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2023年7月

2023年7月31日 (月)

クエストラブが描くアメリカ音楽史

今日は最近読んだ、音楽関連の書籍の紹介です。

アメリカのHIP HOPグループ、THE ROOTSのクエストラブが書いた、アメリカの音楽と歴史を俯瞰した1冊、「ミュージック・イズ・ヒストリー」。クエストラブといえば、このサイトでも紹介した映画「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」の監督をつとめ、アカデミー賞とグラミー賞をダブル受賞したことでも話題となりました。この「サマー・オブ・ソウル」は1969年にニューヨークのハーレムで行われた音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティヴァル」をおさめたもの。アメリカのブラック・コミュニティの中で行われていたイベントなだけに、今では半ば「忘れられたフェスティバル」となっていたものを映像と共に発掘し、アメリカのポピュラーミュージック史の中で忘れられていた部分にスポットをあてた映画としても大きな話題となりました。

そもそもTHE ROOTSというバンド名からして、黒人奴隷の問題を真正面から描いて社会的にセンセーションを巻き起こした、社会派ドラマのタイトルから取られているなど、ブラックコミュニティに対する歴史に造詣の深いクエストラブ。それだけに、アメリカの音楽史をまとめた1冊ということからも注目度がわかります。実際、全504ページにもわたる書籍となっておりう、ズッシリと重い1冊となっていました。

ちなみにうたい文句は「自分史とアメリカ現代史とを重ねながら音楽を語った画期的な一冊が登場。音楽が様々な社会事象と結びつき、どのように変化し広まったかを独自の文体で徹底解説!!」とかなり大々的な文句となっています。それだけに、かなり重厚なアメリカ音楽史が語られるのか・・・と思いながら読み始めると、率直な話、期待外れの感はありました。

正直なところ、ここで書かれているような重厚な歴史を語る書籍というよりも、むしろ自分の経験や音楽的趣向にアメリカ音楽史を重ね合わせて描いたエッセイ集といった印象が強い作品。1971年から現在に至るまで、その年の出来事と自分の経験を重ね合わせた結果としての音楽的な出来事を紹介し、それにまつわるエピソードや彼の考えを描いています。

全体的には比較的平易な表現を使っているため非常に読みやすく、504ページというボリュームの割にはスイスイと読み進められる内容。特にアメリカのミュージックシーンにおいて、ブラックコミュニティにいた人物からの視点により描かれている点は日本人にとっても新鮮ですし、興味深く読むことが出来ます。ただ一方、それだけに日本人にとっては少々なじみのないような出来事やあるいはミュージシャン、音楽作品も登場してくるため、その点、読みにくい部分も。また、全体的には彼の興味の赴くままに綴っているだけに、記述は体系化されておらず、率直な感想として、読みやすいけどわかりにくい、という印象を受けてしまいました。

そういう意味では、音楽史を学ぶ・・・という意気込みで読むと、かなり肩透かしをくらってしまう感のある1冊ですし、最低限のアメリカ音楽史についての知識がないとかなり読みにくい本のようにも感じます。3,000円超と値段的にもそれなりですし、そういう意味では万人にお勧めできる・・・といった感じではないかも。クエストラブのファンやアメリカ音楽史にある程度詳しい人向けかもしれません。文章的には非常に読みやすい内容なのですが。

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2023年7月30日 (日)

音楽活動25周年のセルフタイトル作

Title:奇妙礼太郎
Musician:奇妙礼太郎

シンガーソングライター奇妙礼太郎による、セルフタイトルによるニューアルバム。音楽活動25周年を記念してのアルバムとなるそうです。ただ、「25周年」と言われても、ちょっとピンとこなかったのですが、もともとはアニメーションズや天才バンドとして活動を行っていたため。2008年に奇妙礼太郎トラベルスイング楽団として活動を開始していますので、彼の、この一度聞いたら忘れられないようなインパクトのある名前をよく聞くようになったのはこの頃からでしょうか。現在、46歳の彼。なにげに結構なベテランなんですね・・・。

そんな彼のセルフタイトルによるアルバムなのですが、そのこともあって、かなりの力の入れようとなっています。1曲目の「散る 散る 満ちる」では菅田将暉、続く「春の修羅」では羊文学の塩塚モエカ、さらに「HOPE」ではお笑い芸人のヒロコヒーと豪華なゲスト陣が参加した曲が並んでおり、その力の入れようがうかがえます。

・・・とはいえ、楽曲自体はいい意味でいつも通り。暖かみのある朴訥な作品が並びます。ヒロコヒーをゲストに迎えた「HOPE」はアコギでしんみりと聴かせる、郷愁感あふれるフォーキーで切ないメロディーラインの作品に。「ONLY FOOL」もリズムマシーンを取り入れつつ、基本的にはフォーキーで聴かせる作品になっていますし、「touch my soul」も暖かいメロディーラインと歌詞が印象に残る楽曲に。また後半の「Vintage」もアコギ1本で聴かせる作品になっています。

基本的にはそんなアコースティックな作風の曲が並びつつ、一方では「散る 散る 満ちる」ではメロウなトラックとラップを取り入れていますし、その方向性をさらに進めた「真夜中のランデブー」はネオソウル風な作品に。また「ほんまにおいしいお好み焼き」はファンク、ラストの「いつのまにか猫」は裏打ちのリズムのラテン風な作品となっています。シンプルな作風ながらもバラエティー富んだ、彼の幅広い音楽性を感じる作品となっています。

また「ほんまにおいしいお好み焼き」「いつのまにか猫」という、タイトルから想像できるようなユニークな歌詞の作品もあり、聴いていてほっこりできる瞬間もまた彼の楽曲の大きな魅力。この2曲を含めて、身の回りを描写した歌詞や内省的な歌詞がメインとなっており、その点も聴いていて暖かい気持ちになる作品が並んでいます。この世界観も奇妙礼太郎の大きな魅力でしょう。

はっきり言って、インパクトのあるフックの効いたメロディーラインはないのですが、ただ聴き終わった後、不思議と心に残るような作品が並ぶアルバムになっています。音楽活動25周年という彼ですが、奇妙礼太郎としてメジャーデビューしてからはまだ6年というキャリアなだけに、まだまだ人気の面ではこれから伸びていきそう。本作はそんな彼のこれからの躍進を予感させる、またセルフタイトルらしい、脂ののった楽曲を聴かせてくれる傑作でした。

評価:★★★★★

奇妙礼太郎 過去の作品
More Music
ハミングバード
たまらない予感

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2023年7月29日 (土)

cali≠gariらしさもしっかり現れたメジャー作

Title:16
Musician:cali≠gari

毎回、様々な音楽性を取り込んだ実験的な音楽性で、独自の世界観をつくりあげているヴィジュアル系ロックバンド、cali≠gariのニューアルバム。本作でもいきなり「いかようの重罪にもおよぶべくところ、すべよく切腹仰せつけられ、ありがたく存じ奉る…」という、いきなり歌舞伎役者による口上からスタート。こちら、歌舞伎からのサンプリングかと思いきや、歌舞伎役者の坂東彦三郎が直接、録音したセリフだとか。そのまま「切腹-life is beautiful-」という、軽快でリズミカルなパンクロックチューンになだれ込むあたりも彼ららしいユニークさを感じます。

そんな彼らのニューアルバムですが、もともと事前に「原点回帰」を予告していたそうです。また前作「15」はメジャーからのリリースということもあって、シンプルで聴きやすいギターロックのアルバムに仕上がっていました。その結果、ポップな内容になっている反面、cali≠gariらしい変態性は薄くなってしまったアルバムになっていたのですが、今回のアルバムは「原点回帰」ということでどんな方向性に進むのか注目していました。

その結果としては、基本的には前作に引き続くような、比較的シンプルでポップなギターロック主体のアルバムに仕上がっていたと思います。実際、事実上の1曲目「切腹-life is beautiful-」も軽快なリズムで聴きやすいパンクロックチューンに、続く「禁断の高鳴り」もちょっとグラムの要素を入れつつも、シンプルなギターロックナンバーになっており、全体的には前作と同様の方向性に感じました。

ただ一方で、前作よりもよりバラエティー富んだ音楽性は、cali≠gariらしさをしっかりと発揮していたアルバムに仕上がっているように感じました。「狂う鐫る芥」もリズミカルなギターロックながらも、どこか歪んだサウンドに不気味なユーモアセンスを感じさせる曲になっていましたし、「赤色矮星」はメタリックな作風の、ある意味、いかにもヴィジュアル系っぽい雰囲気の作品に。「夜陰に乗じて」はピアノやサックスの音色がどこかジャジーで耽美的な独特の世界観を作り上げていますし、「燃えろよ燃えろ」はファンキーなベースラインも入りつつ、ニューウェーヴ風な作品に。全体的にバラエティー富んだポップな作品に、ちょっとだけcali≠gariらしい変態性も隠し味として加わっているような、そんなアルバムに仕上がっていました。

前作はメジャー志向ということで、ちょっと無難にまとめてしまった、そんな印象を受けるアルバムに仕上がっていました。今回のアルバムに関しても、率直なところ、そのような部分は感じる点もあります。ただ全体としては前作より、cali≠gariらしさがしっかりとあらわれた作品になっていたのではないでしょうか。いい意味で、cali≠gariの入門版的にも聴きやすい、メジャーらしいアルバムになっていました。

評価:★★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12
13
この雨に撃たれて
ブルーフィルム-Revival-
15


ほかに聴いたアルバム

ちゃーがんじゅう/前川守賢

沖縄で高い人気を誇る民謡歌手の前川守賢による全国デビューアルバム。「ちゃーがんじゅう」とは沖縄方言で「いつも元気でね!」という意味だそうで、饒辺愛子や古謝美佐子といった沖縄を代表する女性民謡歌手とのコラボも収録されているほか、「イービン小」では実娘もゲストボーカルとして参加。全国デビューということもあってか、全体的にはポップでいい意味で聴きやすさを感じる作品になっている一方、沖縄民謡のスタンダードナンバー「下千鳥」では三線のソロでその実力をしっかりと聴かせるなど、沖縄民謡の神髄もしっかりと感じられる作品になっています。もともと、先日紹介した沖縄音楽のコンピ盤「沖縄の音楽 記憶と記録」をきっかけに興味を持った1枚だったのですが(ちなみに彼の曲も同コンピ盤には収録されています)、沖縄音楽への魅力をさらに強く感じることのできた傑作でした。

評価:★★★★★

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2023年7月28日 (金)

映画やノンフィクション書籍も話題に

Title:WEED WAR ORIGINALMASTER DELUXE EDITION
Musician:THE FOOLS

80年代に主に日本のアンダーグラウンドシーンを中心に活躍した4人組ロックバンド、THE FOOLS。今回紹介するのは、1984年にリリースされたデビューアルバム。日本ロック史に残る名盤としても名高い1枚で、例えば2010年に発行されたレコードコレクターズ増刊「日本のロック/フォークアルバム・ベスト100 1960-1989」では、「評論家が選ぶベスト100」で57位に選ばれています。

そのTHE FOOLSに関して大きなニュースとなったのが2017年。麻薬取締法違反で服役中だったボーカルの伊藤耕が、出所前40日を控えて、服役中に死去していたニュースが大きな話題となりました。このこと自体衝撃的だったのですが、この服役中の死去が、刑務所が適切な対応を行っていなかったからとして遺族が裁判を起こし、今年2月、和解判決が下りたことでも大きなニュースとなりました。

また今年1月には、彼らについて10年かけて追いかけたドキュメンタリー映画「THE FOOLS 愚か者たちの歌」が公開されたり、昨年12月には、この映画と同時並行的に行われた取材内容をまとめたノンフィクション書籍「THE FOOLS MR.ロックンロール・フリーダム」が発売されたりと、THE FOOLS近辺での話題が相次いでいますが、今回紹介するのも、そんな流れの中でリリースされたアルバムで、前述の通り、日本ロック史の名盤としても名高い作品のリマスター版。この名盤の別ミックス音源と未発表ライブDVDを収録した3枚組でのリリースとなっています。

実は私自身、THE FOOLSというバンドは知っていましたし、このアルバムがロックの名盤として挙げられていることも知っていました。ただ、THE FOOLSについてはいままで全く音源を聴いたことはありませんでしたし、前述のドキュメンタリー映画も書籍もチェックしていませんでした。一方、伊藤耕についてのニュースは知っていましたし、映画の紹介サイトなどでそのビジュアルイメージも見ていました。その破天荒な生き様といい、いかにもロック然としたスタイルといい、個人的には、どちらかというとスターリンとかアナーキーのようなパンクロックバンドを漠然とイメージしていました。

しかし、この名盤をはじめて聴き、そのイメージが全く異なっていたことをはじめて知りました。冒頭の「MR.FREEDOM」をはじめ、楽曲の方向性としてはパンクロックというよりは、むしろファンクの影響が強い作風。「いつだってそうさ」はむしろルーツ志向のロックンロールの傾向が強い作品になっていましたし、「つくり話」はブルースからの影響をダイレクトに感じさせる作風。パンクロックというよりは、むしろブルースに強い影響を受けたルーツ志向のロックンロールや、ファンク、ブラックミュージックの影響を受けた作風が特徴的なバンドということに気が付きました。

実際、このアルバム自体、じゃがたらのOTOがプロデュースに加わっていますし、バンドとしての音楽性としてはむしろじゃがたらやボ・ガンボス、あるいはルーツロック寄りという意味ではRCサクセションの方が近い位置にいるバンドということを今回はじめて知りました。個人的には、バンドサウンドを軸として迫力がありつつ、一方では軽快なリズムを聴かせてくれる彼らのスタイルは非常に魅力的。その音楽性に、今さらながら強く惹きつけられるアルバムとなっていました。

映画や書籍はチェックしていなかったのですが、ぜひともチェックしてみたいなぁ。特に映画はもう公開が終了してしまったようですが、DVDなどで見ることは出来ないのでしょうか。いまさらながらTHE FOOLSの素晴らしさを感じさせてくれる作品で、本作が日本ロック史に残る1枚というのに非常に納得する作品でした。

評価:★★★★★

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2023年7月27日 (木)

今週もアイドル系が上位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も上位にはアイドル勢が目立ちました。

まず1位には韓国発の日本人女性アイドルグループNiziU「COCONUT」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数7位。これがオリジナルアルバムとしては2枚目となります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上14万1千枚で1位初登場。前作「U」の初動17万9千枚(1位)からダウン。

アイドル系に割り込むように2位にランクインしてきたのがロックバンドUVERworld「ENIGMASIS」。CD販売数3位、ダウンロード数では同作が1位獲得。オリコンでは初動売上2万8千枚で2位初登場。前作「30」の初動4万1千枚(2位)よりダウンしています。

3位には、オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」の出演者により結成されたアイドルグループOWV「JACK POT」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数10位。オリコンでは初動売上1万7千枚で9位初登場。前作「CHASE」の初動1万9千枚からダウン。ビルボードとオリコンのCD販売数の順位の違いが大きいのですが、なぜでしょうか?ここまで差がつくのは珍しい感じがするのですが。

