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2023年9月24日 (日)

どす黒いグルーヴがカッコいい!

Title:ROLL
Musician:EMILAND

2019年、16年に及ぶ活動に幕を下ろしたガールズソウルバンド、ズクナシ。そのメンバーの衣美と茜がその後、すぐに活動を開始したバンドが、その名もEMILAND。2020年にデビューアルバム「OPEN」をリリースしましたが、その後、コロナ禍を経て、約3年8ヶ月ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。

そのデビューアルバムとなった「OPEN」は、EMILANDとしての挨拶がわりとなったアルバム。ソウルバンドという様相が強かったズクナシに比べて、明確にファンクの要素が強くなり、ズクナシとは異なる新たな一歩を感じさせたアルバムでしたが、それに続く2枚目のアルバムは、EMILANDとしてのバンドの方向性がより明確となった作品になっていました。

その方向性とは、ズクナシ以上にバンド色が強く、またどす黒いグルーヴを聴かせてくれるファンクバンドとしての方向性。1曲目を飾る「On and On」はまさにそんなバンドの方向性を決定づける、非常にどす黒いバンドサウンドを聴かせてくれる1曲。「Clean Up This World」も比較的シンプルなサウンドながらも軽快でグルーヴ感あるバンドサウンドを前に押し出した疾走感のあるナンバーになっていますし、その後もベースラインのチョッパーがファンキーなインスト「Chicken in the Pocket」、タイトル通り、ファンクを前面に押し出した「JJ FUNK Ⅱ」など、どす黒いファンクサウンドを前面に押し出している点が大きな特徴となっています。

一方で、どこかユーモラスさを感じさせる歌詞も特徴的で、そんな歌詞をソウルやファンクのトラックに上手く載せている点もユニーク。「せねば」はまさにそんな楽曲で、やらなくてはいけないのになかなか出来ない、よくありがちな心境の愚痴を、上手くメロウなサウンドに載せ、実に絶妙なソウルバラードに仕上がていますし、「エスカルゴ」も、有名な童謡の一節を使い、ユーモラスながらもぶっといサウンドのファンクナンバーに仕上げている曲。のろまな自分の性格をかたつむりに合わせた歌詞もユニークで、こちらも新たなライブの定番になるそう?また、単純にユーモラスな曲ばかりではなく「誰のものでも」のように社会派な歌詞を聴かせてくれる曲もあります。

基本的にファンクナンバーがメインなのですが、ラストを締めくくる「FREEWAY」ではフィリーソウルを聴かせてくれたりと、それなりのバリエーションを持たせつつ全11曲入り48分、最初から最後までソウルやファンクからの影響が顕著なグルーヴ感あふれるバンドサウンドが心地よいナンバー。ほどよくユーモラスさもアルバムを楽しむ要素として加えられており、ライブでも文句なしに盛り上がりそうなアルバムになっていました。バンドとしての方向性がより明確になった1枚。今後の活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

EMILAND 過去の作品
OPEN


ほかに聴いたアルバム

gravity/androp

Gravity_androp

andropの、ミニアルバム、フルアルバム含めて13枚目となる新作。全7曲入りなので、ミニアルバムとしての様相の強い作品なのですが、たった7曲ながらもギターロックあり、HIP HOP風のナンバーあり、ダンスチューンあり、サイケ風な曲ありとバラエティーのある楽曲は最近のandropらしい感じ。ただ一方で、その結果、バンドとしての主軸がいまひとつはっきりせずインパクトも薄く、印象も薄くなってしまっているのも残念な感じ。ここ数作、人気面でも下落傾向なのはそのようないまひとつバンドとしての軸がはっきりしない点が要因なような・・・。

評価:★★★★

androp 過去の作品
door
relight
one and zero
period
androp
best [and/drop]
blue
cocoon
daily
effector

T-BOLAN COMPLETE SINGLES~SATISFY~/T-BOLAN

1990年代のビーイング系ブームの代表格的なバンド、T-BOLAN。1999年に解散後、現在は2度目の再結成により活動を再開しているようですが、このたびそんな彼らの再結成後の作品を含めたシングル集がリリースされました。懐かしさもあり、今、彼らの曲を聴いたらどう感じるかな、という興味もありアルバムで聴いてみたのですが・・・確かに、懐かしいという印象は受けつつも、悪い意味でいかにもビーイング系だな、ということを再認識させられました。特にDisc1の方は、今でいえばAIが作ったんじゃないの?と思うような、インパクトこそあれど、似たような曲ばかりが並んで、なぜこれが90年代にあれだけ売れたのか、疑問に感じてしまいます。Disc2の方は、もうちょっとバンドテイストも増して、個性を感じさせる曲も少なくなかったのですが。彼らに対して抱いていた印象が何も変わらなかったシングル集でした。

評価:★★★

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