懐かしのユニットの約24年ぶりの新作
Title:Fuse
Musician:Everything But The Girl
アラフォーか、あるいはアラフィフくらいの世代の方にとってみれば、このバンド名だけで「懐かしい!」という感覚になるのではないでしょうか。イギリスの男女2人組ユニット、Everything But The Girl。ネオアコ系のユニットとして日本でも大きな話題となったユニット。彼女たちが活動していた90年代中盤は、いわゆる渋谷系の全盛期で、タワレコやHMVなどの外資系CDショップでは、このタイプの「おしゃれな」洋楽がかなりプッシュされ、売れまくっていた記憶があります。1992年の来日公演では、東京でNHKホール2日+中野サンプラザ公演を実施しており、その当時の人気の高まりを感じさせます。
その後、気が付いたら名前を聴かなくなってしまったので、どうしたんだろう?と思ったのですが、どうも2000年にはユニットが解散したようです。ただ、ちょっとおもしろいのは、メンバーの2人の間には解散前に子供がうまれ、解散後に入籍。今に至っているそうで、解散理由も子供との時間を大切にしたかったからだとか。通常、この手の男女2人組ユニットというと、活動中に結婚するものの、離婚を機にユニットも解散・・・というのがよくありがちなケースなのですが、彼女たちみたいに解散後に結婚というのは、かなりレアケースでは?
そして今回、なんと約24年ぶりとなるニューアルバムをリリースし、大きな話題となっています。ただ、ネオアコ系というイメージを持ってこのアルバムを聴くとちょっとビックリするのではないでしょうか。1曲目「Nothing Left To Lose」はいきなりリズミカルな4つ打ちのエレクトロチューンからスタート。2曲目「Run A Red Light」はメロウなボーカルを聴かせてくれるものの、サウンドはエレクトロ主体。続く「Caution To The Wind」では再び4つ打ちのエレクトロチューンとなります。
もっとも、彼女たちの曲のうちもっともヒットした「Walking Wounded」では既にエレクトロの方向性にシフトにしていましたので、20年以上の月日を経たといっても、基本的には以前の活動の延長線上、と言えるかもしれません。もっとも、中盤では「When You Mess Up」のようなピアノをベースとして、抱擁感ある歌声を聴かせる楽曲があったり、「Time And Time Again」のような、打ち込みのリズムを入れつつも、メロウなボーカルで伸びやかに聴かせる楽曲になったりと、初期のAOR的な要素を取り入れた作風も今回のアルバムで感じることが出来ます。
その後も「Lost」や「Interior Space」など、哀愁感たっぷりに聴かせるナンバーなども顔を覗かせたりして、ここらへんもネオアコ系と言われた頃に好きになった方にとっても納得のいく内容になっているのではないでしょうか。最後は「Karaoke」というタイトルになっているのですが、インスト曲ではなく、幻想的に聴かせるボーカル曲で締めくくられています。
全体的にいままでのETBGの集大成的とも言えますし、またベテランユニットになった彼女たちの余裕も感じられる落ち着いた作風とも言える作品になっていたとも言えるでしょう。どちらにしろ、久々のアルバムなのですがブランクを全く感じさせない(まあ、二人は解散中も「夫婦」でしたのでそういう意味でブランクなどないのでしょうが)傑作に仕上がっていました。ちなみに本作、全英チャートで3位となっており、自己最高位を更新するという驚きの結果になっています。これを機に、また本格的に活動を続けそう。また日本でもETBGの人気が高まりそうです。
評価:★★★★★
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