそ、プレイヤーとしての実力がより表に出てきた作品のようにも感じたアルバム。さすが上原ひろみ・・・また、そう感じさせる作品をリリースしてきました。今回のアルバムもまた、文句なしの傑作です。

評価:★★★★★

上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK (上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)
Spectrum
Silver Lining Suite(上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット)
BLUE GIANT(オリジナル・サウンドトラック)


ほかに聴いたアルバム

暑さのせいEP/大滝詠一

Atsusanosei

逝去後の方がリリースペースがあがっている感じのする大滝詠一の新作は9曲入りのEP盤。タイトル曲「暑さのせい」を含む、夏にまつわる貴重な音源を収録した作品。ただ、1分に満たないジングルや、デモ音源的な作品も収録されており、全体的にはファンズアイテム的な感じも強い作品に。サブスクでは問題なく聴けるものの、CD版は8cmの短冊型という、今となっては懐かしい形式でのリリースとなっている点も話題に。その点も含めて、基本的にはファンズアイテムといった感じでしょうか。

評価:★★★★

大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition
Best Always
NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-
DEBUT AGAIN
NIAGARA CONCERT '83
Happy Ending
A LONG VACATION 40th Anniversary Edition
大瀧詠一 乗合馬車 (Omnibus) 50th Anniversary Edition
大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK/NIAGARA ONDO BOOK

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2023年10月14日 (土)

Netflixの番組から生まれた6曲入りのEP盤

Title:LIGHTHOUSE
Musician:星野源

Lighthouse

配信シングルはコンスタントにリリースしているものの、アルバムのリリースとしては久々となる星野源の新作。今回は配信限定の6曲入りのEP盤で、もともとNetflixのトークバラエティー「LIGHTHOUSE〜悩める2⼈、6ヶ⽉の対話〜」に出演した彼が、同番組のエンディングとして書き下ろした曲を収録。全6回、オードリーの若林正恭と日常生活や悩みについて語り合った番組だそうで、楽曲もその対話に基づいて作成された曲になっているそうです。

そういう意味では企画盤的な様相の強い作品。そんな語り合いから誕生した曲ということもあり、全体的に歌詞も曲調も内省的なものとなっています。例えば「灯台」では目標にむけてもがく姿を描いていますし、「解答者」では現状にもがく姿を描いています。また、「Orange」ではラッパーとしてMC wakaが参加・・・って、これ、オードリーの若林正恭なんですね。彼がラッパとして(というか、ラッパーの物まね的な)気だるいラップを聴かせてくれているのですが、この曲の歌詞はおそらく彼の過去を描いた歌詞のように思われます。

メロディーラインについても内省的であるゆえにあまり派手さはありません。ただEPとしての前作「Same Thing」は星野源の「ミュージシャン」としての側面が強く出た、「恋」や「ドラえもん」のヒットで見せた、お茶の間向けの側面というよりも、もっとコアなファンに向けた楽曲が並んでいましたが、今回のEPについても同様。ミュージシャン星野源の「趣味性」を遺憾なく前面に出したアルバムに仕上がっていました。

例えば冒頭を飾る「灯台」はファルセットボーカルでしんみり聴かせるアコギ弾き語りの作品。派手さはないものの、しっかりと「歌」を聴かせる作品に。「解答者」もシンセの音を入れた、ちょっと80年代を彷彿とさせるフュージョン風のサウンドが特徴的。「仲間はずれ」ではダイナミックなロックサウンドを入れつつ、ラップ的なボーカルも入れてきていますし、さらにMC wakaが参加した「Orange」はまさにダウナーでトラップの要素を取り入れたHIP HOPな作品と、幅広く、また挑戦的な音楽性を感じさせます。

比較的ポップな星野源という側面を見せるのは続く「しかたなく踊る」くらいでしょうか。明るくテンポよいダンスチューンは、お茶の間の星野源のイメージに沿った作品になっています。かと思えばラストの「Mad Hope」ではLouis ColeとSam Gendelという超豪華なミュージシャンが参加。わずか35秒という短い曲なのですが、今風なエレクトロジャズの要素を取り入れた、これまた彼の趣味性を強く押し出した作品になっていました。

そういう訳で前作「Same Thing」同様、決してお茶の間での星野源のイメージのようなポップソングを聴かせてくれる訳ではないのですが、彼のミュージシャンとしての矜持を感じさせる、音楽性の高い作品が並んでいました。派手さはないのですが、星野源のミュージシャンとしての実力を感じさせる作品。長さとしてはわずか14分なのですが、非常に密度の濃い、彼の才能のつまったEP盤でした。

評価:★★★★★

星野源 過去の作品
ばかのうた
エピソード
Stranger
YELLOW DANCER
POP VIRUS
Same Thing


ほかに聴いたアルバム

The Moonlight Cats Radio Show Vol. 3/Shogo Hamada & The J.S.Inspirations

浜田省吾による洋楽カバーアルバム第3弾。「Please Mister Postman」「Twist And Shout」などといった、比較的知名度の高いオールディーズの楽曲をカバーした作品。基本的にカバーや歌い方を含めて、原曲に準拠したシンプルなカバーが多く、原曲への敬意も感じられるカバーアルバムに。浜田省吾らしさというのは薄いのですが、ただ逆に、この原曲に対する率直なリスペクトが、浜田省吾らしいと感じることも出来るかもしれません。

評価:★★★★

浜田省吾 過去の作品
the best of shogo hamada vol.3 The Last Weekend
Dream Catcher
Journey of a Songwriter~旅するソングライター
The Moonlight Cats Radio Show Vol.1(Shogo Hamada&The J.S.Inspirations)
The Moonlight Cats Radio Show Vol.2(Shogo Hamada&The J.S.Inspirations)
In the Fairlife

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2023年10月13日 (金)

今、大注目のフィメールラッパー

Title:Like...?
Musician:Ice Spice

今回紹介するのは、現在、アメリカでもっとも注目されている女性ラッパー、Ice Spice。本作がデビュー作となるLP盤。もともと1月に6曲入りのEP盤としてリリースされたものを7月にデラックスエディションとして全11曲入りとし、曲順も入れ替えて再リリース。今回、少々遅ればせながら、このデラックスエディションを聴いてみました。

彼女はニューヨーク・ブロンクスという、まさにHIP HOPの本場中の本場出身の23歳。アフリカ系アメリカ人の父親とドミニカ人の母親の間に生まれたそうです。ちなみに父親も、もともとアンダーグラウンドシーンで活動していたラッパーだったとか。2021年にシングル曲「Bully Freestyle」でデビューした彼女は徐々に注目を集め、特に本作でも収録された「Munch(Feelin'U)」はあのラッパーのDrakeに絶賛されたそうです。さらに本作では「Princess Diana」であのニッキー・ミナージュをフューチャーしています。

そんな彼女のラップはトラップから発展したドリル・ミュージックというジャンルだそうで、細かいビートが特徴的。もともと犯罪を描写した歌詞が特徴的で、社会問題になったこともあるそうです。ただし、彼女の歌詞は、ドラッグについて綴っているものもあるものの、どちらかというと、この強烈なジャケット写真からも彷彿とさせるような強烈なセクシャリティーを前面に押し出したものが多いものとなっています。

