自由度の高いポップアルバム
Title:添春編
Musician:クラムボン
2015年にメジャーレーベルを離れて活動の場をインディーズに移した3人組ポップバンド、クラムボン。ただ、それ以降は若干、マスに向けた活動は後ろに下がってしまったように思います。特に新作のリリースに関しては、ライブ会場及び委託販売限定という形でのミニアルバムのリリースが続き、2019年にそれらのミニアルバムをまとめた形でのアルバムがストリーミングでリリースされたのみ。一般流通のアルバムは少々ご無沙汰という形になっていました。
そして、ようやくリリースされた一般流通でリリースされたフルアルバムが本作。通常のリリース形態のアルバムとしては2015年の「trilogy」以来、実に約8年ぶりとなるニューアルバムとなりました。
さてクラムボンと言えば、爽快でキュートなポップソングを奏でているかと思えば、特にメジャー後半の作品についていえば、ポストロック的な要素も強く取り入れていた、実験的な方向性も強いバンドでした。それだけにインディーズに移行後は、その実験的な方向性も強くなるかと思いきや・・・ストリーミング限定でリリースされた前作「モメントl.p.」もそうだったのでうが、インディーズに移行した後はむしろポップの傾向が強くなったように感じます。
加えて、今回のニューアルバムにおいては、自由度の高く、かなり肩の力の抜けたポップソングが目立つアルバムになったように感じます。切なさを感じるメロをエレクトロサウンドにのせて歌いあげる「夜見人知れず」から、ムーディーなカバー曲「ウイスキーが、お好きでしょ」からスタートする本作序盤は、非常にメランコリックなイメージの強いスタートとなりました。
しかしここから一転、続く「1,000,000,000,000,000,000,000,000 LOVE」(0の数、合ってるよな・・・)は、アルバムの中で新たなオープニングのような、スケール感あるエレクトロチューンで盛り上がります。しかし、その後は再びインターリュードを挟み、アコースティックな「まさかね」「ソナタ」へと雰囲気がガラッと変わります。そしてそれに続く「Somewhen,Somwhere…」「Utopia」はピアノやストリングスの音色を入れつつも、バンドサウンドも合わせてスケール感を出した爽快なポップチューン。いかにもクラムボンらしい楽曲を聴かせてくれます。
そしてラスト「ピリオドとプレリュード」は再びエレクトロチューンに。こちらも爽快ながらもちょっとメランコリックなメロディーラインが印象的なポップチューンで締めくくっています。
このように、アルバムの中で様々なタイプの曲が並んでいる今回のアルバム。非常に自由度も高く感じますし、また、この自由度はインディーズに移行して、必要以上に「売れる」ことを求められなくなった結果、肩の力が抜けた創作活動の結果、生まれてきた楽曲のように感じます。
アルバムリリースのスパンが開いてしまいましたが、マイペースな活動が出来たからこそ、このようなポップなアルバムが産まれてきたのではないでしょうか。メロのインパクトという面ではちょっと薄めな感じは否めないのですが、ポップなメロからは十分すぎるほどクラムボンの魅力を感じることが出来ます。今後もこのようなマイペースな活動が続くのでしょうが、それゆえに彼らの描く素晴らしいポップソングをこれからも楽しめそうです。
評価:★★★★★
クラムボン 過去の作品
Re-clammbon2
JAPANESE MANNER ep
2010
ワーナーベスト
columbia best
3peace2
LOVER ALBUM 2
triology
モメントl.p.
ほかに聴いたアルバム
Fanfare/Little Glee Monster
メンバー3人が追加され、6人組となった新生Little Glee Monsterによる全6曲入りのEP盤。あらたなスタートを象徴するかのような、全体的に明るく爽快なポップチューンが並ぶ6曲。はじめての6名体制ながらもしっかりとしたコーラスラインを聴かせてくれており、その実力を感じさせる内容に。今後の希望も感じさせるアルバムになっています。
評価:★★★★
Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster
juice
FLAVA
I Feel The Light
BRIGHT NEW WORLD
GRADTI∞N
Journey
Sugar Salt Pepper Green/sumika[camp session]
sumikaのアコースティック編成によるsumika[camp session]名義による初のアルバム。アコースティックアレンジによる5曲と、それらの曲のインスト版5曲の計10曲入りのアルバム。フォーキーな作風でなおかつ爽快さを感じさせるsumikaの作品はアコースティックなアレンジとマッチ。ひょっとしたらバンドアレンジよりこちらのスタイルの方がバンドの楽曲の方向性に合ってないか?とすら感じさせるような作風になっていました。今後もコンスタントにこの形態でのアルバムも期待したいところ。
評価:★★★★
sumika 過去の作品
Familia
Chime
Harmonize e.p
AMUSIC
For.
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