« 新たな名盤誕生を予感させるラストライブアルバム | トップページ | すっかりバンドとして定着 »

2023年7月23日 (日)

彼の原風景?

Title:Council Skies
Musician:Noel Gallagher's High Flying Birds

最近も再結成の噂…というよりも再結成を求む声の絶えないoasisのお兄ちゃんこと、ノエル・ギャラガーのソロプロジェクト、Noel Gallagher's High Flying Birdsによる、約5年半ぶりとなるニューアルバム。ちなみに"Council"とはイギリスの低所得者向け公営住宅のことで、日本語で言えば「団地の空」ということになります。ある意味、彼にとっての「原風景」と言えるのかもしれません。

Noel Gallagher's High Flying Birdsといえば、oasis解散後の活動において、oasisとは異なる、新たな方向性を模索しようとしたユニットでした。その点については賛否両論がありつつ、ソロ名義になってからはoasisの王道路線を突き進む弟が、(楽曲の出来としては、お兄ちゃんの方に軍配があがると思うのですが)お兄ちゃん以上の人気を確保している点からも、やはりoasisの延長線上を求める声は大きいのでしょう。その中で彼の原風景をタイトルとした今回のアルバムは、昔ながらのノエル・ギャラガー色を出したアルバムに仕上がっていました。

基本的にはアルバム全編、ストリングスも取り入れたスケール感のあるサウンドに、メランコリックなメロディーラインが特徴的。アルバムの冒頭を飾る「I'm Not Giving Up Tonight」は、アコギで静かにスタートしつつ、途中からストリングスも入りスケール感もあるサウンドと郷愁感も覚えるメロディーラインが印象に残る作品で、まさに「ノエル節」とも言える作品。軽快なリズムトラックにバンドサウンドも入り、グルーヴ感もある「Pretty Boy」も、いかにもノエルらしいメランコリックなメロディーラインが耳に残ります。

アルバム中盤の核とも言えるのは「Easy Now」でストリングスにコーラスも入れた荘厳さを感じるサウンドに、サビにかけてゆっくりと盛り上がっていき、サビの部分で一気に解放されるような爽快感を覚えるメロディーラインは、まさにノエル・ギャラガーの真骨頂といった楽曲に仕上がっています。

今回のアルバムに関してはoasis路線への回帰といったアルバム評も多くみられました。確かに打ち込みなどの要素は薄く、バンドサウンドとストリングスでグルーヴ感を出しつつ、メランコリックなメロディーラインを聴かせるというスタイルはoasisの路線に近いものを感じます。ただし、バンドサウンドについては比較的おさえめ。「There She Blows」のような、バンドサウンドを前に押し出してグルーヴ感を出した曲もあるのですが、全体的にはバンド色やロック色は抑え目で、この点、やはり彼の中でoasisとは一線を画する方向性を感じさせます。

正直、アルバム全体としてメランコリックなミディアムテンポのメロディーライン一本やりな部分があり、バリエーションという面からはちょっと物足りなさを感じる部分は否定できません。ただ一方で、決して多くないバリエーションの中でもアルバムを最後まで魅力的に聴かせてしまうという点、ノエル・ギャラガーのメロディーセンスの良さが光ったアルバムであることは間違いないでしょう。そういう意味で、ノエル・ギャラガーらしさと、彼の実力、魅力が存分に発揮されたアルバムだったと思います。まあ、この曲をリアムの声で聴けたら、という部分もないことはないのですが、oasisの再結成を願いつつ、ただノエルの魅力も実感できた傑作でした。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY
Who Built the Moon?
Wait And Return EP
Black Star Dancing
This Is The Place
Blue Moon Rising
BACK THE WAY WE CAME:VOL.1(2011-2021)


ほかに聴いたアルバム

Licked Live In NYC/The Rolling Stones

もともと2003年にリリースされた、ニューヨークでのライブを収録したアルバムが、今回、レストア&リマスターされ再発売されたもの。ストーンズのライブアルバムは、最近、次から次へとリリースされているのですが、そんな中でも、全体的に軽快で明るさを感じさせるアルバム。最近のライブでは豪華なゲストの参加も特徴的だったりするのですが、このライブ盤ではゲスト参加は控えめ。逆にゲストがいなくてもバンドだけで楽しい雰囲気が作れるだけ、バンドとしての状況がよかったということでしょうか。そんな中でもゲストでシェリル・クロウが参加した「Honky Tonk Women」は彼女のパワフルなボーカルも魅力的で、ゲストが良い効果を果たしていました。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!

|

« 新たな名盤誕生を予感させるラストライブアルバム | トップページ | すっかりバンドとして定着 »

アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新たな名盤誕生を予感させるラストライブアルバム | トップページ | すっかりバンドとして定着 »