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2023年8月14日 (月)

無事リリースされたオリジナルアルバム

Title:夢中夢-Dream In Dream-
Musician:Cornelius

もう、わざわざ言うまでもないかもしれませんが、Corneliusこと小山田圭吾の過去のいじめ発言に対するバッシング。個人的な見解は、以前紹介したMETAFIVEのCDレビュー及び小山田圭吾騒動に関する検証本のレビューで記載したのでここでは繰り返しませんが、特に彼の音楽は聴きたいけど、モヤモヤしたものを抱えている方は、上記サイトで紹介している検証本を一読することをお勧めします。個人的には彼に対する印象はかなり良いものにシフトして、なおかつ、彼に抱えていたモヤモヤした感情はなくなりました。

また、一時期は彼のミュージシャン生命が断たれるのではないか、というほどに酷かったバッシングでしたが、2022年あたりから徐々に活動が再開され、ライブツアーも開始。ピッタリ6年ぶりとなるニューアルバムも無事にリリースとなりました。このアルバムに関しても、普通にメディアは取り上げていますし、ネット上の反応も、バッシング的な様相は皆無。チャート上もベスト10入りするなど、あれだけバッシングしていた人はどこに?と思うような結果になっています。例の騒動ではじめて小山田圭吾を知ったような人は、Cornelius=小山田圭吾という認識がない可能性も高いのですが。

さて、無事にリリースされた今回のオリジナルアルバム。大きな特徴としてはポップな歌モノのアルバムに仕上がっていました。「POINT」「SENSUOUS」では空間を聴かせるようなシンプルなエレクトロチューンで新たな世界を切り開いたCornelius。一方、オリジナルアルバムとして前作となる「Mellow Wave」は歌モノのアルバムとシフトチェンジしましたが、今回のアルバムもその方向性が続いた内容となっていました。

1曲目の「変わる消える」からエレクトロアレンジの歌モノとなっており、無常観を綴った歌詞が印象的で、今回の騒動を反映したのか?とも思うのですが、こちら作詞は坂本慎太郎で、ある意味、彼らしい歌詞の世界観になっています。ローファイ気味なボーカルとテンポよいエレクトロサウンドが特徴的な「蜃気楼」や、郷愁感たっぷりのメロが心に残る「Drifts」などが並びます。

ポップなメロという点で耳に残るにはやはり中盤の「環境と心理」でしょう。METAFIVEの曲としてもともとはリリースされていた曲なのですが、軽快なエレクトロポップチューンとしてメロディアスな曲で、ポップなメロというアルバム全体の方向性を位置付けているような印象も受けます。そしてアルバムのラストを飾るのが「無常の世界」という、1曲目と呼応するようなタイトルのナンバー。こちらは小山田圭吾本人の作詞なのですが、いままでの彼の作品では珍しい、内省的な印象も受ける歌詞となっています。例の騒動を直接綴ったものではないものの、影響はあったことをインタビュー記事では認めており、アルバム全体としてもやはり例の騒動とは無関係ではない作品となっていました。

全体的にタイトなエレクトロサウンド主導なのは以前からですし、「Too Pure」のような「SENSUOUS」以前の音像を感じさせるような曲もあったりもしますが、一方、3曲収録されているインスト曲も、サウンドを聴かせるというよりはメロディアスな作風となっており、無機質さを感じさせた以前の作品とは異なり、エレクトロサウンドながらも温かみを感じさせる作品になっていたようにも感じます。

いままで音の世界を追求していた感のあるCorneliusですが、例の騒動を通じて、内面にむきあうこととなり、生み出されたアルバム、と言えるかもしれません。そういう意味では新たな境地に進みだした1枚と言えるかもしれません。もちろん内容的には今年を代表するレベルの傑作アルバムに仕上がっていましたし、彼の才能、そして魅力を再認識した1枚と言えるでしょう。

オリジナルアルバムのリリースやライブツアーの開始など、ミュージシャンとしての活動を無事再会した彼。個人的には思ったよりも通常モードに戻るのが早かったな、という点で安心しています。ただ一方、映画音楽もしくはネット配信系番組への楽曲提供はともかく、地上波や大きなイベントなどへの楽曲提供はかなり長い間、厳しいだろうな、とは感じてしまいます。彼の才能を思うと非常に残念なのですが・・・。

評価:★★★★★

cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius
Mellow Waves
デザインあ2
Ripple Waves
デザインあ3


ほかに聴いたアルバム

山崎×CM②/山崎まさよし

003

山崎まさよしのCMソングを集めた企画盤の第2弾。アコースティックなサウンドで暖かいポップソングを聴かせる作品。最近は人気面でも勢いが失速気味の彼ですが、こうやってCMソングに使われた楽曲をあらためて聴くと、やはり名曲が多いな、と再認識できる作品。ちなみに「斉藤さん」は、あの斉藤和義を題材とした楽曲だそうで、かつて「平成の3よし」と呼ばれた2人がそろい踏みするのに、ちょっと胸が熱くなります。

評価:★★★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS

LIFE
山崎×映画
Quarter
ONE DAY
山崎×CM
STEREO 3

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