続いて4位以下の初登場盤ですが、こちらもアイドル系が続きます。まず4位には韓国の女性アイドルグループNewJeans「Get Up」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数共に4位。6曲入りのミニアルバムとなります。オリコンでは初動売上2万7千枚で5位初登場。前作「New Jeans」は発売日の関係上、2週目に4千枚を売り上げて最高位12位を記録していますので、その数値よりはアップしています。

5位には山下智久「Sweet Vision」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数8位。元NEWSのメンバーによる約5年ぶりのソロアルバムですが、ジャニーズ事務所退所後、初となるソロアルバムとなります。オリコンでは初動売上2万7千枚で4位初登場。前作「UNLEASHED」の初動8万2千枚(1位)から大きくダウン。

6位初登場はCrazy:B「あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 『TRIP』」。スマホ向けアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!」に使用された楽曲を集めたアルバム。CD販売数及びダウンロード数ともに6位。オリコンでは初動売上2万4千枚で6位初登場。

7位にはGENERATIONS, THE RAMPAGE, FANTASTICS, BALLISTIK BOYZ, PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE「BATTLE OF TOKYO CODE OF Jr.EXILE」が初登場でランクイン。「Jr.EXILE世代」と名付けられたLDH Japan所属の男性ダンスグループが中心となったプロジェクトによるアルバムの第3弾。CD販売数7位、ダウンロード数39位。オリコンでは初動売上2万7千枚で3位初登場。同プロジェクトの前作「BATTLE OF TOKYO TIME4 Jr.EXILE」の初動3万9千枚(3位)からダウン。こちらもOWVと同様にビルボードとオリコンでCD販売数の順位に差がつく結果に・・・って、これ、ビルボードが集計を間違えて、両者を入れ違えてないか?結構、以前から時々、ビルボードはしれっと後で順位入れ替えるケースも多いからなぁ。ちなみに同プロジェクト、若手世代といいつつ、GERENARTIONSなどもう結成10年を超えており、「わ、若手・・・??」といった感じ。LDHの新陳代謝の悪さが気にかかります。

最後10位には「FINAL FANTASY XVI Original Soundtrack」がランクイン。CD販売数11位、ダウンロード数3位。タイトル通り、6月22日にリリースされたゲーム「ファイナルファンタジーXVI」のサントラ盤。オリコンでは初動売上1万枚で1位初登場。同シリーズの前作「FIANL FANTASY XV Original Soundtrack」の初動7千枚(16位)からアップしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日!

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2023年7月26日 (水)

話題のジブリ映画主題歌が上位に

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

宣伝無しで公開された話題のジブリ映画主題歌がベスト3入りです。

Yoasobiidle

まず1位はYOASOBI「アイドル」。これで15週連続の1位になりました。ストリーミング数、カラオケ歌唱回数は今週も1位に。ダウンロード数も2位をキープ。さらに先週2位にダウンしたYouTube再生回数も1位に返り咲きしています。

2位も先週と変わらず。BTSのメンバーJung Kookによるソロシングル「Seven (feat.Latto)」が同順位をキープ。先週1位だったYouTube再生回数は2位にダウン。同じく1位だったダウンロード数も2位にダウンしたものの、ストリーミング数が14位から2位に大きくアップしています。

そして3位には米津玄師「地球儀」がランクイン。宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」主題歌。ダウンロード数1位、ストリーミング数11位、ラジオオンエア数4位。映画自体は宮崎駿の名前と、事前宣伝が全く無しという話が逆に話題を呼び、大ヒットを記録しているようですが、内容自体については賛否両論がある模様。その主題歌に起用された本作も、もちろん事前のアナウンスは一切なく、突然の発表となりましたが、見事上位にランクインしています。ちなみに7月26日にCDリリースも予定していますが、通常版も写真集がついて2,200円というシングルとしては高値の設定。完全に一般層はダウンロードorストリーミング数で売って、CDは熱烈なファン層向けといった戦略でしょう。ただ、ジブリのファン層を考えると、1,000円程度のシングルCDをリリースしてもよかったのでは?とは思うのですが。来週にはCD売上が加味されそうですが、どれだけの初動売上を計上するのか、要注目でしょう。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位に女性声優アイドルグループ=LOVE「ナツマトペ」がランクイン。CD販売数1位でその他はランク圏外。オリコン週間シングルランキングでは初動売上17万9千枚で1位初登場。前作「この空がトリガー」の初動16万枚(2位)よりアップしています。

7位にはサザンオールスターズ「盆ギリ恋歌」が初登場。ダウンロード数3位、ラジオオンエア数1位、YouTube再生回数48位。特にチャート構成ではラジオオンエア数の占める割合が多く、ヒットの要因となっています。今年、10年ぶりに開催が予定されている、サザンの地元、茅ケ崎でのライブ開催にあわせてリリースされた配信限定のシングル。

一方、ベスト10圏外からの返り咲きも。Mrs.GREEN APPLE「青と夏」が先週の11位から9位にランクアップ。2018年8月8日付チャート以来のベスト10返り咲き。もともと映画「青夏 きみに恋した30日」主題歌として2018年8月1日にリリース。その後、ABEMAのリアリティーショー「今日、好きになりました。」のテーマソングに起用されて再燃したのですが、この時は最高位33位でストップ。その後、「ケセラセラ」や「Magic」のヒットやアルバム「ANTENNA」リリースにつれてランクアップし、またおそらく7月10日に出演したTBS「CDTVライブ!ライブ!」で披露したことがきっかけでランクアップし、見事、5年ごしのベスト10返り咲きとなっています。

今週はさらに先週ベスト10に返り咲いた「ケセラセラ」が2ランクダウンながらも10位とベスト10をキープ。ベスト10ヒットを通算12週に伸ばしているほか、「Magic」も先週と同順位の6位をキープし、これでMrs.GREEN APPLEは3曲同時ランクインとなっています。ベスト3に食い込むほどの爆発的な人気は見せていませんが、ストリーミング数では「Magic」4位、「ケセラセラ」6位、「青と夏」8位と上位にランクインしており、今後、YOASOBIやヒゲダン、米津玄師に並ぶような人気を確保してくるのでしょうか。

ロングヒット曲はあと1曲。Vaundy「怪獣の花唄」が7位から8位にワンランクダウン。ストリーミング数は先週と変わらず5位。YouTube再生回数はワンランクダウンの13位。ただダウンロード数は24位から20位とここに来て2週連続のアップ。カラオケ歌唱回数も2位を維持しています。これで29週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、スピッツ「美しい鰭」は今週、11位にダウン。ベスト10ヒットは14週連続でストップとなりました。特にストリーミング数が3位から今週は7位までダウンしてしまっており厳しい状況になりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年7月25日 (火)

坂本龍一の多様な才能を感じるコンピ盤

Title:TRAVESIA RYUICHI SAKAMOTO CURATED BY INARRITU
Musician:坂本龍一

今年3月にこの世を去った作曲家、坂本龍一。その彼の「ベスト盤的」なアルバムがリリースされました。「ベスト盤的」という書き方をするのは、純粋なベスト盤ではないため。本作は、「バベル」や「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」などの作品で知られる映画監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが選曲を行ったコンピレーションアルバム。もともと坂本龍一の大ファンを公言していたそうで、彼の全作品からピックアップした、イニャリトゥの視点から切り取った坂本龍一像の浮かび上がるコンピレーションアルバムとなっています。

今回の坂本龍一の逝去にあたっては、テレビの報道などで彼の曲が流されました。ただ、そのほとんどが「戦場のメリークリスマス」や「energy flow」などといった、ちょっと悪い言い方をしてしまうと耳障りのよいピアノ曲ばかり。酷いところだと高橋幸宏作曲の「ライディーン」が用いられていたりして、ネット上でちょっとしたバッシングの対象にもなりました。とはいえ、坂本龍一という名前はよく知っていても、おそらくお茶の間レベルで思い浮かぶ曲といえば、前述のピアノ曲のような曲か、あるいはYMO時代の曲ということになってしまうのかもしれません。

今回のコンピレーションアルバムでは、そのような一般的に「お茶の間レベル」で代表曲と言えるような曲は収録されていません。よく知られている曲といえば、おそらくアルバム冒頭の「Thousand Knives」くらいではないでしょうか。そういう意味では「戦メリ」「energy flow」といったよく知られている曲も収録されている「耳障りのよい」ベスト盤を求めるような方にとっては、ちょっと期待外れになってしまうかもしれません。

ただ、そこはさすが大ファンを公言するイニャリトゥが選曲したコンピレーションアルバムだけあります。このアルバムを聴けば彼のその音楽的才能を実感することが出来る、幅広いタイプの曲が収録された選曲となっていました。「Thousand Knives」に続いてはイニャリトゥ監督の作品「レヴェナント: 蘇えりし者」のテーマ曲がちゃっかり収録されている点のですが、この「The Revenant Main Theme (Alva Noto Remodel)」は、いかにも映画音楽といった感じのスケール感のある作品。続く「Before Long」は、こちらはおそらく日本におけるお茶の間のイメージに近い、美しいピアノ曲となっています。

その後もアラブ民謡曲である「Nuages」はこぶしの効いた女性ボーカルが迫力あるトライバルな作品ですし、子供のコーラスも美しい「Ma Mere I'Oye」はシンプルなサウンドの現代音楽的な作品。ボレロを彷彿とさせるクラシック風のナンバー「Blu」に、こちらも沖縄民謡をアレンジした「Asadoya Yunta」、ミニマルなサウンドにグルーヴ感あるリズムが印象的な「+Pantonal」や同じくファンキーなベースラインの「+Pantonal」などといったバラエティー豊かな曲調が並びます。

坂本龍一のもつ多様な音楽的才能を取り込んだ選曲となっており、ここらへんの選曲は変に売れることを意識した訳ではない、ファンならではの選曲といった感じもします。おそらく坂本龍一のイメージとして「戦メリ」や「energy flow」などの曲しか知らない人にとっては、この多彩な音楽性には驚かされるかもしれませんし、そうでない方にとっても、あらためて彼の才能を実感できる選曲になっているように感じました。

リリースは5月でしたので、企画や選曲の期間を考えると、おそらく追悼に乗じた企画ではなく、その前から話が進んでいた作品だったのでしょう。結果として、追悼の形になってしまったのはある意味、残念にも感じるのですが、ただタイミング的には坂本龍一の功績を振り返るのに最適なアルバムになったと思います。あらためて彼の早い逝去を残念に感じる一方、坂本龍一の偉大さを再認識したコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984

ASYNC-REMODELS
Year Book 1985-1989
「天命の城」オリジナル・サウンドトラック
BTTB-20th Anniversary Edition-
BLACK MIRROR : SMITHEREENS ORIGINAL SOUND TRACK
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
12
サウンドトラック「怪物」


ほかに聴いたアルバム

Insomnia/清水翔太

アルバム中盤に、いきなりいかにもKANっぽいピアノが聴こえてきて、最初は「パクリか??」とすら思ったのですが、そこで流れてきたのはまさかのKANちゃんの名曲「東京ライフ」のカバー!なんでも、もともとこの曲は清水翔太が好きな曲ということで熱心なファンの間では有名だったとか。KANの大ファンの身としては、このカバーはかなりうれしい!基本的にはアレンジは原曲通り。彼の声もピッタリとあっていて、楽曲に対する愛情を感じさせるカバーになっていました。

現在、がん治療中のKANに対するエールとも感じられるカバーも収録された清水翔太のニューアルバム。前作「HOPE」は幅広い音楽性を感じさせる歌モノのアルバムになっていましたが、今回のアルバムはそのKANのカバーは収録されていましたが、全体的にメロウな作品のR&BやHIP HOP寄りの作風に戻った形の作品になっていました。これはこれで清水翔太らしい魅力は出ているのですが、前作のような、もっと幅広い作風で聴きたかったような。いいアルバムではあるのですが、ちょっと惜しさも感じた1枚でした。

評価:★★★★

清水翔太 過去の作品
Umbrella
Journey
COLORS
NATURALLY
MELODY
ENCORE
ALL SINGLES BEST
PROUD
FLY
WHITE
period
HOPE

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2023年7月24日 (月)

すっかりバンドとして定着

Title:ジェニークラシック
Musician:ジェニーハイ

もともと、スカパーのバラエティ番組「BAZOOKA!!!」から誕生した企画モノバンド、ジェニーハイ。メンバーは同番組のレギュラーだった小藪千豊と野性爆弾のくっきー!、それにtricotの中嶋イッキュウの3人を中心に、indigo la Endやゲスの極み乙女で活躍する川谷絵音がプロデュースを担当。さらに佐村河内守騒動でお茶の間レベルで知られるようになったピアニストの新垣隆という、ある意味、企画モノらしいユニークなメンバーが一堂に会したバンドとなっています。

企画モノとしてスタートしたこのバンドですが、アルバムの出来が非常によく、個人的にも2019年にリリースした「ジェニーハイストーリー」は私的ランキングの年間10位に入れたほど。おそらく世間一般の評判も高かったのでしょう、元となるバラエティが終了した後でもバンドとしての活動は続いており、ついに3枚目となるオリジナルアルバムのリリースとなりました。

基本的には川谷絵音が作詞作曲を行っているため、作風としてはindigo la Endやゲスの極み乙女に通じるようなメランコリックなメロディーラインの曲がメイン。もともと彼の活動はindigo la Endがスタート地点で、ゲスはそこから自由度が高めたバンド。そしてジェニーハイは、そこからさらに自由度を高くしたバンドとなっており、ユーモアセンスのある楽しいアルバムに仕上がっています。

軽快なディスコチューンの「GDGD」や、アニメ声のボーカルが入って、アイドルポップっぽい「エクレール」、メンバーが全員交互にラップ的なボーカルを取ってコミカルな「TAXI」、哀愁感と郷愁感たっぷりの歌謡曲風ナンバー「声雫」、さらにタイトル通りトラップのリズムを取り入れたHIP HOP風ナンバー「トラップガール」とバラエティー富んだ構成が魅力的となっています。

前々作「ジェニーハイストーリー」は実験的な方向性が強く、逆に前作「ジェニースター」はちょっとおとなしくなってしまった印象を受けました。今回のアルバムはちょうどその中間あたりでしょうか。実験性というほどの挑戦的な気風はありませんでしたが、自由度の高いバラエティー富んだ作風が魅力的な、ジェニーハイらしさが出たアルバムと言えるでしょう。

ちなみに「超最悪」「ケンタイキー」など、時折聴かせてくれる新垣隆のピアノの音色も非常に魅力的。クラッシックベースながらも、どこかフリーキーさを感じさせるサウンドがジェニーハイの方向性にもマッチしています。また、その「超最悪」のようにバンドサウンドを聴かせる曲もありつつも、やはりベースとドラムスが素人だからでしょうか、バンドサウンド的には抑え気味なのもバンドとしてのバランスの良さも感じます。

先日、中嶋イッキュウの熱愛報道が出たとき、tricotの、という肩書きではなく、ジェニーハイの、という肩書きになっていたあたり、バンドとしての人気を感じさせてくれました。川谷絵音の相変わらずなワーカホリックぶりは気にかかりつつ、ただ、今後もコンスタントに活動は続けてくれそう。今後も、企画モノである点が逆にメリットとなるような、自由度の高い作品を期待したいところです。

評価:★★★★★

ジェニーハイ 過去の作品
ジェニーハイストーリー
ジェニースター


ほかに聴いたアルバム

BUTTERFLY EFFECT/佐藤千亜妃

現在、活動休止中のバンド、きのこ帝国のボーカリスト、佐藤千亜妃のソロニューアルバム。ソロになってからは、エレクトロサウンド主体のメロウなR&B路線にシフトしています。良くも悪くも今時といった印象を受ける作品で、良くありがちという印象も受けてしまいます。ただ、楽曲的にはメロディーラインのインパクトも増して、手探り状態に感じた以前よりよくなった印象も強いのですが・・・。

評価:★★★★

佐藤千亜妃 過去の作品
SickSickSickSick
PLANET
KOE
NIGHT TAPE
TIME LEAP

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2023年7月23日 (日)

彼の原風景?

