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2023年5月

2023年5月31日 (水)

7週連続1位を獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで7週連続の1位です。

Yoasobiidle

今週の1位はYOASOBI「アイドル」が7週連続で獲得。ストリーミング数、YouTube再生回数に加えて、今週はダウンロード数及びカラオケ歌唱回数でも1位を獲得。圧倒的な強さを見せつけての1位獲得となりました。

一方、スピッツ「美しい鰭」はワンランクダウンながらもこちらも3位とベスト3をキープ。ストリーミング数は先週と変わらず2位。ダウンロード数は4位から6位にダウン。一方、YouTube再生回数は21位から19位と若干のアップとなっています。

この2曲に割り込む形で2位にランクインしたのが先週10位にランクインしたINI「FANFARE」。日韓合同事務所のLAPONEエンタテイメント所属の日本人アイドルグループ。CDリリースに合わせて、CD販売数で1位を獲得。ダウンロード数も34位から2位、ラジオオンエア数は5位から1位にアップし、総合順位でベスト3入りとなりました。オリコン週間シングルランキングでは同曲を収録したシングル「DROP That」が初動売上34万5千枚で1位初登場。前作「M」の初動49万5千枚(1位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず5位に22/7「僕は今夜、出て行く」がランクイン。秋元康が手掛ける声優+バーチャルアイドルのグループ。CD販売数2位、その他はすべて圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上6万8千枚で2位初登場。前作「神様だって決められない」の初動5万9千枚(2位)よりアップ。

もう1枚もアニメキャラによるグループですが、結束バンド「光の中へ」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数3位。アルバム人気の割には、といった感もあるのですが、ストリーミング数やYouTube再生回数が圏外のあたり、なかなかファン以外に遡及していっていない感も。ちなみに作詞作曲はSAKANAMONの藤森元生で、SAKANAMONはその実力の割にいまひとつ売れていないバンドなだけにこうやって取り上げられるのはうれしいところ。オリコンでは初動売上2万6千枚で4位初登場。

一方、ロングヒットではVaundy「怪獣の花唄」が5位から4位にアップ。じわりと順位を上げてきています。ストリーミング数3位は先週から変わらず。ダウンロード数も22位から12位、YouTube再生回数も14位から11位にアップ。ただ先週まで12週連続で1位を獲得してきたカラオケ歌唱回数はYOASOBI「アイドル」に譲る形で2位にダウンしています。これで21週連続のベスト10ヒット。

Official髭男dism「Subtitle」も9位から8位にじわりとアップ。YouTube再生回数は15位から16位にダウンしたものの、ストリーミング数は6位から5位にアップしています。こちらは33週連続のベスト10ヒット。また「TATOO」も7位から6位にアップし、今週も2曲同時ランクインとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年5月30日 (火)

いつかは行きたいと思っていたライブ

SEX MACHINEGUNS なーるほど ザ ワイルド 春の祭典25周年スペシャル

会場 RAD HALL 日時 2023年5月19日(金) 19:00~

以前から一度行ってみたい・・・と思っていたSEX MACHINEGUNSのライブ。一番売れていた時期はチケットの確保が非常に困難で、いままで足を運べなかったのですが・・・最初に行きたいと思っていた頃から20年近い歳月を費やし、ようやく足を運ぶことが出来ました。

Machineguns_live

会場は名古屋大須にあるRAD HALL。実は今回、はじめて足を運んだライブハウスだったりします。雑居ビルの地下1階という、ライブハウスとしては典型的な場所に位置するキャパ300の箱。ちょっとユニークなのは、ドリンク代が600円なのですが、チケットが2枚渡され、アルコールなら2枚、ソフトドリンクなら1枚渡す形。要するに、ソフトドリンクなら2杯飲めるという訳で、ある意味、良心的なシステムといった感じでした。

客の入りはほぼほぼ埋まってはいるものの、余裕をもって見られるという感じで、200名程度の入りといった感じでしょうか。帰ってから調べると、一番売れていた頃には市民会館2デイズだったツアーもあったそうなので、その頃に比べると、かなり寂しさを感じてしまいます・・・。

19時10分くらいでメンバーが登場。もちろん会場は大歓声の中のスタートとなるのですが、1曲目はいきなり「みかんのうた」からスタート!さらに「ファミレスボンバー」といきなり代表曲からのスタートに会場のテンションはいきなりマックスに上がっていきます。新型コロナの取り扱いが変わり、ライブ会場での声出しもOKとなったこの日のライブ、思わずテンションをあげて叫んでしまったライブのスタートでした。

その後のMCはまずメンバーのSHINGO☆が中心となったMCで会場を沸かせます。さらに、「サンシャイン」「とうちゃん」から「ONIGUNSOW」と過去からのナンバーの連続。はじめてライブに足を運んだ私にとっては、やはり昔からの曲が聴けるというのはうれしい展開でした。

2度目のMCは、現在はサポートメンバーであるギターのSUSSY。正式メンバーではないはずなのですが、ほとんど扱われ方が正式メンバーと変わらないのですね(笑)。その後は最新アルバム「地獄の暴走列車」から「震え」「The Grave」と続きます。

その後のMCは満を持して(?)、AnchangがメインとなるMC。個人的にどうしてもマシンガンズのイメージというと、初期のイメージが強く残っていたので、大変失礼ながらも、風貌が思ったよりおじさんっぽかったのはちょっとビックリしました。ただ、「犬の生活」に続く「みどりのおばちゃん」では高音部出まくりの迫力満点のメタルなボーカルを聴かせてくれます。現在、もう御年53歳なのですが、その年齢を全く感じさせない、ともすれば「艶のある」とも表現できそうなボーカルで、その点もビックリさせられました。

ここでメンバーは一度ステージ上から去り、ドラムのTHOMASだけ残ります。最後はTHOMASのみのMC。さらにそのMCからドラムソロに続き、しっかりと見せ場でその激しいドラムプレイを聴かせてくれます。その後、再びメンバーが登場し、再び最新アルバムから「燃えろ!!ジャパメタ」、そして逆に懐かしい「愛人28」と続きます。

そしてラストは「語れ、涙」から、これまた懐かしい「桜島」、そして本編ラストは「BURN」で盛り上がり、本編は終了となりました。もちろん盛大なアンコールが起こり、その後は比較的あっさり、まずは1人づつ登場。1人毎にまたメインでMCを取りながら、アンコールのスタートとなりました。

アンコールでは「そこに、あなたが…」でしんみり聴かせつつ、そこから一転、最新アルバム「ポ」では、SHINGO☆のボーカルもあって、彼ららしい非常にユーモラスなナンバー。そしてラストは、ある意味彼らのテーマ曲とも言える「SEX MACHINGUN」で締めくくり。最後は会場全体のノリも最高潮に達し、ちょうど2時間のステージは幕を下ろしました。

以前、彼らが今よりもっと売れていたころ、「マシンガンズのライブはすごいから、一度是非見ておくべき」という評判をよく聞いていました。それだけに一度見てみたいと思っていたものの、その当時はチケットも取れず、今まで一度も彼らのライブは見ることが出来ませんでした。

それから20年近くが経過して、正直、今のマシンガンズはその当時と比べると、淋しい状況になってしまっています。それだけにライブに関してもそこまでは期待せずに足を運んだのですが・・・・・・いや、大変申し訳ありません、かつて「一度は見ておくべき」と言われた理由が、今になっても十分すぎるほど感じられる素晴らしいステージでした!

