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2023年6月20日 (火)

沖縄音楽の奥深さを感じる力作

Title:沖縄の音楽 記憶と記録 コンプリートCD BOX

沖縄本土復帰50周年を記念し、プロデューサーの立川直樹と、島唄研究家の小浜司により選曲・監修が行われた、沖縄の音楽史を今日の観点でまとめあげた5枚組のコンピレーションアルバム。全92曲という沖縄の音楽が収録されており、沖縄音楽を俯瞰できる決定版とも言うべきボックス盤となっています。

ただ、発売元が「よしもとミュージック」。あの吉本興業の系列のレコード会社。まあ、正直なところ、あまり沖縄音楽のようなワールドミュージックに造詣の深いレコード会社とは思えず、どうなんだろうなぁ・・・と思っていたのですが、ただ実際に聴くと、その充実ぶりに驚かされました。

とにかく沖縄の音楽について片っ端から収録。おそらく、沖縄の音楽といわれて一般的に最も知名度があると思われる喜納昌吉&チャンプルーズ「ハイサイおじさん」はもちろん収録。そのほか、知名定男やりんけんバンド、ネーネーズといった本土でも知名度の高いミュージシャンはもちろんのこと、OKIとのユニットで本サイトでも紹介したことのある大城美佐子やソウルフラワーとのコラボでも知られる登川誠仁などなど、沖縄音楽を代表するミュージシャンたちがズラリと名前をそろえています。

また、「記録」という意味でも、貴重な音源も収録。大正5年にSPレコードで録音された富原盛勇「今帰仁宮古ノ子」や、琉球民謡の祖とも呼ばれ、沖縄音楽を取り上げた最初のインディーレーベル、マルフクレコードの設立者としても知られる普久原朝喜の音源も、「懐かしき故郷」(普久原京子との共演)や「ナークニー~ハンタ原」(普久原鉄子との共演)を聴くことが出来ます。

さらにこのボックス盤の素晴らしいところは、収録されている楽曲が沖縄民謡に留まらない点。日出克「ミルクムナリ」やコンディション・グリーン「Confusion」、紫「DOUBLE DEALING WOMAN」は完全にロックですし、与世山澄子「サマータイム」、安富祖貴子「WORK SONG」はジャズ。佐渡山豊の「ドゥーチュイムニー」はフォークソング。ただ1番は沖縄方言で歌われており、非常に強いインパクトがあります。

また、沖縄民謡と言ってもバラエティー豊富。三線で哀愁感たっぷり聴かせる曲があるかと思えば、太鼓も入って軽快なダンスミュージックにもなったり、曲によってはロック風、ポップス寄りなど多種多様。照屋林助の「職業口説」のような、コミカルなトークが入った、ノベルティー色の強い曲もあります(ただ、沖縄方言全開のため、何を言っているのか全くわかりません・・・)。

若干残念だったのは、THE BOOMの「島唄」をはじめ、KiroroやCocco、MONGOL800など、沖縄の色合いを強く感じるJ-POP系のミュージシャンの曲は未収録だった点。権利の関係か、それともコンセプトから若干はずれてしまうからか・・・宮沢和史なんて、今、よしもとミュージック所属なのだから、THE BOOMの曲はむしろ収録しやすいようにも思うのですが・・・。

そのバラエティー豊富な楽曲の連続で、沖縄音楽の幅広さと奥深さを知ることが出来る作品。沖縄民謡の魅力にもあらためて触れることが出来、いままで以上に、一気に沖縄の音楽に興味を抱いた魅力的なボックス盤となっていました。次から次へと魅力的な曲が繰り広げられるだけに、思わずうなってしまう充実した内容に。沖縄の音楽のすばらしさに圧巻された作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

AIRPORT/藤原さくら

オリジナルアルバムとしては約2年7ヶ月ぶりとなる藤原さくらのニューアルバム。藤原さくらというと、ロックやフォーク、ブルースなどの影響が強いミュージシャンでしたが、今回の作品は特に前半に関しては、R&BやHIP HOP、ネオソウルの影響を強く感じる作品となっており、あらたな方向性を感じさせます。一方、後半は彼女らしさを感じるフォーク系の曲に。ただ、全体的にエレクトロサウンドがメインだった前半と、オーガニックなサウンドがメインとなる後半がチグハグといった印象が。新たな挑戦とみることも出来るのですが、「Soup」以降、人気が下降線をたどる彼女に、少しでも売れそうな方向性をやらせようとする上からの意図とも解釈できたり、できなかったり・・・。

評価:★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green
red
SUPERMARKET

世界が違って見える日/中島みゆき

オリジナルアルバムとしての前作「CONTRALTO」が2020年1月というコロナ直前でのリリースでしたので、コロナ禍後は初となる中島みゆきのオリジナルアルバム・・・のタイトルがこれなので、コロナに絡んで、と思ったのですが、内容的にはいつものみゆき節といった感じ。「乱世」「体温」あたりにコロナを読み取れないことはない、といった程度で、ある意味、ぶれない世界観をしっかりと聴かせてくれます。中島みゆきといえば、2020年のツアーを最後に、コンサートツアーからの引退を表明していますが、アルバムはこの通りコンスタントにリリースしていくようで、うれしい限り。ちなみに「体温」では音楽活動からの引退を表明している吉田拓郎がギター・コーラスで参加。こういう形での活動は続けるんですね。いや、もちろん元気な姿を見れるのはうれしい限りなので、むしろ積極的に活動を続けてほしいのですが。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-
CONTRALTO
ここにいるよ
中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」

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