ただ、そういう話も前提としつつ、アルバム全体としてはいい意味でポップと表現できる聴きやすさを感じる内容になっていました。ちょっとケダるさも感じさせるダウナー気味のラップも耳に残るのですが、例えば1曲目の「How High?」など軽快なリズムが聴きやすく、いい意味での「ポップ」さを感じさせる楽曲になっていますし、前述のニッキー・ミナージュをフューチャーした「Princess Diana」も不穏な感じを漂わせつつ、リズミカルなラップがいい意味での聴きやすさを感じさせます。

他にもトライバルなリズムが特徴的な「Deli」は疾走感のあるリズムにインパクトがありますし、「Gangsta Boo」も軽快なリズムとトラックがどこかメロディアスにも感じます。そして注目を集めた「Munch(Feelin'U)」はドリル・ミュージックのビートを前面に押し出したリズミカルなナンバー。急くようなラップがリズムとピッタリとマッチし、聴き手に強い印象を与える作品になっています。

注目のラッパーとはいえ、本作はまだビルボードでは最高位15位に留まっており、本格的なブレイクはまだこれから、といった感じもします。それだけに、アルバムとしてはデビュー間もないミュージシャンらしい勢いも感じさせる内容になっており、今後にも期待できそう。日本でも今後、その名前を聴く機会が増えていきそうな予感もします。間違いなく、注目しておきたいラッパーです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

World Music Radio/Jon Batiste

昨年のグラミー賞では、自身のアルバム「We Are」と映画「ソウルフル・ワールド」の音楽で、11部門にノミネートし、5部門を受賞するという驚異的な結果を残したシンガーソングライター、ジョン・バティステ。その話題作に続く新作は、「すべての音楽はワールドミュージックではないのか?」という彼の本質的な問いに基づくコンセプチャルな作品に。タイトル通り、テーマ性を持ったラジオを聴いているように、レゲエ、ジャズ、R&B、ロック、ソウル、ブルースなど、様々なジャンルを織り込みつつも、しっかりと統一感を持たせた作風になっています。前作で見せた実力は伊達ではないことを証明した新作。バラエティー富んだ作風で最後まで飽きずに楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

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懐かしのアルバム再現ツアー!

TRICERATOPS "THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK"25TH ANNIVERSARY TOUR RETURN OF THE GREAT SKELETON 2023

会場 THE BOTTOM LINE 日時 2023年10月6日(金)19:00~

Triceralive

本当に久々となるTRICERATOPSのワンマンライブに足を運んできました!今回のツアーは1998年にリリースされた彼らの2枚目のアルバム「THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK」リリースから25周年を経過したことによる記念ツアーだそうで、同作の再現ライブというツアー。「THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK」というと、私が「Raspberry」ではじめてトライセラを知って、彼らにはまった後、はじめてリアルタイムで購入したアルバムということで思い入れもある1枚。そういうこともあり今回久々にトライセラのワンマンライブに足を運んできました。

過去の記録をさかのぼると、トライセラのワンマンは2004年の「LICK&ROCKS TOUR」以来、実に19年ぶり(!)。そんなにご無沙汰しちゃったんだ・・・かなり久々となったトライセラのライブなのですが、会場は、やはりほぼ全員、私と同世代の40代後半あたりの人たちばかり。あと、昔と比べると、かなり男性比率があがったな、ということを感じました。

予定時間を5分程度過ぎたところで会場が暗くなりライブスタート。1曲目はいきなり彼らの代表曲とも言える「Raspberry」からスタート。会場のテンションは一気に上がります。その後は「スカルの柄」「Ace」と続きます。その後は簡単なMC。この日は「THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK」の再現ツアーながらも、最初は通常のセットからスタート。その後も「Couple Days」と続き、さらにライブの定番曲で懐かしの「ロケットに乗って」へと続き、会場は盛り上がります。

ここで会場は一度暗転。ちょっと間をあけると、ヘヴィーなセッションから「PARTY」へと突入。ここからは「THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK」の再現となります。「MIRROR」「GUATEMALA」と続いていき、やはり盛り上がるのは「FEVER」。ここでまずはテンションが一気に上がります。

その後はちょっと長めのMCに。まず質問で、25年前のツアーに来た人!というのがありました。私、TRICERATOPSではじめて行ったライブが1999年のこのアルバムのツアーのファイナル、いまは亡きZepp Tokyoのこけら落としだったんですよね・・・。もちろん思いっきり手を挙げたのですが、他にも数名、手をあげた人がいました。その後はおなじみの名古屋ネタ。ご存じの通り、ドラムスの吉田佳史が名古屋出身ということで、具体的な地名も登場する地元ネタで盛り上がります。さらにMCでは「元の音源と違うアレンジでライブを演ることの是非」という話で、軽くスカアレンジの「Raspberry」が披露されたりもしました。

その後は「Gコーナー」ということで、「GREEN」「GOOD TIMES」「GOTHIC RING」と頭文字が"G"の曲が続きます。ひょっとしてそのまま「GOING TO THE MOON」か?と思いきや、それは演らず、ここで再びMC。ここではかつての振り付けの話に。当時は決まった振り付けのあることにかなり反発していたそうで、手を横に振る振り付けもNG。そうそう、確かにあの頃って、ヴィジュアル系が「捧げ手」と呼ばれる一糸乱れぬ振り付けをファンが行っていたことから、オルタナ系のロックバンドは、そういう振り付けを行われることを極端に嫌がっていたよね、と懐かしく思い出しながら聴いていました。この日は逆に、そんな振り付けがピッタリ来る曲、ということでスピッツの「スパイダー」とゆずの「夏色」が演奏され、ちょっとしたカバーコーナーになりました。

その後は再び「THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK」の曲ということで、「CARAMEL TEA」「LIP CREAM」へと続き、最後は「SHORT HAIR」へ。もちろん、演ってくれることは当然わかっていたのですが、個人的にトライセラの曲の中でも、微妙に切ないメロがたまらない大好きな曲なだけに、やはりライブで聴けたのがとてもうれしく、テンションがあがりました。

これで本編は終了。もちろん、盛大なアンコールが起こります。アンコールでは、和田唱と林幸治はあらわれたものの、ドラムの吉田佳史があらわれません。かと思えば、いきなり銀のプロレスマスクをかぶった謎な人物が登場。メキシコから来たプロレスラーの「グレイトスケルトン」と名乗る謎の人物は、トライセラの大ファンであることを自称。ドラムも出来るということで、なぜか、この「グレイトスケルトン」含めての3人でのステージで、「MASCARA&MASCARAS」となりました。

で、1曲で、この「グレイトスケルトン」なる謎のプロレスラーは退場。変わりに吉田佳史がステージに戻ってきました(笑)。メンバー3人が揃ったところでMCに。ここではこの日の物販の紹介から、その後はかなりレアなバラードナンバー「I Can't Tell You Anymore」へ。LISAとコラボしたシングル「Believe the Light」のカップリング曲という、かなりレアな1曲。メロウなバラードナンバーを歌い上げてくれました。

そしてラストは「Fly Away」「トランスフォーマー」という、ライブでも大盛り上がり必至のナンバーへ。もちろん会場のテンションは最高潮となり、ライブは幕を下ろしました。大ボリュームのライブで、約2時間45分という、かなり長丁場のステージでした。

