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2023年8月26日 (土)

再結成後の曲も多く収録したオールタイムベスト

Title:一瞬!
Musician:筋肉少女帯

メジャーデビュー35周年を記念してリリースされた筋肉少女帯のベストアルバム。比較的、ベスト盤を乱発している印象もある彼らですが、2016年にリリースした直近のベスト盤は再結成後の曲を集めたアルバムですし、2013年にリリースしたものはセルフカバー集ですし、純粋なオールタイムベストとしてはちょっと意外なことに、再結成後にリリースされた2007年のベストアルバム「大公式」以来となります。

80年代や90年代に活躍したバンドが再結成しても、ほとんどライブ中心の活動、もしくは散発的に時折、気が付いたかのように活動するバンドが多い中、筋少は再結成後もコンスタントに活動を続け、1、2年に1枚のペースでオリジナルアルバムのリリースも続けています。いままでリリースしている21枚のオリジナルアルバムのうち、9枚が再結成後の作品。ともすれば「周年記念」のベスト盤がリリースされる間に、オリジナルアルバムが1枚2枚程度しかリリースされていない、というケースも少なくない中、比較的、オールタイムベストのリリーススパンとしては妥当な感じがします。

ちなみに今回のベストアルバムに関しても、全32曲中、新曲が1曲のほか、13曲までが再結成後の曲となっており、活動全期間を通じて、概ね平均的に収録された選曲となっています。そこで気が付くのが、こうやって再結成後の比較的最近の作品を昔の作品と並べて聴いてみても、全く違和感がないという点。実際、再結成後のアルバムも傑作アルバムを多くリリースしていますし、デビューから35年を経過してもなお、楽曲のクオリティーを保ち続けるというのは驚きでもあります。

おそらく、これだけ楽曲のクオリティーを保ち続けているというのは、サウンド的にはハードロック系のサウンドで、様式化している部分がありつつ、一方で大槻ケンヂの書く歌詞が、独特の世界を確立しているため、一定程度以上のクオリティーのある曲をリリースし続けられるという点が大きいのでしょう。ちなみに今回、新曲として収録されている「50を過ぎたらバンドはアイドル」も、50歳を過ぎた自分たちの年齢と、同じ年の「普通の社会人の大人」とをシビアに比較して、バンドとしての現状をコミカルでシニカルに描いている、実に大槻ケンヂらしい世界観が繰り広げられています。

今回のベストアルバムは2枚組となっており、Disc1、2で明確な違いはないようで、また発売順ともなっていません。ただ、あえて言えばDisc1はハードロックやメタルで、そのバンドサウンドを聴かせるような曲が多く、Disc2は比較的メロディアスな曲調で、大槻ケンヂの歌詞の世界を前に押し出した作風の曲が多かったように感じました。筋少の魅力の2つの側面を、2枚のアルバムに分けた感じでしょうか。より筋肉少女帯の魅力を、より様々な側面から感じられるようなベスト盤になっていたように感じました。

2枚組というボリュームながらも、これでもかといほどのインパクトある作品も多く、あっという間に聴けてしまうベスト盤で、間違いなく、今の段階での筋少入門としては最適な作品と言えるでしょう。なにげに最近でもアルバムをリリースすればベスト20あたりにランクインしてくるなど、一定以上の人気を保ち続けている彼ら。いまからでもチェックしてほしいベスト盤です。

評価:★★★★★

筋肉少女帯 過去の作品
新人
大公式2
シーズン2
蔦からまるQの惑星
公式セルフカバー4半世紀
THE SHOW MUST GO ON
おまけのいちにち(闘いの日々)
再結成10周年パーフェストベスト+2
Future!
ザ・シサ
LOVE
君だけが憶えている映画


ほかに聴いたアルバム

LAST PARADISE/MONGOL800

Mongol_last

バンド結成25周年を迎えたMONGOL800が、実に7年ぶりにリリースしたニューアルバム。レゲエやスカ、カントリーの要素も入ったポップアルバムで、一方パンク的な要素は薄め。全体的にはポップな様相の強いアルバムになっており、郷愁感たっぷりのメロも魅力的な反面、「想うた 〜親を想う〜」のような、あまりにもベタな「親孝行ソング」は優等生的過ぎて面白さは感じませんし、全体的にはそんな漂白された、二昔くらい前の青春パンク路線を続けているのは、マイナス要素でした。

評価:★★★★

MONGOL800 過去の作品
愛彌々(MONGOL800×WANIMA)

オールタイムベスト/杉山清貴

杉山清貴&オメガトライブとしてデビュー。その後、ソロに移行後も80年代にはヒット曲を連発し、文字通り一世を風靡したシンガーソングライターによるオメガトライブ時代の曲を含むオールタイムベスト。「ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER」「最後のHoly Night」などのおなじみのヒット曲も多く、今で言うシティポップの先駆け的な評価もされているのですが、80年代から90年代にかけての曲を集めたDisc1は、後半になればなるほど、良くありがちな「歌謡曲」的な曲が増えてきてしまい、あまり面白さを感じませんでした。むしろ耳を惹いたのは、彼の人気がひと段落した後の曲を集めたDisc2の方で、彼の音楽的なルーツであるR&Bなどの要素をより強く感じさせる曲が並び、昔のようなインパクトには欠けるものの、曲としてはむしろ杉山清貴の良さが出ていたようにすら感じました。3枚組フルボリュームで、ちょっと時代を感じさせる部分もあるため若い世代にストレートにお勧めできる感じでもないのですが、杉山清貴という名前に懐かしさを感じた方はチェックしても損はないかも。

評価:★★★★

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