スモーキーなボーカルが魅力的
Title:Why Does The Earth Give Us People To Love?
Musician:Kara Jackson
シカゴを拠点として活動を続けるシンガーソングライターによるデビューアルバム。SSWとしての活躍と同時に詩人としても活動を続けているようで、2019年には全米青年桂冠詩人という賞にも選ばれているようです。シンガーとしての知名度はこれからといった感じなのですが、このデビューアルバムは様々なメディアでも高い評価を受けているようで、今、最も期待されているシンガーソングライターの一人と言えるでしょう。
さて、そんな彼女のデビューアルバムですが、聴いてみてまず耳を惹くのがその歌声でした。若干23歳という彼女なだけに、どちらかというと「キュート」な歌声をイメージしていたのですが、聴こえてきたのは全く異なるタイプ。比較的トーンは低め。非常に渋みのあるボーカルで感情たっぷりに聴かせてくれます。これがデビューアルバムとは思えないような、ともすれば「老成している」とすら感じさせるスモーキーなボーカル。落ち着きのあるその声で、その歌をしっかりと聴かせてくれています。
そんな彼女の楽曲のスタイルは、基本的にアコースティック主体のシンプルでフォーキーな作風がメイン。「詩人」としての実績もある彼女なだけに、なによりも「歌」を聴かせるスタイルを主軸に置いているように感じます。ただユニークなのは、アコギで静かに聴かせるスタイルから、曲の中に徐々にサウンドが変化してくる点でした。
例えば先行シングルとなった「no fun/party」は最初はアコギのみで静かに聴かせるスタイル。それが中盤にはピアノやストリングスも入り、アコースティックな作風は変わらないものの、徐々にサウンドは分厚くなってきます。一方、最後にはまるで彼女が浜辺で静かに一人でアコギを奏でているような雰囲気で締めくくっています。
それに続く「dickhead blus」も、最初はアコギでしんみりスタートするものの、中盤ではストリングスを入れてきたり、ジャジーなバンドサウンドが入ったり、全体的にフォーキーな雰囲気は変わらないものの、1曲を通じて変化していく作風がユニークに感じます。
その後も「pawnshop」ではどこか幻想な雰囲気を醸し出すサウンドを入れてきたり、「rat」でもアコギのアルペジオから静かにスタートしながら、後半ではストリングスをダイナミックに聴かせたり、タイトルチューンの「why does the earth give us people to love?」でもフォーキーに聴かせる序盤から、終盤はストリングスとピアノで荘厳さを聴かせたりと、バラエティーある展開が非常にユニークに感じました。
もっとも、バラエティーがあるといっても基本的には前にも書いた通り、アコースティックギターやピアノ、ストリングスとアコースティックなギターがメインとなっており、全体的に歌を主軸としたスタイルという点も共通。そういう意味では全体的にオーガニックさを感じさせるスタイルでアルバムとしてのまとまりもしっかりと感じられました。
スモーキーでいい意味で大人の味わいを感じさせるボーカルと、それにピッタリとマッチしたフォーキーでアコースティックな楽曲が非常に魅力的な作品。派手さはないものの、しっかりと心に残るアルバムに仕上がっていました。これから徐々に知名度が高まり、注目も集まりそう。これからが非常に楽しみになるSSWのデビュー作でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
72 Seasons/Metallica
ヘヴィーメタルの大御所的バンド、メタリカの約6年ぶりとなるアルバム。基本的には疾走感あるメタルサウンドをギュンギュン聴かせる、正統派なヘヴィーメタルの作品といった印象。ある意味、大いなるマンネリといった感じもあるのですが、楽曲の安定感は抜群で、いい意味で安心して聴ける作品になっています。前作もそうだったのですが、聴き終わって「メタリカを聴いたなぁ」とファンならずとも満足感を覚える1枚でした。
評価:★★★★
METALLICA 過去の作品
DEATH MAGNETIC
LuLu(LOU REED&METALLICA)
Hardwired…To Self-Destruct
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