TRICERATOPSのライブは本当に久しぶりだったのですが、いやぁ、楽しかった!!もちろん「THE GREAT SKELETON'S MUSIC GUIDE BOOK」からの曲が懐かしく、テンションが上がったということもあったのですが、それ以外の曲も非常に盛り上がり、久しぶりのワンマンだったのですが、やはりTRICERATOPSの曲は自分にとって壺だ、ということを再認識させられたステージとなりました。前回のワンマンから19年もご無沙汰していたのですが、やはりもうちょっと足を運べばよかったな、ということに若干後悔。次のワンマンライブも、日程があえば是非とも足を運びたい、そう思ったこの日のステージでした。

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2023年10月12日 (木)

久しぶりに非アイドル系が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

最近は、すっかり「アイドルグッズの人気ランキング」の場となっていたアルバムチャートでしたが、今週は久々、アイドル系以外のランクインが目立つ結果となっています。

そんな中でも今週は、新旧の覇者とも言える2組が1位2位にならびました。それが十年以上、J-POPのトップに君臨し続けるMr.Childrenと、ここ数年、若い世代を中心に圧倒的な人気を誇るYOASOBI。結果としてはMr.Childrenの最新アルバム「miss you」が1位を獲得。まだまだその人気を見せつける結果となりました。

「miss you」はCD販売数で1位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上16万4千枚で1位初登場という結果となっています。一方、YOASOBIのEP「THE BOOK 3」は今週2位に初登場。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上7万1千枚で2位初登場となっています。

Mr.Childrenは直近作がベスト盤「Mr.Children 2015-2021 & NOW」「Mr.Children 2011-2015」で、同作の初動売上19万3千枚(1位)及び18万5千枚(2位)よりはダウン。またオリジナルアルバムとしての前作「SOUNDTRACKS」の27万9千枚(1位)からもダウンしています。YOASOBIは前作「THE BOOK 2」の初動8万枚(2位)よりダウンしています。

まだまだ根強いミスチル人気を感じさせる結果になっていますが、一方でもうYOASOBIのリスナー層は「アルバム」という形態で聴かないのかもしれませんし、ましてやCDなどは買わないのかもしれません。そういう意味ではこの結果で一概に現時点でミスチルとYOASOBIの人気の比較は出来ないのかもしれませんが・・・。一方YOASOBIは、「THE BOOK 3」リリースのタイミングで「THE BOOK」が先週の19位からランクアップし10位にランクイン。昨年1月5日付チャート以来のベスト10返り咲きを果たしています。「THE BOOK 2」も今週15位にランクアップしており、新作リリースに合わせて過去作がランクアップしてくるあたり、YOASOBI人気を裏付ける結果と言えるかもしれません。

3位はアイドル系。日本人男性アイドルグループJO1「EQUINOX」が先週の6位からランクアップし、2週ぶりにベスト3に返り咲いています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位に-真天地開闢集団-ジグザグ「慈愚挫愚 四 -最高-」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数3位。和製ファンタジー風のコンセプチュアルなヴィジュアル系バンドの4枚目のフルアルバム。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。前作「慈愚挫愚 参 -夢幻-」の初動8千枚(3位)からアップ。90年代に一世を風靡したビーイング系のGIZA studioの傘下レーベル所属の、いわばビーイング系ミュージシャンなのですが、ひょっとしたら今、ビーイング系で最も売れているのは彼らかも?

5位初登場は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会「Fly with You!!」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数4位。声優によるアイドルプロジェクト「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」及び「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に登場する架空のアイドルグループ。オリコンでは初動売上1万枚で4位初登場。前作「L!L!L! (Love the Life We Live)」の初動1万8千枚(7位)からダウンしています。

6位にはfine「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数20位。男性アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」のキャラクターソングCD。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。同シリーズの前作、Double Face「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」の初動売上7千枚(10位)から微増。

今週唯一の「実体のある」アイドルグループの初登場盤が7位初登場Lucky2「夢空に羽」。CD販売数7位。LDH所属の女性アイドルグループによるEP盤ですが、新曲3曲+その3曲のインスト版という事実上のシングル。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。同じくEP盤の前作「Brand New World!」の初動4千枚(13位)からアップ。

8位にはロックバンドくるり「感覚は道標」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数6位。くるり14枚目のアルバムですが、今回のアルバムではなんと、オリジナルメンバーである森信行が参加。オリジナルメンバー3人によるアルバムということで話題となっています。オリコンでは初動売上5千枚で10位にランクイン。直近作はEP盤「愛の太陽 EP」で、同作の初動3千枚(16位)からアップ。オリジナルフルアルバムとしての前作「天才の愛」の初動7千枚(7位)からはダウンしています。

初登場最後は9位に優里「詩-80's」がランクイン。CD販売数8位。80年代の邦楽をカバーしたカバーアルバム。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「弐」の初動2万5千枚(2位)からは大幅ダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評は来週の水曜日に!

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2023年10月11日 (水)

AdoにYOASOBIが猛追

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はAdoとYOASOBIがベスト3に並んでいます。

Ado_show

1位はAdo「唱」が3週連続の1位を獲得。ストリーミング数は3週連続、YouTube再生回数も4週連続の1位獲得。ダウンロード数も先週に続き2位をキープ。圧倒的な強さを見せる結果となっています。

一方、そこに猛追するのが今を時めくYOASOBI。先週9位に初登場した「勇者」が一気に2位にランクアップ。ダウンロード数が先週に続き1位を獲得したほか、ストリーミング数が49位から4位、YouTube再生回数も7位から4位、ラジオオンエア数が51位から5位と一気にランクアップ。次のロングヒットを狙っています。

そしてまだまだ強い「アイドル」は先週と変わらず3位をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず3位。YouTube再生回数も同じく先週と同順位の4位をキープ。さらにカラオケ歌唱回数は17週連続の1位を記録。ダウンロード数は6位から10位にダウンしているものの、まだまだロングヒットが続いています。これで26週のベスト10ヒット&通算25週目のベスト3ヒットとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位に大阪を拠点に活動する秋元康系のアイドルグループNMB48「渚サイコー!」がランクイン。CD販売数1位でしたが、他にランクインしたのがラジオオンエア数の65位のみで、総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上20万5千枚で1位初登場。前作「好きだ虫」の初動16万枚(1位)よりアップしています。

初登場曲はもう1曲。韓国の男性アイドルグループBTSのメンバーJung Kookによるソロシングル「3D(feat.Jack Harlow)」が先週の17位からランクアップし、7位にランクインしています。アメリカのラッパー、ジャック・ハーロウをフューチャーした楽曲。ダウンロード数9位、ストリーミング数12位、ラジオオンエア数20位、YouTube再生回数8位。Jung Kookは前作「Seven(feat.Latto)」も先週の11位から10位にランクアップして2週ぶりにベスト10返り咲き。通算12週目のベスト10ヒットを記録。これで今週は2曲同時ランクインを記録しています。

またベスト10返り咲き組では先々週、初のベスト10ヒットを果たしたシャイトープ「ランデヴー」が12位から8位にランクアップ。2週ぶりにベスト10に返り咲いています。TikiTokを中心に話題となっている大阪在住の3ピースロックバンドによるこの曲。ストリーミング数は5位から6位にダウンしていますが、YouTube再生回数が50位から33位、ダウンロード数も67位から54位に大幅にアップ。今後、どれだけ順位を上げるのか、注目されるところです。

一方、ロングヒット組ですが、まずキタニタツヤ「青のすみか」は5位から6位にワンランクダウン。ダウンロード数が12位から7位にアップしましたが、ストリーミング数は4位から5位にダウン。YouTube再生回数は先週と変わらず11位をキープしています。これでベスト10ヒットは14週連続に。