Title:Council Skies
Musician:Noel Gallagher's High Flying Birds

最近も再結成の噂…というよりも再結成を求む声の絶えないoasisのお兄ちゃんこと、ノエル・ギャラガーのソロプロジェクト、Noel Gallagher's High Flying Birdsによる、約5年半ぶりとなるニューアルバム。ちなみに"Council"とはイギリスの低所得者向け公営住宅のことで、日本語で言えば「団地の空」ということになります。ある意味、彼にとっての「原風景」と言えるのかもしれません。

Noel Gallagher's High Flying Birdsといえば、oasis解散後の活動において、oasisとは異なる、新たな方向性を模索しようとしたユニットでした。その点については賛否両論がありつつ、ソロ名義になってからはoasisの王道路線を突き進む弟が、(楽曲の出来としては、お兄ちゃんの方に軍配があがると思うのですが)お兄ちゃん以上の人気を確保している点からも、やはりoasisの延長線上を求める声は大きいのでしょう。その中で彼の原風景をタイトルとした今回のアルバムは、昔ながらのノエル・ギャラガー色を出したアルバムに仕上がっていました。

基本的にはアルバム全編、ストリングスも取り入れたスケール感のあるサウンドに、メランコリックなメロディーラインが特徴的。アルバムの冒頭を飾る「I'm Not Giving Up Tonight」は、アコギで静かにスタートしつつ、途中からストリングスも入りスケール感もあるサウンドと郷愁感も覚えるメロディーラインが印象に残る作品で、まさに「ノエル節」とも言える作品。軽快なリズムトラックにバンドサウンドも入り、グルーヴ感もある「Pretty Boy」も、いかにもノエルらしいメランコリックなメロディーラインが耳に残ります。

アルバム中盤の核とも言えるのは「Easy Now」でストリングスにコーラスも入れた荘厳さを感じるサウンドに、サビにかけてゆっくりと盛り上がっていき、サビの部分で一気に解放されるような爽快感を覚えるメロディーラインは、まさにノエル・ギャラガーの真骨頂といった楽曲に仕上がっています。

今回のアルバムに関してはoasis路線への回帰といったアルバム評も多くみられました。確かに打ち込みなどの要素は薄く、バンドサウンドとストリングスでグルーヴ感を出しつつ、メランコリックなメロディーラインを聴かせるというスタイルはoasisの路線に近いものを感じます。ただし、バンドサウンドについては比較的おさえめ。「There She Blows」のような、バンドサウンドを前に押し出してグルーヴ感を出した曲もあるのですが、全体的にはバンド色やロック色は抑え目で、この点、やはり彼の中でoasisとは一線を画する方向性を感じさせます。

正直、アルバム全体としてメランコリックなミディアムテンポのメロディーライン一本やりな部分があり、バリエーションという面からはちょっと物足りなさを感じる部分は否定できません。ただ一方で、決して多くないバリエーションの中でもアルバムを最後まで魅力的に聴かせてしまうという点、ノエル・ギャラガーのメロディーセンスの良さが光ったアルバムであることは間違いないでしょう。そういう意味で、ノエル・ギャラガーらしさと、彼の実力、魅力が存分に発揮されたアルバムだったと思います。まあ、この曲をリアムの声で聴けたら、という部分もないことはないのですが、oasisの再結成を願いつつ、ただノエルの魅力も実感できた傑作でした。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY
Who Built the Moon?
Wait And Return EP
Black Star Dancing
This Is The Place
Blue Moon Rising
BACK THE WAY WE CAME:VOL.1(2011-2021)


ほかに聴いたアルバム

Licked Live In NYC/The Rolling Stones

もともと2003年にリリースされた、ニューヨークでのライブを収録したアルバムが、今回、レストア&リマスターされ再発売されたもの。ストーンズのライブアルバムは、最近、次から次へとリリースされているのですが、そんな中でも、全体的に軽快で明るさを感じさせるアルバム。最近のライブでは豪華なゲストの参加も特徴的だったりするのですが、このライブ盤ではゲスト参加は控えめ。逆にゲストがいなくてもバンドだけで楽しい雰囲気が作れるだけ、バンドとしての状況がよかったということでしょうか。そんな中でもゲストでシェリル・クロウが参加した「Honky Tonk Women」は彼女のパワフルなボーカルも魅力的で、ゲストが良い効果を果たしていました。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus
A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)
GRRR Live!

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2023年7月22日 (土)

新たな名盤誕生を予感させるラストライブアルバム

Title:NUMBER GIRL 無常の日
Musician:NUMBER GIRL

1999年にメジャーデビュー。そこから、2002年の解散までわずか3年という期間でありながら、その個性的な楽曲に多くの音楽ファンが衝撃を受け、音楽ファンのみならず数多くのミュージシャンにも影響を与えたバンド、NUMBER GIRL。数多くのミュージシャンたちがリスペクトを公言しているほか、ボーカルの向井秀徳のその後の活躍もあり、その活動期間の短さもあってか、「伝説のバンド」といった感のあった彼ら。それが2019年に再結成を果たした、という事実は大きなニュースとなりました。

もともと、RISING SUNへの出演を目標としていたそうで、2022年のRISING SUN出演後の解散を発表。同年12月11日のぴあアリーナMMでのライブを最後に再び解散となりました。本作は、その解散ライブの模様をそのまま収録したライブアルバム。「無常の日」と題されていますが、2002年の解散ライブのツアータイトルも「無常の旅」でしたので、この「無常」シリーズはナンバガの解散時のお決まりのタイトルとなったようです。3度目があるのかはわかりませんが・・・。

このライブアルバム、全3枚組31曲入りというかなりのフルボリューム。全3時間近いという長さのライブアルバムとなっており、ラストライブの模様をフル収録したライブアルバムだそうです。そういう意味では資料的な価値もある作品。もともと彼らはオリジナルアルバム以上に、「シブヤROCK TRANSFORMED状態」「サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態」といったライブアルバムに高い定評のあるバンドなのですが、そんな彼らの名盤があらたに1枚加わった、そんな作品と言えるのではないでしょうか。

もっともこのライブアルバムを聴き始めた時の印象としては、「バンドとして非常に上手くなった」という感想をまず抱きました。もっとも、個人的にこれは「褒め言葉」ではありません。既に「ベテラン」の領域に入る彼らなだけに、演奏はまず良くも悪くも「卒なく」という印象を受けてしまいます。バンドとしてほどよくまとまっており、演奏は間違いなく「上手い」という印象を受けるのは間違いありません。ただ、かつてのNUMBER GIRLは「上手い」という一言ではおさまりきらない、このメンバー4人だからこそ生み出すことが出来る独特のケミストリーがあり、それがバンドとしての大きな魅力でしたが、このラストライブ開始当初においては、残念ながらそのような印象を受けませんでした。

ただ、それはライブアルバムを聴き進めるにつれて、徐々に変わっていきます。最初こそ、メンバー4人、良くも悪くも卒ない演奏を聴かせてくれているという印象だったのですが、徐々にバンドとしての一体感を覚えるような演奏を聴かせてくれるようになってきました。特にDisc2の「透明少女」あたりからは、その疾走感あるギターサウンドにワクワク感を覚え、Disc3の「タッチ」の力強い演奏には、まさに聴いていて身震いするようなカッコよさを感じます。さらにそれに続く「I don't know」のダイナミックな演奏のカッコいいこと・・・。途中からの彼らの演奏には、なぜNUMBER GIRLというバンドが、今なおあれだけ多くのミュージシャンたちのリスペクトを集めているのか、その理由がよくわかるのではないでしょうか。

これがラストのライブアルバムながらもNUMBER GIRLとしての新たな名盤誕生を感じさせる傑作アルバム。NUMBER GIRLというバンドのすごさをあらためて感じさせる作品でした。これが最後というのは残念ですが、ただ変にダラダラ続けるよりは、期間限定でスパッと活動をやめた方がいさぎよいのかも。再び再結成があるかどうかはわかりませんが、今はこのアルバムで彼らの音に酔いしれたいところです。

評価:★★★★★

NUMBER GIRL 過去の作品
School Girl Distortional Addict 15th Anniversary Edition
SAPPUKEI 15th Anniversary Edition
NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition
LIVE ALBUM「感電の記憶」 2002.5.19 TOUR「NUM-HEAVYMETALLIC」日比谷野外大音楽堂

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2023年7月21日 (金)

フォークロック色がより強く

Title:ありがとう
Musician:never young beach

Arigatou

前作「STORY」ではじめて音源を聴いて、一気にはまったnever young beach。その前作から約4年、ちょっと久々となるニューアルバムがリリースされました。ちなみに本作は、デジタルリリースとLP盤のみでのリリース。CDでのリリースはありません。この販売形態はいかにも今時といった感じ。ただ、彼らくらいの若手バンドで、CDをリリースしないというのはまだちょっと珍しい印象はあります。もっとも、今後は徐々にこういうスタイルがスタンダードになっていくのかもしれませんが・・・。

彼らの楽曲の特徴は、かなりストレートなはっぴいえんどフォロワーのフォークロックを聴かせてくれるという点。「風を吹かせて」なんてタイトルからして完全にはっぴいえんどですが、こちらもいかにもなフォークロック。「らりらりらん」もおなじく実に「らしい」感じがするタイトルですが、軽快なギターサウンドに、こちらもはっぴいえんどや細野晴臣からの影響を強く感じます。また「Hey Hey My My」はタイトルからしてニールヤングからの影響でしょうか?和風なフォークロックの中に、どこか洋楽からの影響も垣間見れる作品になっています。

前作「STORY」は、そんなはっぴいえんどフォロワー的なサウンドを奏でつつも、一方ではサウンドに今風な部分を感じたり、ファンクやアフロポップの影響を感じさせる曲もありました。それと比べると今回のアルバム、音を絞ったタイトな曲づくりという意味では前作同様で、今どきなサウンド構成を感じる一方、楽曲的にはむしろ前作よりもフォークロック色が強まったような印象を受けました。

一方、物足りなさを感じていた歌詞については前作よりもおもしろくなった印象が。全体的に日常を描いたような歌詞の世界もまた、はっぴいえんどらしさを感じますが、例えば「毎日幸せさ」では

「みんな前ならえ 安心安全
右向け左向け」
(「毎日幸せさ」より 作詞 安部勇磨)

と、かなり皮肉めいた歌詞が特徴的。「Oh Yeah」も前向きな歌詞ながらも、どこか皮肉めいた視点を感じさせる歌詞が耳に残ります。また最後を締める「帰ろう」も郷愁感あふれた歌詞が耳に残る作品となっており、歌詞についてはちょっと物足りなさを感じた前作よりも、グッとよくなった印象があります。

ちなみに前作から本作の間にメンバーのうち2人が脱退し、3人組となったのですが、ひょっとしてフォークロック色が強くなったのは、そこらへんのバンドの変化も関係しているのでしょうか。とはいえ、基本的にnever young beachとしての魅力は変っていません。間違いなく、今、もっとも注目したいバンドの一つでしょう。

評価:★★★★★

never young beach 過去の作品
STORY

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2023年7月20日 (木)

アニメやミュージカル関連が目立つチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もアイドル系が目立つ一方、アニメ系やミュージカル発のアルバムも目立つチャートとなっています。

まず1位は最近問題のジャニーズ系。なにわ男子「POPMALL」が初登場。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上43万8千枚で1位初登場。前作「1st Love」の71万2千枚(1位)から大きくダウンとなっています。

2位には浦島坂田船「Plusss」がランクイン。YouTuberによる4人組ユニット。CD販売数2位、ダウンロード数65位。オリコンでは初動売上5万1千枚で3位初登場。前作「Toni9ht」の初動5万3千枚(1位)より若干のダウンとなっています。

そして3位には、現在Hot100で「Magic」「ケセラセラ」がヒット中のMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」が、先週2位よりワンランクダウンでベスト3をキープしています。CD販売数は2位から5位にダウンしたものの、ダウンロード数は2週連続で1位をキープ。Hot100ではベスト20に前述の2曲を含む4曲もランクインをしており、ここに来て、人気の増している彼ら。このアルバムもロングヒットを記録するのでしょうか。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まずはミュージカル系。5位に刀剣男士 鶴丸国永 大倶利伽羅 「ミュージカル『刀剣乱舞』 鶴丸国永 大倶利伽羅 双騎出陣 ~春風桃李巵~」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数47位。こちらはゲーム「刀剣乱舞」を元としたミュージカルで使用された曲を集めたアルバム。オリコンでは初動売上1万8千枚で4位初登場。同シリーズの前作、刀剣男士 formation of 江水散花雪「ミュージカル『刀剣乱舞』~江水散花雪~」の初動2万5千枚(2位)からはダウンしています。

さらに10位には宝塚歌劇団 星組「星組 シアター・ドラマシティ『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』Act 1」がランクイン。こちらはあの宝塚の星組公演「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」の楽曲を収録した配信限定のアルバム。ダウンロード数で2位を獲得し、見事ベスト10入り。ちなみに「星組 シアター・ドラマシティ『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』Act 2」もリリースされていますが、こちらは惜しくも13位に留まっています。前述の「刀剣乱舞」みたいな、アイドル性の強いミュージカルが目立ちがちですが、宝塚人気も全く衰えていないことを感じさせます。こちらもアイドル的な人気の部分も大きいのでしょうが。

一方、アニメ系ですが、まず7位に津島善子(小林愛香) 「LoveLive! Sunshine!! Third Solo Concert Album ~THE STORY OF "OVER THE RAINBOW"~ starring Tsushima Yoshiko」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数57位。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」で誕生した架空のアイドルグループ、Aqoursのメンバーによるソロアルバム。オリコンでは初動売上5千枚で8位初登場。同シリーズの前作、小原鞠莉(鈴木愛奈)「LoveLive! Sunshine!! Third Solo Concert Album ~THE STORY OF "OVER THE RAINBOW"~ starring Ohara Mari」(12位)からは初動売上はほぼ横バイ。

さらに8位には中野家の五つ子「五等分の未来 EP」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数30位。テレビアニメ「五等分の花嫁∞」のオープニング・エンディング曲を収録したEP盤。オリコンでは初動売上4千枚で9位初登場となっています。

さて、そんな感じで初登場盤も多かった今週のチャートですが、一方でベスト10返り咲きが2枚もありました。まず男性アイドルグループ&TEAM「First Howling:WE」が先週の11位から6位にアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

