無難にまとまったソロ2作目
Title:Steppin' Out
Musician:KIRINJI
KIRINJIとしては約1年10か月ぶりとなるニューアルバム。デビュー当初から堀込兄弟のデゥオとして活動を進めていたキリンジが、メンバー堀込泰行のまさかの脱退を経て、バンドKIRINJIに。さらに堀込高樹以外のメンバーが脱退したことによりソロプロジェクトとなり・・・とその活動のスタイルを変え、今回のアルバムは堀込高樹のソロプロジェクトとなってから2枚目のアルバム。前作との間には新レーベル「syncokin」を設立し、本作は新レーベル設立後、初となるアルバムとなります。
バンド時代のKIRINJIは、兄弟デゥオ時代とは異なるバンドサウンドを前に出してきた作風が特徴的でした。そして前作「crepuscular」はバンドという枠組みを外れ、ソロミュージシャンとなったことにより、自由度の増した傑作に仕上がっていました。それに対して今回のアルバムは、基本的にはKIRINJI、というか堀込高樹らしいメロウなソウルチューンが並ぶアルバムになっていました。
「Runner's High」は文字通り、マラソンの際に生じる高揚感を曲にしたナンバーで、メロウなエレクトロソウルチューン。歌詞の中に出てくる「新しいスタジアム/切り倒された街路樹」という歌詞は、最近ニュースになっている神宮外苑の再開発を意識したものでしょうか?「nestling」は軽快で疾走感のあるナンバー。テレビ東京系ドラマ「かしましめし」の主題歌にもなった曲ですが、ドラマ主題歌らしいインパクトあるポップチューンとなっています。
中盤の「ほのめかし」は最近話題の韓国のバンド、SE SO NEONとのコラボ。HIP HOP的な要素も加わったメロウでドリーミーな作風が印象的。「I ♡ 歌舞伎町」はこちらも軽快でメロウなナンバーなのですが、歌舞伎町の今を描写した歌詞が意外とヘヴィーな内容なのが印象に残ります。そしてラストを飾る「Rainy Runway」はホーンセッションも入った、こちらも軽快でメロウなソウルチューン。最後までKIRINJIらしいナンバーで幕を締めくくります。
そんな感じで最初から最後までKIRINJI堀込高樹らしい曲が並ぶ今回のアルバム。1曲1曲のクオリティーは文句なしで、この点はさすがといった感じはします。ただ、ここ最近、挑戦的な作品が続き、バラエティー豊富な曲が並んでいたKIRINJIのアルバムの中では、全体的に無難といった印象を受けてしまいました。良くも悪くも昔ながらのKIRINJIといった感じで、目新しさはなく、インパクトという面でもかつての堀込高樹らしい、口語体の強い文体の独特な歌詞は少なく、ちょっと物足りなかったような印象も。様々な挑戦を続けたので、ここに来て少し原点に戻ったアルバムと言えるかもしれません。ただ、アルバムとしてのクオリティーは申し分ないのですが、ここ最近の挑戦的だったKIRINJIの作品の中ではもう一歩といった印象を受けるアルバムでした。
評価:★★★★
キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ
愛をあるだけ、すべて
Melancholy Mellow-甘い憂鬱-19982002
Melancholy Mellow II -甘い憂鬱- 20032013
cherish
KIRINJI 20132020
crepuscular
ほかに聴いたアルバム
5am/milet
MAN WITH A MISSIONとのコラボ曲「絆ノ奇跡」がアニメ「鬼滅の刃」オープニングテーマに起用され、ロングヒットを起用したmiletのニューアルバム。同曲は残念ながら未収録なのですが、同じくMWAMとのコラボで「鬼滅の刃」エンディングテーマだった「コイコガレ」が収録。この曲も含めて、前半はかなりロック色の強いアルバムに仕上がっています。一方後半はメランコリックに歌い上げるような作風の曲が多い本作。以前から同様、J-POPらしい無駄に分厚い仰々しさを感じさせるアレンジは同様ながらも、それに負けない力強いボーカルはやはり魅力的。前作同様、サウンドについてはもうちょっと交通整理をした方がよいと思うのですが。
評価:★★★★
milet 過去の作品
eyes
Who I Am
visions
聖飢魔Ⅱ 期間再延長再集結「35++執念の大黒ミサツアー -大阪-」/聖飢魔Ⅱ
1999年の解散後も、たびたび再結成を行っているヘヴィーメタルバンド聖飢魔Ⅱ。2020年に地球デビュー35周年を記念して再集結する予定だったものの、コロナ禍で大黒ミサツアー(ライブツアー)が延期になりました。そしてその後、2022年によりようやく実施できた、タイトル通り「執念の大黒ミサツアー」の中から大阪での大黒ミサ(ライブ)の模様を収録した大教典(アルバム)。もともと、その演奏には定評のあった彼らだけに、演奏自体は文句なしの迫力。途中にはMCも収録されているのですが、こちらもユニークで楽しく聴かせます。細かい点まで悪魔であることに拘った構成も非常に楽しく、熱烈な信者ではなくても黒ミサに足を運びたくなるようなそんな大教典でした。
評価:★★★★★
聖飢魔Ⅱ 過去の作品
XXX-THE ULTIMATE WORST-
BLOODIEST
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