斉藤和義らしい作品
Title:PINEAPPLE
Musician:斉藤和義
約2年ぶりとなる斉藤和義のニューアルバム。オリジナルアルバムとしての前作「55 STONES」は、その作成の頃、ある意味ピークを迎えていたコロナ禍の社会情勢がストレートに反映されたアルバムになっていました。それから約2年。コロナ禍もようやく落ち着いてくる中、全13曲1時間超えとなった今回のアルバムは、そのボリューミーな内容な中に斉藤和義らしさが詰まったアルバムになっていました。
まず序盤は、彼らしい社会派な歌詞の曲が並びます。「BUN BUN DAN DAN」はタイトル通り、様々な階層における「分断」をストレートにテーマとしたアイロニックな内容。続く「問わず語りの子守唄」もかなりストレートな社会批判の曲。序盤から、ある意味ちょっとヘヴィーな雰囲気でアルバムはスタートします。
しかし3曲目から雰囲気がガラリと変わり、タイトルチューンの「Pineapple(I'm always on your side)」は藤原さくらをゲストに迎えた、全英語詞のカントリー風の楽曲。「寝ぼけた街に」は軽快なギターロックながらも、切なさを感じさせるメロディーラインが特徴的な、いかにもせっちゃんらしいギターロックになっています。
ノスタルジックさがあふれるブルージーな「君のうしろ姿」もいかにも彼らしさを感じるナンバー。バンドサウンドを分厚く聴かせつつ、切なさを感じる歌を聴かせてくれる「朝焼け」も彼らしいですし、ロックンロール讃歌の「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」も斉藤和義のロック愛のわかる楽曲に仕上がっています。
そしてなんといってもせっちゃんのファンにとってはうれしく感じさせるのが「100年サンシャイン」でしょう。軽快なモータウンビートの明るさを感じさせるこの曲は、彼の名曲「歩いて帰ろう」を彷彿とさせるような楽曲で、聴いていてウキウキ楽しくなってきます。
このようにアルバム全体としては、いかにも斉藤和義らしい曲が並んでおり、そういう意味で目新しさはほとんど感じられません。ただ一方、彼らしさを感じさせるバラエティーのある楽曲で並んでおり、斉藤和義らしいと一言で言っても、あらためて彼が幅広い音楽性を聴かせてくれるミュージシャンであることを認識することが出来ました。
全13曲というボリューム感あるアルバムの中身として、彼の手の内をすべてさらけ出した、とも言える作品。斉藤和義のファンならば、満足感を覚える作品になっていたと思いますし、ファンでなくても彼がどういうミュージシャンなのか、よくわかる1枚になっていたかと思います。彼の実力と魅力をあらためて実感した1枚でした。
評価:★★★★★
斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義
Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020
55 STONES
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2020 "202020" 幻のセットリストで2日間開催!~万事休すも起死回生~ Live at 中野サンプラザホール 2021.4.28
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31
ほかに聴いたアルバム
Sunset Rain/西寺郷太
西寺郷太が、大瀧詠一や大貫妙子、オリジナル・ラヴといった日本の楽曲をカバーしたカバーアルバム。ただ、全体的にメロウでファンキーに仕上げており、自分のフィールドに引きずり込んだ上でのカバーというのがなかなかユニーク。完全に西寺郷太色に染まったカバーになっているのがらしいといえばらしい感じ。また、こういう解釈をできるあたり、彼の深い音楽への知識も垣間見れるカバーアルバムとなっていました。
評価:★★★★
西寺郷太 過去の作品
Funkvision
Balcony/Penthouse
これがデビューアルバムとなる6人組バンド。自称「シティ・ソウル」バンドと名乗っており、「シティポップのキャッチーさとソウルのパワフルさを兼ね備える」という意味で作られた造語だとか。昨年のフジロックに出演したほか、このアルバムもビルボードチャートで12位にランクインするなど、ブレイク直前といった様相になっています。ちなみに結成のきっかけが東大の音楽サークルだそうで、6人中5人が東大生という優等生バンド。残りの一人が女性で青学出身という部分が若干もやるのですが。
楽曲としてAORの要素を多分に入れつつ、ジャジーにまとめあげているポップソング。「優等生バンド」というイメージに戸惑わされているのかもしれませんが、全体的には非常によくまとまっていると感じる反面、まとまりすぎという印象を受けてしまうのが気になるところ。ボーカル担当の女性メンバー、大島真帆は、ドリカムの吉田美和から強い影響を受けたそうですが、まさに歌い方が吉田美和そのまんまで、その点も気になります。良く出来ているのですが、逆に良く出来すぎていて、あまり面白みもない印象も。もうひとつ、殻を打ち破ってほしいのですが。
評価:★★★
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