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2023年9月 4日 (月)

豪華ゲストも参加したレジェンドの新作

Title:Make Me Say It Again, Girl
Musician:The Isley Brothers

1950年代後半に結成。ヴォーカルグループとして数多くのヒットを世に放ち、まさにソウル界のレジェンドであるThe Isley Brothers。2000年代になった今でもコンスタントに活動を続け、特に1950年代から2000年代まで6つの10年代のビルボードシングルチャートにランクインを果たした、史上初のミュージシャンだそうです。残念ながら2010年代以降はシングルヒットは出していないものの、アルバムはコンスタントにリリースを続けています。今回のアルバムは、オリジナルアルバムとして実に16年ぶりとなるものの、ただ2017年にはサンタナとの共演アルバムをリリース、2007年にもクリスマスアルバムをリリースしており、リリーススパンとしてはそこそこ久々ではあるものの、しっかり現役ミュージシャンとしての存在感を覚えるアルバムとなっています。

もともとボーカルグループとしてデビューし、その後は6人組のファンクバンドにシフトするなど、その長い歴史ゆえの様々な音楽遍歴を誇る彼ら。個人的にはファンクグループとしての彼らに魅力を感じ、5年前のサンタナとの共演アルバムでも、そんなファンクの要素を強く出したアルバムになっていましたが、今回のアルバムは、全体的にミディアムテンポのナンバーが並ぶ、メロウな歌を聴かせてくれるアルバムとなっています。哀愁感たっぷりで切なく歌い上げる「The Plug」やファルセット気味の歌声で美しいメロを聴かせてくれる「Great Escape」など、メロウな歌モノの魅力的なナンバーが並びます。

さらに魅力的なのが豪華なゲスト陣で、アルバム冒頭を飾るタイトルチューン「Make Me Say It Again,Girl」ではなんとBeyonceが参加。その力強い歌声が耳を惹きますし、「There'll Never Be」ではEarth,Wind&Fireが参加。レジェンド同士の共演となっているのですが、Earth,Wind&Fireらしい、ミディアムテンポのナンバーにThe Isley Brothersのファルセットボーカルで聴かせるメロウな歌が実に心地の良いナンバーに仕上がっています。

全体的には率直なところ、メロウなソウルチューンは魅力的ではあるものの、目新しさはあまりなく、インパクトとしての弱さも感じてしまいました。ただ一方で、「Keys to My Mind」ではMigosのQuavoとTakeoffが、「Biggest Bosses」ではRick Rossが参加し、HIP HOPの要素を楽曲に取り入れており、今のシーンにもピッタリとリンクしていることを感じさせます。メンバーのロナルド・アイズレーは御年81歳。それにも関わらず、現在のシーンをしっかり取り込んでいるあたりにミュージシャンとしての現役感と矜持を感じさせ、感心してしまいます。また、若手を含めて豪華ゲストが数多く参加しているのも、レジェンドとしての彼らの実績があってこそ、といった感じでしょう。

ただ、ちょっと気にかかるのが、Snoop Doggをゲストに迎えた「Friends And Family」で、「BLUES&SOUL RECORDS」誌のCD評では「R.Kellyへの深い情を感じさせる」として、彼に捧げる曲であるように記載されています。R.Kellyといえば、性的虐待により実刑判決を受けており、音楽業界では「名前を呼んではいけないあの人」扱いになっているのですが、R.Kellyに捧げる曲をリリースするというのは、日本で言えばジャニーズにおける山下達郎案件であって、あまりよろしくないことのような・・・。前述の雑誌のCD評以外で、この曲に対して、R.Kellyと結びつけた記載は見当たらなかったのですが、かなり気になる記載でした。というか、そうであれば、批判もしないで、むしろ肯定的に記載してしまっている「BLUES&SOUL RECORDS」のCD評は問題では?

まあ、若干、その点が引っかかるのですが、それを差し引いても、現役感あふれるアルバムで、The Isley Brothersの実力を再認識できたアルバムだったと思います。往年のファンならチェックしても損のない作品でしょう。多くのゲストを引き連れた作品は、レジェンドとしての実績を存分に感じさせる、そんなアルバムでした。

評価:★★★★

The Isley Brothers 過去の作品
POWER OF PEACE(THE ISLEY BROTHERS & SANTANA)

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