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2023年9月26日 (火)

亡き親に捧げる

Title:everything is alive
Musician:Slowdive

Everything_is_alive

日本はおろか、世界的にもいまだに一部で根強い支持を受けているシューゲイザー系。その四天王とも御三家とも呼ばれるバンドのひとつがSlowdive(まあ、呼び方的にも日本だけでしょうが)。1995年に解散したものの2014年に再結成。2017年に実に22年ぶりとなるアルバムをリリースした後、約6年のスパンを経て、無事、再結成後、2枚目となるニューアルバムを完成させました。

そんな久々となる今回のアルバムは2020年に亡くなったボーカル、Goswellの母親とドラマー、Scottの父親に捧げられているそうです。そのため、アルバム全体として悲しみにつつまれつつも、どこか荘厳な雰囲気を感じさせる楽曲が特徴的。メランコリックな「shanty」からスタートし、「prayer remembered」「andalucia plays」は荘厳な雰囲気のサウンドをゆっくりと聴かせる楽曲になっています。「kisses」「skin in the game」なども悲しみあふれるメロディーラインが印象に残りますし、最後を飾る「the slab」もダイナミックなサウンドにメランコリックと荘厳さを感じさせる楽曲に。亡き親に捧げるというイメージにピッタリ来るようなメランコリックなアルバムに仕上がっていました。

また、もうひとつの大きな特徴としては全体的にシューゲイザーなサウンドを散りばめながら、ポストロックやドリームポップにカテゴライズされそうなサウンドも特徴的。まあ、シューゲイザーもポストロックもドリームポップも、明確に区別されるようなジャンルではないのでしょうが・・・。もともと「ミニマルなエレクトリック・レコード」を構想していたそうですが、その構想は随所に残されており、アルバムの冒頭「shanty」はいきなりエレクトロなイントロからスタート。すぐにギターサウンドが入ってくるのですが、このスタートは明らかに当初の構想の名残りでしょう。その後も「andalucia plays」や「chained to a cloud」にもエレクトロサウンドが残されており、アルバムの中でもちょうどよいインパクトとなっています。

また、荘厳なサウンドが特徴的な「prayer remembered」はMOGWAIを彷彿とさせるようなポストロック的な作風になっていますし、メランコリックに美しく聴かせる「alife」なども、ドリームポップという呼び方をされそうなポップチューンになっています。後半の「skin in the game」はいかにもシューゲイザー的なギターノイズを聴かせてくれるのですが、おそらくエレクトロサウンドに起因するような、ドリーミーなサウンドがアルバムの中に散りばめられている作品に。メランコリックな雰囲気と混ざり合うことにより、聴いていて心地よく、夢見心地になるような作品に仕上がっていました。

エレクトロサウンドを構想し、ポストロック的な要素を入れた・・・と言っても、全体的には決して目新しい訳ではありません。ただ、メランコリックでドリーミーなメロディーやサウンドは、シューゲイザー系の雄として高い支持を得ていたバンドの実力を感じさせるには十分すぎるほど魅力的なものでした。とにかく聴いていて心地よさを感じる傑作アルバム。再結成後も全く衰えていないバンドの魅力を感じられる1枚でした。

評価:★★★★★

Slowdive 過去の作品
Slowdive


ほかに聴いたアルバム

Perfect Saviors/The Armed

Perfect

アメリカはデトロイト出身のハードコアバンドによる3枚目のアルバム。前作「ULTRAPOP」はハードコアなサウンドの中にエレクトロサウンドも加えてカオス感を出しつつ、ポップな要素が加わったメロの対比がユニークで、個人的に2021年の洋楽私的ベストアルバムの1位に選ぶなど、かなりはまったアルバムでした。それに続く待望のアルバム。今回もパンキッシュなロックにエレクトロやらサイケやらの要素を加えたサウンドがユニークなのですが・・・ただ全体的にポップなメロが前面に押し出されて、カオスな要素がかなりクリアになってしまったアルバムに。ポップな要素が増して聴きやすくなった反面、前作にような勢いはちょっと後退してしまった感も。ちょっと期待していた方向性からは外れてしまった感のある作品でした。

評価:★★★★

The Armed 過去の作品
ULTRAPOP

Fly or Die Fly or Die Fly or Die ((world war))/Jaimie Branch

新進気鋭のジャズトランぺッターとして注目されていたものの、昨年、わずか39歳という若さでこの世を去ってしまったジェイミー・ブランチによる遺作。トライバルなリズムやラテンの要素を取り入れつつ、リズミカルでダイナミックに聴かせる演奏が魅力的。ジャズの要素を入れつつも、ロック的なダイナミズムも感じさせるサウンドが独特で、ジャズリスナーに留まらず広い層が楽しめそうな非常に迫力ある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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