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2023年5月23日 (火)

デビュー25年の集大成

Title:イノセント
Musician:スガシカオ

2022年にデビュー25周年を迎えたスガシカオが、そんな記念すべき年の最後を飾るべくリリースしたオリジナルアルバム。また、この25周年に、ファンクザウルスというファンクバンドを結成。初回限定盤のみとなりますが、そのファンクザウルス名義の1st EPも収録されているほか、そのファンクザウルスの曲も(多くはダイジェスト版ですが)本編にも収録されています。

さて、今回のアルバムに関しては、25周年の最後を締めくくるだけあって、非常に集大成的な作品というイメージがあります。特にファンクザウルスとしての作品ではなく、スガシカオ名義となる作品については、彼が持つ様々な音楽性をアルバムの中に集約した、という印象を受けました。

女性目線の歌詞で切なく聴かせる「痛いよ」やエロチックな歌詞のダンスチューン「獣ノニオイ」、ファンキーなリズムからスタートし、サビではギターサウンドを聴かせる「覚 醒」、シンセサウンドで80年代のAOR風の「東京ゼロメートル地帯」、ピアノでしんみり聴かせる泣きメロが印象的な「国道4号線」、さらにラストは軽快なディスコチューン「モンスターディスコ」までミュージシャンスガシカオの様々な側面をしっかりと聴かせる展開となっています。

ただ、曲調は全体的に明るめ。前作「労働なんかしないで 光合成だけで生きたい」で聴かせてくれたようなどす黒いナンバーはあまりなく、全体的にはポップにまとめあげています。というよりも、そんなどす黒い部分は、ファンクザウルスのナンバーで補っているような印象。いや、逆に今回、ファンクザウルスとしての活動があったので、スガシカオの音楽性のうち、ファンクのどす黒い部分はそちらに任せた、というところでしょう。

ちなみにそのファンクザウルスのナンバーが非常にユニーク。昔の彼女へのプレゼントがメルカリで売られていることを歌った「メルカリFUNK」やら昨今の不倫騒動のゴシップネタを揶揄したような「叩けばホコリばっかし」やら、ここらへんのコミカルさというかバカバカしさというと、P-FUNKを彷彿とさせますし、またファンクらしいといった印象も。どの曲も非常にファンキーな楽曲に仕上がっており、サウンド自体はもちろん非常にカッコよく決まっています。

ちょっと残念だったのが、今回のアルバムではそのファンクザウルスのナンバーがダイジェスト版だった、という点。初回盤ではEPでファンクザウルスの曲がフルで聴けるのですが、ただ、アルバム本編の中では中途半端に終わるため、まるでファンクザウルスのEPのCMのような印象すら受けてしまいます。別にするんだったら完全に別にしてほしいし、曲を本編に入れるのならフルバージョンで入れてほしいし、ちょっと中途半端な対応だったようにも思いました。

そういう残念な部分はありつつも、全体的には25周年の集大成としてふさわしい、スガシカオらしい傑作アルバムだったと思います。ファンクザウルスの方も非常にカッコよかったので、これからもコンスタントに続けてほしいなぁ。この集大成をもとに、次はどのような方向に進んでいくのか、スガシカオの活動からはまだまだ目が離せなさそうです!

評価:★★★★★

スガシカオ 過去の作品
ALL LIVE BEST
FUNKAHOLiC
FUNKASTiC
SugarlessII
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-

THE LAST
THE BEST-1997~2011-

フリー・ソウル・スガシカオ
労働なんかしないで 光合成だけで生きたい
SugarlessⅢ


ほかに聴いたアルバム

answer/おいしくるメロンパン

実に7枚目となるおいしくるメロンパンのミニアルバム。前作「cubism」はメランコリックなメロを前に出した作品になっていました。今回のアルバムに関しても前作と同様、メランコリックなメロをしっかり聴かせてくれるのですが、アルバム全体としては分厚いバンドサウンドを聴かせてくれる作品に。特に「マテリアル」ではギターリフを印象的に聴かせつつ、後半にはサイケなサウンドも入れてくるなど、よりそのサウンドを聴かせる構成になっていました。しかし、これでミニアルバムばかりで7枚目。いまだにフルアルバムは未リリース。そろそろフルアルバムを聴きたい感じもするのですが・・・。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
theory
cubism

Marginalia V/高木正勝

兵庫の山村の自宅で、自然の音をそのまま取り込んで作品をつくりあげる、彼のライフワークとも言える作品「Marginalia」シリーズの最新作。商品紹介で「はじめての子育て、再び窓を開けてピアノを奏でた一年の記録。」と記述されていますので、タイトル通り、お子さんが誕生されたのでしょうか?鳥の歌声や川のせせらぎなどを取り入れつつ、ピアノで静かに美しい音色を聴かせるスタイルはいつもと同様。全体的に明るい雰囲気に満ちているのは、やはり子供の誕生というイベントと重なったため?

評価:★★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき
Marginalia
MarginaliaⅡ
MarginaliaⅢ
MarginaliaⅣ

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