そしてVaundy「怪獣の花唄」は8位から9位にワンランクダウン。YouTube再生回数は15位から12位と若干アップしているものの、ダウンロード数は19位から21位、ストリーミング数も7位から10位と全体的には下落傾向。ただカラオケ歌唱回数は20週連続の2位をキープしています。これで41週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年10月10日 (火)

百花繚乱の90年代

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

「『90年代J-POPの基本』がこの100枚でわかる!」。以前、「『シティポップの基本』がこの100枚でわかる!」という本を紹介しましたが、同書を書いた音楽ライター、栗本斉による新作です。

90年代の音楽シーンというと、ミリオンセラーが連発した、売上的にはまさに日本ポップス史上の最盛期とも言われた頃。今でもあの時代を肯定的に語る人は少なくありません。ただ、じゃあリアルタイムで経験してきた身としては、あの時代のヒット曲が今より優れていたか、と言われると疑問。また、「90年代のヒット曲は今と違ってみんな歌えた」みたいな言説を目にすることもありますが、むしろあの時代は80年代以前のお茶の間に流れた歌番組が次々と終り、「最近のヒット曲は誰も知らない」と、特に上の世代にはよく言われていた時代。特にあの頃は、ビートルズ誕生以前の音楽しか聴いたことない世代がまだまだ現役であり、最新ヒット曲に対する許容度は、いまよりはるかに低かったように思います。

ただ、ミリオンセラーの連発で音楽業界全体が「バブル」とも言える活気あふれていた時代なだけに、レコード会社としては様々な音楽を「売る」余裕があったように感じます。実際、90年代の10年間を見ると、その変化はすさまじいものがあります。1990年はいわゆる「イカ天」ブームの最中で、バンドブームの最中。その後、ドラマタイアップ曲の全盛期からビーイング系、小室系の全盛期を経て、宇多田ヒカルの誕生まで、ここまでわずか10年です。さらにそんなヒットシーンの傍らには、渋谷系やヴィジュアル系のブームがあったり、HIP HOPがアンダーグラウンドシーンで徐々に注目を集めてきたりと、まさに文字通り、ポップシーンは百花繚乱の状況にありました。

本書では、そんな90年代J-POPから時代を代表する100枚を紹介した入門書的な1冊。前述の通り、様々なジャンルが花開いた時代から、わずか100枚を選ぶわけですから、かなり選盤についてはライターの苦労も感じさせます。そんな中でイカ天出身、バンドブーム、ビーイング系や小室系、渋谷系、ヴィジュアル系、HIP HOPからさらにはメロコアや2000年代につながるインディー系バンドやR&B系まで、様々なジャンルに目を配りつつ、100枚を選び出しています。

ただ、この100枚を眺めて、リアルタイムに90年代を過ごしてきた方にとっては、違和感を覚える方もいるかもしれません。例えばヒット曲を中心に考えれば、90年代の中に小室系やビーイング系の占める割合というと、イメージ的にもっと大きかったでしょうし、また、渋谷系を中心に聴いていた方、インディーロックを聴いていた方にとっても見え方は違うかもしれません。逆に言えば、90年代の音楽シーンはそれだけ多様的であったということでしょう。そのため、いろいろな意見はあるかとは思いますが、90年代という多様な音楽シーンをそれなりに包括的にとらえられていた選盤になっていたと思います。

また、そのようにして選ばれたアルバム評については、比較的シンプルで、基本的な情報を重視した内容にまとめています。確かに「考察」という意味では、独特な考察があったり、深い分析があったわけではありません。ただ、あくまでも90年代J-POPの紹介という本書の目的から考えると、比較的シンプルで、基本的な情報に留めている書き方というのはあるべき姿。変な癖のない文章なだけに、広い層が変な先入観なしにJ-POPのアルバムを知ることが出来る内容になっていました。

このようにJ-POPの入門書としては最適ですし、私も懐かしさを感じながらも読み進めることが出来たのですが・・・ただ一方で疑問点も何か所かありました。

まず肝心の100枚の選盤。これに関しては確かに人によって好き嫌いもありますし、いろいろな意見が出てくるのは仕方ないでしょう。ただ、それを差し引いてもこのアルバムは入らなければおかしいのでは?と思ったアルバムが2作あり。それが1997年のCornelius「FANTASMA」と、1999年のNUMBER GIRL「シブヤROCKTRANSFORMED状態」。「FANTASMA」では海外でも評価される、日本ロック史上指折りの名盤ですし、2000年代のロックシーンに与えた影響を考えると、NUMBER GIRLは外せません。確かに100枚のアルバムを選ぶにあたってはいろいろな考えはありますし、他にも「PRINCESS PRINCESS」(1990年)やゆらゆら帝国の「ミーのカー」(1999年)あたりも入れるべきでは?とも思ったりはするのですが、客観的に考えても、この前述の2枚については100選から外したのは疑問を感じてしまいました。

また、アルバム評についても概ね首肯できる内容であるものの、若干首をひねりたくなるような表現も散見されました。特に疑問を感じる表現は90年代後半のアルバムに多く、例えばくるりの「さよならストレンジャー」の紹介では、この頃のくるりのスタンスとしてナンバガやeastern youthに近かったのでは、と書いているのですが、少なくとも当時を知っていれば、デビューアルバムの頃のくるりを、ナンバガやeastern youthと並べるのはかなり違和感があります。SUPERCARの「スリーアウトチェンジ」でも説明文として「UKのギター・ロックにも通じる粗削りなギター・サウンド」とのみ書かれており、初期の彼らで当然言及されそうな、ジザメリやシューゲイザーからの影響には言及されていません。確かに「UKのギター・ロック」という表現でも間違いではありませんが、プロのライターの文章としてはちょっと稚拙さを感じてしまいます。

あとがきによれば、著者は1970年代生まれということ、やはり90年代でも後半になると30代近く。20代前半に比べると、シーンに対する感性が薄れ、特に若手のインディー系バンドについては、リアルタイムでは追い切れていなかったのではないでしょうか。逆に私自信は90年代終盤はまさに20代前半の頃でライブハウスに行きまくっていた時期。それだけに、特にインディーロックシーンに距離の違いが、アルバム評の違和感につながっていたようにも感じます。

そういうちょっと残念な弱点と思われる部分もありつつも、基本的には90年代という多様な音楽が登場した時代をしっかりと1冊にまとめて紹介している、入門書としては最適な1冊だったと思います。リアルタイムに90年代を経験した方には懐かしさを感じながら。当時は小室系やらビーイング系やらヒット曲しか聴いていなかった方にとっては、ヒットシーンとは別にあった90年代シーンの奥深さを感じながら、また若い世代には、今のJ-POPシーンの原点を感じながら読んでほしい1冊です。

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2023年10月 9日 (月)

80年代に一世を風靡したポップスバンドのシングルコレクション

Title:C-C-B THE SINGLE COLLECTION
Musician:C-C-B

1985年にリリースされた「Romanticが止まらない」が大ヒットを記録し一躍ブレイク。その後、1989年の解散まで、わずか4年という期間でしたが、リリースしたシングルは次々とヒットを記録し、ポップスロックバンドとして一世を風靡したC-C-B。今年はデビューから40周年という記念の年ということで、全シングル曲をカップリングを含めて網羅したシングルコレクションがリリースされました。正直なところ、C-C-Bは特にリアルタイムで聴いていたバンド・・・ではないのですが、80年代を代表するポップスロックバンドということでこのシングルコレクションもチェックしてみました。

