ロックなせっちゃん
Title:ROCK’N ROLL Recording Session at Victor Studio 301
Musician:斉藤和義
今年、デビュー30周年を迎えた斉藤和義がリリースされた30周年記念アルバム。今回のアルバムは、彼がツアーメンバーと共に、ビクターの301スタジオにて一発録りによって収録したアルバム。いつもツアーの毎にライブアルバムをリリースする彼ですが、ライブアルバムとはまた異なった緊張感の中でのレコーディングとなっています。また、選曲については、斉藤和義自らのセレクトとなっているそうで、ベスト盤的な意味合いも強いアルバムとなっています。
今回のアルバムで特徴的なのは、ツアーバンドを率いての一発録りのセッションということもあって、タイトル通り、ロックバンドということを強く意識した録音になっているという点でしょう。全体的にロックバンドということを意識した、非常にダイナミックな演奏を聴かせてくれるアレンジに仕上がっています。
本作には彼の代表曲である「やさしくなりたい」「歩いて帰ろう」も収録されていますが、いずれもバンド色がより強くなったアレンジとなっています。どちらもアレンジを大きく変えた訳ではないのでイメージが大きく変わるものではありませんが、「やさしくなりたい」は、よりギターサウンドがヘヴィーとなり、「歩いて帰ろう」もノイジーなギターのカッティングがより前に押し出されたアレンジとなっています。
アレンジ的に最もロック寄りにシフトしていたのが「ジレンマ」で、1997年にリリースされたアルバムのタイトルチューンなのですが、比較的シンプルなアレンジの原曲とは異なり、疾走感あるギターロックチューンに仕上がっており、グッとロック寄りのイメージにシフトしています。逆に「わすれもの」は、音数を多く入れて、サイケな様相もあった原曲と比べると、シンプルでタイトなサウンドにまとめています。ある意味、バンドだけで演奏できるシンプルなアレンジにシフトしたといったイメージですが、音を絞ったことによって、より大人な雰囲気になったような印象も受けました。
ただ、「ジレンマ」や「わすれもの」などアレンジを大きく変えた作品は少数で、全体的にバンド色は強くなったものの、原曲から大きく変化した作品はありません。というよりも、彼の作品の中から、もともとバンド色が強い作品を選曲しているといった印象を受けました。実際、以前、彼がリリースした「ロック」な曲を集めたセレクションアルバム「黒盤」と重なっている曲が多いもの、そのためでしょう。その結果、「知る人ぞ知る」的な選曲ほどではないものの、どちらかというとベスト盤の次にリリースされそうなアナザーベストに収録されそうな曲が多かったように思います。
ロックなせっちゃんを知れるという意味では最適なアルバムでしたし、何よりも一発録りらしいタイトな演奏が魅力に感じるアルバムになっていました。全体的にはライブ盤というよりもリアレンジという様相も強く、かつ原曲のイメージも大きく異ならないため、ベスト盤的な楽しみも出来るアルバムだったと思います。
そんな訳で、アルバム自体は文句なしの傑作だとは思うのですが、ただ、その点を差し引いても率直な感想としては「思ったほどではなかったかな・・・」とも思ってしまいました。おそらく大きな点は、やはりロックな斉藤和義のみにスポットが当たっていた点。彼のもうひとつの魅力とも言える歌詞をしっかり聴かせるフォーキーな要素の強い作品は本作にはあまりおさめられていません。本作を聴いて感じたのは、私個人としてはやはり斉藤和義のそういった「歌詞」にも大きな魅力を感じていたんだな、ということを再認識しました。
そういった、ある意味、あらためて斉藤和義の魅力を逆説的に感じた部分はありつつ、本作自体は彼の魅力の一側面であるロックなせっちゃんの魅力を存分に感じられるアルバムであり、文句なしの傑作といっていい1枚だったと思います。あくまでも「ロックな側面」ということをエキスキューズしつつも、存分の楽しめるベストアルバム的な作品でした。
評価:★★★★★
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