また山下達郎「FOR YOU」も先週の19位から9位にアップし、こちらは9週ぶりにベスト10返り咲き。1982年にリリースされたアルバムがLP及びカセットのみでリリースされたリマスター盤。完全生産限定盤だったものの反響が大きく、高額の転売品が出回った影響で追加プレスがリリースされたのですが、おそらく返り咲きはその影響でしょう。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年7月19日 (水)

今週も新譜は比較的多め

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、今週も比較的新譜の目立つチャートとなりました。

Yoasobiidle

ただし1位は今週もYOASOBI「アイドル」が獲得。これで14週連続の1位に。ストリーミング数、カラオケ歌唱回数は今週も1位に。ただ、13週連続の1位を続けていたYouTube再生回数は今週、ついに2位にダウン。一方、ダウンロード数は5位から2位に再浮上しています。

一方、2位にはBTSのメンバーJung Kookによるソロシングル「Seven (feat.Latto)」が初登場でランクイン。ダウンロード数及びYouTube再生回数で1位獲得。一方、ストリーミング数は14位止まりでした。ちなみにこの曲、公式サイトで「LINE MUSIC再生キャンペーン」なる企画が実施されており、期間中、700回以上再生でプレゼントに応募できる企画が立ち上がっていました。LINE MUSICもストリーミング数の集計対象になっていますし、こういうことが目立つようになると、徐々にストリーミングの順位の信頼性が下がることになりそう。こういう企画が行われている配信サイトは集計対象から外すなどの処置が必要になりそうです。

そして3位には、先週8位にランクインしたキタニタツヤ「青のすみか」がランクアップし、ベスト10入り2週目にしてベスト3入りを果たしています。ストリーミング数が23位から2位に大きくアップしたほか、YouTube再生回数も28位にランクイン。ダウンロード数も2位から3位にダウンしたとはいえ、ベスト3をキープしています。TBS系アニメ「呪術廻戦 懐玉・玉折」のオープニングテーマ。今後はロングヒットになりそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にB'z「STARS」がランクイン。CD販売数1位、ラジオオンエア数4位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上11万7千枚で1位初登場。前作「声明」の初動12万1千枚(1位)からダウンしています。

5位にはハロプロ系女性アイドルグループJuice=Juice「プライド・ブライド」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数23位、ラジオオンエア数36位。オリコンでは初動売上4万6千枚で2位初登場。前作「全部賭けてGO!!」の初動3万8千枚(5位)からアップ。ちなみに同曲、カップリングに、現在、ジャニー喜多川への擁護発言で絶賛炎上中の山下達郎の「FUNKY FLUSHIN'」のカバーを収録。若干、間が悪かった感がありますが、そもそもこのCDを買っているのは、どんなCDでも買いそうな固定ファン層がメインなので、影響は皆無のように思うのですが。

初登場はさらにもう1曲。10位に韓国の女性アイドルグループNewJeans「Super Shy」が先週の60位からランクアップし、ベスト10入り。ダウンロード数39位、ストリーミング数7位、ラジオオンエア数7位、YouTube再生回数8位。こちらも前述のJung Kookと同様、公式サイトで「LINE MUSIC再生キャンペーン」実施中。こういう企画には出来るだけ早く処理を行ってほしいものです。

そんな訳で、今週は比較的新譜の多いチャートとなりましたが、そんな中でも返り咲きが1曲。Mrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」が先週の11位から8位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これでベスト10ヒットは通算11週に。ちなみに「Magic」も先週からワンランクダウンながらも6位にランクイン。2曲同時ランクインとなっています。

ロングヒット曲では、ここに来てしぶとい強さを発揮しているVaundy「怪獣の花唄」が6位から7位にワンランクダウン。ただ、先週まで10週連続で3位をキープしていたストリーミング数が5位にダウン。YouTube再生回数も8位から12位にダウン。一方、ダウンロード数は36位から24位にアップしているほか、カラオケ歌唱回数は先週から変わらず2位をキープ。これで28週連続のベスト10ヒットとなっています。

また、スピッツ「美しい鰭」は先週の7位から9位にさらにダウン。こちらも10週連続で2位をキープしていたストリーミング数がついに3位にダウン。ただ、ダウンロード数は30位から29位に若干のアップ。これで14週連続のベスト10ヒットとなりました。

一方、先週までベスト10ヒットを続けていたMAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」は今週、10位から12位にダウン。ベスト10ヒットは13週連続でストップとなりました。ご存じ「鬼滅の刃」のアニメ主題歌で、それなりのロングヒットは記録しましたが、「紅蓮華」や「残響散歌」と比べると、若干物足りなさの残る結果となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年7月18日 (火)

30年以上人気を保つポップデゥオのシングル集

Title:SMASH~The Singles 1985-2020
Musician:PET SHOP BOYS

日本でも高い人気を誇る、イギリスのエレクトロポップデゥオ、PET SHOP BOYSの、デビューした1985年から直近の2020年までのすべてのシングルを網羅したシングルコレクションがリリースされました。CD版で全3枚組。さらにデラックスエディションでは彼らのMV集がついたBlu-rayがついた全5枚組という、PET SHOP BOYSの歴史を網羅する企画となっています。

1985年以降のシングルが網羅されたベスト盤ということで、あらためてPET SHOP BOYSのディスコグラフィーを見ると驚かされるのが、1986年のデビューアルバムから2020年にリリースした最新アルバム「Hotspot」まで、34年間にわたるすべてのアルバムがイギリスチャートでベスト10ヒットを記録している、という事実でした。ある意味、非常に驚異的な記録で、日本でもB'zやミスチルが長く人気を持続していますが、ベスト10ヒットを記録するようになったのは90年代に入ってから。イギリスのミュージシャンではU2なんかも80年代から変わらない人気を維持していますが、U2の場合は世界的な人気バンドとして、それだけ長く人気が持続しているのも、なんとなくわかっていたのですが、PET SHOP BOYSも人気グループという認識はあったものの、それだけの大物、というイメージはなく、それだけに、これだけ長く人気を持続している・・・という事実は、正直、意外に感じました。

特に80年代のポップミュージシャンは、90年代以降、一気に人気が衰えてきた傾向にあります。80年代的なサウンドが見直された今となっては信じられないかもしれませんが、90年代には一時期「80年代的な曲はカッコ悪い」的な風潮があり、さらにもっと言えば、技術の進歩により80年代で多様されてきたシンセの音が急激に陳腐化してしまったということもあり、80年代を代表するようなポップミュージシャンの人気が下火になってしまったという傾向がありました。

今回のこのシングルコレクションも、基本的にはリリース順に並んでいるのですが、確かに1枚目に収録されているシングルは80年代的な色合いが強く、特にデビューシングル「West End Girls」などは、取って付けたようなラップ的な部分も含めて、いかにも80年代的に感じてしまいます。このいかにも80年代的なポップスユニットが、その後も人気を持続できた、という点には驚きも感じてしまいます。

とはいえ確かに、80年代の曲から、そのメランコリックなメロディーラインは大きなインパクトとなっており魅力的でしたし、サウンド的にもデビュー以降、徐々にPET SHOP BOYSらしい、祝祭色のある独特なサウンドにシフトしていっています。そのため、比較的、早い段階から80年代的な色は薄れて行っており、PET SHOP BOYSの個性をメロの面でもサウンドも面でもしっかり確立しています。その点が、彼らが30年以上、人気を持続している大きな要因なのでしょう。

そういう意味では最近の曲に関しては、PET SHOP BOYSらしさを確立し、目新しさことないのですが、彼ららしさの中でもサウンドをアップデートしているため、しっかりと今の音として響いていますし、なによりもデビュー以来変わらない、シンプルだけどもしっかりとインパクトのあり、胸に響くメロディーラインの魅力は変りません。デビュー当初の曲から最新の曲まで、全く衰えた感じもないという点も驚異的。この点も長く人気を持続している大きな要因なのでしょう。

なお本作、デラックス版は輸入盤国内仕様で11,000円という高価。MV集も欲しかったのですが、さすがに1万超えは厳しくて、諦めました・・・。ただ、単なるMV集がついたくらいで1万超えるか?円安と、海外の物価が上がった影響かなぁ・・・と最近よく言われる「安くなった日本」を嘆いたのですが、イギリスのAmazonで元値を確認すると、£40.85なので、直近のレートで約7千円くらい。まあ、そんなものか・・・と思いつつ、2年くらい前のレートなら5千円くらいだったので、やはり円安の影響は大きそう。ちょっと残念です。

PET SHOP BOYSの魅力とすごさをあらためて実感できたベストアルバム。CDのみでもかなりボリュームある内容ですが、魅力的なポップチューンがそろっているため、飽きることなく楽しむことが出来ます。ポップ好きならばチェックしておきたいアルバム。ポップスの楽しさを感じさせてくれるベスト盤でした。

評価:★★★★★

PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Agenda
Hotspot
Monkey business
My Beautiful Laundrette

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2023年7月17日 (月)

ロックバンドとしての実力も感じるパフォーマンス

Buffalo Daughter 30周年記念企画第3弾 名古屋編

会場 TOKUZO 日時 2023年7月5日(水)19:30~

Buffalo Daughterのワンマンライブに足を運んできました。

Buffalo1

会場は名古屋今池のTOKUZO。Buffalo Daughterのライブは、確か以前、フジロックで見たことがあったはずなのですが、ワンマンライブは今回がはじめて。毎回、傑作アルバムをリリースし続ける彼女たちのステージなだけに、楽しみにしていきました。会場的にTOKUZOと思ったより小さい箱だったので、超満員かも・・・と心配してきたのですが、思ったよりも余裕のある客の入りで、比較的ゆとりを持ってライブを楽しむことが出来ました。

冒頭は現時点での最新アルバム「We Are The Times」より「Music」からスタート。シンセを用いたエレクトロのナンバーからスタートしたかと思えば、続くは「Five Minutes」「Volcanic Girl」と、バンドサウンドを前に押し出したロックなナンバーが続きます。彼女たちのバンドサウンドは、非常にメリハリのあるタイトなサウンドで、ライブバンドとしてもかなり迫力ある演奏を聴かせてくれ、あらためて彼女たちの実力に舌を巻きました。

同じく前半は「Socks,Drugs,and Rock and Roll」でヘヴィーなバンドサウンドを聴かせて会場を盛り上げつつ、「Global Warming Kills Us All」のようなポップな曲も挟みつつ、バンドサウンドを押し出したようなダイナミックでロックな楽曲が続きます。

ここでまず最初のMCが。直前までアメリカでライブツアーに出ていた話。アメリカでは、ライブの最中も観客が私語で話していたり、曲に関係なく自由に踊っていたりと、非常に自由なスタイルで楽しんでいるという話から、この日の観客ももっと自由でいいよ、と呼び掛けていました。ただ、その後も観客はいつも通りだったのですが・・・。

Buffalo2

その後はBand Campでリリースしたという新曲「Chatbot Baby」と続き、その後は「ET(Densha)」などのサイケなインスト曲が続きます。横ノリでバンドのグルーヴに身をゆだねるような楽曲が多く、とても心地よさを感じる曲ばかりで、ロックバンドとしてダイナミックな演奏を聴かせてくれた前半とはまた異なる、バンドとしての彼女たちの魅力を感じさせるステージとなっていました。

続くMCではサポートメンバーのOKUMURA TAKERUが大学で講師をやっていて、楽屋でオンラインで講義をやっていたという話。そして終盤は「Times」へ。こちらはリズミカルなビートがとても心地よい楽曲に。そしてラストナンバー(曲名はわかりませんでした…)と続き、最後は簡単なメンバー紹介を行って、本編は幕を下ろしました。

もちろんその後はアンコールが起こり、メンバーは比較的すぐに再登場。アンコール1曲目は、前の方は椅子席だったのですが、全員立ち上がり、「No New Rock」で盛り上がります。そしてその後は一転しんみりと「Jellyfish Blues」で締めくくり。アンコール含めて約1時間半のステージが幕を下りました。

楽曲は、最近LP版でパッケージでの販売があった1998年の「New Rock」と2001年の「I」、それから最新アルバム「We Are The Times」からの曲がメインとなるセットリスト。ちなみにBuffalo Daughterは3人組バンドですが、最近、山本ムーグは休んでいるらしく、シュガー吉永と大野由美子の2人のみ。サポートメンバーに、前述のOKUMURA TAKERUと、ドラムスにbloodthirsty butchersの小松正宏という4人組バンドというスタイルでした。

彼女たちの楽曲は印象的にエレクトロ色が強いのですが、ライブではむしろロック色を前面に押し出したステージ。それも非常に迫力があり、かつ演奏技術も優れたステージとなっており、ロックバンドとしての実力を存分に感じることが出来ました。ワンマンは今回がはじめてでしたが、そのパフォーマンスに終始見入ってしまう素晴らしいステージでした。

時間的には約1時間半と、19時半という遅めのスタートだったのである程度予想はしていたのですが、ちょっと短めのステージ。とはいえ、非常に中身のあるステージを見せてくれており、満足度の高いステージになっていました。これだけのパフォーマンスをTOKUZOという、ちょっと狭いもののとてもよい箱で見れたのはうれしいところ。また、彼女たちのワンマンライブにぜひとも足を運びたいです!

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2023年7月16日 (日)

復帰後初アルバム!