まずバンドとしての技量が半端ありません!!これでもかというほど押し寄せてくる爆音の嵐。ただ一方で聴いていて決して不快にならず、それぞれの楽器の音がしっかり主張して聴こえてくるのは、それだけのテクニックを持っているということなのでしょう。今となっても全く衰えないどころか、むしろベテランバンドとなってすごみを増した感すらあるそのステージングに驚かされました。

また、マシンガンズの大きな魅力といえば、本格的なメタルのサウンドと、そんなメタルのサウンドに全くマッチしないようなユニークな歌詞。このサウンドと歌詞のギャップが彼らの魅力なのですが、ライブではCD音源以上にメタルのサウンドが本格的かつ迫力があり、歌詞とのギャップが、CD音源以上に際立って聞こえてきます。そのため、マシンガンズの魅力がCD音源以上に増幅されて伝わってきました。

予想外に素晴らしいステージで驚いています。今年のベストライブ候補の1本なのは間違いないでしょう。それだけに、全盛期と比べて、なぜキャパ300程度のライブハウスで見れてしまうのか、というのはちょっと意外な感じ。人気面はともかくとして、そのライブの魅力は全く衰えていないと思うのですが・・・。それだけに「CDは聴かなくなったけど、ライブには足を運ぶ」というファン層がもっともっといてもいいと思うんですけどね。途中のMCで「自分たちは大きい会場の方が映える」といっていて「ダイアモンドホールくらいでやりたい」と言っていたのですが、正直、これだけのライブをやっていたら、ダイホくらい十分埋められるだけの動員があっても不思議ではないと思うのですが・・・かつて足を運んでいたファンはどこに消えたのでしょう?まあただ、活動休止期間とかもあったので、その時に一気に・・・といった感もするのですが・・・。

これは、また是非とも足を運びたい!そう強く感じたステージでした。いまさらながら、久しぶりにSEX MACHINEGUNSにはまってしまいそうな素晴らしいステージでした。

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2023年5月29日 (月)

かつて社会現象になったバンドの自叙伝

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

1990年に当時大流行していたテレビ番組「いかすバンド天国」への出演を機に話題となり、一時期は「たま現象」とも呼ばれる社会現象的な人気を博したバンド、たま。そのメンバーである石川浩司がたまでの活動を綴った自叙伝「『たま』という船に乗っていた」です。この本を元とした漫画がWeb上で連載され、発売されたものを以前紹介しました。もともと、元となる本書は書籍の形でリリースされていたものが一度は絶版。その後、石川浩司のWebサイト上にアップされていたのですが、漫画連載に合わせて掲載を取りやめていたものを、今後は逆に漫画化につられる形で書籍にて再販されたのが同書となります。

その漫画版の方がおもしろかったので、原作の方も今回購入。もちろん、内容の方は漫画版とほぼ一緒です。ただ、石川浩司の書く文章は非常に軽快な文章。口語中心の文章なのですが、ともすればこの手の軽薄体はむしろ読みにくいケースも多いのですが、彼の文書はスラスラと読むことが出来ます。なにげに文書を書く才能も感じてしまいます。

一方で、漫画版と比べてみると、漫画版の方は非常によく出来た内容ということを感じます。特に原作の方は軽快な文体なだけに、様々な出来事が、思ったよりもサラッと書いてしまっていて、場面によっては「え、このくらいで終わり?」と思ってしまい部分は少なくありません。個人的に同書に興味を持ったのは、たまが経験してきた、80年代あたりのアンダーグラウンドシーンや、ブレイク後のバンドブーム最中の音楽シーンなどについて、裏事情も含めて、当事者としての視点を知ることが出来るかな、という興味がありました。

実際、そういう当事者ならではの記述も少なくはなかったのですが、全体的には比較的あっさりとした内容。その点はちょっと残念に感じました。ただ、その原作と比べると漫画版の方は、そこに「絵」が加わることによって、当時の雰囲気がより伝わってくる内容に。ここらへん、漫画化にあたって当時の状況などを取材したのでしょうね。何気に漫画版の方が、原作にしっかり肉付けをされており、この凝った仕事ぶりをあらためて実感できました。

ただとはいえ、石川浩司本人の書く軽快な作風の本作も魅力的。メンバーとしてバンドを楽しく演っていたんだな、ということが伝わってきます。特にたまというと、世間一般では「一発屋」というイメージが強く、特に売れなくなってからは、苦労した・・・とみられがちなのですが、この本を読むと、そんな悲壮感は全く無し。ここらへんはバンドとしてあくまでもマイペースに活動を続けてきたからでしょうし、また、本書でも書いているのですが、最後まで音楽一本でごはんが食える程度には稼いでいたみたいで、そういう意味では、本書でも書いてありますが、売れなくなってからも活動としては全く変わらなかったということを、本書の軽快な文体からも感じ取れます。

そんな訳で、このたまの歩みについて、非常におもしろく読むことができる1冊。たまというバンドを、名前程度、あるいはヒットした「さよなら人類」程度しか知らない人でも、これはこれで楽しめる1冊だったと思います。とても楽しい1冊でしたし、あらためてたまの曲についても聴いてみたくなった1冊でした。

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2023年5月28日 (日)

懐かしのユニットの約24年ぶりの新作

Title:Fuse
Musician:Everything But The Girl

アラフォーか、あるいはアラフィフくらいの世代の方にとってみれば、このバンド名だけで「懐かしい!」という感覚になるのではないでしょうか。イギリスの男女2人組ユニット、Everything But The Girl。ネオアコ系のユニットとして日本でも大きな話題となったユニット。彼女たちが活動していた90年代中盤は、いわゆる渋谷系の全盛期で、タワレコやHMVなどの外資系CDショップでは、このタイプの「おしゃれな」洋楽がかなりプッシュされ、売れまくっていた記憶があります。1992年の来日公演では、東京でNHKホール2日+中野サンプラザ公演を実施しており、その当時の人気の高まりを感じさせます。

その後、気が付いたら名前を聴かなくなってしまったので、どうしたんだろう?と思ったのですが、どうも2000年にはユニットが解散したようです。ただ、ちょっとおもしろいのは、メンバーの2人の間には解散前に子供がうまれ、解散後に入籍。今に至っているそうで、解散理由も子供との時間を大切にしたかったからだとか。通常、この手の男女2人組ユニットというと、活動中に結婚するものの、離婚を機にユニットも解散・・・というのがよくありがちなケースなのですが、彼女たちみたいに解散後に結婚というのは、かなりレアケースでは?