まず彼らのシングル曲を網羅的に聴いて感じるのは、やはり「Romanticが止まらない」がいろいろな意味で圧倒的だな、ということでした。シンセからはじまるスタートといい、電子ドラムを取り入れたセットといい、80年代という時代に「近未来」的なものを感じます。また、メンバーの髪をカラフルに染めたスタイルもまた、どこか近未来的。日本の経済がどんどん良くなっていた80年代という時代において、彼らの未来的なイメージは時代にピッタリとマッチしたのでしょうし、その「近未来」感はどこか今の時代でも通じる部分があります。

ただ、そんな「近未来」的なイメージとは裏腹に、歌詞とメロディーライン自体は保守的。歌詞はよくありがちな切ない片思いを歌ったラブソングですし、なによりも筒美京平の書くメロディーラインはメランコリックな王道歌謡曲路線。サウンドやバンド自体の近未来的なイメージと、メロディーと歌詞の保守的な歌謡曲路線の微妙にアンマッチ感があるものの、ただ、目新しさを感じさせるルックスやサウンドと、聴きなじみのあるメロディーラインや歌詞という組み合わせだったからこそ、あれだけの大ヒットを記録したのでしょう。そのバランスの見事さは、今聴いても舌を巻いてしまいます。

その後も彼らは1988年にリリースされた「信じていれば」までの計12枚のシングルをベスト10に送り込んでいます。それだけ一世を風靡したグループだったのですが、残念ながら「Romanticが止まらない」を超える曲はその後なかったように思います。また、「Romanticが止まらない」と同じく、松本隆-筒美京平という日本を代表する作詞・作曲家のコンビによるその後のシングル曲は、出来としては申し分ないものの、シングルコレクションを聴いてもC-C-Bの目指す核となる音楽性の方向性が若干ぼやけていたように感じました。

実際、もともとC-C-Bは「和製ビーチボーイズ」を目指していたようで、「Romanticが止まらない」以前のシングルに関しては、まさにビーチボーイズ直系のポップ路線の曲になっていたものの、この路線はあっさり放棄。その後は近未来的な雰囲気のポップス路線を目指していたのですが、音楽的なルーツレスが良くも悪くも歌謡曲的といった感じ。最後の方になって「信じていれば」のような80年代のスタジアムロック風な方向性を感じるさせる曲も目立ちだしたのですが、残念ながら1989年にリリースされた「Love Is Magic」を最後に解散してしまいました。

「Romanticが止まらない」のヒットから解散までわずか4年。昔は、いまよりエンタテイメント界の入れ替わりが激しく、バンドは10年活動してれば長い方、といった感じだったので、驚くほど短い・・・といった感じではないのですが、ただそれでもわずか4年という解散まで比較的短いスパンとなってしまったのは、この音楽性がどこか曖昧だった点も要因だったのではないか、とも感じてしまいました。

ある意味、デジタルサウンドを用いた近未来風なイメージとベタな歌謡曲風の曲調という組み合わせはいかにも80年代的ですし、それだけに時代にマッチして一世を風靡したのでしょう。C-C-B自体はその後何度か、期間限定で再結成されているようですが、メンバー全員がまだ60代前半という若さながらも、メンバーのうち2人が鬼籍に入ってしまっており、残念ながらフルメンバーでの再結成は不可能となってしまいました。リアルタイムで聴いていた方には懐かしさを感じるようなシングルコレクションですので、興味ある方は是非。いろいろな意味で80年代という時代を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

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2023年10月 8日 (日)

良くも悪くも職人的だが、時折見せるコアな部分も。

Title:HAYASHI TETSUJI SONG FILE

杏里の「悲しみが止まらない」、中森明菜「北ウイング」、上田正樹「悲しい色やね」など数々のヒットソングを世に送り出した作曲家、林哲司。彼のデビュー50周年を記念して、彼のその業績を概観できるようなアルバムがリリースされました。全5枚組となる今回のアルバムは「HIT SONGS」「FAVORITE SONGS」「THEME SONGS」「SOUND TRACKS」「RARITY SONG」とそれぞれ名付けられ、テーマ毎に曲が収録されたアルバムになっています。前述の彼の代表曲はもちろん、「SOUND TRACKS」では映画に提供した劇伴曲も収録されています。

特に彼は最近、シティポップの枠組みで語られるケースも少なくなく、松原みきに提供した「真夜中のドア~stay with me」がSpotifyのグローバルバイナルチャートで18日連続の1位を記録するなど、最近、海外でも話題となっているシティポップの作曲家としても注目を集めつつあるようです。実際、彼の曲の特徴としては、ソウルミュージックを和製に解釈したような曲が多く、シティポップという枠で捉えられそうな曲が少なくありません。

ただ正直言ってしまうと、この5枚組のアルバムを聴いた感想というと、シティポップという枠組みで聴いてみると、ちょっと違和感を覚えてしまうのではないか、という印象を受けました。「HIT SONGS」に収録されている、代表的なヒット曲についてはもちろんインパクトは十分なものの、その他の曲については、ちょっと厳しい表現をしてしまうと「アイドルや俳優がリリースしたような歌謡曲のアルバムの、シングル曲以外でアルバムにするための穴埋めで作られたような曲」と例えでわかりますでしょうか?ほどよく洋楽的な味付けがほどこされているものの、基本的にはベタな歌謡曲。それもいまひとつ印象に残らないような無個性的な曲が目立ったような印象を受けました。

あえて言えば、ほどよく癖のなく、一定以上のクオリティーを保つ曲を書いてくれるという点で、いろいろと曲を頼むにはちょうどよい立ち位置だったんだろうなぁ、ということを思ってしまいます。良くも悪くも「職人」といった感じでしょうか。小室系全盛期直後の1998年にリリースされた仲間由紀恵に書いた「心に私がふたりいる」など、完全に小室系を意識したような曲になっており、ある意味拘りのなさも、良くも悪くも職人的。全体的に林哲司としての個性は薄めで、メロディーラインとしてもこんな凝った曲を書くんだな、という印象を受ける曲も少ない反面、聴き手を選ばないメロディアスなポップソングを書いてきています。

ただ一方おもしろかったのは「FAVORITE SONGS」で、例えばJIGSAWに書いた「If I Have To Go Away」は本格的にソウルミュージックの要素を前に押し出した作風。THE EASTERN GANGの「Magic Eyes」もファンクのリズムを強く取り入れていますし、爽快なサマーポップチューンの須藤薫「恋の雨音」など、洋楽的要素をかなり前に押し出した曲も目立ちます。むしろ普段の曲が職人的に、楽曲提供を依頼する側の要望に沿った曲を書いているだけに、彼のコアな部分にある洋楽的な影響を前に押し出せる曲を書ける時は、むしろ意識的に、彼の好きな音楽を前に押し出してきているのでは、とそういうことも感じてしまいました。

率直に言って、シティポップという枠組みで期待すると若干期待はずれのアルバムになってしまうかもしれません。ヒット曲も多く収録されているので、そういった曲に興味があるのならチェックしてみて損はないかも。80年代や90年代のミュージックシーンに足跡を残した作家の業績を知るには最適なアルバム。良くも悪くも職人的なものを感じる作品でした。

評価:★★★★

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2023年10月 7日 (土)

