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2023年6月23日 (金)

もっと売れてもいいバンドだと思うのですが。

Title:HAKKOH
Musician:SAKANAMON

メディアなどではあまり高い評価を受けておらず、売上も芳しくないけど、個人的にはもっと評価されてもいいと思っているミュージシャンは何組かいます。Fishmansやサカナクションと並べて「魚系」なんて呼ばれ方もしているとか、していないとか。かつてはメジャーデビューしていたものの、現在ではインディーズに場所を移して活動を続ける彼ら。そのため、以前にも増して情報が入ってこなくなってしまいました・・・。そんな中、先日、人気アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場する結束バンドの新曲「光の中へ」が、SAKANAMONの藤森元生が出がけていることから、久しぶりにSAKANAMONについて検索をかけたら・・・いつの間にかアルバムをリリースしているじゃありませんか!そんな訳で、遅ればせながら最新アルバム「HAKKOH」をチェックしてみました。

全体的には軽快なオルタナ系ギターロックを聴かせてくれる彼ら。本作もイントロ的なオープニングナンバー「発光」を挟んで2曲目「MAD BALLER」はストリングスで音を増しつつ、疾走感あるギターロックを聴かせてくれる作品。続く「JUNK IN MY HEAD」はリズミカルなギターロックながらもメランコリックなメロも印象に残る作品になっています。まあ、ただここらへんは、良くありがちなインディー系ギターロックバンド、といったイメージでしょうか。

ただ、このアルバムでSAKANAMONの真骨頂とも言えるのがリーガルリリーのたかはしほのかをゲストに迎えた「1988」からの展開でしょう。この曲はポストロック的な作品にまとめあげており、序盤の作風とはグッと雰囲気が異なります。かと思えば続く「ディスタンス」はアコギでフォーキーに聴かせる楽曲となり、また雰囲気は一転。郷愁感あふれる歌詞も印象的で、SAKANAMONの違う魅力も感じさせる作品になっています。

さらにユニークなのは、その次にNHK「みんなのうた」でおなじみの童謡「南の島のハメハメハ大王」が入っている点。最初、「え?あの曲?まさか・・・」と思っていたのですが、その「まさか」でした。ちなみに本作は昨年8月から9月にかけて行われたみんなのうた61年目の企画「名曲カバー」の第1弾だそうで、みんなのうたのカバー曲は、平井堅の「大きな古時計」以来だそうです。残念ながら「大きな古時計」のようにヒットはしませんでしたが・・・。しかし、思ったよりも自然なギターロックにまとめあげており、原曲の持つコミカルさもSAKANAMONのサウンドにマッチ。彼ららしいカバーに仕上がっていました。

歌詞でユニークといえば、「裏鬼門の羊」で、何の話かと思えば、「桃太郎」でお供についている動物が、犬、猿、鳥であるのは、裏鬼門にあたる動物であるから、という「説」に基づいた話で、本来は裏鬼門のはずの羊が仲間に加わっていないのはなぜか?という話から派生した歌詞。多分、昔、日本に羊がほとんどいなかったからだとは思うのですが、なかなか目のつけどころがユニークな歌詞となっています。

そんな感じで歌詞の面でもサウンドの面でも非常にユニークな彼ら。それだけに、メジャーからインディーに活動が移り、知る人ぞ知る的な感じになってしまったのは大変残念なのですが、間違いなく彼らのバンドとしての実力を感じさせるアルバムになっています。ただ、全体的な出来としては、いままでのSAKANAMONの作品の中では一歩劣ってしまったかな、という感じもするのも事実。メロディーラインのインパクトは薄いですし、社会の中で孤独に生きるような人たちにスポットをあてた歌詞が特徴的だったのですが、その傾向も弱くなってしまっていました。ここらへんのインパクトの弱さがいまひとつブレイクしきれなかった理由のような気もしてしまうのですが。それを差し引いても、もっともっと高く評価されてよいバンドだと思います。これからの活躍に期待したいところです。

評価:★★★★

SAKANAMON 過去の作品
ARIKANASHIKA
あくたもくた
HOT ATE
OTSUMAMIX

・・・


ほかに聴いたアルバム

Bee and The Whales/Galileo Galilei

2010年にメジャーデビュー。メジャーデビューアルバムの表題曲「ハマナスの花」が話題となり(というかレコード会社などからの露骨なプッシュが目立っていた印象も強いのですが)、一躍人気バンドとなった彼ら。ただ2016年に活動を終了してしまいました。ただ、昨年10月に活動再開を発表。そしてリリースされたのがオリジナルアルバムとして約7年4か月ぶりとなる本作です。

Galileo Galileiといえば、アルバム毎に作風を変えてきた点が大きな特徴的。ただ一方、その結果、全体として中途半端に終わってしまったという印象も受けています。そして久々リリースされたアルバムは、エレクトロサウンドとバンドサウンドを融合させて分厚いサウンドを聴かせる、少々ポストロックの方向性も感じさせる作風に。2作目「PORTAL」に近い感じでしょうか。ただAORの要素も強く感じる点は、「Sea and The Darkness」で見せた要素も感じさせます。

全体的にはサウンドの方向性とポップなメロディーラインを程よく融合させており、バランスの良い作品になった印象。よく言えばポップにまとまっている感じですし、まあ、無難な感じとも言えなくもないのですが・・・。今後はバンドとしてコンスタントに活動を続けるのでしょうか。今後はまたアルバム毎に様々な方向性に走りそうな感じもするのですが。

評価:★★★★

Galileo Galilei 過去の作品
パレード
PORTAL
Baby,It's Cold Outside
ALARMS
SEE MORE GLASS
Sea and The Darkness
車輪の軸

果てしないこと/古内東子

2023年にデビュー30周年を迎えた古内東子。昨年はピアニストとの共演アルバム「体温、鼓動」、そしてアルバム「魔法の手」のデラックスエディションリリースと続きましたが、本作はその第3弾となるオリジナルアルバムとなります。ただ、30周年の記念アルバムとはいえ、スタイル的にはいつもの彼女と変わりません。基本的にピアノをベースにメランコリックに聴かせる失恋の歌というスタイル。ある意味、大いなるマンネリといった感じなのですが、卒なくリスナーの壺は抑えられており、いい意味で安心して聴ける作品になっています。ただ、そういう記念すべきオリジナルアルバムなのですが、曲数がたった8曲というのはちょっと寂しく感じる部分も。まあ、厳選した、ということなのでしょうが。

評価:★★★★

古内東子 過去の作品
IN LOVE AGAIN
The Singles Sony Music Years 1993~2002
Purple

透明
夢の続き
and then...~20th anniversary BEST~
Toko Furuuchi with 10 legends
After The Rain
誰より好きなのに~25th anniversary BEST~
体温、鼓動
魔法の手 Deluxe Edition

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