そして今回、なんと約24年ぶりとなるニューアルバムをリリースし、大きな話題となっています。ただ、ネオアコ系というイメージを持ってこのアルバムを聴くとちょっとビックリするのではないでしょうか。1曲目「Nothing Left To Lose」はいきなりリズミカルな4つ打ちのエレクトロチューンからスタート。2曲目「Run A Red Light」はメロウなボーカルを聴かせてくれるものの、サウンドはエレクトロ主体。続く「Caution To The Wind」では再び4つ打ちのエレクトロチューンとなります。

もっとも、彼女たちの曲のうちもっともヒットした「Walking Wounded」では既にエレクトロの方向性にシフトにしていましたので、20年以上の月日を経たといっても、基本的には以前の活動の延長線上、と言えるかもしれません。もっとも、中盤では「When You Mess Up」のようなピアノをベースとして、抱擁感ある歌声を聴かせる楽曲があったり、「Time And Time Again」のような、打ち込みのリズムを入れつつも、メロウなボーカルで伸びやかに聴かせる楽曲になったりと、初期のAOR的な要素を取り入れた作風も今回のアルバムで感じることが出来ます。

その後も「Lost」「Interior Space」など、哀愁感たっぷりに聴かせるナンバーなども顔を覗かせたりして、ここらへんもネオアコ系と言われた頃に好きになった方にとっても納得のいく内容になっているのではないでしょうか。最後は「Karaoke」というタイトルになっているのですが、インスト曲ではなく、幻想的に聴かせるボーカル曲で締めくくられています。

全体的にいままでのETBGの集大成的とも言えますし、またベテランユニットになった彼女たちの余裕も感じられる落ち着いた作風とも言える作品になっていたとも言えるでしょう。どちらにしろ、久々のアルバムなのですがブランクを全く感じさせない(まあ、二人は解散中も「夫婦」でしたのでそういう意味でブランクなどないのでしょうが)傑作に仕上がっていました。ちなみに本作、全英チャートで3位となっており、自己最高位を更新するという驚きの結果になっています。これを機に、また本格的に活動を続けそう。また日本でもETBGの人気が高まりそうです。

評価:★★★★★

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2023年5月27日 (土)

懐かしさを感じる曲調にワクワクさせられるポップス

Title:That! Feels Good!
Musician:Jessie Ware

イギリスはロンドン出身のシンガーソングライターによるニューアルバム。日本では残念ながらさほど知名度が高くないのですが、本国イギリスではデビューアルバム「Devotion」が話題を呼び大ヒット。その後もコンスタントにヒットを続け、本作も全英チャートで3位にランクインするなど、高い人気を誇るシンガーとして、その地位を築いています。

そんな私も彼女のアルバムを聴くのは前作「What's Your Plesure?」以来2作目となります。彼女の音楽の特徴としては、レトロな要素を要所要所に感じつつ、全体としてはポップでいい意味で耳ざわりのいい音楽を楽しませてくれる点。そんな彼女の魅力は今回のアルバムでも文句なく発揮されていました。

特に序盤は軽快なエレクトロチューンが並びます。1曲目はいきなりタイトルチューン「That! Feels Good!」からスタートするのですが、これが80年代を彷彿とさせる軽快でファンキーなディスコチューン。続く「Free Yourself」も完全に80年代を思い起こさせる軽快なエレクトロチューンに。3曲目「Pealrs」も軽快なエレクトロチューンとなっており、心地よいエレクトロチューンを楽しませてくれます。

中盤も同じくダンサナブルな80年代を思いさせる「Beautiful People」「Freak Me Now」と懐かしくもリスナーを楽しませてくれる曲が続きます。最後を締めくくる「These Lips」もメロウさを感じさせるメロディーラインながらもリズミカルでファンキーなビートが楽しい楽曲。最後の最後までリズミカルな曲調を楽しませてくれます。

一方で、メロウに聴かせるナンバーはボーカリストとしての色っぽさも感じさせてくれます。特に「Begin Again」など哀愁感たっぷりのメロディーラインは、日本の歌謡曲にも通じそうな曲調で、日本人の琴線にも触れそう。後半の「Lightning」もメランコリックな曲調をしんみり聴かせるバラードナンバーに仕上がっています。ただ、ミディアムチューンの曲についても80年代的な要素を感じさせてくれ、どこか懐かしさを覚える曲調になっています。

そんな彼女のアルバムなのですが、総じて言ってしまえば、難しいこと抜きにしてワクワク楽しめるアルバムといった感じ。80年代を感じさせる懐かしいナンバーは、耳なじみよく、リズミカルなそのテンポと合わせて、まずは聴いていて直感的に楽しめるアルバムになっていました。前作でも感じたのですが、本作も広いリスナー層が楽しめそうな内容で、もっともっと日本でも知名度があがっていいと思うのですが・・・。ポップス好きなら文句なしに要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

Jessie Ware 過去の作品
What's Your Pleasure?

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2023年5月26日 (金)

テイラー・スウィフトも参加!

Title:First Two Pages of Frankenstein
Musician:The National

アメリカのインディーロックバンドThe National。最近、その名前を聴く機会が増えたような印象を受けます。といっても理由は明確で、メンバーのアーロン・デスナーが、アメリカの国民的SSW、テイラー・スウィフトのアルバムにプロデューサーとして参加したため。また彼は、Bon Iverのジャスティン・ヴァーノンとBig Red Machineというプロジェクトも手掛けており、The National本体以上に積極的な活動が目立ちます。

そんな中リリースされたThe Nationalとして約4年ぶりとなるニューアルバム。アルバムをリリースする毎に、高い評価を得ている彼らですが、今回のアルバムもいつもの彼ららしい、いい意味で安定感のある傑作アルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムで大きな魅力となっているのは、ピアノやギター、あるいはストリングスなどでしんみりと聴かせつつ、一方でダイナミックなバンドサウンドを聴かせる、この対比が非常に耳を惹く作品となっていました。例えば1曲目の「Once Upon A Poolside」はピアノで静かに聴かせる、ある種の荘厳さも感じさせる曲なのですが、続く「Eucalyptus」は分厚いバンドサウンドを聴かせるダイナミックな楽曲に。かと思えば続く「New Order T-Shirt」は打ち込みのリズムを入れつつも、基本的にはアコギで爽快に聴かせるナンバーになっています。

後半も、「Grease In Your Hair」は力強いバンドサウンドをダイナミックに聴かせるメロディアスなナンバーになっているかと思えば、続く「Ice Machines」はアコギのアルペジオをバックにフォーキーにしんみりと聴かせてくれます。

また、メロディーは全体的にメランコリックなメロディーラインの曲が多く、派手さはないものの十分なインパクトもあり、いい意味で広い層にアピールできるポピュラリティーをしっかり併せ持っています。この耳に残るメロディーも彼らの大きな魅力と言えるでしょう。

そして今回も豪華なゲスト陣も魅力的。「Once Upon A Poolside」ではSufjan Stevensが、「This Isn't Helping」「Your Mind Is Not Your Friend」ではPhoebe Bridgesが参加しているほか、なんといっても「The Alcott」ではテイラー・スウィフトが参加!ピアノでゆっくりフォーキーに歌い上げる曲なのですが、テイラー・スウィフトのボーカルもとても魅力的な楽曲となっています。

