シンプルなエレクトロサウンドとウィスパーボイスが魅力
Title:With a Hammer
Musician:Yaeji
今回紹介するのはニューヨーク出身でニューヨークはブルックリンを拠点に活動を続けるDJ、プロデューサーのYaeji(イェジ)のデビューアルバム。韓国系アメリカ人である彼女は、2020年にリリースしたミックステープ「What We Drew 우리가 그려왔던」が大きな話題となり、チャーリーXCXやデュア・リパのリミックスに参加するなど、今、もっとも注目を集めているミュージシャンの一人だそうです。
そんな彼女の楽曲の特徴は非常にシンプルなエレクトロサウンド。ドリーミーにスタートする冒頭の「Submerge FM」も音数を絞ったシンプルなサウンド構成が特徴的ですし、タイトル曲である「With a Hammer」もメタリックなサウンドながらも音数は少な目。その後も、リズミカルなエレクトロビートと共に空間を聴かせるような楽曲が続きます。
そしてもう一つの大きな特徴が、彼女のウィスパー気味のキュートなボーカルでしょう。アルバムを通じて、彼女がそのウィスパー気味のボーカルを聴かせてくれる歌モノとなっているのですが、温度感の低いキュートなボーカルが大きな魅力に。シンプルなエレクトロサウンドともピッタリな相性で、ドリーミーでかわいらしいポップチューンに仕上がっています。さらに彼女のボーカルの特徴として、韓国語を巧みに取り込んできているという点。英語のリズムとも少々異なる韓国語のリズムが非常にユニークで、なおかつちょっとしたエスニックな雰囲気も醸し出しています。
一方、シンプルなエレクトロサウンドながらも、時としていきなり強いビートが入ってくるメリハリある展開も大きな魅力で、特に印象的なのは先行シングルにもなっている「For Granted」。最初は静かなエレクトロサウンドに静かな彼女の歌でスタートするのですが、中盤からいきなりドラムンベースのヘヴィーなリズムにチェンジします。「Michin」も同じく、イントロこそ静かにスタートするのですが、途中からジャングルのヘヴィーなエレクトロビートへと展開。前半が一種の「ため」となって後半で一気に開放される展開は聴いていて爽快さすら感じさせます。
その他にも「Done(Let's Get It)」はR&B風ですし、「1 Thing To Smash」は荘厳な雰囲気の曲になっていますし、全体的にHIP HOP的な作品も目立ちますし、シンプルなエレクトロサウンドで共通項があるものの、意外と多彩な音楽性も垣間見れるバラエティーある内容になっていました。
そのキュートなボーカルの歌モノがメインということもあって、決して小難しい感じはありませんし、今後さらなる注目を集めていきそう。まだ、メインチャートでの上位ランクインはないのですが、次回作以降、一気にブレイクする可能性もあるミュージシャン。先取りしたい方は要チェックの1枚です。
評価:★★★★★
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