Title:DEVOTION
Musician:TM NETWORK

TM NETWORKとしては前作「QUIT30」以来、実に約9年ぶりとなるニューアルバム。2018年には、小室哲哉の不倫騒動に端を発して「引退」を発表し、世間を驚かせましたが、結局2020年頃から活動を再開。その後、KEIKOとの離婚も成立し、KEIKOも最近では元気な姿を見せるようになり、彼女の高次脳機能障害と、それに伴う小室哲哉のストレスって、ウソだったんじゃん、となってしまったのですが、まあ、小室哲哉に人間性なんて求めません(笑)。彼は大きなお子ちゃまみたいなもんですから・・・。なんだかんだ言っても、宇都宮隆、小室哲哉、木根尚登の3人が並んでいる写真を見ると、やはり昔ながらのファンとしては胸がワクワクしてきます。

そんな久々となるTM NETWORKとしてのニューアルバムですが、まず純粋にファンとしてこのアルバムを楽しめるかというと、最後まで耳の離せない、非常に楽しめるアルバムであった点は間違いありません。ただ一方、このアルバムが純粋に「傑作」かと言われると、ちょっと意見を留保しなくてはいけなくなってしまいます。その大きな理由が、アルバムの前半、2曲目から6曲目までは、彼らの過去の代表曲が並んでいる点。ファンにとってはおなじみのキラーチューンが前半に並ぶからこそ、ファンにとっては聴いていて純粋に楽しめるという側面が否定できません。

一方、後半は新曲が並ぶのですが、こちらについても決して出来は悪くありません。特に今回のアルバム、リアレンジをほどこされた前半の曲を含めて、エレクトロアレンジについては、変なこだわりもなく、ある意味憑き物が取れたかのような、実に小室哲哉らしいアレンジの楽曲が並んでいます。特に後半の「Please Heal The World」は、昔のTMのアルバムにも入っていそうなインストナンバーになっていますし、「End Theme Of How Do You Crash It?」のピアノの音色など、実に小室哲哉らしくファンなら感涙の1曲とも言えるのではないでしょうか。

以前の小室哲哉は、下手に時代の先端を行くようなサウンドを模索し、結果として中途半端な作品を連発していた時期がありました。それが前作「QUIT30」で吹っ切れたかのように、小室哲哉らしい、いい意味でベタなサウンドを取り入れるようになったのですが、今回のアルバムもその方向性が続いた作品になっていました。

ただ惜しむらくは、後半についても「Please Heal The World」以降の3曲はインスト。ラストの「TIMEMACHINE」もキネバラの名曲で、スタジオ録音音源としてはこれが初収録ながらも、ライブ音源は既発表済。純粋に歌モノの新曲はタイトルチューンの「DEVOTION」「How Crash?」「君の空を見ている」の3曲のみ。「君の空を見ている」はキネバラらしい名曲で、「DEVOTION」も実にTMらしい疾走感あふれるエレクトロロックチューンなのですが、インパクトという面では2曲目以降に続くTMの代表曲に比べると弱さを感じてしまいます。

小室哲哉含めTM NETWORKの状況としては決して悪くはない状況だとは思います。まあ、TM NETWORK復帰後初のリハビリがわりの1枚といった感じでしょうか。次回作こそ、久々のTM NETWORKとしての傑作アルバムが期待できそうな予感もします。メンバー全員還暦を超えた今ですが、TM NETWORKの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30
GET WILD SONG MAFIA
GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition
Gift from Fanks T
Gift from Fanks M
LIVE HISTORIA T 〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜
LIVE HISTORIA M〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜

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2023年7月15日 (土)

ヘヴィネス路線に回帰

Title:In Times New Roman...
Musician:Queens of the Stone Age

前作から約6年ぶりとなるアメリカのロックバンド、Queens of the Stone Ageの最新作。以前からロックリスナーの間では高い評価を受けていた彼らですが、前々作「...Like Clockwork」でバンド初となる全米1位を獲得。前作「Villiains」は全米チャートでは3位に留まったものの、全英チャートでは見事1位を獲得。確固たる人気を確保しています。

前作「Villains」は、エイミー・ワインハウスやアデルも手掛けたヒットメイカー、マーク・ロンソンをプロデューサーとして迎え、いい意味でポップ路線にシフト。結果としてQueens of the Stone Ageとも相性バッチリの傑作アルバムをリリースしてくれました。今回のアルバムはバンドによるセルフプロデュースの作品となっており、バンドとしての新たな一歩を踏み出した形でのアルバムとなっています。

まず今回のアルバムで聴いていて感じたのは、ロックを聴く気持ちよさを感じることの出来る作品だった、という点でした。ヘヴィーなギターリフを主軸とした作風の曲が多く、ロックの持つダイナミックさを体現化したような作品。序盤の「Obscenery」「Paper Machete」とヘヴィーなギターリフを前面に押し出した作品からまずはスタートしますし、その後も基本的にバンドサウンドのヘヴィネスさを前に押し出したような曲が並びます。

ここ「Era Vulgaris」以降の数作、比較的ポップな作風を前に押し出していた作品が続いていましたが、今回の作品は「Era Vulgaris」以前のヘヴィネス路線に戻ったような印象を受ける楽曲。メロディーライン的にもマイナーコード主体のメランコリックでちょっと不穏さを感じさせる作品となっており、いかにもハードロックといった印象を作品になっていました。

前作「Villains」は、マーク・ロンソンをプロデューサーとして迎えることにより、古き良きハードロック路線を今風の音楽にアップデートする作品になっていました。今回のアルバムに関しても、決して「古臭いハードロックに戻った」といった感じはありません。ただ、どちらかというと、今風の音楽にアップデートする、というよりも、よく言えば以前からのQueens of the Stone Ageらしさをより表に出した作品に。悪くいってしまうと、一歩、後退した…と言えなくもない作品になっています。

そういう意味では若干評価に迷う部分のある作品ではあるのですが、ただ、昔ながらの音楽だの今風の音楽だの言う以前に、やはりロックとしての心地よさを感じるアルバムで、聴いていてとても気持ちの良かった作品であることは間違いありません。ここらへんのロックバンドとしてのダイナミズムさはやはり彼らの大きな魅力。そんなQueens of the Stone Ageの魅力がしっかり出ていたアルバムなのは間違いないでしょう。彼ららしさを強く感じる新作でした。

評価:★★★★★

Queens Of The Stone Age 過去の作品
ERA VULGARIS
...Like Clockwork
Villains

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2023年7月14日 (金)

サイケでバリエーションあるサウンドが魅力的

Title:Girl with Fish
Musician:feeble little horse

本作がフルアルバムとしては2作目となるアメリカのインディーロックバンドによる最新作。前作「HayDay」も注目を集めたようですが、2作目となる本作も各種メディア等で高い評価を受け、徐々に注目を集めてきています。

特徴としてはノイジーなギターサウンドをベースとしたバンドサウンドをバックにキュートな女性ボーカルがポップなメロを歌うというスタイル。正直なところ、最近、この手のインディーロックバンドは結構見かけるかも・・・という印象もあります。そんな中で彼女たちの特徴としては、このタイプのバンドによくありそうなシューゲイザー直系というよりも、サイケからの影響を強く感じる点(シューゲイザーもサイケの一種じゃん、という突っ込みは置いておいて)特に冒頭の3曲「Freak」「Tin Man」「Steamroller」は、かなり歪んだサイケなギターを前面に押し出しており、ガレージロックからの影響も感じる激しいサウンドが特徴的。強烈なノイズをまずは強いインパクトとして感じます。

ここから中盤は比較的、ノイジーなギターは後ろに下がって、ポップなメロが目立つ曲となり、よりメロのポピュラリティーを感じさせる作品に。「Healing」などはまさに、サイケ的なサウンドが垣間見れるものの、ポップなメロが印象に残る作品になっています。また、サイケやガレージロックからの影響を感じさせるといっても、中盤の「Sweet」のように、シューゲイザーからの影響も感じさせる曲も見受けられます。

後半は「Station」など、アコースティックサウンドも入ってメランコリックに聴かせる曲も見受けられるなどバリエーションも感じさせる点がユニークなところ。ラストを締めくくる「Heavy Water」は、まさにそんな静かなギターでメランコリックに聴かせる部分と、ノイジーなギターを前に押し出した部分が交互に展開しており、バンドとしての音楽性のバリエーションを集約したような構成がユニークになっています。

全11曲入りという構成ながらも、アルバム全体でも26分という短さも特徴的で、聴いていてあっという間に聴き切れてしまう勢いの良さもひとつの魅力と言えるでしょう。彼女たちみたいなノイジーポップを聴かせるインディーロックバンドは最近多いのですが、その中でもバリエーションのあるサイケな要素を押し出しており、バンドとしての個性も感じさせます。まだまだ人気的にはこれからのバンドといったイメージですが、徐々に注目を集めていきそう。今後に期待のバンドです。

評価:★★★★★

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2023年7月13日 (木)

ロックバンドが目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

最近はアイドル系が席巻するHot Albumsですが、今週はロック系が目立つチャートとなっています。

ただ1位はK-POPの男性アイドルグループ。TOMORROW×TOGETHERの日本盤のフルアルバム「SWEET」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数3位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上30万2千枚で1位初登場。直近作は韓国盤「The Name Chapter:TEMPTATION」で、同作の初動18万4千枚(1位)からアップしています。

そして2位3位はロックバンドが並んでいます。まず2位には、Hot100で「Magic」「ケセラセラ」がヒットを続けるMrs.GREEN APPLE「ANTENNA」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位。オリコンでは初動売上6万枚で2位初登場。直近作はミニアルバム「Unity」で同作の初動2万8千枚(3位)から大きくアップ。オリジナルフルアルバムとしての前作「Attitude」の2万6千枚(4位)からも大きくアップしており、彼らの勢いを感じる結果となりました。

3位にはASIAN KUNG-FU GENERATION「サーフ ブンガク カマクラ(完全版)」がランクイン。もともと2008年にリリースされたアルバムで、曲名に江ノ島電鉄の駅名が冠されたコンセプチュアルなアルバムだったのですが、その時は使用されなかった5駅分の曲を追加。全15曲入りの完全版としてリリースされました。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。前作「プラネットフォークス」(12位)から横バイ。過去発売分のリメイクとしては健闘した結果となっています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、こちらもロック系が目立ちます。まず8位にスキマスイッチ「Sukima Swith 20th Anniversary BEST "POPMAN'S WORLD-Second-"」。若干、「ロック系」と言えるか微妙なのですが・・・ご存じ2人組ポップスデゥオの、タイトル通り20周年記念となるベストアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数52位。2013年にリリースした「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」に続く形でのベスト盤となります。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。直近のオリジナルアルバム「Bitter Coffee」「Hot Milk」の初動9千枚(9位、10位)からは若干のダウン。2013年リリースのベスト盤の初動3万5千枚(2位)からは大きくダウンしています。

そして、こちらは文句なしのロックバンド。聖飢魔Ⅱ「聖飢魔II 期間再延長再集結『35++執念の大黒ミサツアー -大阪-』」が9位初登場。CD販売数8位。ご存じ、自ら悪魔と標榜するヘヴィーメタルバンドが、地球デビュー35周年を記念して2020年に再集結。コロナ禍でのツアー内容変更を経て実施された2022年の大黒ミサツアー(ライブツアー)の模様を収録した大教典(アルバム)となります。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。直近作はオリジナルアルバム「BLOODIEST」で、同作の初動1万7千枚(4位)からはダウンとなっています。

さて、その他のアルバムとしては、まず4位5位に山下達郎「MOONGLOW」「GO AHEAD!」がランクイン。「GO AHEAD!」は1978年、「MOONGLOW」は1979年にリリースされたアルバムで、1976年から1982年にRCA/AIR YEARSからリリースされたアルバムをリマスタリングして、レコードとカセットでリリースする企画の第3弾第4弾となります。CD販売数でそれぞれ3位、4位。オリコンでは初動売上それぞれ1万1千枚で3位、4位にランクイン。直近作は同じくリマスター盤「RIDE ON TIME」で同作の初動1万7千枚(5位)からはダウンしています。ちなみに山下達郎といえば、先日、ジャニー喜多川の性的虐待をめぐる騒動でラジオでの発言が大問題を起こしたばかり。さすがにこのリマスター盤の売上には影響はなかったのでしょうが・・・。ただ、あまりにも酷い発言だったので、個人的にも思うところがありましたので、ランキング評の後に記載しました。一言で言えば、彼も耄碌しちゃったんだろうなぁ、といった印象を受ける発言でした。

続けます。6位には湘南乃風「湘南乃風~20th Anniversary BEST~」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数9位。タイトル通り、メジャーデビュー20周年を記念してリリースされたレゲエバンドのベストアルバム。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。直近のオリジナルアルバム「湘南乃風~四方戦風~」の初動1万2千枚(4位)からダウン。3位のアジカンも湘南を舞台としたアルバムでしたが、今週は湘南なアルバムが並びました。バンドとしての両者のイメージは対極的とも言えるほど違いがありますが。

7位には女性アイドルグループNiziU「COCONUT」がランクイン。7月19日リリース予定の2ndアルバムからの先行配信で、ダウンロード数が2位を獲得。総合順位でもベスト10入りを果たしています。

最後、10位には女性声優岬なこ「day to YOU」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数38位。本作が岬なことしてはデビューアルバムとなります。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。

今週のHot Albumsは以上!チャート評はまた来週の水曜日に。以下、山下達郎の発言に対する雑感を。

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2023年7月12日 (水)

13週連続1位ながら、新譜も比較的多いチャート

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は比較的、新譜も目立つチャートとなりました。

Yoasobiidle

そんな中、13週連続の1位を獲得したのはYOASOBI「アイドル」。ストリーミング数、YouTube再生回数、カラオケ歌唱回数は今週も1位を獲得。ただ、ダウンロード数は2位から5位に、CD販売数も16位から28位にダウンしており、全体的には若干の下落傾向となっています。ただ、これに変わる強力な新譜もない中で、どこまで1位を続けるのか気になるところです。

一方、今週は新譜も目立つチャートで2位から4位には初登場曲が並びました。まず2位にはジャニーズ系アイドルグループTravis Japan「Candy Kiss」がランクイン。ダウンロード数1位、ストリーミング数18位、ラジオオンエア数19位、YouTube再生回数55位。一応、世界進出を目指すという体にはなっていますが、海外で話題となっているという話はほとんど伝わってきません。もっとも、前作の時にも書いたのですが、ジャニー喜多川の児童虐待問題が明るみに出た今となっては、ジャニーズ事務所所属のアイドルが、特に児童虐待問題に厳しい欧米に進出するのは事実上、不可能な状況でしょうが。

3位初登場は秋元康系のアイドルグループSKE48「好きになっちゃった」。CD販売数1位、ラジオオンエア数3位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上31万3千枚で1位初登場。前作「絶対インスピレーション」の初動22万5千枚(1位)からアップしています。

そして4位にはOCTRATH「Sweet」が初登場。CD販売数2位、ラジオオンエア数4位。韓国発のプロデュース番組の日本盤「PRODUCE 1-01 JAPAN SEASON 2」の出演者により結成された男性アイドルグループ。オリコンでは初動売上4万8千枚で2位初登場。前作「Like」の初動5万5千枚(2位)よりダウンしています。

そんな感じで2位から4位まで初登場曲がズラリと並びましたが、初登場曲はもう1曲。8位にキタニタツヤ「青のすみか」がランクイン。ダウンロード数2位、ストリーミング数23位。キタニタツヤはもともとボカロPとしても活躍していた男性シンガーソングライターで、本作はTBS系アニメ「呪術廻戦 懐玉・玉折」のオープニングテーマに起用され、今回のヒットにつながりました。「呪術廻戦」といえばおなじくオープニングテーマだったEve「廻廻奇譚」が大ヒットを記録しましたが、それに続くのでしょうか。ダウンロード数以外の順位の低さが気にかかりますが、ただ7月19日にはCDリリースも予定されており、今後のロングヒットにつながるかもしれません。これからの動向に注目です。

一方ロングヒットですが、まずVaundy「怪獣の花唄」が先週から変わらず6位をキープしています。ストリーミング数は10週連続の3位、カラオケ歌唱回数も7週連続の2位。ダウンロード数は29位から36位にダウンしてしまいましたが、YouTube再生回数は10位から8位と再びアップ。これで27週連続のベスト10ヒットとなりました。

スピッツ「美しい鰭」は今週4位から7位から大きくダウン。「怪獣の花唄」を下回る順位となってしまいました。ただ、ストリーミング数は10週連続の2位と変わらず。一方、ダウンロード数は21位から30位、YouTube再生回数も30位から43位とダウンし、下落傾向は続いています。これでベスト10ヒットは13週連続となりました。

MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」も今週5位から10位と大幅にダウン。ダウンロード数は3位から14位、ストリーミング数も5位から8位、CD販売数も24位から31位と大幅にダウン。YouTube再生回数も2位から3位とダウンしており、これで13週連続のベスト10ヒットとなりましたが、厳しい結果となっています。