ただ、今回も魅力的な作品なのですが、売上面では最高位14位と、ここ数作続いていたビルボードチャートのベスト10入りが途切れる結果に。テイラー・スウィフトへのプロデュースの参加など、話題性には欠かないと思っていたのですが・・・そんな売上面では気にかかる結果となっているのですが、アルバムとしては非常に魅力的なのは間違いありません。ポップスが好きなら幅広いお勧めしたい1枚でした。

評価:★★★★★

The National 過去の作品
Sleep Well Beast
I Am Easy To Find

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2023年5月25日 (木)

渦中のジャニーズ系が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はジャニーズ系アイドルグループが1位獲得です。

今週1位はジャニーズ系アイドルグループSnow Man「i DO ME」が獲得。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上106万枚で1位初登場。前作「Snow Labo. S2」の89万1千枚(1位)からアップしています。Hot100でも書いたのですが、ジャニー喜多川の児童虐待問題の渦中にあるジャニーズ事務所。所属アイドルは被害者であり、関係ない・・・という理屈もわかるのですが、ただ一方で、こういう事件があってもCDの売上などに全く影響が出ないのであれば、事務所としてはうやむやにした上で、早々に幕引きを図るインセンティブになりかねません。そういう意味では非常にモヤモヤする結果だと思います。個人的には、どこか1作、ファンがCDを買うことをボイコットする、という抗議行動を起こしたりすれば、事務所側でも本格的に対策を行うと思うのですが。

2位はスピッツ「ひみつスタジオ」が初登場。CD販売数2位、ダウンロード数1位。タイトルがとてもユニークなのですが、それを含めてスピッツらしい感じがします。オリコンでは初動売上7万5千枚で2位初登場。直近作は過去作のリメイク「花鳥風月+」で同作の初動売上1万9千枚からは大きくアップ。オリジナルとしての前作「見っけ」の7万7千枚(2位)からはダウン。ここ最近のCD売上をめぐる動向の中では健闘した感じですが、ただ「美しい鰭」がヒットしている中では、その影響はあまりなかった模様です。

3位はPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE「PSYCHIC FILE Ⅰ」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数54位。名前からもわかる通り、LDH所属の男性ダンスグループによる7曲入りのEP盤。オリコンでは初動売上3万枚で3位初登場。直近のオリジナルアルバム「P.C.F.」の初動3万8千枚(2位)からはダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはワルキューレ「『マクロスΔ』ライブベストアルバム Absolute LIVE!!!!!」。ワルキューレはテレビアニメ「マクロスΔ」に登場する架空のアイドルグループがベースですが、こちらは担当する声優によるライブアルバム。CD販売数6位、ダウンロード数2位。オリコンでは初動売上1万6千枚で5位初登場。直近のオリジナルアルバム「Walküre Reborn!」の初動2万8千枚(3位)からはダウンしています。

5位初登場はONE N' ONLY「Departure」。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ。CD販売数4位。オリコンでは初動売上1万4千枚で6位初登場。前作「ON'O」の初動2千枚(12位)からアップしています。

7位にはロックバンド緑黄色社会「pink blue」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数3位。バンド名が緑と黄だからアルバムタイトルはピンクと青なんですね。赤じゃないんだ。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。前作「Actor」の初動1万5千枚(4位)からダウン。昨年末に紅白に初出場し、一気に知名度を上げた・・・と思ったのですが、残念ながらその効果は限定的だったようです。

9位には元NMB48で現在はSSWとして活動している山本彩のソロアルバム「&」が入ってきています。CD販売数10位、ダウンロード数11位。オリコンでは初動売上9千枚で10位初登場。前作「α」の初動1万8千枚(5位)からダウンしています。

また今週、ベスト10圏外からの返り咲きが1枚。8位にNMB48「NMB13」がランク圏外から一気にベスト10返り咲き。4週ぶりのベスト10復帰となりました。おそらく、通販販売分を加算した影響と思いますが、いつまでこういう商売を続けるんでしょうね。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年5月24日 (水)

1位2位は先週から変わらず

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位2位は先週から変わりませんでした。

Yoasobiidle

今週も1位はYOASOBI「アイドル」が獲得。これで6週連続の1位となりました。ストリーミング数、YouTube再生回数は先週と変わらず1位。カラオケ歌唱回数も先週と変わらず2位。一方、ダウンロード数は1位から2位にダウン。ラジオオンエア数も4位から8位にダウンしています。

そして2位もスピッツ「美しい鰭」が先週と変わらず2位をキープ。こちらはストリーミング数が先週と変わらず2位。ダウンロード数は8位から4位にアップしています。一方、YouTube再生回数は20位から21位と伸び悩んでいます。

さらに3位にはジャニーズ系男性アイドルグループTravis Japan「Moving Pieces」が初登場でランクイン。ダウンロード数で1位を獲得。ストリーミング数20位、ラジオオンエア数50位、YouTube再生回数44位。世界進出を目指しているグループらしく、楽曲的にはジャニーズ系とは異なる英語詞のエレクトロダンスチューンとなっていますが、ジャニー喜多川の児童虐待問題があきらかになった状況では、こういう問題に日本よりはるかに厳しい欧米への進出は事実上、不可能でしょう。もっとも、事務所の問題だけではなく、こういう問題が以前から知られていながらも無視し続けた(無視し続ける)、マスメディアはもちろん、事実上容認し続けた(今も容認している)ファンの罪も非常に重いとは思いますが。

続いて4位以下の初登場曲です。4位初登場は男性アイドルグループMAZZEL「Vivid」がランクイン。CD販売数及びラジオオンエア数1位、ダウンロード数24位、YouTube再生回数18位。SKY-HIが主催する音楽事務所BMSG所属の、BE:FIRSTに続く男性アイドルグループのデビューシングル。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上3万7千枚で1位初登場です。

初登場はもう1曲。韓国発祥のオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2」からデビューしたアイドルグループINI「FANFARE」が10位にランクイン。ダウンロード数34位、ストリーミング数13位、ラジオオンエア数5位、YouTube再生回数17位。

続いてロングヒット曲ですが、まずVaundy「怪獣の花唄」が6位から5位にアップ。カラオケ歌唱回数が12週連続の1位を獲得しているほか、ストリーミング数3位、YouTube再生回数14位は先週から変わらず。ダウンロード数は18位から22位にダウン。これでベスト10ヒットを連続20週に伸ばしています。

またOfficial髭男dism「Subtitle」は今週も9位をキープし、こちらは粘り強くヒットを続けています。ただストリーミング数は5位から6位にダウン。YouTube再生回数も10位から15位にダウンと全体的に下落傾向となっています。これで32週連続のベスト10ヒット。また「TATOO」も先週から変わらず7位をキープ。今週も2曲同時ランクインとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年5月23日 (火)

デビュー25年の集大成

Title:イノセント
Musician:スガシカオ

2022年にデビュー25周年を迎えたスガシカオが、そんな記念すべき年の最後を飾るべくリリースしたオリジナルアルバム。また、この25周年に、ファンクザウルスというファンクバンドを結成。初回限定盤のみとなりますが、そのファンクザウルス名義の1st EPも収録されているほか、そのファンクザウルスの曲も(多くはダイジェスト版ですが)本編にも収録されています。