35年の時を超えて

Title:Sweet Love Songs+
Musician:加藤いづみ

1991年にデビュー。90年代のガールズポップムーブメントのミュージシャンの一人として人気を博した加藤いづみ。現在でも活動を続けている彼女ですが、1993年にリリースされた彼女の最大のヒット作「Sweet Love Songs」が、リリース35周年を記念してリマスターされたのが本作。リアルタイムでも聴いていた本作ですが、懐かしさもあり久々に聴いてみました。

35年も前のアルバムになるのですが、今回久々に聴いてみて感じたのは、今聴いても、全く違和感がなく聴けるアルバムだった、という点でした。エバーグリーンな作品と言えばその通りで、清涼感ありキュートさを感じる彼女のボーカルは今聴いてもやはり大きな魅力。彼女の楽曲のプロデュースも手掛けてた高橋研の書く、シンプルながらも暖かみのあるメロディーも非常に魅力的。「エバーグリーン」という表現もピッタリくるポップアルバムになっています。

ただ、それ以上にこのアルバムが時代を超えて魅力を感じるのは、アコースティック主体のサウンドメイキングに依るところが大きいようにも感じます。得てして、メロディーライン以上にサウンドというのは時代を感じてしまいます。本作でも典型的なのが2曲目の「星空のジェットプレイン」と3曲目の「おちょこの傘につかまって」で、「おちょこの傘」という表現自体も時代を感じてしまうのですが、途中に入るフュージョン風のサックスが完全に90年代風。聴いていて時代を感じてしまいます。

一方、このアルバムで主体になるピアノやアコースティックギターのサウンドは時代を超えて変化がありません。本作にも収録されており、彼女の代表曲とも言える「好きになって、よかった」はアコギを爪弾きつつ、ストリングスが入る音色は、90年代特有のサウンドではなく、2020年代の今となっても変わることがありません。それだけにサウンドは時代を超えても違和感なく、35年経った今でも、時代を考えずに聴くことが出来ると思います。

他にもラテン風なリズムを入れつつ、キュートなガールズポップな「シャンプー」やラテンパーカッションとギターで、エキゾチックでちょっと不思議な歌詞も魅力的な「オットーの動物園」、加藤いづみ本人が作曲を手掛けた爽快なポップチューン「みんなパレードのせい」、エキゾチックな雰囲気をスケール感をもって聴かせる「If-2つの想い-」などバリエーションを持たせつつ、アコースティック主体のサウンドと彼女の清涼感あるキュートな歌声を軸に、最後までシンプルなポップソングを聴かせてくれる魅力的なアルバムになっています。

ラストは、彼女の代表曲「好きになって、よかった 2023」として、再録音版を収録。30年以上経ても色あせない歌声を聴かせてくれています。原曲に比べると、ストリングスのサウンドをより強調して、スケール感を出した構成になっており、個人的にはシンプルだった原曲の方がよかったかも、とは思うのですが・・・それでも新録は新録で魅力的な曲に仕上がっていました。

今でも変わらない加藤いづみの魅力をあらためて認識したアルバム。リアルタイムでも聴いていた作品なだけに、懐かしさも感じつつ、そのような思い出補正がなくても十分お勧めできる傑作だと思います。是非、今の世代の方にも聴いてほしい作品です。

評価:★★★★★

加藤いづみ 過去の作品
MUSIC


ほかに聴いたアルバム

斉藤和義 弾き語りツアー「十二月~2022」Live at 日本武道館 2022.12.21/斉藤和義

ツアー毎に恒例の斉藤和義のライブアルバム。今回は2022年10月から行われた弾き語りライブツアー「十二月~2022」のうち、2022年12月21日に開催された日本武道館公演の模様を収録したライブアルバム。基本的にアコースティックギターによる弾き語りのステージで、先日リリースされた「ROCK’N ROLL Recording Session at Victor Studio 301」が斉藤和義のロックな側面にスポットをあてた作品とすれば、ベスト的な選曲となった本作は、ある意味、同作と比べて斉藤和義の別の側面にスポットをあてた作品と言えるかもしれません。ただ、歌詞と歌が主軸となったこのアルバムの方が個人的に好みだったことを考えると、斉藤和義の書くメロディーと、そしてなによりも歌詞に自分は惹かれていたんだな、ということを再認識しました。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020
55 STONES
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2020 "202020" 幻のセットリストで2日間開催!~万事休すも起死回生~ Live at 中野サンプラザホール 2021.4.28
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31
PINEAPPLE
ROCK’N ROLL Recording Session at Victor Studio 301

世界/クレイジーケンバンド

ほぼ毎年のようにアルバムをリリースし続け、活発な活動を続けるクレイジーケンバンド。今回も前作から1年というインターバルでのニューアルバムリリースとなりました。全体的にホーンセッションも入りつつ、メロウなソウルが展開される作品。ただ、1曲1曲のクオリティーは間違いなく高いものの、良くも悪くもいつものクレイジーケンバンドらしい作品といった印象。ちょっとマンネリさを感じてしまい、印象が薄く感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC
NOW
好きなんだよ
樹影

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2023年10月 6日 (金)

原点回帰のアルバム

Title:Playing Robots Into Heaven
Musician:James Blake

イギリスのシンガーソングライター、James Blakeの、単独名義としては約2年ぶりとなるニューアルバム。2011年にリリースしたデビューアルバム「James Blake」が大きな注目を集めていきなりブレイク。当時、先端だったタブステップを取り入れつつポップにまとめあげた音楽性が高い評価を受けました。

その後もコンスタントに活動を続けつつ、高い人気を確保。特に2019年にリリースされたアルバム「Assume Form」はグラミー賞にもノミネートされるなど大きな話題となりました。ただ、リズミカルなベースミュージックを聴かせてくれたデビュー作以降はメランコリックな歌を前に押し出したポップな歌モノのアルバムが続いていました。

そんな中リリースされた本作は、デビュー作「James Blake」を彷彿とさせるようなリズミカルなエレクトロサウンドが主体の、実験的な作風が特徴的なアルバム。まさしく原点回帰と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっていました。

1曲目の「Asking To Break」は物語の始まりを予感させるよな、厳かな雰囲気が特徴的なのですが、エレクトロサウンドをドリーミーに聴かせる作品。続く「Loading」は女性ボーカルのメランコリックな歌が印象的な作品。ビートの強いエッジの効いたエレクトロサウンドは初期の作風を彷彿とさせるものの、まず序盤は小手調べ的なスタートとなっています。

エレクトロのビートが主体となってくるのはその後から。3曲目「Tell Me」は疾走感あってノイジーなエレクトロビートが主体となっていますし、「He's Been Wonderful」もシンプルなエレクトロビートをミニマル的に聴かせる挑戦的な楽曲。「Big Hammer」もミニマルなエレクトロビートをどこかユーモラスに聴かせつつ、ラップを重ねてくる、こちらも挑戦的な楽曲に。歌よりもエレクトロサウンドを聴かせる曲が続いており、デビュー作を彷彿とさせる刺激的な作風となっています。

終盤の「If You Can Hear Me」こそ、最近のJames Blakeを彷彿とさせるようなメランコリックな歌が主体の曲となっていますが、ラストを締めくくるタイトル曲「Playing Robots Into Heaven」は静かなエレクトロサウンドがミニマル的に繰り広げられるインストナンバー。ドリーミーながらも、どこか不気味な様相も感じさせる曲調が特徴的で、最後までエレクトロサウンド、それもビートを聴かせる作風のアルバムに仕上がっていました。

