30年以上人気を保つポップデゥオのシングル集
Title:SMASH~The Singles 1985-2020
Musician:PET SHOP BOYS
日本でも高い人気を誇る、イギリスのエレクトロポップデゥオ、PET SHOP BOYSの、デビューした1985年から直近の2020年までのすべてのシングルを網羅したシングルコレクションがリリースされました。CD版で全3枚組。さらにデラックスエディションでは彼らのMV集がついたBlu-rayがついた全5枚組という、PET SHOP BOYSの歴史を網羅する企画となっています。
1985年以降のシングルが網羅されたベスト盤ということで、あらためてPET SHOP BOYSのディスコグラフィーを見ると驚かされるのが、1986年のデビューアルバムから2020年にリリースした最新アルバム「Hotspot」まで、34年間にわたるすべてのアルバムがイギリスチャートでベスト10ヒットを記録している、という事実でした。ある意味、非常に驚異的な記録で、日本でもB'zやミスチルが長く人気を持続していますが、ベスト10ヒットを記録するようになったのは90年代に入ってから。イギリスのミュージシャンではU2なんかも80年代から変わらない人気を維持していますが、U2の場合は世界的な人気バンドとして、それだけ長く人気が持続しているのも、なんとなくわかっていたのですが、PET SHOP BOYSも人気グループという認識はあったものの、それだけの大物、というイメージはなく、それだけに、これだけ長く人気を持続している・・・という事実は、正直、意外に感じました。
特に80年代のポップミュージシャンは、90年代以降、一気に人気が衰えてきた傾向にあります。80年代的なサウンドが見直された今となっては信じられないかもしれませんが、90年代には一時期「80年代的な曲はカッコ悪い」的な風潮があり、さらにもっと言えば、技術の進歩により80年代で多様されてきたシンセの音が急激に陳腐化してしまったということもあり、80年代を代表するようなポップミュージシャンの人気が下火になってしまったという傾向がありました。
今回のこのシングルコレクションも、基本的にはリリース順に並んでいるのですが、確かに1枚目に収録されているシングルは80年代的な色合いが強く、特にデビューシングル「West End Girls」などは、取って付けたようなラップ的な部分も含めて、いかにも80年代的に感じてしまいます。このいかにも80年代的なポップスユニットが、その後も人気を持続できた、という点には驚きも感じてしまいます。
とはいえ確かに、80年代の曲から、そのメランコリックなメロディーラインは大きなインパクトとなっており魅力的でしたし、サウンド的にもデビュー以降、徐々にPET SHOP BOYSらしい、祝祭色のある独特なサウンドにシフトしていっています。そのため、比較的、早い段階から80年代的な色は薄れて行っており、PET SHOP BOYSの個性をメロの面でもサウンドも面でもしっかり確立しています。その点が、彼らが30年以上、人気を持続している大きな要因なのでしょう。
そういう意味では最近の曲に関しては、PET SHOP BOYSらしさを確立し、目新しさことないのですが、彼ららしさの中でもサウンドをアップデートしているため、しっかりと今の音として響いていますし、なによりもデビュー以来変わらない、シンプルだけどもしっかりとインパクトのあり、胸に響くメロディーラインの魅力は変りません。デビュー当初の曲から最新の曲まで、全く衰えた感じもないという点も驚異的。この点も長く人気を持続している大きな要因なのでしょう。
なお本作、デラックス版は輸入盤国内仕様で11,000円という高価。MV集も欲しかったのですが、さすがに1万超えは厳しくて、諦めました・・・。ただ、単なるMV集がついたくらいで1万超えるか?円安と、海外の物価が上がった影響かなぁ・・・と最近よく言われる「安くなった日本」を嘆いたのですが、イギリスのAmazonで元値を確認すると、£40.85なので、直近のレートで約7千円くらい。まあ、そんなものか・・・と思いつつ、2年くらい前のレートなら5千円くらいだったので、やはり円安の影響は大きそう。ちょっと残念です。
PET SHOP BOYSの魅力とすごさをあらためて実感できたベストアルバム。CDのみでもかなりボリュームある内容ですが、魅力的なポップチューンがそろっているため、飽きることなく楽しむことが出来ます。ポップ好きならばチェックしておきたいアルバム。ポップスの楽しさを感じさせてくれるベスト盤でした。
評価:★★★★★
PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Agenda
Hotspot
Monkey business
My Beautiful Laundrette
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事
- マッドチェスタームーブメントの楽曲を網羅的に収録(2023.12.24)
- 全盛期oasisの充実ぶりを物語る名盤(2023.12.15)
- 荒々しさを感じる初期ライブ盤(2023.12.12)
- 新曲が加わり大幅にボリュームアップ!(2023.12.11)
- 本来の意味での・・・「エモい」アルバム(2023.12.03)
コメント