さて、今回のアルバムに関しては、25周年の最後を締めくくるだけあって、非常に集大成的な作品というイメージがあります。特にファンクザウルスとしての作品ではなく、スガシカオ名義となる作品については、彼が持つ様々な音楽性をアルバムの中に集約した、という印象を受けました。

女性目線の歌詞で切なく聴かせる「痛いよ」やエロチックな歌詞のダンスチューン「獣ノニオイ」、ファンキーなリズムからスタートし、サビではギターサウンドを聴かせる「覚 醒」、シンセサウンドで80年代のAOR風の「東京ゼロメートル地帯」、ピアノでしんみり聴かせる泣きメロが印象的な「国道4号線」、さらにラストは軽快なディスコチューン「モンスターディスコ」までミュージシャンスガシカオの様々な側面をしっかりと聴かせる展開となっています。

ただ、曲調は全体的に明るめ。前作「労働なんかしないで 光合成だけで生きたい」で聴かせてくれたようなどす黒いナンバーはあまりなく、全体的にはポップにまとめあげています。というよりも、そんなどす黒い部分は、ファンクザウルスのナンバーで補っているような印象。いや、逆に今回、ファンクザウルスとしての活動があったので、スガシカオの音楽性のうち、ファンクのどす黒い部分はそちらに任せた、というところでしょう。

ちなみにそのファンクザウルスのナンバーが非常にユニーク。昔の彼女へのプレゼントがメルカリで売られていることを歌った「メルカリFUNK」やら昨今の不倫騒動のゴシップネタを揶揄したような「叩けばホコリばっかし」やら、ここらへんのコミカルさというかバカバカしさというと、P-FUNKを彷彿とさせますし、またファンクらしいといった印象も。どの曲も非常にファンキーな楽曲に仕上がっており、サウンド自体はもちろん非常にカッコよく決まっています。

ちょっと残念だったのが、今回のアルバムではそのファンクザウルスのナンバーがダイジェスト版だった、という点。初回盤ではEPでファンクザウルスの曲がフルで聴けるのですが、ただ、アルバム本編の中では中途半端に終わるため、まるでファンクザウルスのEPのCMのような印象すら受けてしまいます。別にするんだったら完全に別にしてほしいし、曲を本編に入れるのならフルバージョンで入れてほしいし、ちょっと中途半端な対応だったようにも思いました。

そういう残念な部分はありつつも、全体的には25周年の集大成としてふさわしい、スガシカオらしい傑作アルバムだったと思います。ファンクザウルスの方も非常にカッコよかったので、これからもコンスタントに続けてほしいなぁ。この集大成をもとに、次はどのような方向に進んでいくのか、スガシカオの活動からはまだまだ目が離せなさそうです!

評価:★★★★★

スガシカオ 過去の作品
ALL LIVE BEST
FUNKAHOLiC
FUNKASTiC
SugarlessII
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-

THE LAST
THE BEST-1997~2011-

フリー・ソウル・スガシカオ
労働なんかしないで 光合成だけで生きたい
SugarlessⅢ


ほかに聴いたアルバム

answer/おいしくるメロンパン

実に7枚目となるおいしくるメロンパンのミニアルバム。前作「cubism」はメランコリックなメロを前に出した作品になっていました。今回のアルバムに関しても前作と同様、メランコリックなメロをしっかり聴かせてくれるのですが、アルバム全体としては分厚いバンドサウンドを聴かせてくれる作品に。特に「マテリアル」ではギターリフを印象的に聴かせつつ、後半にはサイケなサウンドも入れてくるなど、よりそのサウンドを聴かせる構成になっていました。しかし、これでミニアルバムばかりで7枚目。いまだにフルアルバムは未リリース。そろそろフルアルバムを聴きたい感じもするのですが・・・。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
theory
cubism

Marginalia V/高木正勝

兵庫の山村の自宅で、自然の音をそのまま取り込んで作品をつくりあげる、彼のライフワークとも言える作品「Marginalia」シリーズの最新作。商品紹介で「はじめての子育て、再び窓を開けてピアノを奏でた一年の記録。」と記述されていますので、タイトル通り、お子さんが誕生されたのでしょうか?鳥の歌声や川のせせらぎなどを取り入れつつ、ピアノで静かに美しい音色を聴かせるスタイルはいつもと同様。全体的に明るい雰囲気に満ちているのは、やはり子供の誕生というイベントと重なったため?

評価:★★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき
Marginalia
MarginaliaⅡ
MarginaliaⅢ
MarginaliaⅣ

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2023年5月22日 (月)

「セクシー歌謡」から日本ポップス史を眺める

今回は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介。ちょっと遅ればせながらなのですが、Kindle Unlimitedに入っていたので読んでみました。

「にっぽんセクシー歌謡史」。音楽ライターの馬飼野元宏による作品。日本の、特に高度経済成長期によくリリースされた、いわゆる「お色気歌謡」にスポットをあてて、そのルーツや今に至る展開を検証した1冊となります。いかにも男性の興味を惹きそうな題材の1冊で、イメージ的には昔の「お色気歌謡」の際どいレコードジャケットや歌詞を集めて、世の殿方を喜ばせるような一品・・・というイメージも浮かんできますが、これがそんなイメージからは全く異なった、硬派な内容。今回は電子書籍で読んだものの、紙の本にすると592ページにわたり、この日本の流行歌の中で、性的なイメージを表に押し出したポピュラーソングの歴史をたどる、内容となっていました。

いままでも、あるテーマを切り口として日本のポップス史を語った書籍は何冊か紹介していきました。例えば「コミックソングがJ-POPを作った~軽薄の音楽史」ではノベルティーソングを切り口としてポップス史を語っていますし、「踊る昭和歌謡」では「踊る」という視点からポップス史を描いています。そして本作は、「セクシー歌謡」、要するに性的な要素を売りとした曲を主軸として日本のポップス史を通史的に眺めた1冊ということになります。これがまた著者の馬飼野元宏渾身の仕事となっており、最初は戦前の日本歌謡からスタート。ここでも何度か取り上げた戦前のスター、二村定一を取り上げ、また戦前から戦後にかけて人気を博した、歌う芸者である鶯芸者の活躍を描いています。

その後も戦後の「セクシー歌謡」の変遷について詳しく描写。さらには奥村チヨや山本リンダなどの、特に活躍したシンガーについては、よりスポットをあてて、詳しくその活動について説明しています。「セクシー歌謡」あるいは「お色気歌謡」というと、イメージとしてB級色が強く、日本歌謡曲の「レアグルーヴ」的に取り上げられがちなのですが、本書を読むと、「セクシー歌謡」という路線は、むしろ日本ポップス史においては、本家本流、中心に位置していた流れなのだな、ということを感じます。

ただ一方、そんな日本歌謡曲の中心に位置していたようなセクシー歌謡のほかにも、ヒットの恩恵になんとかあやかろうとしたB級のセクシー歌謡も多く存在したわけで、本書ではそんな曲もしっかりとフォローしています。また後半では、量的には女性ほど多くないものの、男性によるセクシー歌謡にも言及しています。そんな中ではあのつボイノリオも登場していました。