まさに歌モノにシフトしていた最近のアルバムから一変。挑戦的なサウンドを聴かせる、原点回帰とも言える作品に仕上がっていました。もっと言えば、デビュー作以上によりエレクトロサウンドを軸としたアルバムだったようにすら感じます。歌モノにシフトした反動といった感じでしょうか。彼としても、こういうサウンドを追及していくスタイルこそ「やりたいこと」だったのでしょうか。それとも次は再び歌モノの方向に戻るのでしょうか。ただ本作は間違いなく、刺激的なサウンドに時折入るメランコリックなメロディーが非常に魅力的な傑作アルバムだったと思います。あらためてJames Blakeの魅力を感じたアルバムでした。

評価:★★★★★

JAMES BLAKE 過去の作品
JAMES BLAKE
ENOUGH THUNDER
OVERGROWN
The Colour In Anything
Assume From
Covers
Friends That Break Your Heart

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2023年10月 5日 (木)

今週もK-POP勢は目立つが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は10枚中7枚までK-POP系というチャートとなりましたが、今週はさすがにK-POPのランクインは減少しています、が・・・

今週1位初登場はXG「NEW DNA」。CD販売数3位、ダウンロード数1位。avex傘下の韓国法人XGALXに所属する女性アイドルグループ。韓国製日本人アイドルグループといった感じで、NiziUと同じような感じでしょうか。本作がデビューミニアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上3万枚で1位初登場となっています。

2位は、こちらは日本の男性アイドルグループAXXX1S「Ability」がランクイン。CD販売数は本作が1位。こちらもこれがデビューミニアルバムとなります。オリコンでは初動売上2万5千枚で3位初登場。

3位にはこちらは韓国の男性アイドルグループNCT「Golden Age」が先週の9位からランクアップ。ベスト3初登場となっています。特にCD販売数が8位から2位へとアップ。オリコンでも今週、4万1千枚を売り上げて、1位を獲得しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位にGLAY「HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数4位。2月にリリースしたシングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」の続編となります。CD販売数5位、ダウンロード数4位。オリコンでは初動売上2万枚で4位初登場。アルバムの直近作は「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY Anthology」で、同作の初動売上6千枚(6位)よりアップ。オリジナルアルバムの前作「FREEDOM ONLY」の初動3万枚(1位)よりはダウン。前作扱いのシングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」の初動1万7千枚(3位)からはアップしています。

7位には常闇トワ「Aster」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数2位。YouTubeで活躍するバーチャルアイドル。フルアルバムとしては本作が1枚目となります。オリコンでは初動売上1万1千枚で8位初登場。

8位初登場はJams Collection「Jam Vacation」。CD販売数7位。雑誌「MARQUEE」が完全バックアップを行っている女性アイドルグループ。オリコンでは初動売上1万枚で10位初登場。前作「JamMode」の初動7千枚(11位)よりアップ。

9位にはSUPER★DRAGON「INFINITY TAPE」が初登場でランクイン。CD販売数9位。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ。8周年を記念してのCD+Blu-rayの作品だそうで、パッケージはファンクラブ限定。そのため、オリコンでは圏外となっています。

そして最後、10位にはロックバンド、GRAPEVINE「Almost there」が初登場。CD販売数12位、ダウンロード数14位。約2年4か月ぶりの新作。オリコンでは初動売上4千枚で13位初登場。前作「新しい果実」の6千枚(8位)よりダウンとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年10月 4日 (水)

次のロングヒットになるか?

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

1位2位は次のロングヒットになるのでしょうか。

Ado_show

まず1位にはAdo「唱」が2週連続の1位を獲得。ストリーミング数は2週連続の1位、ダウンロード数も3位から2位に若干のアップ。YouTube再生回数は3週連続の1位を記録しています。

2位はKing Gnu「SPECIALZ」が3位から2位にアップ。こちらもストリーミング数は3位から2位に、ダウンロード数は5位から4位に、YouTube再生回数も5位から3位にアップしています。この2曲がストリーミング数で1、2フィニッシュ。まだ「唱」は4週目、「SPECIALZ」は5週目のベスト10ヒットですが、次のロングヒットとなるのでしょうか。

3位はYOASOBI「アイドル」が先週からワンランクダウン。カラオケ歌唱回数は16週連続の1位を記録していますが、ストリーミング数は2位から3位、YouTube再生回数も3位から4位にダウンしています。ダウンロード数は8位から6位に若干のアップ。これで25週連続のベスト10ヒット、通算24週目のベスト3ヒットとなっています。

今週はYOASOBIはもう1曲、新曲「勇者」が9位に初登場。2曲同時ランクインとなりました。ダウンロード数1位、ストリーミング数49位、ラジオオンエア数51位、YouTube再生回数7位。日テレ系アニメ「葬送のフリーレン」オープニングテーマ。ストリーミング数はまだ低順位ですが、今後、伸びてくるのでしょうか。

ほかの4位以下の初登場曲ですが、まずは4位にAKB48「アイドルなんかじゃなかったら」がランクイン。CD販売数1位、その他はランク圏外となっています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上36万8千枚で1位初登場。前作「どうしても君が好きだ」の初動32万7千枚(1位)からはアップしています。

6位にはハロプロ系女性アイドルグループ、つばきファクトリー「勇気It's my life!」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数47位、ラジオオンエア数64位。オリコンでは初動売上6万枚で2位初登場。前作「間違いじゃない 泣いたりしない」の初動7万7千枚(3位)からダウン。

初登場もう1曲も女性アイドルグループ。超ときめき♡宣伝部「かわいいメモリアル」が10位初登場。CD販売数3位、ラジオオンエア数4位。スターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ。オリコンでは初動売上3万3千枚で3位初登場。前作「LOVEイヤイヤ期」の初動3万枚(4位)からアップしています。

一方、ロングヒット曲ではキタニタツヤ「青のすみか」が7位から5位にランクアップ。ストリーミング数は3週連続の4位、ダウンロード数は17位から12位にアップ、YouTube再生回数は10位から11位にダウンしています。これで13週連続のベスト10ヒットとなりました。

ロングヒット曲はあと1曲。Vaundy「怪獣の花唄」が先週と変わらず8位をキープ。カラオケ歌唱回数は19週連続の2位、ダウンロード数は22位から19位、ストリーミング数も8位から7位と若干のアップ。一方、YouTube再生回数は14位から15位と若干のダウンとなっています。これでベスト10ヒットは40週連続となりました。

一方、先週までベスト10ヒットを続けていたJung Kook「Seven(feat.Latto)」は今週11位にダウン。ベスト10ヒットは11週連続でストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年10月 3日 (火)

The Chemical Brothers、健在

Title:For Tha Beautiful Feelings
Musician:The Chemical Brothers

イギリスを代表するエレクトロ系ミュージシャンであり、日本でも高い人気を誇るグループThe Chemical Brothers。彼らの約4年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。毎回、ダンスミュージックの安直なブームにのらず、彼ららしい路線を追及し続けるThe Chemical Brothers。今回もそんな彼ららしい独特な路線を感じつつも、一方ではThe Chemical Brothersとしては「らしさ」を感じさせるアルバムになっていました。

オープニングに続く2曲目「Live Again」はフレンチポップのシンガー、Halo Maudがボーカルで参加。ロック的な要素も入った高揚感あるサウンドがケミブラらしいのですが、その中でHalo Maudのメランコリックさを感じる声が入ってくるあたりで独特のサウンドを感じさせます。一方「No Reason」は途中に入る掛け声にちょっとベタさを感じるミニマルなテクノチューン。ある意味、わかりやすい高揚感は魅力に感じますし、続く「Goodbye」は、ダイナミックなビートがケミブラらしくも、サイケさも感じるエレクトロサウンドは独自性も感じさせます。

