圧巻のライブ音源
Title:CITTA'93
Musician:裸のラリーズ
1960年代から90年代にかけて活動し、ギターのフィードバックノイズを前面に押し出したサイケな音楽性が話題となる一方、アンダーグラウンド中心の活動で、かつ、リリースされた音源も少なかったため、「伝説のバンド」として日本のみならず海外でも注目を集めていた裸のラリーズ。一説には、中心メンバーである水谷孝が、あえて音源のリリース数を減らして「伝説」を自己演出した部分がある点が指摘されているようですが、実際、2019年に水谷が逝去した後、裸のラリーズの音源のリリースが相次いでいます。昨年はこのサイトでも紹介しましたが、唯一の公式アルバムだった3枚のアルバムがリリース。そして今回リリースされたのは1993年2月17日に川崎のCLUB CITTAで行われたライブの模様を収録したライブアルバム。かつでメンバーとして参加していたこともあった久保田真琴がミキシングを手掛け、そのライブの模様が再現された作品となっています。
裸のラリーズについては、既にオリジナルアルバム3枚を聴いているのですが、今回のライブ盤についてはその内容からは大きな変化はありません。そもそも、その既発表のアルバムも基本的にはライブ盤ですしね。ライブは非常に狂暴なギターノイズからスタートし、これから来るステージの雰囲気を予感させるかのようにスタート。ライブ盤のうち1枚目については10分程度の長さの曲が6曲収録されていますが、裸のラリーズのサイケな側面だけではなく、意外とポップさを感じるフォークロックとしての側面も押し出したような内容になっています。例えば「記憶は遠い」は狂暴なギターノイズは後ろに下がり、メランコリックなメロを聴かせる歌モノのナンバーに。1枚目の最後を飾る「鳥の声」も、歪んだギターサウンドを奏でている一方、楽曲自体はメランコリックなフォークロックな側面を感じます。
もちろん、冒頭を飾る「夜、暗殺者の夜」や「夜より深く」のようなフィードバックノイズで埋め尽くされるサイケな楽曲も多く、その音楽性に圧倒されるのは間違いありません。ただ、ちょっと気になったのは、前述の通り、60年代や70年代の楽曲そのままだった、という点。60年代や70年代を考えると、圧倒的な先駆性のあったラリーズのサウンドも、既に海外でSonic YouthやMy Bloody Valentineがあらわれている1993年という年を考えると、目新しさがちょっと薄くなってしまっている面は否めません。特にフォークロックな側面に関しては、60年代的な側面も強く、もし私が、1993年にリアルタイムでライブ会場で聴いたら、ちょっと「?」と感じてしまう部分もあったかもしれません。
ただ、とはいっても、これでもかというほど繰り広げられる狂気を秘めたフィードバックノイズの嵐は、ソニックユースやマイブラ登場後においても圧巻な存在であることは間違いないでしょう。特にそれを感じさせるのがDisc1の方。「Darkness Returns 2」は24分、「The Lst One_1993」は39分にも及ぶ長尺の曲なのですが、これでもかというほどのギターノイズの嵐に、ミニマル的なリズムが延々と続く内容で、このギターノイズの嵐の中、軽くトリップできるようなサウンドを繰り広げられています。Disc1では、90年代という時代に、70年代をそのままパッケージしたような部分に若干の疑問を抱いたのですが、Disc2の圧巻の演奏に関しては、脱帽の一言。裸のラリーズというバンドが、時代を超えた孤高の存在であることを証明した音源となっていました。
あらためて裸のラリーズというバンドのすさまじさを感じせてくれるライブアルバム。2枚組とはいえ、CDのみの内容で5,000円というお値段がちょっと高い感もあるのですが、その値段も十分元が取れる音源だったと思います。水谷孝逝去後に、音源の解放が続くラリーズですが、これからもまだまだ音源のリリースは続きそう。とても楽しみです!
評価:★★★★★
裸のラリーズ 過去の作品
67-’69 STUDIO et LIVE
MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés
'77 LIVE
ほかに聴いたアルバム
LA PASSION/三柴理
元筋肉少女帯のピアニストで、現在は特撮のメンバーとして活動しているほか、様々なミュージシャンのサポートを手がけている三柴理。かなり独特で、ある種の変態性のあるピアノプレイが特徴的で、個人的に大好きなピアニストなのですが、本作はその彼のベスト盤となります。彼のベスト盤は2019年にリリースされたばかりで、ちょっとスパンが短すぎな感じがするのですが・・・。今回は筋少やTOTO、QUEENのカバーやクラシック曲も収録。全体的にメロディアスでクラシカルな曲が多く、個人的に好みな「変態性」のある曲は残念ながら少なかったような印象もあります。それでも美しいピアノの調べに惹かれる1枚でした。
評価:★★★★
三柴理 過去の作品
BEST of PIANISM
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