tha BOSS「個人」がより強くあらわれたソロ作
Title:IN THE NAME OF HIPHOP Ⅱ
Musician:tha BOSS
札幌を拠点に活動を続け、多くのHIP HOPリスナーの支持を集めるユニット、THA BLUE HERB。そのMCといえばご存じ、BOSS THE MCですが、彼がtha BOSS名義でソロアルバムをリリースしました。もともと「IN THE NAME OF HIPHOP」というタイトルでソロアルバムをリリースしたのが2015年。そこから、実に約8年ぶりとなるソロアルバム第2弾となります。ま、とはいえTHA BLUE HERBも2019年にリリースしたアルバム「THA BLUE HERB」の前が、2012年の「TOTAL」までさかのぼる訳で、ソロとしてもユニットとしても非常に寡作という点では共通するのです・・・。。
そんなソロアルバムの大きな特徴は、様々なトラックメイカーを用いて、かつ様々なゲストMCを迎えている点。トラックメイカーではDJ WATARAIやSOUL SCREAMのMr.BEATS a.k.a. DJ CELORYなどが参加。THA BLUE HERBといえば、トラックメイカーのO.N.O.の作り出す、エレクトロで非常にタイトなトラックが特徴的なのですが、そんなTHA BLUE HERBのトラックとは異なった雰囲気になっているのが特徴的。全体的にメランコリックで、ジャジーだったりAOR的なトラックが目立つのですが、個性的なO.N.O.のトラックと比べると、あえて言えばHIP HOPの「王道的」とも言えるトラックが多く、そこにtha BOSSのMCが載るのが逆に新鮮味を感じました。
さらにゲストMCとしてSHINGO★西成やYOU THE ROCK★、ZORNという実力派が並んでいるのですが、やはり目を惹くのはMummy-Dが参加している点。THA BLUE HERBとRHYMESTERといえばかつてBEEFを繰り広げていたいました。その後、和解して今に至っているのですが、それでもやはりtha BOSSのソロにMummy-Dが参加するというのは、ちょっとしたニュースでしょう。
とはいえ、ここにtha BOSSの、いつもの特徴的なポエトリーリーディングのように、語るようなラップが載っかかると、しっかり「あ、いつものtha BOSSだ」と完全に彼のアルバムになってしまう点が非常にユニークな部分でしょう。それだけ彼のラップに強い個性があるのは言うまでもありませんが、それだけにTHA BLUE HERBが好きな人にとっては、間違いなくこのソロアルバムも気に入る内容になっていると思います。
ただ、社会派な歌詞が目立ったり、物語性のある歌詞が特徴的だったTHA BLUE HERBに比べると、tha BOSSのアルバムは、彼の自叙伝的な内容や、もしくはHIP HOPや音楽に対する決意を感じさせる曲が目立つ、ある意味、内省的なアルバムに仕上がっていました。冒頭を飾る「HOLD ON」はまさに自己紹介的なリリックとなっていますし、「サウイフモノニワタシハナリタイ」も自叙伝的なリリックが特徴的。「MUSIC IS THE ANSWER」はまさに音楽への思いを語ったリリックで、忌野清志郎から遠藤ミチロウ、OKIのようなミュージシャン、DISC UNIONやCISCO、タワレコのようなレコード・CD屋、さらにはフジロックにライジングのようなフェスまでが登場してきます。
そしてそんな本作を締めくくる「YEARNING」は、まさに内省的な内容からHIP HOPに対する決意を語ったトラックが耳に残る内容。
「無いなら創る 居ないならなる 自分がなる バーチャルなんかじゃなく」
(「YEARNING」より 作詞 tha BOSS)
という、力強いリリックが強く印象に残ります。
そんな訳で、やはりtha BOSSらしさを強く感じられる1枚。tha BOSSらしさはもちろんTHA BLUE HERBとしてのアルバムでも感じられるのですが、よりtha BOSSの「個人」としての側面が強くあわられた作品になっていたと思います。もちろん言うまでもなく文句なしの傑作。HIP HOPリスナーのみならず音楽ファンならチェックしておきたい1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Soar/浜田麻里
ここ最近、再び人気が上昇しつつある浜田麻里の、ベスト盤を挟んでオリジナルアルバムとしては約4年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。女性に年の話をするのは失礼ながらも昨年、還暦を迎えられた今となっても全く衰えをみせないその声量には驚かされます。ただ楽曲的には良くも悪くもいつものスタイルといった感じ。伸びやかな彼女のボーカルは魅力的ですが、目新しさはありません。まあ、ここまでくると、無理にスタイルを変えない方がよいのでしょうが。
評価:★★★★
浜田麻里 過去の作品
Gracia
Light For The Ages -35th Anniversary Best~Fan's Selection-
Yours/The BONEZ
RIZEのJESSEを中心に、Pay money To my painのT$UYO$HI、ZAX、TEARS OF THE REBELのKOKIによる4人組バンド、The BONEZのニューアルバム。基本的にヘヴィーなラウドロック路線はRIZEとかぶる部分もあるのですが、全体的にはより爽快で明るい雰囲気にまとまっている印象があります。Jesseの大麻所持での逮捕後、いつの間にか活動を再開していたのですが、今後はRIZEよりこちらが活動のメインになるのでしょうか?
評価:★★★★
The BONEZ 過去の作品
WOKE
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コメント
お久しぶりです。
HEY-SMITHの猪狩氏のYouTubeチャンネルによるとJESSEは来年からRIZEを再始動させるつもりらしいです。
投稿: ひかりびっと | 2023年6月12日 (月) 17時00分
>ひかりぴっとさん
情報ありがとうございます。もう大麻には手を出さないで、バンドとしての活動を頑張ってほしいものです。
投稿: ゆういち | 2023年8月17日 (木) 23時44分