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2023年8月27日 (日)

久々の新譜はAphex Twinの新たな一歩か?

Title:Blackbox Life Recorder 21f / In A Room7 F760
Musician:Aphex Twin

実に約6年ぶりとなるAphex Twinの新作は4曲入りのミニアルバム。久々の新作がわずか4曲14分程度のEPか・・・と思わなくもないのですが、ただそんなネガティブな感情を吹き飛ばすだけにふさわしい、充実した作品4曲が収録された作品に仕上がっていました。

まずこの4曲のEP盤を聴いた感想だと、Aphex Twinの作品に対してこのような表現をするのがふさわしいかどうか微妙なのですが、非常にポップで聴きやすい作品ということを感じました。Aphex Twinといえば、ドリルンベースと言われる強烈で変態性のあるビートが特徴的。かなり独特のサウンドな一方、複雑なビートは聴く人を選ぶ部分はありました。

それと比べると今回のEPに収録された4曲は四つ打ち・・・ではないもののテンポのよいビートで構成されている曲となっており、ドリルンビートの変態性あるリズムはあまり感じられません。一方で6年前にリリースされた前作「Collapse EP」も、ドリルンベース的なリズムがありつつ、メロディアスな方向性を感じた作品でしたが、今回の作品も同様に、どこかメロディアスな部分を感じさせます。そういった意味では、前作の延長戦上にある作品、と言えるのかもしれません。

まず1曲目のタイトルチューン「Blackbox Life Recorder 21f」は、まさにテンポよいエッジの効いたリズムが軽快に展開しつつ、全体的にメランコリックさを感じるメロディーを感じさせるインストチューン。コーラスのようなサンプリングが不気味さを醸し出しつつ、楽曲全体のメロディーラインを支えています。続く「zin2 test5」もリズムトラックに疾走感があり、こちらもポップな心地よさを感じるナンバー。軽快なリズムはファンク的な要素も感じさせる一方、バックに流れるシンセのサウンドがこちらも不気味さを感じさせ、独特の雰囲気を醸し出しています。

3曲目も同じタイトルチューンの「in a room7 F760」。こちらも疾走感ある軽快なビートが特徴的。カウベルをはじめ、全体的に軽快なビートが展開しつつ、こちらもエレクトロサウンドが不気味さを醸しつつ、メランコリックなメロディーを奏でています。そしてラストを飾るのが「Blackbox Life Recorder 22[Parallax Mix]」。軽快なビートが流れつつ、全体的にヘヴィーでダークなサウンドが楽曲を包み込むような楽曲に。こちらもしっかり流れるメランコリックなメロディーラインが魅力的になっています。

本作の宣伝文の売り文句にもなっているようですが、エッジの効いたサウンドは間違いなくAphex Twinのそれで、それだけ個性を感じさせます。そういう意味でサウンド的に目新しさを感じさせるものではない一方、テンポのよいビートにポップさを感じるメロディーラインを重ねたサウンドは、どこかいままでのAphex Twinとは異なる新しさも感じさせる作品になっていたと思います。6年前の前作もそうですが、ここ最近の作品は、以前のドリルンビートの路線に、ポップスさを加えようとして若干のチグハグさを感じていたのですが、今回の作品はAphex Twinらしさといい意味での聴きやすさがピッタリとはまった作品になっていたように感じました。冒頭にも書いた通り、わずか4曲ながらも充実した傑作になっていた本作。あらためてAphex Twinの実力に舌を巻いた作品でした。

評価:★★★★★

Aphex Twin 過去の作品
Syro
Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP
orphaned deejay selek 2006-2008(AFX)
Cheetah EP
Collapse EP


ほかに聴いたアルバム

Speak Now(Taylor's Version)/Taylor Swift

テイラー・スウィフトが過去の作品を再録音して再発売する「Taylor's Version」シリーズの第3弾。2ndアルバム「Fearless」、4thアルバム「Red」と続き、今回は3rdアルバム「Speak Now」の再発となりました。当初はカントリーシンガーとしてデビューした彼女は、2014年の5枚目「1989」からカントリーに留まらず、ポップシンガーへの脱却を図るのですが、3枚目のこのアルバムは、カントリーな作品がメインながらも、その萌芽となるようなロック色が強い作品も収録されており、テイラーの可能性を垣間見れる作品になっています。そんな訳で、2枚目から4枚目が再録音され、「1989」からは比較的、最近のテイラーへの路線に近づくだけに、次は戻ってセルフタイトルのデビューアルバムの再録音となるのでしょうか?それともこの「Taylor's Verion」は5枚目以降のアルバムにも続くのでしょうか。次の一手も楽しみです。

評価:★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore
Fearless (Taylor's Version)
RED(Taylor's Version)
Midnights

The Greater Wings/Julie Byrne

アメリカのシンガーソングライターによる3枚目のアルバム。アコースティックギターをベースに、ストリングスやピアノを入れてしんみり聴かせるフォーキーな作風が特徴的なのですが、「Summer Glass」のようにエレクトロサウンドを取り入れた曲があったり、「Hope's Return」のようなサイケなサウンドでダイナミックに聴かせる曲があったりと、バラエティーもあり、時折垣間見せる幻想的な作風も魅力的。アメリカよりもイギリスでのヒットが先行しているようですが、日本でも受け入れられそうな、幅広い層にお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

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