私も昭和の売れなかった歌謡曲については「レアグルーヴ」的に何曲か聴いたことがありました。この際どいセクシー歌謡について、当初聴いた時は「何だ、この曲は?」と思って聴いていたのですが、この本を読んで、はじめてそんなB級セクシー歌謡が、日本ポップス史の中でどのような位置づけになっているのか、はじめて知ることが出来ました。

しかし残念ながら著者の主張に賛同できない部分がありました。それがラスト、セクシー歌謡について、今でも歌手の認知度も高く、たびたび再評価される理由として、これらのセクシー歌謡について「根本には女性に敬意を抱き、時に崇拝するほどの真摯な感情を含有しているから」と語っています。同書の流れの中で少々唐突であり、ラストにむりやりまとめた感も否めないのですが、残念ながらこの著者の意見には同意しかねます。というのも、私が本書を読んで感じたことの一つに、このセクシー歌謡の歴史は、やはりどうしても異性からの願望を本人の意思とは関係なく、無理やり歌い手に反映させたものである(もちろん歌い手が男性の場合も含む)ということを感じたからです。実際、同書の記載の中で、歌手がこのような性的な部分を前面に押し出した曲を歌うのを嫌がった、という表現が散見されます。また、女性SSWでセクシー歌謡を歌った人がほとんどいないという点も、やはり異性のイメージの押し付けだったから、ということを感じさせますし、椎名林檎が、この「セクシー歌謡」的な要素を楽曲に取り込みながら、著者曰く、性的な部分についてはどこか他人事という点も、やはり、セクシー歌謡が歌い手本人にとっては、異性から無理やり押し付けられたもの、という側面が強い証左ではないでしょうか。

逆に私がなぜセクシー歌謡がたびたび再評価されるのかというと、やはりそこは男性(あるいは女性)の本能に起因する部分があるから、ではないかと思います。だからこそ、男女平等が強く謡われ、女性が性的な部分を男性の願望のままに売り出すやり方が認められなくなったとしても、今後もセクシー歌謡は姿を変え生き続けるでしょうし、また過去のセクシー歌謡が(ある意味、現時点におけるポリティカリー・コレクトネスをスルーできるがゆえに)再評価されるのではないでしょうか。

そんな点は気になりつつも、本書全体としては著書の丁寧かつ力の入った仕事ぶりに圧倒されるような出来になっており、セクシー歌謡という観点からの日本ポップス史について興味深く知ることが出来ました。また、同じ日本ポップス史でも、時にはコミックソング、時には踊り、そして時にはセクシー歌謡と様々な切り口で語れる語れるあたり、日本ポップス史の奥深さを感じました。

前述の通り、かなりのボリューム感のある作品。ただ、それだけに情報量も半端ありません。男性がエロ目的で読みだすとがっかりするかもしれませんが(笑)歌謡曲、日本ポップス史に興味がある方なら、間違いなく楽しめる、要チェックの1冊です。

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2023年5月21日 (日)

人気バンドの仲間入り

Title:How Many Dreams?
Musician:DMA'S

オーストラリア・シドニー出身の3人組ギターロックバンド、DMA'S。デビュー作「Hills End」は日本でも大きな話題となりましたが、その理由というのがまんまoasisのフォロワーだったから。同じイギリス連邦の国とはいえ、イギリス本国から遠く離れたオセアニアの地で出てきたoasisそのまんまのバンドは、特にoasisファンも多い、日本の多くのギターロック好きを惹きつけました。

ただ、この手のバンドの常として、2枚目で注目度は大きくダウンし、いつの間にかフェイドアウト・・・というパターンがあります。実際、期待の新人!として日本のメディアで取り上げられつつも、消えていったバンドは数多あります。彼らも正直、2枚目で日本での取り上げられ方も大きくダウンしました。

しかし、イギリスではそういう状況ではなかったようで、なんと3枚目の前作「The Glow」では全英チャート4位とブレイク。さらに本作では最高位3位を記録するなど、人気面で大きな飛躍を遂げ、名実ともに人気バンドの仲間入りをしています。

そのブレイクの大きな要素として、やはり2枚目3枚目と、oasisフォロワーから脱して、徐々にDMA'Sとしての個性を確立してきた点が大きいでしょう。2枚目以降、特にポップス寄りにシフト。ある意味、売れ線路線とも言えなくもないのですが、インパクトあるポップなメロディーラインが彼らの大きな魅力となっています。

今回のアルバムではさらにその路線を突き進んでおり、1曲目のタイトルチューン「How Many Dreams?」では爽やかでリズミカルなエレクトロビートをバックにポップなメロで歌い上げていますし、続く「Olympia」もギターロック路線なのですが、主軸となっているのはあくまでもポップなメロディーラインとなっています。

その後もギターロックを軸としつつ、曲によっては打ち込みを入れたり、「Jai Alai」のようにピアノを取り入れてしんみり聴かせたりと、バリエーションあるポップソングを楽しませてくれます。ただ、良くも悪くも全体的には無難な売れ線ポップといった印象。インパクトもありますし、素直に楽しめるポップチューンなのは間違いないのですが、正直なところ、デビュー当初のようなブリットポップの承継者的な部分は今回のアルバムではさらに希薄に。この点は物足りなさも感じてしまいます。

あえて言えばラストの「De Carle」がグルーヴィーなサウンドを楽しませてくれる楽曲となっており、デビュー当初の彼らの作風が垣間見れるナンバーにはなっています。もちろん、今の路線でDMA'Sとしての個性を確立しているだけに、安易にデビュー当初の路線には戻ってほしくはないのですが・・・もうちょっとグルーヴィーなバンドサウンドも聴いてみたいな、そうも感じてしまった1枚でした。

評価:★★★★

DMA'S 過去の作品
Hills End
FOR NOW
The Glow

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2023年5月20日 (土)

25年目にしてその魅力は健在

Title:地獄の暴走列車
Musician:SEX MACHINEGUNS

約5年ぶり。デビュー25周年を迎えたSEX MACHINEGUNSの、少々久しぶりとなるオリジナルアルバム。ギターボーカルのANCHANGを中心に、メンバーの入れ替わりの激しいバンドでもあるSEX MACHINEGUNSですが、2022年からサポートドラマーだったTHOMASが正式メンバーとして加入。3人組となったSEX MACHINEGUNSの初となるオリジナルアルバムです。

その5年前にリリースされた「IRON SOUL」は、久々にキレッキレなネタがさく裂した傑作アルバムに仕上がっていました。そしてその後5年というインターバルを経た今回のアルバム。「原点回帰」がキーワードとなったそうですが、ただ今回のアルバムもバリバリのヘヴィーメタルのサウンドに、そんなメタルのサウンドとのミスマッチ激しいユーモラスな歌詞が載るという、SEX MACHINEGUNSらしい作品に仕上がっていました。