また今週はベスト10初登場が多かった影響で、ロングヒット曲が何曲かはじき出される結果となりました。特にOfficial髭男dismは「TATTOO」が7位から12位、「Subtitle」も9位から13位と2曲同時にベスト10落ち。「TATTOO」は11週連続、「Subtitle」は通算37週でベスト10ヒットはストップです。

さらにMrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」も10位から11位にダウンし、ベスト10ヒットは10週連続でストップ。ただ、「Magic」は今週8位から5位にアップ。ラジオオンエア数で1位を獲得しているほか、ストリーミング数も10位から6位にアップしており、今後の動向が気になる結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年7月11日 (火)

コロナ禍後、初のオリジナルアルバム

Title:MOROHA Ⅴ
Musician:MOROHA

メッセージ性が強い独特のリリックで大きな評判を呼んでいるHIP HOPユニットMOROHA。コロナ禍を経て、約4年ぶりとなるニューアルバムのリリースとなりました。特にこのコロナ禍の中で彼らが話題となったのは、コロナ直後の2020年4月。コロナによるライブ開催停止により苦境に陥ったライブハウスを救うべく、会場に費用を先払いする「日程未定、開催確定TOUR」を企画し、話題を呼びました。さらに昨年2月には初の日本武道館単独開催を実施。さらには今年に入り、その会場費を先払いしたライブツアーも実現させるなど、積極的な活動を続けています。

さて、MOROHAについては以前、何枚かアルバムを紹介しているのですがあらためて。基本的に楽曲のスタイルはどの曲も大きくは変りません。トラックはギタリストのUKの奏でるアコギ1本のみ。時にはアグレッシブに、さらに時にはメランコリックに奏でられるシンプルなアコギをバックに、MCのアフロがリアリティーのありメッセージ性の強いラップ・・・というよりはポエトリーリーディングに近いスタイルのリリックを読み上げます。ジャンル的にはHIP HOPにカテゴライズされる彼らですが、HIP HOP的な要素はあまり強くなく、スタイルとしてはポエトリーリーディングと言っていいかもしれません。

そんな彼らのリリックは非常に熱量が強く、聴いていてそのメッセージ性から耳が離せなくなります。ただ、時としてこの手のメッセージ性の強い歌詞は説教臭くなりがちであり、酷い時は自己啓発セミナー的な宗教じみた部分を感じてしまうのですが、アフロの書くリリックに、そのようなうさん臭さをあまり感じさせないのは一貫してリアリティーがあるからではないでしょうか。特に今回のアルバムでその点を強く感じたのは、おそらく家族の実体験を歌った「ネクター」。酒を飲むと暴力を奮う祖父や、ギャンブルや女遊びを続けた父親が登場し、家族に対する愛憎入り混じる感情をストレートに綴っています。ともすれば「家族や仲間に感謝」になりがちな最近の曲の中であきらかに異質で、でも非常にリアリティーを感じる内容が胸をうちます。

コロナ禍の中での状況をストレートに綴った「主題歌」も印象的。コロナが五類感染症になって、徐々にコロナ前の状況を取り戻しつつある今から振り替えると、少々変な懐かしさも感じてしまうような内容になってしまいますが、いろいろと苦しかったあの頃を思い出すような、これも非常にリアリティーあふれる歌詞が印象に残ります。

ほかにも力強く音楽に対する決意を綴った「チャンプロード」や、同じく力強いリリックで自らを奮い立たせる「俺が俺で俺だ」のような、メッセージ性の強い曲があるかと思えば、カメラを通じた人間模様を描いた「エリザベス」や愛してはいけない人に対する切ないラブソングを歌った「花向」など、パーソナルな感情を綴った曲もあり、そのリリックからは最後まで耳を離せません。

また間違いなく忘れてはいけないのがUKの鳴らすアコギの音色で、内省的なリリックが印象的な「命の不始末」では、切ないアコギのアルペジオが非常に印象に残りますし、「花向」でも、切ないアコギの音色がリリックの描く切ない感情を増幅させています。時には力強いパーカッシブに、時には切ないアルペジオで奏でられる、UKのサウンドもとても魅力的でした。

BGM感覚で聞き流すことを許されない、力強い情熱あふれるリリックとトラックが大きな魅力的な作品。基本的にそのスタイルはいままでのアルバムから大きく変化はありませんが、ただ、毎回、圧倒される内容になっている点は間違いないでしょう。日本武道館ライブを成功させるなど、注目度もあがっている彼らですが、その勢いはまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

MOROHA 過去の作品
MOROHA BEST~十年再録~
MOROHA IV


ほかに聴いたアルバム

恋愛至上主義/KANA-BOON

KANA-BOONのニューアルバムはラブソングを収録したコンセプトアルバム。とはいえ、直近の配信シングルも収録されており、実質的に8曲入りのニューアルバムといった様相の作品になっています。楽曲はいずれもシンプルでポップなギターロックといった感じ。目新しさはないのですが、良い意味で癖のない幅広い層にアピールできそうなポピュラリティーがKANA-BOONらしさを感じます。メンバーの失踪騒動やボーカルの体調不良からの活動休止などバンドとしての苦難が続いていた彼らですが、前作もそうだったのですが、それを乗り越えた今、バンドとしての状況は悪くなさそうです。

評価:★★★★

KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME
Origin
NAMiDA
KBB vol.1
アスター
KBB vol.2
ネリネ
KANA-BOON THE BEST

REARRANGE THE BACK HORN/THE BACK HORN

THE BACK HORNの新作は、結成25周年を記念してリリースされた、過去の作品をリアレンジした作品。THE BACK HORNというと、とにかくヘヴィーでゴリゴリなサウンドというイメージがあるのですが、今回のリアレンジに関しては、原曲に比べると全体的にゴリゴリ感は弱まり、もうちょっとシンプルなサウンドにシフトした印象。もちろん、バンドサウンドのダイナミズムさは感じられ、決してガラッと変化した訳ではないのですが。とはいえ、全体的には大人になったTHE BACK HORNという印象も感じ、このアレンジをどう解釈するか、ファンの間でも評価は分かれそう。個人的にはこれはこれでありかな、と思いつつ、やはりこれでもかというほどのコッテリ感のある原曲の方がTHE BACK HORNらしいかも、とは感じました。

評価:★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II
情景泥棒
ALL INDIES THE BACK HORN
カルペ・ディエム
この気持ちもいつか忘れる
アンドロギア

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2023年7月10日 (月)

ジャケットが文字通り「炎上」

Title:Átta
Musician:Sigur Rós

今回、事前のアナウンスなしで突然リリースされたということでも話題となった、純粋なオリジナルアルバムとしては実に約10年ぶりとなるSigur Rosの新作。ただ、今回のアルバムはその内容以上に、そのジャケット写真が大きな話題となっています。上の写真でもわかるとおり、ジャケットに使われているのは虹をかたどった旗が燃えている写真。レインボーフラッグというのは、LGBTの象徴として用いられているもので、さらに6月はプライド月間といってLGBTの啓蒙的な活動が重点的に行われている月間だそうです。この写真は、アイスランドのRURUというアーティストによる作品が使われているそうですが、レインボーフラッグを燃やすという意味から、ともすればアンチLGBTとも捉えられかねないジャケットとなっており大きな物議を醸し出しています。

一方でSigur Rosのボーカルのヨンシーは自らがゲイであることをカミングアウトしており、ガーディアン誌のインタビュー記事によると、むしろ現状のLGBTに対する差別的な現状に危機感を抱いていることすら述べているようです。そう考えると、むしろこのジャケット写真は、LGBTをめぐる現状に対する危機感とも捉えることが出来そうですが・・・ただともすれば誤解を招きかねないジャケット写真である以上は、どういう形でも、この写真に対する意味を説明する必要性はあるのではないでしょうか。

さて、ジャケット写真に対する話はここまでとして、肝心なアルバムの内容ということになるのですが、シガーロスらしいサウンドをしっかりと聴かせてくれるアルバムという印象をまずは受ける作品となっていました。ゆっくりと聴かせるドリーミーなサウンドは、どこか厳かな雰囲気もあり、ヨンシーのハイトーンボーカルも、そんなドリーミーなサウンドの中に溶け込んで、まさにシガーロスらしいサウンドを聴かせてくれています。

基本的には、アルバムは終始、そんな分厚いサウンドで美しくも幻想的に聴かせる作品が並んでいます。ただ一方でそんな中、今回のアルバムらしさと言えるのは、ストリングスを入れてオーケストラアレンジ風に醸し出し、スケール感を出しているという点でしょう。特に今回のアルバムでは1曲目「Glóð」で分厚いサウンドを作り出していますが、印象的だったのは中盤から。「Mór」はまさにそんなストリングスによりスケール感を作り出す楽曲になっていますし、続く「Andrá」も最初は静かに楽曲がスタートしつつ、後半からは分厚いストリングスのサウンドでスケール感たっぷりの作品に仕上げられています。

ただ、そういう特徴はありつつも、基本的には最初から最後までシガーロスらしさが貫かれた作品で、良くも悪くも目新しいという印象は受けません。もっとも一方では内容的には申し分ないクオリティーは保たれており、しっかりと聴かせるアルバムだったのは間違いないでしょう。そういう意味では十分すぎるほど傑作に価する作品だったと思います。ジャケット写真の意味は気になってしまうのですが・・・それを差し引いても、シガーロス好きなら聴いて損のないアルバムでした。

評価:★★★★★

Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR


ほかに聴いたアルバム

Heaven Is A Junkyard/Youth Lagoon

アメリカのシンガーソングライターによる約8年ぶりとなるニューアルバム。全体としてピアノを中心とした作品に、前半はオーガニックでフォーキーな作品、後半はシンセも入ってドリーミーにまとまった作風になっています。ただアルバムを通じてメロディアスで暖かみを感じる作風で、良い意味で難しいこと抜きに楽しめる作風になっていました。

評価:★★★★★

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2023年7月 9日 (日)

最新アルバムの肩慣らし的な

RHYMESTER ニューアルバム「Open The Window」発売記念インストアイベント

会場 オンライン 日時 2023年6月25日(日)13:30~

今回はちょっと久々にオンラインでのライブレポ。タイトル通り、先日リリースされたRHYMESTERのニューアルバム「Open The Window」発売に伴い、タワレコでの購入特典としてついてきたインストアイベントのライブレポとなります。開催は(おそらく)渋谷タワレコでのステージですが、オンラインで全国に配信されました。

時間になるとまずはメンバーの3人が登場。「インストアイベントなんで、ライブとは違って何をやってもいいらしいので、30分すべてトークにしようか?」なんて軽口のMCからスタートしつつ、とはいえやはりライブでスタートしました。

まず最初は「予定は未定で。」。日曜日の昼間ということでノンビリな空気感での曲でスタート。そこから「My Runaway」「初恋の悪魔-Dance With The Devil-」と最新アルバム「Open The Window」からアップテンポなナンバーが続きます。この日がライブで初の披露らしいのですが、会場はいきなり盛り上がっていました。

その後はMCに。新作アルバムの話や今後のツアーの話などの後から、次の曲の題材となっている1989年という年について軽く触れたあと、再びニューアルバムから「なめんなよ1989」へと展開します。この1989年というのはRHYMESTERが結成された年なんですね。そしてラストチューンはニューアルバムから「待ってろ今から本気だす」を披露。約30分のステージは幕を下ろしました。

そんな訳で、配信での参加となったインストアイベント。結局、良い意味でいつも通りのRHYMESTERのステージを見せてくれました。この日演った楽曲はいずれの最新アルバムからの曲。メンバーも会場のファンも若干手探り状況な雰囲気もありつつ、ただ、キングオブステージの異名を持つ彼ららしく、しっかりと会場を暖めていたステージでした。

短い時間でしたが非常に楽しいイベントでした。今回のライブツアーには、残念ながら日程的に参加できないのですが、またRHYMESTERのライブも足を運びたいなぁ。そう感じさせる楽しいライブイベントでした。

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2023年7月 8日 (土)

木下理樹の世界観がさく裂

Title:luminous
Musician:ART-SCHOOL

最近は、比較的不安定な活動が続いているART-SCHOOL。2014年に活動休止を発表したものの、2015年末には活動再開。かと思えば、2019年には木下理樹の体調不良により再び活動休止。ただ2022年に活動再開。そして実に約5年3ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバムのリリースとなりました。

そんな久々となるオリジナルアルバムは、ART-SCHOOLらしさが存分に表れたアルバムになっていました。まずはそのサウンド。基本的にシューゲイザーやオルタナ系ロック直系のノイジーなギターロック。冒頭の「Moonrise Kingdom」から、まずホワイトノイズが埋め尽くすようなシューゲイザー色強いイントロが心地よいですし、続く「ブラックホール・ベイビー」や中盤の「I remember everything」も疾走感あるヘヴィーなバンドサウンドが印象的な作品になっています。

基本的にはノイジーなギターロックが続く作品になっているのですが、途中、モータウンビート風の軽快なギターポップの「2AM」や、ギターの戸高賢史がボーカルをつとめる「Heart of Gold」なども組み込まれており、ここらへんは楽曲としてバリエーションの広がりを感じさせます。

また、歌詞の世界もいつものように木下理樹のワールドが広がっており、こちらもART-SCHOOLらしさを感じる作品に。美しい清らかな「君」を愛する、汚れた「自分」を歌う、切なく美しいラブソングが胸をうちます。そんな二人を光に誘われる虫に例えば「Bug」や、ストレートに「I Adore You=君のことが愛しい」と歌う、タイトルそのまま「I Adore You」「End of the world」というタイトルで「I'm with you/何があっても/I'm with you/二人だけさ」と歌うのは、ちょっとベタな感じもするのですが・・・そのわかりやすさもまた、ひとつの魅力に感じます。ユニークなのは木下理樹だけではなく、今回、戸高賢史ボーカル曲では彼が歌詞を書いているのですが、彼が作詞を行った「Teardrops」でも似たような世界観の歌詞になっておる、アルバム全体で統一感のある内容になっています。

それなりにバリエーションはもたせつつも、アルバム全体は王道路線のオルタナ系のバンドサウンドが流れており、聴いていてすんなり楽しめる内容に。ノイジーで、ちょっとダウナーさもあるサウンドに、木下理樹の書くメランコリックなサウンドや、彼の気だるいボーカルもピッタリとマッチ。久々の新作ですが、ART-SCHOOLらしさがあふれた作品になっており、聴いていてとても心地よくなる作品でした。

これからはコンスタントに活動を続けていくのでしょうか。あらためてART-SCHOOLの魅力を感じ、その実力を実感できた傑作でした。

評価:★★★★★

ART-SCHOOL 過去の作品
Ghosts&Angels
ILLMATIC BABY

14 SOULS
Anesthesia
BABY ACID BABY
The Alchemist
YOU
Hello darkness,my dear friend
Cemetery Gates-B SIDES BEST-
In Colors
Just Kids.ep


