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2023年7月 3日 (月)

懐かしい「渋谷系」ユニット

Title:ICE Complete Singles
Musician:ICE

このベスト盤リリースを知った時、とても懐かしい!という印象を受けました。主に楽曲制作を手掛けるギタリストの宮内和之と、ボーカリストの国岡真由美によるユニット、ICE。90年代に活躍し、特にユニット名がピッタリくるような「クールビューティー」な国岡真由美のボーカルが強く印象に残ったユニットで、スタイリッシュなそのサウンドは、非常に都会的な雰囲気を醸し出しており、当時高校生だった私にとっては、「大人のユニット」という、ちょっと憧れにも似た感覚を受けていました。

本作は、そんな彼女たちのデビュー30周年を記念してリリースしたシングルコレクションで、16枚のシングルがすべて収録されたアルバムとなっています。今回、懐かしさもあり、このシングルコレクションを聴いてみたのですが、その過程でICEについて調べてみて、ショッキングな事実を知りました。宮内和之は、2007年に43歳という若さで逝去していたんですね・・・。ひょっとしたら、そのニュースはリアルタイムで聞いていたのかもしれませんが、あらためて非常に残念に感じます。今は、国岡真由美が、名義を小文字のiceに変えて、ライブを中心に活動を続けているようです。

そんな訳で、久しぶりに聴いたICEの楽曲。特に「MOON CHILD」「BABY MAYBE」「GET DOWN,GET DOWN,GET DOWN」あたりは当時メディアでも頻繁に流れていた記憶があり、あらためて懐かしさを感じました。そして彼女たちのシングルを聴いて感じるのは、非常に幅広いジャンルの音楽を取り入れつつ、スタイリッシュにまとめあげ、なおかつポップに聴かせる手法の見事さでした。基本的にソウルやAOR、ラウンジなどの要素を強く感じさせつつ、エレクトロやファンク、レゲエやダブなどの要素を幅広く取り入れています。

一方、ブラックミュージックを軸に都会的なポップにまとめあげるという方向性は、当時流行った「渋谷系」の王道とも言えるスタイル。特に、そんな渋谷系の代表格とも言えるピチカート・ファイブからの影響は顕著で、「CAN'T STOP THE MUSIC」「Sunshine Woman」あたりは完全にピチカートフォロワーなサウンドになっています。かなり流行に寄り添ったサウンドでもあったため、今聴くと、少々時代を感じてしまいますし、渋谷系とカテゴライズされつつヒットを飛ばしたフリッパーズ・ギターやオリジナル・ラヴ、ピチカート・ファイヴなどを比べると、ICEとしての個性がそれだけ出せていたのか、と言われると若干の物足りなさも感じてしまいます。

もっとも、そんな中でICEらしさという点では、宮内和之がギタリストという特性からか、前述のグループと比べるとロックテイストを聴かせる曲も目立つという点でしょう。「LIFE(STANDIN' ON THIS WORLD)」などはまさにロックやファンクテイストの強い、彼女たちらしいナンバーと言えるでしょうし、「OUT OF MY HEART」のグルーヴィーなサウンドもカッコよさを感じます。ただ残念ながら、シングルということでもっと「渋谷系らしい」音を求められたのでしょうか、ロック的な曲はあまり多くなく、ICEの特性がもうちょっと生かせられたら、もっとおもしろくなったと思うのですが・・・。

そんな気になる点はありつつも、トータルで言えば非常にカッコよさを感じたシングルコレクションで、遅ればせながらICEの魅力を堪能できたシングルコレクションになっていました。それだけに、宮内和之のあまりにも早い逝去が残念に感じるのですが・・・。リアルタイムにICEを聴いて懐かしさを感じる方はもちろん、今の若い世代にもチェックしてほしい作品でした。

評価:★★★★★

そして、このシングルコレクションと同時に、彼女たちのインディーズ時代の曲を集めた「初期ベスト」もリリースされました。

Title:ICE Early Years[1990-1992]
Musician:ICE

タイトル通り、1993年のメジャーデビュー前の楽曲を集めた作品。この時期は、あくまでも宮内和之のプロジェクトだったようで、まだ国岡真由美もボーカルとして正式参加していなかったようです。実際、アルバムがはじまるといきなり男性ボーカルの曲からスタート。おそらくICEのイメージからするとビックリしてしまう方も少なくないでしょう。

また、前半は宮内和之自らボーカルを取る曲が続くのですが、メジャーデビュー後の曲に比べると、ロックやファンクの要素が強いのも大きな特徴でしょう。冒頭の「GROOVER」などは、まさにホーンセッションも入ってファンキーな作品になっていますし、「INTO MY BRAIN」もヘヴィーなギターサウンドを押し出した、ロックな曲になっています。

ただ後半、国岡真由美がボーカリストとして参加してくるあたりから、徐々にソウルテイストのメロウな作風に変化。特に「Make Me Your Baby」は、その後のICEの楽曲そのものの作風に仕上がっており、まさに初期のロック、ファンク路線から、その後のICEのソウル、ラウンジ路線への変化がよくわかる作品になっていました。

全体的には粗削りな部分が大きく、ファンズアイテム的な部分も大きいのですが、一方でICEの魅力もしっかり感じられる1枚。彼女たちの歩みを知るにもピッタリの作品。上記シングルコレクションでICEを気に入った方は次の1枚でおすすめの作品です。

評価:★★★★

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