前半の「燃えろ!!ジャパメタ」「POWER&METAL」は、ある意味、原点回帰ということの決意でしょうか。日本のヘヴィーメタル、いわゆるジャパメタ讃歌な歌詞になっています。「ワクチン」という曲も、いや、ひょっとしたら反ワクチンじゃないだろうな・・・と身構えてしまったのですが、

「何かが起こる前に 接種して
あなたのところへ 向かうから」
(作詞 ANCHANG 「ワクチン」より)

という至ってまともな歌詞の、新型コロナをテーマとした歌詞。先日、5類にシフトし、表面上はコロナ禍が終わった中ではちょっと発表が遅くなってしまった感もあるのですが、彼ららしいユニークで、でもなかなかキュンと来るようなラブソングに仕上がっています。

そして彼ららしいユニークな歌詞を聴かせてくれるのが後半で、「唇な男」はこちら、サザエさんに登場するサブキャラであるアナゴさんに焦点をあえたというユニークな作品。「メタルタックスマン」は、おそらく日本で唯一、消費税の軽減税率をテーマとした、こちらも非常にユーモラスな歌詞になっています。

今回も彼ららしいユニークな歌詞がさく裂した1枚。また、肝心のサウンドは、いつも通りのヘヴィーメタル路線なのですが、「メタルタックスマン」ではラップを取り入れていたり、「The grave」ではレゲエ的なリズムを入れていたりと、若干「なんちゃって」的な部分は否めないものの、バリエーションを持たせようとする方向性は感じさせます。

ただ、歌詞自体のインパクトという意味では前作と比べて若干弱め。取り上げているネタはユニークながらも、「みかんのうた」や前作の「うなぎの王様」みたいに、歌詞の響き自体をユーモラスに聴かせる曲はなかったかな、といった印象もあり、その点はちょっと物足りなさも感じました。

とはいえ、SEX MACHINEGUNSらしいユーモラスは満載の、聴いていて最後まで楽しめる作品だったのは間違いないでしょう。大いなるマンネリ的な部分も否めませんが、マシンガンズとしてその魅力はまだまだ健在、ということを感じさせる1枚でした。

評価:★★★★

SEX MACHINEGUNS 過去の作品
キャメロン
SMG
LOVE GAMES
METAL MONSTER
マシンガンズにしやがれ!!
IRON SOUL


Tradition/OAU

OAU名義のオリジナルアルバムとしては2作目となる、ベスト盤やEPを挟みつつ、フルアルバムとしては約3年7か月ぶりとなる新作。アコースティックでシンプルな作風で、楽曲としては全編フォーキーという内容ながら、曲によってカントリー色が強く、洋楽テイストが強い作品もあれば、和風で郷愁感あふれる曲もあったりと、シンプルなサウンドながらもバラエティー富んだ作風が魅力。決して派手さはないものの、しっかりと心に印象を刻む作品が並んでいました。

評価:★★★★★

OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND) 過去の作品
New Acoustic Tale
夢の跡
FOLLOW THE DREAM
OAU
Re:New Acoustic Life
New Spring Harvest

MOUNTAIN BANANA/ザ・クロマニヨンズ

いつの間にか16枚目になるザ・クロマニヨンズのニューアルバム。シンプルかつ軽快なロックンロールに、意味以上にリズムにのることを重視したような、時としてユーモラスさと、ちょっとしたウィットネスも感じさせる歌詞。曲によっては裏打ちのリズムを入れてきたり、ガレージ風のサウンドにまとめてきたりとバラエティーを持たせつつも、大いなるマンネリというよりも、ヒロト&マーシーのロックが行きつくところにまで行きついた感のあるアルバムといった印象を受けます。安定の傑作。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH
ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020
MUD SHAKES
SIX KICKS ROCK&ROLL

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2023年5月19日 (金)

大ベテランバンドとして格の違いを感じる1枚

Title:異空-IZORA-
Musician:BUCK-TICK

昨年、デビューから35年を迎え、5枚組というボリュームあるベスト盤をリリースしたBUCK-TICK。説明するまでもない話かもしれませんが、BUCK-TICKといえば、ヴィジュアル系の元祖と言われるバンドで、数多くのバンドに影響を与えてきたミュージシャン。この35年の間に、ヴィジュアル系のシーンといえば様々なバンドが誕生し、ヒットを出しては消えていきましたが、そんな中で、いまだにその「元祖」であるBUCK-TICKが、ほぼオリジナルメンバーのまま活動を続けているという点は、まさに驚くべき事実と言えるでしょう。

さらにそんな大ベテランであるにも関わらずオリジナルアルバムも数年に1枚のペースでコンスタントにリリースを続けており、完全に現役のバンドとして活動を続けているのも驚くべき話。そして、そんな中でリリースされた最新アルバムである本作は、あえて言ってしまえば、ヴィジュアル系バンドの元祖として、彼らの影響を受けた数多のヴィジュアル系バンドと比べて格の違いを感じさせるアルバムになっていました。

基本的に彼らの楽曲のスタイルは、現在、一般的に「ヴィジュアル系らしい」と言われそうなスタイルと近似しています。いわば哀愁感たっぷりのメロディーラインを耽美的に聴かせるスタイル。例えば、先のオールタイムベストに収録され、本作でバージョン違いが収録されている「さよならシェルター」などは、まさにメランコリックで耽美的な作風で、「ヴィジュアル系らしい」作品と言っていい内容になっています。

ただし、ともすればこの方向性一本やりになりがちなヴィジュアル系バンドと比べると、彼らの場合、例えば「Campanella 花束を君に」では非常に爽やかで明るいメロを聴かせてくれますし(ただ、暗喩的な歌詞が怪しげな雰囲気を醸し出している点が彼ららしい!)、先行シングルにもなった「無限LOOP-IZORA-」はメロウな作風でAOR的な要素を感じさせます。

ほかにも「THE FALLING DOWN」ではインダストリアル的なエレクトロサウンドを聴かせてくれたかと思えば、「太陽とイカロス」では一転爽やかなニューウェーヴ風の作品となっており、エレクトロサウンドも陽に陰に、巧みに使い分けています。「Boogie Woogie」もタイトル通りの軽快なロックンロール的な要素を入れてきています。いわばヴィジュアル系バンドらしい様式美を取り入れつつも、様式に凝り固まらない多様な音楽性を背景に感じさせる、そんなアルバムに仕上がっていました。

BUCK-TICKはオリジナルアルバムとしては「アトム 未来派 No.9」「No.0」「ABRACADABRA」と充実作が続いており、なにでにデビュー35年目にしてバンドとして脂ののった状態になっているようにすら感じさせます。今回のアルバムもそんな勢いが続いた傑作に仕上がっていました。これだけのベテランの地位になりながらも、これだけの傑作をリリースしてくる点に驚きを感じさせます。いろいろな意味でバンドとして格の違いを見せつけられた1枚でした。

評価:★★★★★

BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
CATALOGUE 1987-2016
No.0
ABRACADABRA