ほかに聴いたアルバム

潮騒UNLIMITED/LIVE IN TOKYO 20221103/遊佐未森

昨年11月に東京大手町の三井ホールで開催されたライブの模様を収録したライブアルバム。直近のアルバム「潮騒」からの曲がメインなのですが、「暮れてゆく空は」のような懐かしいナンバーも加わっています。基本的にアコースティックなアレンジで、ファンタジックな空気感も漂うステージで、最近の曲も「暮れてゆく空は」のような昔の曲も違和感なくマッチしており、いい意味でも彼女の変わらなさも感じます。遊佐未森も一度くらい、ライブに行ってみたいな。

評価:★★★★

遊佐未森 過去の作品
銀河手帖
Do-Re-Mimo~the singles collection~
淡雪
VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS
せせらぎ
PEACHTREE
潮騒

サーフ ブンガク カマクラ(半カートン)/ASIAN KUNG-FU GENERATION

Akg_han

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが2008年にリリースした、江ノ電の駅をモチーフとした楽曲を並べたコンセプト的なアルバム「サーフ ブンガク カマクラ」。7月5日に当初のバージョンでは収録されなかった江ノ電の駅を追加して、「完全版」としてリリースされる予定になっています。本作は、それに先立ち、配信限定のEP盤として、リリースされた作品。追加収録される5曲に、このEP盤のみに収録される、バンドCARAMELMANのカバー「湘南エレクトロ」を収録した6曲入りのアルバムとなっています。

基本的にはこのEP盤のみで収録されている「湘南エレクトロ」目当てで聴いたのですが、この曲は2分弱の短いインスト曲。まあ、ストリーミングとかで聴けるので、この曲のみチェックするのは悪くはないけど…といった程度の印象。残り5曲については基本的にはアジカンらしい分厚いバンドサウンドで装飾されたメロディアスなギターロック。目新しさはありませんが、アジカンらしさにある意味、安心して聴ける内容になっています。「完全版」の中でこの5曲がどのように聴こえるのかも楽しみですが…まあ、既にリリース済の「サーフ ブンガク カマクラ」のオリジナルと組み合わせて、既に「完全版」にすることは可能なんですけどね。

評価:★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク
THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO
フィードバックファイル2
Wonder Future
ソルファ(2016)
BEST HIT AKG 2(2012~2018)
BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"
BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"

ホームタウン
プラネットフォークス

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2023年7月 7日 (金)

そのジャケット写真の印象とは異なり・・・

Title:Fountain Baby
Musician:Amaarae

めっちゃセクシーなジャケット写真に目がいく本作は、アメリカはブロンクス出身のガーナ系アメリカ人の女性シンガーソングライターによる新作。2枚目となる本作は、各種メディアなどに高い評価を受けており、注目を集めています。

彼女に対する音楽の説明として、ポップ、R&Bとアフロビートの融合という書き方をされており、実際に彼女の楽曲の大きな特徴として、アフロビート直系のトライバルなサウンドがあります。イントロ曲に続く2曲目「Angels in Tibet」や続く「Co-Star」もトライバルなビートが特徴的ですし、「Big Steppa」もホーンセッションがアフロビートっぽさを強く感じさせる作品に。その後も「Counterfeit」「Disguise」などといったトライバルなビートが特徴的な曲が目立ちます。

しかし、そんな彼女の曲のもうひとつの大きな特徴であり魅力でもあるのがそのボーカルでしょう。アフロビートというサウンドや、このジャケット写真のようなルックスから生じるイメージに反して、ウィスパーボイス気味の非常にキュートなボーカルが特徴的。前述の「Angels in Tibet」も「Co-Star」も、そのキュートなボーカルが故に、ともすれば、K-POP系の女性アイドルのポップ??とすら感じるほどのポピュラリティーとキュートさを併せ持った楽曲に仕上がっています。

その後も「Reckless&Sweet」も哀愁たっぷりのメロディーラインがポピュラリティーがあり、そのキュートなボーカルともマッチして魅力的な作品ですし、「Sociopathic Dance Queen」もタイトル通り、リズミカルなテンポのキュートなポップになっており、非常に魅力的なポップチューンに仕上げています。

一方では「Sex,Violence,Suicide」の最後にはパンキッシュなギターサウンドが突然入ってきたり、ラストの「Come Home To God」もギターサウンドが入ってきたりと、「ロック」な側面も。ここらへん、雑食的な音楽性もひとつの魅力でしょう。個人的には、ウィスパー気味なキュートなボーカルと、雑食的な音楽性も相まって、YUKIとかCharaあたりを彷彿とさせる部分も感じました。

ちなみに「Wasted Eyes」では、なぜか日本のギャルの会話がサンプリングされていたりして、この点もユーモラスさを感じます。海外からすると、言葉の意味はわからなくても、どこか不思議な印象を受けるのでしょうか?日本人にとってみては非常にインパクトのある曲だったりします。

そんな訳で、ジャケット写真の印象とは異なり、非常にキュートでポップで、いい意味で聴きやすさのある楽曲が魅力的。現時点では、アメリカ本国でもブレイク前のミュージシャンなのですが、今後は徐々に注目度も高まり、ブレイクしそうな予感もあります。今のうちにチェックしておきたいミュージシャンです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Dr. John: The Montreux Years/Dr.John

世界最大級の規模であり、55年にも及ぶ長い歴史を持つ、モントルー・ジャズ・フェスティバル。本作は、そのフェスティバルで録音された音源を集めた「The Montreux Years」シリーズの最新版。2019年に亡くなったレジェンド、Dr.Johnの音源を集めた1枚。ピアノで軽快な演奏を聴かせてくれる、終始ご機嫌なパフォーマンス。ジャズ、ブルースや曲によってはブギウギ、ラテン、ファンクなどの曲調の作品もあり、彼の幅広い音楽性を感じさせる作品となっています。

評価:★★★★★

Dr.John 過去の作品
Locked Down
Ska-Dat-De-Dat:Spirit of Satch
Live In Sweden 1987(Johnny Winter with Dr.John)

Adderall/Slipknot

Adderall

サプライズリリースとなった6曲入りのEP盤。とはいえ、基本的には表題曲のバージョン違いが並んでいるような構成。基本的にSlipknotらしいダークでヘヴィーな作風ながらも、メランコリックなメロディーラインやピアノの音色が美しく奏でられ、不気味さと美しさが同居したようなスタイルが魅力的な作品になっています。短い内容ながらもSlipknotの魅力を感じさせるEPでした。

評価:★★★★

slipknot 過去の作品
All Hope Is Gone
ANTENNAS to HELL
We Are Not Your Kind
The End,So Far

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2023年7月 6日 (木)

アイドル系が目立つ中で・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsは相変わらずアイドル系が目立つ中で、それ以外のアルバムも奮闘した結果となっています。

まず1位にはWACK所属の女性アイドルグループBiSH「BiSH THE BEST」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数3位。6月の東京ドームライブを最後に解散した彼女たちのベストアルバム。ちなみに本作はCD2枚組(もしくは+DVD/Blu-ray)のアルバムですが、全CD9枚組+Blu-ray3枚組という「BiSH THE BEST(コンプリート盤)」もリリースされており、Hot Albumsでも別集計で6位にランクインしています。

なお、オリコン週間アルバムランキングでも「BiSH THE BEST」が初動1万8千枚で1位初登場。コンプリート盤も初動8千枚で3位に初登場しています。ちなみに直近のオリジナルアルバム「GOiNG TO DESTRUCTiON」の初動4万5千枚(1位)からダウン。ベスト盤として前作の「FOR LiVE-BiSH BEST-」の初動4万9千枚(1位)よりもダウンしています。

そして3位も韓国の男性アイドルグループSHINee。韓国盤のニューアルバム「HARD」がダウンロード数2位で総合順位もベスト3入りとなっています。なお、Hot AlbumsはCD販売数は対象外となっているようですが、オリコンではCD販売分が初動売上3千枚で12位にランクイン。日本盤の直近作「SUPERSTAR」の初動7万3千枚(1位)からはダウン。韓国盤の前作「Don't Call Me:SHINee Vol.7」の初動7千枚(13位)からもダウンしています。

そんな2枚のアルバムに割って2位に入ったのが祖堅正慶「FINAL FANTASY XIV: ENDWALKER - EP4」。今週のHot100で米津玄師のFFテーマ曲がランクインしてきましたが、あちらは「XVI」で、こちらは「XIV」。いまでもアップデートされ続けているMMOPRGのパッチ6.4「玉座の咎人」の楽曲を収録した配信限定のミニアルバムとなります。ダウンロード数で見事1位を獲得。配信オンリーでベスト3入りを果たしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、7位には「劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』テーマソング・コレクション」がランクイン。6月9日から公開されている映画「劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』」に使用された曲を集めたアルバム。CD販売数11位、ダウンロード数5位。オリコンでは初動売上3千枚で13位初登場となっています。

そして今週9位にはCornelius「夢中夢-DREAM IN DREAM-」がランクインしています。CD販売数8位、ダウンロード数12位。ご承知のとおり、昨年の東京オリンピック/パラリンピック開会式の音楽スタッフに選ばれたことに端を発した、過去のいじめ発言に対するバッシングで、一時期、音楽活動の自粛を余儀なくされた彼。その後、徐々に活動を再開しており、今回も無事、オリジナルアルバムリリースに至りました。前作「Mellow Waves」から6年ぶりとなる作品。もっとも、もともとアルバムリリースは寡作気味で、前々作から前作に至っては、11年もインターバルがありましたので、そういう意味では「通常のペース」でのリリースと言えるかもしれません。

ちなみにオリコンでは初動売上4千枚で、前作「Mellow Waves」の1万1千枚(10位)よりダウン。前作から6年も経過しているだけに、これを持ってリスナーが離れた、と言えるかどうかは微妙な部分なのですが・・・。ただ、あの後、様々な検証が行われ、ファンや熱心なリスナー層にとっては、かなり誤解が解けた一方、あまり興味のない一般層にとっては、あのバッシング直後のイメージそのままだけに、まだまだ表だった活動は難しいだろうなぁ、とは思ってしまうのですが。

最後、10位にはsyudou「露骨」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数30位。ボカロPとしても活躍する男性シンガーソングライターによる、はじめて本人が歌ったアルバム。Adoが歌って大ヒットした「うっせぇわ」の作詞作曲を行ったミュージシャンでもあり、注目度も増しています。オリコンでも初動売上5千枚で6位初登場。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年7月 5日 (水)

12週連続の1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

YOASOBIの勢いが止まりません。

Yoasobiidle

今週、12週連続で1位獲得となったのはYOASOBI「アイドル」。ストリーミング数、YouTube再生回数、カラオケ歌唱回数で1位獲得。ただダウンロード数は2位にダウンしたほか、CD販売数も16位までダウンしています。とはいえ勢いの止まらないこの曲。ただ率直なところ、曲自体の良さに関しては「それほどか?」というのが感想。最近、一度ヒットしだすと、特にストリーミングはいつまでたっても同じ曲が聴かれ続ける傾向があって、以前もこの点を懸念するWebの記事を紹介しましたが、過剰すぎるリスナーの保守的な傾向が気になるところではあります。

2位には秋元康系アイドルグループ欅坂46「Start over!」がCDリリースに伴い10位からランクアップしてベスト3入り。CD販売数1位、ダウンロード数及びストリーミング数6位、ラジオオンエア数40位、YouTube再生回数44位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上43万9千枚で1位初登場。前作「桜月」の初動34万9千枚(1位)よりアップしています。

3位初登場は米津玄師「月を見ていた」。ダウンロード数は同作が1位。ラジオオンエア数も1位獲得。一方、ストリーミング数は21位に留まっています。6月22日にリリースされたゲーム「FINAL FANTASY XVI」テーマソング。今後、ゲームのヒットに伴い、ストリーミング数の方もランクアップし、ロングヒットにつながっていくのでしょうか?

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲はゼロ。一方、ロングヒット曲が並んでいます。まず4位はスピッツ「美しい鰭」。今週は5位から4位に再びアップ。12週連続のベスト10ヒットとなっています。ストリーミング数は9週連続の2位。ただ、ダウンロード数は15位から21位、YouTube再生回数も28位から30位とダウンし、全体的に下落傾向は続いています。

5位にはMAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」がワンランクダウン。連続ベスト10ヒットをこちらも12週連続に伸ばしましたが、先週からスピッツと順位を入れ替えた形となります。ただ、ダウンロード数3位、ストリーミング数5位は先週と変わらず。YouTube再生回数は3位から2位にアップ。CD販売数は14位から24位にダウンしていますが、全体的には根強い人気を感じさせる結果となっています。

6位はVaundy「怪獣の花唄」が先週から同順位をキープし、こちらは26週連続のベスト10ヒット。ストリーミング数は9週連続の3位、カラオケ歌唱回数も6週連続の2位をキープ。一方、YouTube再生回数は8位から10位に、ダウンロード数も19位から29位にダウンしています。

Official髭男dism「TATTOO」が先週から変わらず7位に、「Subtitle」が先週からワンランクダウンの9位にランクインし、今週も2曲同時ランクイン。「TATTOO」はストリーミング数が6週連続4位。ただダウンロード数は7位から8位、YouTube再生回数も9位から12位にダウン。「Subtitle」はストリーミング数が今週6位から7位にダウン。YouTube再生回数も11位から15位にダウンしています。これで「TATTOO」は11週連続、「Subtitle」は通算37週目のベスト10ヒットとなっています。

そして10位にはMrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」が先週の9位からワンランクダウンながらもベスト10をキープ。これで10週連続のベスト10ヒットとなっています。ストリーミング数は7位から8位、YouTube再生回数も18位から23位にダウンしていますが、ダウンロード数は今週13位から12位にアップしています。Mrs.GREEN APPLEは今週、「Magic」が先週の3位からダウンしたものの8位にランクインし、2曲同時ランクインに。また「青と夏」が11位、「ダンスホール」が14位と先週と同順位をキープしており、今週もベスト20に4曲がランクインしている結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年7月 4日 (火)

バラエティー富んだコミカルな作風がとても楽しい

Title:大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK/NIAGARA ONDO BOOK
Musician:大滝詠一

2013年に65歳で急逝した大滝詠一。もうそれから10年近くがたつんですね・・・。その後もベスト盤やニューアルバム、様々な企画盤と大滝詠一関連のアルバムリリースが相次いでいます。晩年は、大滝詠一名義でのリリースはほとんどなかっただけに、むしろ逝去後の方が存在感が増している感すらするのですが・・・それだけ、日本のポップスシーンにおける彼の存在が大きかった、という訳なのでしょうね。

そんな中、非常にユニークかつ貴重な企画アルバムがリリースされました。全2枚組の本作は、大瀧詠一が手掛けた、いわゆるノベルティーソングを集めた企画盤。このうちDisc1は、「大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK」と題されて、彼が様々なシンガーに提供したノベルティーソングを自ら歌った曲を集めたもの。一方、Disc2は「NIAGARA ONDO BOOK」と題され、そのノベルティーソングを収録したオムニバスアルバムですが、いずれも世に出たバージョンとは別バージョンを収録した、レア音源集となっています。

