blurらしさを感じる久々の新譜
Title:THE BALLADS OF DARREN
Musician:blur
oasisと並んで90年代のブリットポップブームを代表するロックバンド、blur。2000年中盤以降、事実上の解散状況になったものの、その後はたまに思いついたようにライブを実施したりする散発的な活動が続いていました。ただ、そんな中、2015年には実に12年ぶりとなるアルバム「The Magic Whip」がリリース。この時も「これが最後」みたいな話も流れたりもしたのですが、前作から8年、待望のニューアルバムがリリースされました。
前作「The Magic Whip」については、ライブイベントの中止によって予定外に時間があいたことにより、急遽レコーディングされた1枚でした。そのこともあってか、久々の新作であったものの期待していたほどの出来栄えではなく、傑作とは言い難い出来になっていました。一方、そういう観点で言えば今回のアルバムは十分な準備の元に作成された作品。そして、結果としては、いい意味でblurらしい作品が並んだ、快心の傑作に仕上がっていました。
まずアルバムはある意味、まんまなタイトルの「The Ballad」からスタートします。こちらはメランコリックなメロディーラインが心地よい、タイトル通りのミディアムバラード。そして、なんといっても魅力的なのは続く「St.Charles Square」でしょう。ひねくれたセンスの独特でユーモラスを感じさせるギターサウンドが展開されるポップチューンは、これぞblur!といった感じの作品。昔からのファンにとっては、おもわずニヤリとさせられる作品ではないでしょうか。
続く「Barbic」も爽やかで軽快なポップナンバー。シンプルながらも彼らのメロディーセンスも光るギターポップになっています。そして中盤の軸と言うべきなのが先行シングルともなっている「The Narcissist」で、こちらも決して派手ではないのですが、爽やかでメロディアスな歌が強く印象に残るギターポップのナンバーに仕上がっています。
後半も「Goodbye Albert」はメランコリックに聴かせるメロながらも微妙にひねくれた感じに仕上がっているのが彼ららしいし、「Avalon」も同様に、どこか癖のあるサウンドに心地よさを感じます。楽曲は全体的にメランコリックに仕上がっており、前述の曲も含めて、ある種の派手さはないのですが、聴き終わったあとしっかりと印象に残るメロディーとなっており、そういう意味でもblurの実力を感じさせるアルバムになっていたと思います。
変なギミック的なものもなく、下手な気負いみたいなものもなく、blurらしい作品を素直に作ってきたアルバムになってきたように思います。若い頃に、メンバー同士のぶつかり合いから解散に追い込まれたグループが、メンバー全員年を取ってから再結成したら、全員が大人になっていて、結果として変なこだわりのない素直なアルバムをリリースするケースがあります。今回のblurのアルバムは、そんな大人になった今だからこそリリースできるような、いい意味での素直なアルバムだったように感じます。えてしてそのようなタイプのバンドは、その後も継続的に活動を続けるのですが、blurもまた、そんな感じで継続的に活動を続けてほしいなぁ。そう強く感じる傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
blur 過去の作品
MIDLIFE:A Beginner's Guide to Blur
All the People... Live in Hyde Park: 2nd July 2009
PARKLIVE
The Magic Whip
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