ホーキンスを悼む
Title:But Here We Are
Musician:Foo Fighters
昨年3月、Foo Fightersについて非常にショッキングなニュースが飛び込んできました。ドラムスのテイラー・ホーキンスが50歳という若さで急逝。南米ツアー中の出来事だったらしく、あまりに突然の訃報となってしまいました。そして、そんなショッキングな出来事を経てリリースされた新作。タイトルが「But Here We Are」=「しかし、私たちはここにいます」というタイトルからして、ホーキンスの訃報を経てのバンドのスタンスを感じさせますが、ジャケット写真が白色という点もホーキンスの死を乗り越えて、あらたな一歩を踏み出すというバンドの意思を感じさせます。また、デイヴ・グロールが2022年に亡くした母親についても歌っているそうです。
そんな前提でのアルバムながらも、作品自体は決して「暗い」といった印象を受けるものではありません。むしろ、アルバム全体として一種の爽やかさを感じさせる内容になっており、まずアルバムは先行シングルともなっている「Rescued」からスタート。シャウト気味のボーカルが力強い疾走感あふれるギターロックとなっており、爽快さを感じさせる楽曲。続く「Under You」も同じく軽快でメロディアスなギターロックチューンに仕上げています。
途中「Hearing Voices」や「The Glass」などといったメランコリックな曲を挟みつつ、タイトルチューンとなっている「But Here We Are」もパワフルながらも爽快さを感じさせるダイナミックなナンバーに仕上げており、アルバム全体としては決して悲壮感を覚えるような作風にはなっていません。
そんな中、楽曲の中で耳を惹くのが、まず「Show Me How」。女性ボーカルとのデゥオとなっているメロディアスなナンバーなのですが、このデゥオの相手はデイヴ・グロールの娘、ヴァイオレット・グロールだそうで、この親子デゥオもアルバムの中の聴きどころの一つとなっています。
また後半のハイライトとも言うべきがラスト前の「The Teacher」でしょう。全10曲にも及ぶ同曲は、最初は疾走感あるギターロックからスタートするのですが、中盤、分厚いノイジーなサウンドをバックにメロディアスに聴かせつつ、後半はメランコリックにゆっくり聴かせる展開と、同じ曲の中でも雰囲気が変わっていくというユニークな構成。さらに歌詞でも
You showed me how to breathe,never showed me how to say goodbye
(君は僕に息の仕方を教えてくれた。けれどもサヨナラの言い方は教えてくれなかった)
と、アルバムのテーマとなる、亡くなったホーキンスや母親に捧げる歌詞になっており、胸をうちます。
そんな曲を聴かせつつ、ただアルバム全体としては疾走感ある爽快なギターロックに仕上げている本作。決して難しいことはなく、いい意味でポップで聴きやすい、非常に魅力的な作品に仕上がっていました。ギターロックの王道を行くような作品で、聴いていてロックを聴いたという満足感を覚える作品でした。今年から、ドラムスに新メンバー、ジョシュ・フリーズを迎えて、あらたなメンバーでの一歩を踏み出したFoo Fighters。ホーキンスを悼みつつ、次の一歩に注目していきたいところです。
評価:★★★★★
FOO FIGHTERS 過去の作品
ECHOES,SILENCE,PATIENCE&GRACE
GREATEST HITS
WASTING LIGHT
Saint Cecilia EP
SONIC HIGHWAYS
Concrete and Glod
02050525
00959525
Medicine at Midnight
Hail Satin(The Dee Gees/Foo Fighters)
ほかに聴いたアルバム
Everyone's Crushed/Water From Your Eyes
イギリスはブルックリンを拠点に活動する2人組デゥオ、Water From Your Eyes。アンチポップを標ぼうする彼女たちの作品はエレクトロやサイケ、ノイズなどの要素を取り入れたアバンギャルドな作風が魅力的。ただ一方で、どこかメロディアスな歌が入ってきていたりして、意外とポップに感じられる側面もあったりします。独特なサウンドについつい耳を惹かれてしまう、そんなアルバムでした。
評価:★★★★★
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