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2023年9月 3日 (日)

フォーキーな歌モノだが、ユニークなサウンドプロダクションが魅力的

Title:Jelly Road
Musician:Blake Mills

Alabama ShakesやJohn Legendなどの作品のプロデュースを手掛けたことでも名高いBlake Mills。自らもシンガーソングライターとしても活躍しており、本作がBlake Millsソロ名義では5枚目となるアルバムとなります。

個人的にBlake Mills単独名義のアルバムを聴くのは前作「Muntable Set」に続いて2作目。前々作「Look」はアンビエント寄りの作品だったそうですが、前作「Muntable Set」は静かでアコースティックなサウンドがメインとなる歌モノのアルバム。ただ、その要所要所に彼らしいユニークなサウンドプロダクションが見られた作品となっていました。そして今回のアルバムに関しても、基本的にはその前作「Muntable Set」の方向性を引き継いだような作風に仕上がっています。

アルバム1曲目の「Suchlike Horses」はアコギアルペジオで静かに聴かせるフォーキーな作品なのですが、続く「Highway Bright」はまさに静かに聴かせる楽曲ながらも、シンセやピアノの音色で分厚いサウンドプロダクションを聴かせる作品に。そして、前半の真骨頂とも言えるのがアルバムタイトルチューンの「Jelly Road」でしょう。シンプルながらも、コーラスラインを加味しながらも美しいサウンドとメロディーを聴かせてくれる楽曲に仕上がっており、メロディアスな歌もさることながらも、そのサウンドにも耳を惹かれる作品となっています。また、それに続く「Skeleton Is Walking」も、基本的にアコースティックなサウンドをベースにしつつも、ノイジーなギターサウンドが入り、ダイナミズムさを感じる作品に。美しいメロディーラインを聴かせるフォーキーな作風ながらも、微妙にサイケな要素が加わってくるのもユニークな作品になっています。

その後も基本的にシンプルでフォーキーな歌モノの作品が並ぶのですが、「The Light Is Long」では郷愁感を覚えつつもエキゾチックな笛の音色が入ってきたり、「Breakthrough Moon」でも同じくエキゾチックなパーカッションにブルージーなギターの音色が入り、郷愁感たっぷりの作品に仕上げてきたりと、特に後半はエキゾチックな要素を感じる曲が並びます。また、「Press My Luck」もしんみり聴かせるフォーキーなメロディーラインが大きな魅力に。ただ、単純にフォーキーでアコースティックな作品となっておらず、途中に加わるサイケデリックでノイジーなギターが独特な味わいを楽曲に加えています。

フォーキーでメロディアスな歌をしっかりと聴かせつつ、サウンドプロダクションが非常にユニークな作品が並ぶ作品。単純にフォーキーな歌モノのアルバムとは一風異なる、Blake Millsらしい独自性のある作品に仕上がっていました。決して派手さはありませんが、その仕事ぶりが光る作品に。ソングライターとしての実力をしっかりと感じさせる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Blake Mills 過去の作品
Muntable Set
Notes With Attachments(Pino Palladino&Blake Mill)


ほかに聴いたアルバム

Fat Of The Land 25th Anniversary -Remixes/The Prodigy

イギリスのエレクトロロックバンドとして一世を風靡したThe Prodigy。特に1997年にリリースした「The Fat of Land」はエレクトロロックの金字塔として名盤の誉れ高い1枚ですが、そのアルバムから25年を経てリリースされたのが、同作のリミックスアルバム。参加しているミュージシャンは日本での知名度はまだの新進気鋭のミュージシャンのようですが、基本的に原曲の持つダイナミズムがそのまま。単純に「今風にアップデート」といった感じのリミックスでもないので、リアルタイムで楽しんだファンも楽しめそうなアルバムになっていました。ただ、これを聴き終わった後、あらためてオリジナルを聴きたくなったのは、良い点なのかどうなのか・・・。

評価:★★★★

THE PRODIGY 過去の作品
INVADERS MUST DIE
THE DAY IS MY ENEMY
NO TOURISTS

AUSTIN/Post Malone

Billboard Hot 100のベスト20に、9曲同時ランクインというとんでもない記録を作ったころに比べると、さすがに落ち着いた感はあるものの、まだまだ高い人気を誇るPost Maloneのニューアルバム。一応、ラッパーという建付けながらも、HIP HOP的な要素は薄く、むしろアコースティックベースのサウンドにメランコリックに聴かせる歌が大きな魅力に。ある意味、保守的な感は否めないものの、ただ純粋に耳に残るメロディーラインはやはり大きな魅力で、素直に楽しめるポップソングに人気の高さも納得といった感じです。

評価:★★★★

Post Malone 過去の作品
Beerbongs & Bentleys
Hollywood's Bleeding
Twelve Carat Toothache

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アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事

コメント

《Notes With Attachments》(Caroline 2021)はウェールズのベース奏者ピノ・パラディーノ(Pino Palladino)とのインスト・アルバムでしたが、本作は米ヴァーモントのSSWクリス・ワイズマン(Chris Weisman)との共作・共同プロデュース。
クリス・ワイズマンを知らなかったという高橋健太郎は 「ネット検索で彼のBandcampに辿り着いて、あっけに取られた。2019年以降のアルバムが47枚並んでいる」(MM 8月号)と驚いています。
ウェンディ・メルヴォイン(Wendy & Lisa)がギター・ソロを弾く〈Skeleton Is Walking〉と彼女に捧げたインスト曲〈Wendy Melvoin〉、大好きなジェスカ・フープ(Jesca Hoop)がヴォーカル参加した〈Without An Ending〉など、全12曲・46分。紙ジャケ仕様、6連綴り歌詞カード付き。

投稿: sknys | 2023年9月 4日 (月) 13時40分

>sknysさん
情報、ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2024年1月 5日 (金) 23時29分

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