メロウなトラックが心地よい
Title:Sundial
Musician:Noname
シカゴを拠点として活動している女性ラッパー、Noname。Chance The Rapperのアルバムに参加して話題となったほか、デビュー作である前作「Room25」は各種メディアで絶賛を受け、一躍、注目のラッパーとなりました。本作は、そのデビューアルバムから約5年ぶりとなる2作目。その前作「Room25」は私も聴いて、年間ベストアルバムの7位に選んだほどはまった1枚となっただけに、今回のアルバムもかなり期待を持って聴いてみました。
今回のこのジャケット写真については、ご覧の通り、かなり強烈なアートワークを起用しており、賛否呼びそうな印象を受けますが・・・ただ、肝心のアルバムの内容については、このジャケット写真と全く異なるような作風。前作はジャズやネオソウルの影響の強いトラックを取り入れた、メロウで歌心の強い楽曲が並んでいましたが、本作も基本的な方向性は前作と同様。そのため、おそらくHIP HOPをあまり聴かないようなリスナー層にも楽しめるアルバムになっているのではないでしょうか。
アルバムの1曲目を飾る「black mirror」はフィリーソウルテキストのメロウなトラックにポエトリーリーディング的なラップが特徴的で、トラックを飾る美しいコーラスラインには耳を惹かれます。続く「hold me down」ではメロウなトラックにゴスペルの要素も取り入れたサウンドが耳を惹く内容となっています。
その後もAyoniによるソウルフルなボーカルも目立つ「boomboom」や、リズミカルでジャジーなトラックが印象的な「namesake」、メロウなトラックにトライバルなリズムが印象に残る「toxic」など、ジャジーやソウルの要素を取り入れた、歌心あるトラックが印象的なアルバムに。彼女のラップも、マッチョ的な力強さを押し出したようなものではなく、比較的淡々と綴るような、ポエトリーリーディングのようなラップスタイルであり、このトラックとも上手くマッチしており、全体的にメロディアスな作風に作り上げられています。
若干今回のアルバムで引っかかるのは、アルバムリリース前の先行シングルでありながら物議を呼んだ「ballons」。この楽曲に参加しているラッパーのJay Electronicaが反ユダヤ主義的な陰謀論にはまっており、この楽曲にも"It's all a hoax,quite simple,a joke like Zelenskyy"(それはすべてデマで、非常に単純で、ゼレンスキーのような冗談です)と、ウクライナを揶揄するようにとらえかねられないリリックが入っている点もちょっと気にかかるところです・・・。
そんな若干気になる部分はありつつも、アルバム全体としてはよく出来た内容だったのは間違いなく、ソウルやジャズの要素をふんだんに取り入れたメロウなトラックと、彼女のラップに終始心地良さを感じる傑作に仕上がっていました。HIP HOPをあまり聴かないようなリスナー層でも楽しめそうなアルバム。売上的にはまだまだ芳しくないようですが、今後、さらに注目を集めていきそうな、そんな予感もする1枚でした。
評価:★★★★★
Noname 過去の作品
Room25
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