いずれも貴重な音源を収録したアルバムなのですが、おそらくファン的により注目したいのはDisc1の方でしょう。全編大滝詠一のボーカルにより未発表音源ばかり。そういう意味では純粋なオリジナルアルバムとも言えるような作品になっています。ただし、アルバムとして面白かった断然Disc2の方。正直なところ、大滝詠一によるボーカル曲については、貴重な音源であることは間違いないのですが、デモ音源やガイドボーカル曲なども多く、作品の完成度という観点から、大滝詠一逝去後の今だからこそリリースできたんだろうなぁ、という曲も少なくありません。また、やはりあくまでも提供するボーカルを想定して楽曲を作成しているため、大滝詠一のボーカルだと違和感を覚える曲も少なくありません。そういう意味でも、Disc1はどちらかというとファンズアイテム的な様相のある作品でした。

一方、Disc2の方は、コミカルでユニーク、さらにはバラエティー富んだ楽曲が次から次へと展開され、聴いていて素直にワクワクしてくるような、とても楽しいアルバムになっていました。

特に耳を惹くのは、かなり有名なカバー曲なのでご存じの方も多いとは思うのですが、金沢明子の「イエロー・サブマリン音頭 (特別変)」。ビートルズの「イエロー・サブマリン」を日本の音頭風にカバーした曲なのですが、イギリスのロックと、日本の音頭の中に共通して流れるリズムをピックアップして、非常に自然な音頭風カバーに仕上げてしまうあたりに、大滝詠一の慧眼ぶりを感じさせます。ただ、同じようなネタの「スリラー音頭〜ビートイット音頭」は完全に二番煎じといった感じでしたが・・・。

またボーカルという側面で耳を惹いたのはクレイジーキャッツの「実年行進曲」「新五万節」で、ギャグ的には時代を感じさせる部分はあるものの、キャラの立ったコミカルな歌い方は聴いていてもとても楽しく、大滝詠一以上に、クレイジーキャッツの実力を感じることの出来る楽曲になっていました。そこらへんは植木等ソロの「針切じいさんのロケン・ロール」も同様で、ここらへんはさすが・・・といった感じでしょう。

貴重な音源が収録された、ファン垂涎のアルバムですし、またバラエティー富んだ作風に大滝詠一の才能を感じさせるアルバム・・・なのですが、それ以上にコミカルな展開がとても楽しく、熱心なファンでなくても非常に楽しめる企画盤になっていました。ファンならずともお勧めのアルバム。終始、とても楽しめる作品です。

評価:★★★★★

大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition
Best Always
NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-
DEBUT AGAIN
NIAGARA CONCERT '83
Happy Ending
A LONG VACATION 40th Anniversary Edition
大瀧詠一 乗合馬車 (Omnibus) 50th Anniversary Edition

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2023年7月 3日 (月)

懐かしい「渋谷系」ユニット

Title:ICE Complete Singles
Musician:ICE

このベスト盤リリースを知った時、とても懐かしい!という印象を受けました。主に楽曲制作を手掛けるギタリストの宮内和之と、ボーカリストの国岡真由美によるユニット、ICE。90年代に活躍し、特にユニット名がピッタリくるような「クールビューティー」な国岡真由美のボーカルが強く印象に残ったユニットで、スタイリッシュなそのサウンドは、非常に都会的な雰囲気を醸し出しており、当時高校生だった私にとっては、「大人のユニット」という、ちょっと憧れにも似た感覚を受けていました。

本作は、そんな彼女たちのデビュー30周年を記念してリリースしたシングルコレクションで、16枚のシングルがすべて収録されたアルバムとなっています。今回、懐かしさもあり、このシングルコレクションを聴いてみたのですが、その過程でICEについて調べてみて、ショッキングな事実を知りました。宮内和之は、2007年に43歳という若さで逝去していたんですね・・・。ひょっとしたら、そのニュースはリアルタイムで聞いていたのかもしれませんが、あらためて非常に残念に感じます。今は、国岡真由美が、名義を小文字のiceに変えて、ライブを中心に活動を続けているようです。

そんな訳で、久しぶりに聴いたICEの楽曲。特に「MOON CHILD」「BABY MAYBE」「GET DOWN,GET DOWN,GET DOWN」あたりは当時メディアでも頻繁に流れていた記憶があり、あらためて懐かしさを感じました。そして彼女たちのシングルを聴いて感じるのは、非常に幅広いジャンルの音楽を取り入れつつ、スタイリッシュにまとめあげ、なおかつポップに聴かせる手法の見事さでした。基本的にソウルやAOR、ラウンジなどの要素を強く感じさせつつ、エレクトロやファンク、レゲエやダブなどの要素を幅広く取り入れています。

一方、ブラックミュージックを軸に都会的なポップにまとめあげるという方向性は、当時流行った「渋谷系」の王道とも言えるスタイル。特に、そんな渋谷系の代表格とも言えるピチカート・ファイブからの影響は顕著で、「CAN'T STOP THE MUSIC」「Sunshine Woman」あたりは完全にピチカートフォロワーなサウンドになっています。かなり流行に寄り添ったサウンドでもあったため、今聴くと、少々時代を感じてしまいますし、渋谷系とカテゴライズされつつヒットを飛ばしたフリッパーズ・ギターやオリジナル・ラヴ、ピチカート・ファイヴなどを比べると、ICEとしての個性がそれだけ出せていたのか、と言われると若干の物足りなさも感じてしまいます。

もっとも、そんな中でICEらしさという点では、宮内和之がギタリストという特性からか、前述のグループと比べるとロックテイストを聴かせる曲も目立つという点でしょう。「LIFE(STANDIN' ON THIS WORLD)」などはまさにロックやファンクテイストの強い、彼女たちらしいナンバーと言えるでしょうし、「OUT OF MY HEART」のグルーヴィーなサウンドもカッコよさを感じます。ただ残念ながら、シングルということでもっと「渋谷系らしい」音を求められたのでしょうか、ロック的な曲はあまり多くなく、ICEの特性がもうちょっと生かせられたら、もっとおもしろくなったと思うのですが・・・。

そんな気になる点はありつつも、トータルで言えば非常にカッコよさを感じたシングルコレクションで、遅ればせながらICEの魅力を堪能できたシングルコレクションになっていました。それだけに、宮内和之のあまりにも早い逝去が残念に感じるのですが・・・。リアルタイムにICEを聴いて懐かしさを感じる方はもちろん、今の若い世代にもチェックしてほしい作品でした。

評価:★★★★★

そして、このシングルコレクションと同時に、彼女たちのインディーズ時代の曲を集めた「初期ベスト」もリリースされました。

Title:ICE Early Years[1990-1992]
Musician:ICE

タイトル通り、1993年のメジャーデビュー前の楽曲を集めた作品。この時期は、あくまでも宮内和之のプロジェクトだったようで、まだ国岡真由美もボーカルとして正式参加していなかったようです。実際、アルバムがはじまるといきなり男性ボーカルの曲からスタート。おそらくICEのイメージからするとビックリしてしまう方も少なくないでしょう。

また、前半は宮内和之自らボーカルを取る曲が続くのですが、メジャーデビュー後の曲に比べると、ロックやファンクの要素が強いのも大きな特徴でしょう。冒頭の「GROOVER」などは、まさにホーンセッションも入ってファンキーな作品になっていますし、「INTO MY BRAIN」もヘヴィーなギターサウンドを押し出した、ロックな曲になっています。

ただ後半、国岡真由美がボーカリストとして参加してくるあたりから、徐々にソウルテイストのメロウな作風に変化。特に「Make Me Your Baby」は、その後のICEの楽曲そのものの作風に仕上がっており、まさに初期のロック、ファンク路線から、その後のICEのソウル、ラウンジ路線への変化がよくわかる作品になっていました。

全体的には粗削りな部分が大きく、ファンズアイテム的な部分も大きいのですが、一方でICEの魅力もしっかり感じられる1枚。彼女たちの歩みを知るにもピッタリの作品。上記シングルコレクションでICEを気に入った方は次の1枚でおすすめの作品です。

評価:★★★★

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2023年7月 2日 (日)

ファン投票の結果に基づいて収録・・・ですが・・・

Title:MISIA THE GREAT HOPE BEST
Musician:MISIA

MISIAデビュー25周年を記念したオールタイムベスト。ちょうど10年前の2013年に、15周年記念のオールタイムベストをリリースしていますので、ちょうど10年ぶりのオールタイムベストアルバムとなります。たった10年のインターバルでオールタイムベスト再び・・・という印象もあるのですが、彼女の場合、この10年間でオリジナルアルバム4枚、カバーアルバム1枚、ジャズアルバム1枚、CDシングル7枚、配信限定シングル12曲をリリースと、この10年でも積極的な活動を続けていましたので、ベスト盤のリリーススパンが10年というのは、さほど違和感はありません。

ただ今回、選曲に関してはファン投票を実施し、その結果に基づいて、ということになっていますが、少なくともWebで調べた限りにおいては、その結果は発表されていません。一方、収録曲に関しては前回のオールタイムベストリリース後の10年間の曲が多く、そこらへんは政治的(?)判断が加味されたんだろうなぁ、ということを漠然と感じてしまいます。ここ10年でも「アイノカタチ」のようなヒット曲もあるんで、極端に初期楽曲に偏ることはないんだろうなぁ、とは思うのですが、ただ、おそらくファン投票の結果を上位から並べると、15周年ベストとかなりの部分、被ってしまうんでしょうね。実際、ファン投票の結果を反映させた、という選曲については、初期の曲がやはり多いように感じてしまいますし。

実際、初期のMISIAというと、「つつみ込むように…」が話題になったころは、いわゆるクラブ系の色合いが強いシンガーというイメージがありました。それに比べて最近の曲に関しては、一般的なJ-POP色が強くなってきたような印象を受けます。それこそ「アイノカタチ」や「好いとっと」なんか作曲がGReeeeNですし・・・って、最初期の彼女の印象からすると、一番遠い立ち位置のミュージシャンだよな・・・。

その結果、と言ってしまっていいかは微妙ですが、正直、最近の曲も含めて、ベスト盤全体的に「大味」という印象を受けてしまいました。良くも悪くもMISIAのパブリックイメージに沿ったような、パワフルに歌い上げるミディアムテンポの曲が中心。アレンジもストリングスやピアノを取り入れたスケール感あるものがメイン。決して悪くはないのですが、ちょっとベタすぎないか?というのは率直な感想として持ってしまいました。

オリジナルアルバムとしての直近作「HELLO LOVE」でも同じようなことを感じてしまいましたし、ここ最近のMISIAの方向性としてちょっと心配です。申し訳ないのですが、ここらへん、「売れ線」方向に簡単にシフトしてしまうあたりが、自分が作曲やプロデュースを手掛けていないミュージシャンの限界なのかも、とすら感じてしまいました。もうちょっと新しい方向性にも挑戦してほしいところなのですが。

評価:★★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE
MISIA SOUL JAZZ SESSION
Life is going on and on
MISIA SOUL JAZZ BEST
So Special Christmas
HELLO LOVE

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2023年7月 1日 (土)

エンタテイメント性の強いステージ

水曜日のカンパネラ ワンマンライブツアー2023~RABBIT STAR★TOUR~

会場 ダイアモンドホール 日時 2023年6月16日(金)19:00~

詩羽にボーカルが代わって、さらに人気が再燃した感のある水曜日のカンパネラ。今回、詩羽ボーカルではじめて、ライブに足を運びました。水曜日のカンパネラのライブは、2017年にコムアイのライブを見てから2度目(もう6年前!)。場所はおなじダイアモンドホール。そのダイホで今回目立ったのは、会場後半はファミリー席となっていて、親子連れが多く来場していたという点。子供が多いという、ライブハウスのライブでは非常に珍しい客層になっていました。

19時10分頃にライブはスタート。ライブがスタートすると、後ろからいきなり声が響き、会場の後ろから詩羽が登場!「ティンカーベル」を歌いながら、客席の中を練り歩きます。私の近くも通って、至近距離に詩羽が!!これはスタートからいきなり大興奮です。

Suikan1

その後は「アリス」「バッキンガム」と続き、最初のMC。MCでは名古屋ネタで「名古屋の人は厳しいと聴いていたけど、すごい盛り上がりでうれしい!」という話。そしてここでコムアイ時代のナンバー「ディアブロ」に!途中、みんなに「いいね!」のポーズをさせて、まずは会場全体を盛り上げていました。

さらに「シャドウ」「卑弥呼」と続いて、再び詩羽が客席に降りてきたかと思えば、客席中央に脚立が設置され、その上に乗って「モヤイ」を歌い始めます。再び至近距離への登場に、会場の、特に後ろの方の人たちは大興奮です。

Suikan2

さらにその後のMCでサークルモッシュについての説明をしたかと思えば、続く「鍋奉行」では会場全体でサークルモッシュ!とはいえ、詩羽の周りをみんなでぐるぐる「歩く」程度の穏やかなサークルモッシュだったのですが、やはり会場は興奮のるつぼと化していました。

その後は再びステージに戻り「赤ずきん」。狼も登場して一緒に踊ります。

Suikan3

続いての「一寸法師」では観客席から「ヤング」「子供」「ギャル」「おじさん」の4人を募り、ファンをステージ上にあげて一緒に踊るというパフォーマンス。「金剛力士像」では、金剛力士をイメージした(??)2人の女性ダンサーと一緒に踊ります。

Suikan5

そしてコムアイ時代の代表曲「桃太郎」。この曲では、詩羽が大きな風船の中に入り、客席にダイブというパフォーマンス!これはコムアイ時代でもやっていたな・・・。

Suikan4

その後のMCでは自分のファッション(刈り上げた髪や口のピアス)から、自分の好きなものと人の好きなものを大切にして、という話。さらに残り3曲でアンコールはなしという宣言の下、一気にラストスパートとなりました。ラストは「七福神」、そして詩羽時代の大ヒット曲「エジソン」と続いて会場が最高のテンションとなった後、「招き猫」へ。最後には巨大な招き猫も登場しました。

Suikan6

さすがにあれだけMCでアンコールなしと言っていただけに、会場からはアンコールは起きず終了。全2時間弱のステージでした。コムアイ時代と同様、演奏はカラオケで、途中、ダンサーなどの登場はあったものの、基本的に詩羽1人のみでのパフォーマンス。ここらへんはコムアイの時と同じでした。

ただ一方、序盤からの盛り上がりがすごかった!コムアイ時代は歌とダンスのみのステージだったのですが、詩羽は最初から観客席の中から登場したり、観客にアクションを求めたり、会場の盛り上げ方という意味では以前よりエンタテイメント性を増して、非常に楽しいパフォーマンスを見せてくれていました。

ほぼ1人のみのステージであれだけ会場を沸かせられるというのは、曲自身の力も大きいのですが、なにげにパフォーマーとしての詩羽の実力も感じるステージだったと思います。今回「ディアブロ」「桃太郎」というコムアイ時代の2曲も披露してくれましたが、こちらについても違和感はほとんどなく、むしろ詩羽なりの色もしっかり出していて、しっかり自分の曲にしていたようにすら感じられました。

本当に楽しいステージで、今年のベストステージ候補だったと思います。水曜日のカンパネラの魅力をあらためて実感したパフォーマンス。彼女たちの勢いはまだまだ続きそうです!

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