後半の軸となっているのがBeckが参加した「Skipping Like A Stone」。スペーシーなサウンドにメロディアスなポップが重なったサウンドがこれまたユニークさとユーモラスさも感じさせる曲。「Feels Like I Am Dreaming」も力強いビートにダイナミックさを感じさせる、こちらはThe Chemical Brothersの王道とも言える楽曲となり、リスナーを一気に盛り上げるナンバーに。そしてラスト「For That Beutiful Feelings」は再びHalo Maudが参加。彼女のボーカルを聴かせつつ、ゆっくり力強いビートが奏でられるナンバーで、高揚したリスナーをゆっくりと落ち着けるチルアウト的なナンバーでの締めくくりとなります。

このようにエレクトロダンスミュージックを奏でつつ、全11曲、バリエーションを感じさせる展開も魅力的なナンバー。正直なところ、決して目新しいという印象はないのですが、The Chemical Brothersらしさを感じさせるダンスチューンの連続に、ファンならずとも素直に楽しめるアルバムになっていたと思います。The Chemical Brothersの健在ぶりを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

The Chemical Brothers 過去の作品
Brotherhood
Further(邦題:時空の彼方へ)
HANNA
Born In The Echoes
No Geography
Surrender(20th Anniversary Edition)

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2023年10月 2日 (月)

統一感のある2作目

Title:GUTS
Musician:Olivia Rodrigo

現在、女優として活躍しているのみならず、ミュージシャンとしても前作「SOUR」が高い評価を得て、シンガーソングライターとしても一躍注目を集めたOlivia Rodorigo。その前作から約1年8ヶ月、早くも新作がリリースとなりました。

前作「SOUR」はバラエティー富んだ音楽性のポップアルバムで、聴いていて素直に楽しくなる内容が最後まで飽きさせない傑作に仕上がっていました。一方、今回のアルバムは全体的にギターロック寄りのアルバムとなっていました。冒頭を飾る「all-american bitch」も、最初はギターアルバムでしんみり聴かせつつ、中盤以降は分厚いギターサウンドが顔を覗かせるパンキッシュな作風に。続く「bad idea right?」も分厚いギターサウンドが前面に押し出されつつ、ラップのパートとキュートなメロのパートが交互に展開されるポップなナンバー。「vampire」も、最初はピアノで静かに聴かせつつ、後半はギターサウンドにストリングスが加わりスケール感を醸し出しているギターロックのナンバーに仕上がっています。

その後もラップとキュートでポップなメロが交互に展開するミクスチャーポップとも言うべき「get him back!」や疾走感あるギターロックナンバーの「love is embarrasing」、ちょっと切ないメロが印象に残るギターロック「pretty isn't pretty」など、分厚いバンドサウンドを聴かせつつ、ポップなメロが印象的なギターロック寄りの楽曲が目立ちます。全体的にはオルタナ系以降のポップなギターロックといった感じで、イメージとしては初期のアヴィリル・ラヴィーンにも近い感じ。ポップなメロはインパクトも十分で、日本人にも、特に彼女と同年代(20代前半)や中高生にも高い人気となりそうな印象を受ける、聴いていてワクワクするいい意味での「わかりやすさ」も感じます。

一方、そんなギターロック路線の合間でには「logical」「the grudge」、さらにラストを締めくくる「teenage dream」など静かなピアノをバックにゆっくりと歌い上げる曲も目立ち、清涼感があり力強いその歌声には、ボーカリストとしての彼女の実力も感じさせます。

前作「SOUR」は、バラエティー富んだポップなアルバムであった一方、多様な音楽性によって、全体的には統一感が欠ける点が若干の弱点となっていました。今回のアルバムに関しては、ピアノで聴かせる楽曲でバラエティーを持たせつつギターロックを主軸にすることによって全体的に統一感のあるアルバムに仕上がっていました。前作のバラバラな作風も、それはそれでその猥雑な感じがポップの勢いを感じ、ひとつの魅力にはなっていましたが、アルバム全体としての出来としては本作の方がよく出来ているように感じます。評価の高かった1作目に勝るとも劣らない傑作を続けてリリースしてきた彼女。まだ二十歳ということで、末恐ろしい感じもします。普段、洋楽をあまり聴かない方も含めて、幅広い層にお勧めできるアルバムです。

評価:★★★★★

Olivia Rodorigo 過去の作品
SOUR

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2023年10月 1日 (日)

エレクトロを取り入れ、新たな方向性に挑戦

Title:家の外 e.p.
Musician:OGRE YOU ASSHOLE

途中、ライブアルバムのリリースはあったものの、新作としては2019年の「新しい人」以来、実に約4年ぶりとなるOGRE YOU ASSHOLEの新作。全4曲入り25分のEP盤になるのですが、3月にライブ会場で先行リリースされ、6月にサブスクでの先行配信、さらには9月にCDリリースという流れでのリリースとなりました。

さてそんなOGREの新作は、4曲入りという事実上のシングルとも言えそうなEP盤なのですが、そんなたった4曲の内容ながらも、これからの新たなOGREの一歩を感じさせる挑戦的な作品になっていました。その大きな変化となった点がエレクトロサウンドの導入。いずれの4曲もエレクトロサウンドを取り入れつつ、OGREの新たな方向性を模索したような内容となっていました。

1曲目「待ち時間」はエレクトロサウンドを取り入れたリズミカルなインストチューン。四つ打ちのドラムのリズムを取り入れた、テクノのテイストも感じさせる、いままでのOGREとは一風変わった方向性が特徴的。その1曲目をイントロのようにして、そのままシームレスに入る2曲目のタイトルチューン「家の外」は、同じくエレクトロサウンドをミニマル的に聴かせつつ、シンプルな音の構成と淡々としたメロと無機質風な不気味さを感じさせる楽曲がOGREらしい作品。いわばいままでの彼らの王道とも言える曲にエレクトロの要素を追加したらどうなるのか、そういう実験を感じさせる曲になっています。

3曲目の「ただ立ってる」はエレクトロサウンドを主軸にしつつ、様々な音をサンプリングさせた、幻想的でかつサイケな作品。そしてラストの「長い間」はタイトル通りに11分にも及ぶ長尺の曲。こちらはエレクトロサウンドを入れつつもバンドサウンドを主軸にした曲で、力強いドラムのリズムにダイナミックさを感じさせる曲調に。ただ、全体を流れるミニマルテイストのリズムが独特のトリップ感を与えています。

このようにたった4曲入りのEPながらも、4曲とも異なる方向性で、エレクトロサウンドを用いつつ、新たなOGREの挑戦を感じさせる作品になっていました。そういう意味でもEP盤とはいえ、非常に重要性の高い作品とも言えるでしょうし、また、この挑戦心は実にOGREらしいとも言える作品になっていました。あらためて彼らの実力を感じさせてくれる傑作アルバム。次のフルアルバムも非常に楽しみです。

評価:★★★★★

OGRE YOU ASSHOLE 過去の作品
しらないあいずしらせる子
フォグランプ
浮かれている人
homely
100年後
confidential
ペーパークラフト
WORKSHOP
ハンドルを放つ前に
新しい人
workshop 2
workshop 3

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