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2023年5月 7日 (日)

シューゲイザーとカントリー

Title:Rat Saw God
Musician:Wednesday

アメリカのインディーロックバンド、Wednesdayの5作目となるニューアルバム。今回のアルバムは国内盤もリリースされるようで、日本でも話題となっています。はて、Wednesdayというバンド、どこかでその名前を聴いたような・・・過去にアルバムを聴いていたなぁ・・・と、当サイトの過去ログをあさっていて思い出しました。昨年の洋楽私的ベストアルバムで3位に選んだMJ Lendermanが所属していたバンドだ!ということを。

個人的にそのMJ Lendermanのアルバム「Boat Songs」はシューゲイザー直系のバンドながらも、一方では70年代のロックともつながっているような音楽性が非常にユニークで、個人的にも壺にはまった1枚でした。そのアルバムにはまった時、Wednesdayの楽曲も何曲か視聴してみて、その内容にはまったのですが、今回、あらためて彼女たちのニューアルバムを聴くと、まさに個人的に壺にはまるアルバムになっていました。

ただ、アルバムの冒頭は、シューゲイザーというよりも80年代のインディーロック(…ってシューゲイザーも80年代のインディーロックか)。特にPixiesからの影響を強く感じました。特に1曲目「Hot Rotta Grass Smell」など、ギターの使い方が完全にPixiesのそれですし、続く「Bull Believer」も同じく、アメリカのインディーロックの影響を感じます。

この雰囲気がガラリと変わるのが4曲目「Formula One」で、しんみりとギターで聴かせるフォークロックに。続く「Chosen to Deserve」も、ヘヴィーに鳴り響くギターリフの中、ヘヴィーなサウンドのバックで鳴る、伸びやかなギターサウンドやメロディーラインはむしろカントリー風。序盤の雰囲気とは大きく変わります。

しかしその後「Bath County」「Quarry」は、ダイナミックなギターノイズにシューゲイザーからの影響を感じさせつつ、郷愁感あるメロはどこかフォーキー。ラスト前の「What's So Funny」はギターで静かに聴かせるフォークソングになったかと思えば、ラストを飾る「TV in the Gas Pump」はギターのサイケなノイズが鳴り響く中、ウィスパー気味のボーカルによる歌が非常にキュートでポップな作品。最後の最後で、またここまでの楽曲とは異なるWednesdayの魅力を聴かせてくれています。

シューゲイザーやインディーロックの路線とカントリー、フォークの路線を、時には対比させながら、時には融合させながら、バラエティー富んだ展開で聴かせるアルバム。懐かしく、耳なじみのあるメロやサウンドながらも一方では新しさも感じさせる内容となっており、非常にユニークな傑作となっていました。

MJ Lendermanのアルバムにもかなりはまりましたが、個人的にはそのアルバムに勝るとも劣らない傑作アルバムだったと思います。もちろん、このアルバムも年間ベスト候補の作品でしょう。シューゲイザー、インディーロック好きなら間違いなくはまりそうな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love In Exile/Arooj Aftab,Vijay Iyer&Shahzad Ismaily

以前、当サイトでも紹介したことがあるニューヨーク・ブルックリンで活躍するパキスタン出身の女性シンガーソングライターArooj Aftabと、同じくニューヨークを拠点に活躍するインド系アメリカ人のVijay Iyer、パキスタン系アメリカ人のShahzad Ismailyが組んだユニット。爽やかさを感じるピアノの音色に、トライバルなボーカルが重なるスタイルが特徴的で、Arooj Aftabの清涼感あるボーカルが不思議な空気感を醸し出しています。エレクトロサウンドも時折挟みつつ、シンプルな音数でトライバルで幽玄的な雰囲気を作り出している作品。その世界に聴き入ってしまう1枚でした。

評価:★★★★★

Afrooj Aftab 過去の作品
Vulture Prince

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