まだまだ魅力的な5枚目
Title:Kemekem
Musician:UKANDANZ
今回紹介するUKANDANZは、フランス人ギタリストのダミアン・クルュゼルのバンドに、エチオピア人のボーカリスト、アスナケ・ゲブレイエスが加わり、エチオピアの音楽を取り込んだことで話題となったバンド。2012年にリリースされたデビューアルバム「Yetchalal」は日本でも話題となり、国内盤もリリース。ただ、デビュー時で話題になっても、その後継続的に取り上げられないケースが多いのが日本の音楽シーンの悲しい性。とはいえ、UKANDANZは、それなりに好評だったのか、2ndアルバム、3rdアルバムも国内盤がリリースされています。
ただ、残念ながら国内盤のリリースもここまで。メディアでもほとんど取り上げられなくなった影響で、私も3枚目のアルバムまで追いかけていたのですが、昨年リリースされたらしい、4枚目のアルバムについてはノーチェックでした。というわけで、1枚飛ばして彼らの5枚目となるニューアルバム。久しぶりに彼らのアルバムをチェックしてみました。
もともとバンド名の「UKANDANZ」という名前、英語の「You can dance」に由来するように、デビューアルバムは非常にダンサナブルな作品に仕上がっていました。それに対して2作目は、プログレッシブロックの影響を感じさせる、「音を聴かせる」という路線にシフト。さらに3作目は再びダンスの方向性に回帰と、アルバム毎に方向性を変えるものの、逆に言えば、それだけ様々な音楽性を内在したバンドと言えるかもしれません。
そんな中、今回のアルバムはダンスという原点よりも、より「音を聴かせる」スタイルに再びシフトしているように感じます。1曲目「Ajebeshe lideresh new」はエチオピア音楽らしい、こぶしを利かせた歌が大きな魅力である一方、ホーンセッションも入って分厚く聴かせるサウンドは、ダンサナブルというよりもグルーヴ感を聴かせるサウンドになっています。続く「Alegntaye」も力強いボーカルのバックに聴かせるのは、ノイジーにゆっくり聴かせるダイナミックなバンドサウンドなのですが、こちらもプログレッシブロックの色合いは強く感じます。
中盤のタイトルチューン「Kemekem」も哀愁感ただようエチオピア音楽らしいメロディーラインにダイナミックなバンドサウンドが魅力的。基本的に、このプログレ的でダイナミックなバンドサウンドをバックに、哀愁感のあるメロディーを、こぶしを利かせたボーカルで歌い上げるというスタイルの曲が並びます。グルーヴ感のあるバンドサウンドに圧倒されつつ、メランコリックなメロディーラインにどこか懐かしさも感じる・・・そんなエチオピア音楽と西洋のロックが融合された音楽性は今回も健在でした。
ちなみに唯一、バンド名らしい踊れるナンバーが中盤の「Endihe new fiker」。ホーンセッションも軽快で楽しく、ダンサナブルなリズムが耳を惹きます。これはライブで盛り上がりそう。以前、「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」でのステージを見た事があるのですが、彼ら、また来日してくれないかなぁ。
そんな訳で、1枚スルーしてしまったのですが、UKANDANZの魅力はまだまだ健在ということがわかった1枚。今回はダンサナブルというよりはバンドとしての迫力ある演奏が魅力的な作品になっていました。哀愁感あるメロディーラインには意外と人なつっこさもありますし、ワールドミュージック好きのみならず、ロックリスナーにもおすすめのアルバムです。
評価:★★★★★
UKANDANZ 過去の作品
Yetchalal
AWO
Yeketelale
ほかに聴いたアルバム
AS PALAVRAS, VOL. 1 & 2/Rubel
ブラジルのシンガーソングライター、フーベルによる、約5年ぶりとなるアルバム。アコースティックなサウンド主体で聴かせるブラジル音楽で、メロディーラインもメロウに聴かせる内容。ただ、意外とインパクトあってヒットチャートも狙えそうなポップであか抜けた側面を持った楽曲が特徴的で、そういう意味では幅広いリスナー層にアピールできそうな作品に仕上がっていました。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2023年」カテゴリの記事
- デビュー50周年のオールタイムベスト(2023.09.22)
- ネブワースの地に、再び(2023.09.18)
- バンドとしての「初期衝動」が復活した傑作(2023.09.17)
- メロウなトラックが心地よい(2023.09.16)
コメント