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2023年6月11日 (日)

ボーカリスト渡辺美里の本領発揮

Title:Face to Face~うたの木~
Musician:渡辺美里

2002年に最初のカバーアルバム「Café mocha 〜うたの木〜」以降、コンスタントにカバーアルバムをリリースし続ける渡辺美里。悪い意味でいかにもベテランボーカリストがよく進んでいく道を歩んで行っている感じがしてしまいます。正直なところ、いままでのカバーアルバムも、確かに「歌の上手さ」は感じられるものの、無難なカバーが多い感じがして、あまり傑作と言えるアルバムに出会えたイメージはありません。

今回のアルバムは「Face to Face」と題され、その名前の通り、顔と顔を突き合わせて録音した内容・・・要するに、デュエットソングを収録したカバーアルバム。世良公則や泉谷しげるといったベテラン勢からNONA REEVESの西寺郷太や怒髪天の増子直純といった中堅ミュージシャン、さらには山口智充や小堺一機といったミュージシャンではないお笑い勢も参加していたり、そしておなじみの大江千里も参加しています。

そんな今回のカバーアルバムだったのですが、いままでの彼女のカバーアルバムの中でもダントツに良かった作品に仕上がっていたように感じ餡巣。なによりもカバーした曲と渡辺美里のボーカルの相性が抜群に良かったように感じます。今回のアルバムは基本的にはオールディーズや歌謡曲がメイン。ジャズのスタンダードナンバー「It Don't Mean A Thing」「L-O-V-E」や、「東京ブギウギ」「ウナ・セラ・ディ東京」のような懐かしの日本のポップス、歌謡曲がメイン。かまやつひろしの「バン・バン・バン」みたいなロック系の曲もありますが、基本的には、いわゆるJ-POPの範疇に入るのは本人もデゥオで参加している大江千里の「manby tomorrow」くらいでした。

一方、渡辺美里のボーカルスタイルというと、良くも悪くも声量のあるボーカルで押し切るような、ある意味パワーヒッタータイプ。ただこのスタイルが、オールディーズや歌謡曲といった曲に非常にマッチしていました。前作であるカバーアルバムだった「うたの木 彼の好きな歌」でも同じような歌謡曲系のカバーは名カバーが多かったですが、今回はそんな彼女のボーカルにマッチした曲が並んでいたアルバムに仕上がっていました。

加えて、彼女のボーカルが、ここ最近に比べて上手くなっていたように感じます。正直、ここ最近の彼女のボーカルは、その声量だけに頼った感のある、平坦なボーカルが目立っていたように思うのですが、このアルバムに関しては、彼女の全盛期のころのボーカルスタイルが戻ったかのような、力強さと感情を兼ね備えたボーカルになっていました。先日リリースされたストリート・スライダーズのトリビュートでもそのボーカリストとしての実力を感じたのですが、このアルバムでも同じく、その実力を感じさせる、ボーカリスト渡辺美里の本領発揮と言えるアルバムになっていたように感じます。

ただ、その渡辺美里のボーカルの力が強すぎて、デゥオ相手が目立たなくなってしまった曲が多かった点が、唯一の弱点といった感じでしょうか。あえて言えば、増子直純や泉谷しげるなどは、渡辺美里とは異なる声色の持ち主といった感じで目立っていた感じでしょうか。また唯一、デゥオが良い効果を発揮していたのは西寺郷太をデゥオ相手に迎えた「ハリウッド・スキャンダル」で、彼の、力を抜いたボーカルが、渡辺美里とは真逆であり、それが曲にも非常にマッチしていたように感じます。

そんな訳で、彼女のいままでのカバーアルバムの中では文句なしの最高傑作だった本作。選曲を含めて、彼女のボーカルの魅力が最高潮に発揮されたアルバムだったと思います。ボーカリスト渡辺美里の実力と魅力を再認識した作品でした。

評価:★★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~

オーディナリー・ライフ
eyes-30th Anniversary Edition-
Lovin'you -30th Anniversary Edition-
ribbon-30th Anniversary Edition-
ID
harvest
tokyo-30th Anniversary Edition-
うたの木 彼が好きな歌


ほかに聴いたアルバム

スキマスイッチ TOUR 2022 "cafe au lait"/スキマスイッチ

スキマスイッチの毎回恒例のライブアルバム。今回は2022年に行われたライブツアー「cafe au lait」の模様を収録したアルバム。コロナ禍からライブも復活しつつあるものの、まだ声出しNGで、完全に元の状況には戻っていないステージ・・・とはいえ、ライブ会場の雰囲気は以前と変わらず。最新アルバム「Hot Milk」「Bitter Coffee」からの曲を中心に、ポップな曲を楽しめるライブアルバムになっています。ちなみに2枚目の後半はMC集も収録。こちらも軽快なトークを楽しむことが出来る内容となっていました。

評価:★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~
スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
スキマスイッチ TOUR 2020-2021 Smoothie
Hot Milk
Bitter Coffee

Naked/ちゃんみな

フィメールラッパーちゃんみなのニューアルバム。ジャンル的にはHIP HOPで、間違いなくトラックはHIP HOPのそれなのですが、全体的に歌モノが多い内容になっており、メランコリックなメロに耳が行く内容に。ただ、アルバムの中で大きなインパクトとなっているのが「RED」で、韓国出身の彼女が日本で経験した差別をストレートにつづった歌詞がかなりの衝撃的な内容になっています。以前より社会派な主張を歌詞に描いてきた彼女ですが、そんな中でも特に強い主張を感じる曲になっていました。

評価:★★★★

ちゃんみな 過去の作品
CHOCOLATE
Never Grow Up
note-book -Me.-
note-book -u.-
ハレンチ

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