« フォークロック色がより強く | トップページ | 彼の原風景? »

2023年7月22日 (土)

新たな名盤誕生を予感させるラストライブアルバム

Title:NUMBER GIRL 無常の日
Musician:NUMBER GIRL

1999年にメジャーデビュー。そこから、2002年の解散までわずか3年という期間でありながら、その個性的な楽曲に多くの音楽ファンが衝撃を受け、音楽ファンのみならず数多くのミュージシャンにも影響を与えたバンド、NUMBER GIRL。数多くのミュージシャンたちがリスペクトを公言しているほか、ボーカルの向井秀徳のその後の活躍もあり、その活動期間の短さもあってか、「伝説のバンド」といった感のあった彼ら。それが2019年に再結成を果たした、という事実は大きなニュースとなりました。

もともと、RISING SUNへの出演を目標としていたそうで、2022年のRISING SUN出演後の解散を発表。同年12月11日のぴあアリーナMMでのライブを最後に再び解散となりました。本作は、その解散ライブの模様をそのまま収録したライブアルバム。「無常の日」と題されていますが、2002年の解散ライブのツアータイトルも「無常の旅」でしたので、この「無常」シリーズはナンバガの解散時のお決まりのタイトルとなったようです。3度目があるのかはわかりませんが・・・。

このライブアルバム、全3枚組31曲入りというかなりのフルボリューム。全3時間近いという長さのライブアルバムとなっており、ラストライブの模様をフル収録したライブアルバムだそうです。そういう意味では資料的な価値もある作品。もともと彼らはオリジナルアルバム以上に、「シブヤROCK TRANSFORMED状態」「サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態」といったライブアルバムに高い定評のあるバンドなのですが、そんな彼らの名盤があらたに1枚加わった、そんな作品と言えるのではないでしょうか。

もっともこのライブアルバムを聴き始めた時の印象としては、「バンドとして非常に上手くなった」という感想をまず抱きました。もっとも、個人的にこれは「褒め言葉」ではありません。既に「ベテラン」の領域に入る彼らなだけに、演奏はまず良くも悪くも「卒なく」という印象を受けてしまいます。バンドとしてほどよくまとまっており、演奏は間違いなく「上手い」という印象を受けるのは間違いありません。ただ、かつてのNUMBER GIRLは「上手い」という一言ではおさまりきらない、このメンバー4人だからこそ生み出すことが出来る独特のケミストリーがあり、それがバンドとしての大きな魅力でしたが、このラストライブ開始当初においては、残念ながらそのような印象を受けませんでした。

ただ、それはライブアルバムを聴き進めるにつれて、徐々に変わっていきます。最初こそ、メンバー4人、良くも悪くも卒ない演奏を聴かせてくれているという印象だったのですが、徐々にバンドとしての一体感を覚えるような演奏を聴かせてくれるようになってきました。特にDisc2の「透明少女」あたりからは、その疾走感あるギターサウンドにワクワク感を覚え、Disc3の「タッチ」の力強い演奏には、まさに聴いていて身震いするようなカッコよさを感じます。さらにそれに続く「I don't know」のダイナミックな演奏のカッコいいこと・・・。途中からの彼らの演奏には、なぜNUMBER GIRLというバンドが、今なおあれだけ多くのミュージシャンたちのリスペクトを集めているのか、その理由がよくわかるのではないでしょうか。

これがラストのライブアルバムながらもNUMBER GIRLとしての新たな名盤誕生を感じさせる傑作アルバム。NUMBER GIRLというバンドのすごさをあらためて感じさせる作品でした。これが最後というのは残念ですが、ただ変にダラダラ続けるよりは、期間限定でスパッと活動をやめた方がいさぎよいのかも。再び再結成があるかどうかはわかりませんが、今はこのアルバムで彼らの音に酔いしれたいところです。

評価:★★★★★

NUMBER GIRL 過去の作品
School Girl Distortional Addict 15th Anniversary Edition
SAPPUKEI 15th Anniversary Edition
NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition
LIVE ALBUM「感電の記憶」 2002.5.19 TOUR「NUM-HEAVYMETALLIC」日比谷野外大音楽堂

|

« フォークロック色がより強く | トップページ | 彼の原風景? »

アルバムレビュー(邦楽)2023年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« フォークロック色がより強く | トップページ | 彼の原風景? »