ほかに聴いたアルバム

High Hopes/DOPING PANDA

約1年ぶりとなるDOPING PANDAの新作は5曲入りのミニアルバム。前作「Doping Panda」は、再結成後初となるアルバムで、解散前のようなエレクトロサウンドをバリバリ聴かせるというよりもギターサウンドが前に出た作風となっていますが、今回のアルバムもダンサナブルながらもギターサウンドが押し出されたような作風に。また、全体的にメランコリックなメロも目立ち、ちょっと落ち着いたような印象も受ける作品になっていました。

評価:★★★★

DOPING PANDA 過去の作品
Dopamaniacs
decadance
anthem
THE BEST OF DOPING PANDA
YELLOW FUNK
Doping Panda

Ninth Peel/UNISON SQUARE GARDEN

約2年半ぶりとなるUNISON SQUARE GARDENのニューアルバム。まだまだ勢いにのる彼らの新作は、基本的に爽やかなポップチューンが特徴的。ただ一方で今回のアルバムは、全体的にバンド色、ギターサウンドを前に押し出した作品になっており、ギターロック志向を感じさせるアルバムとなっていました。ロック・・・というほどではないのかもしれませんが、バンドであることを意識したようなアルバム。この方向性が今後楽曲にどのように作用していくのか、注目です。

評価:★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy
MODE MOOD MODE
Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜
Patrick Vegee

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2023年5月18日 (木)

今週もアイドル系が目立つ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsは今週もアイドル系が目立つチャートとなりました。

まず1位初登場はWACK所属の女性アイドルグループGANG PARADE「OUR PARADE」。CD販売数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上2万8千枚で1位初登場。前作「LOVE PARADE」の初動2万枚(2位)よりアップ。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「FML」が先週と同順位をキープ。3位は先週1位を獲得した、同じく韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「UNFORGIVEN」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

ちなみにLE SSERAFIMは本国アメリカのビルボードチャートでも6位を獲得しています。ただ、このグループ、6人中2人は日本人な訳で、逆に言えば日本人だろうとやり方によれば十分、アメリカのエンタメ界でも売れるという証拠な訳で、ネット右翼的な韓国蔑視の姿勢ではなく、純粋に韓国に完全に置いてかれている状況を悔しがって、日本のエンタメ界はもっと奮起してほしいんですが。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に平井大「LOVE+PEACE」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数共に5位。全50曲入りの、初となるベストアルバム。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。直近のオリジナルアルバム「HOPE/WISH」の初動1万4千枚(3位)からダウンしています。

6位には「アニメ ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP アルバム」が獲得。人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」を元としたWebアニメ「ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP」のサントラ盤。CD販売数6位、ダウンロード数1位。「ウマ娘」といえば、2021年のリリース後、話題になったゲームコンテンツですが、コナミから特許権侵害の訴訟が提起されてニュースとなっています。訴訟ではサービス終了まで求められており、今度の動向が気に係るところです。

7位初登場は女性シンガーソングライターiri「PRIVATE」。CD販売数10位、ダウンロード数9位。これがアルバムでは6枚目となる中堅のシンガーですが、メディア等で徐々に話題となり、初のベスト10ヒットを記録しました。オリコンでも初動売上2千枚で10位初登場。前作「neon」の初動1千枚(40位)からアップしています。

初登場最後は9位。韓国の女性アイドルグループaespa「My World」がランクイン。6曲入りのミニアルバムで、韓国盤のためCD売上はカウントされず、ダウンロード数が2位にランクインし、総合順位でベスト10入り。オリコンでは初動売上9千枚で6位にランクイン。前作「Girls:2nd Mini Album」の初動3万2千枚(3位)からはダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年5月17日 (水)

5週連続!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週で見事5週連続の1位となりました。

Yoasobiidle

1位はYOASOBI「アイドル」がこれで5週連続の1位。ストリーミング数、ダウンロード数及びYouTube再生回数も1位を獲得。ラジオオンエア数は4位にダウンしましたが、カラオケ歌唱回数も3位から2位にアップし、最高位を更新しています。

2位も、映画「名探偵コナン」主題歌に起用されてロングヒットの兆しを見せているスピッツ「美しい鰭」が4位から2位にアップ。3週ぶりにベスト3返り咲きです。ダウンロード数は6位から8位にダウン。YouTube再生回数も22位から20位に若干アップしたものの伸び悩む中、ストリーミング数は先週から変わらず2位をキープしています。

3位は初登場。ジャニーズ系アイドルグループ関ジャニ∞「未完成」。CD販売数で1位を獲得、その他はランク圏外でしたが、総合順位でベスト3入り。テレビ朝日系ドラマ「帰ってきたぞよ!コタローは1人暮らし」主題歌。かなり王道路線の青春パンク。南無阿部陀仏という若手のロックバンドが楽曲提供しているようです。オリコン週間シングルランキングでは初動売上20万6千枚で1位初登場。前作「喝采」の15万1千枚からアップ。現在、ジャニー喜多川の性的暴行問題で揺れているジャニーズ系。ただ、この疑惑は依然から語られてきたことで、個人的には、そういう問題を薄々知っていながらスルーしてきたファンにも責任の一端があると思うのですが。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にKnight A - 騎士A -「AllVIN」がランクイン。CD販売数2位、その他はランク圏外で総合順位はこの位置に。動画サイトでの歌唱動画投稿で人気を博した5人組のYouTuberのグループによる1stシングル。オリコンでは初動売上8万1千枚で2位初登場となっています。

10位には韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「UNFORGIVEN」が先週の12位からランクアップし、2週目にしてベスト10初登場。ストリーミング数9位、YouTube再生回数5位。一方、ダウンロード数は32位、ラジオオンエア数18位に留まり、総合順位はこの位置に。先日リリースされたフルアルバムの表題曲で、シックなどの活動でも知られるアメリカのギタリスト、ナイル・ロジャースが参加しています。

続いてはロングヒット曲ですが、まずVaundy「怪獣の花唄」は先週から変わらず6位をキープ。カラオケ歌唱回数は11週連続の1位。ストリーミング数3位、YouTube再生回数14位も先週から変わらず。ダウンロード数は14位から18位に若干のダウン。これで19週連続のベスト10ヒット。まだ根強い人気を感じられ、ロングヒットは続きそうです。

Official髭男dism「Subtitle」も先週から変わらず9位をキープし、土俵際の粘りを見せています。ストリーミング数は先週から変わらず5位をキープ。YouTube再生回数は9位から10位とワンランクダウン。これで31週連続のベスト10ヒット。また「TATOO」が今週、10位から7位にアップ。ここに来て順位が入れ替わりました。これでヒゲダンは今週も2曲同時ランクインです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年5月16日 (火)

スモーキーなボーカルが魅力的

Title:Why Does The Earth Give Us People To Love?
Musician:Kara Jackson

シカゴを拠点として活動を続けるシンガーソングライターによるデビューアルバム。SSWとしての活躍と同時に詩人としても活動を続けているようで、2019年には全米青年桂冠詩人という賞にも選ばれているようです。シンガーとしての知名度はこれからといった感じなのですが、このデビューアルバムは様々なメディアでも高い評価を受けているようで、今、最も期待されているシンガーソングライターの一人と言えるでしょう。

さて、そんな彼女のデビューアルバムですが、聴いてみてまず耳を惹くのがその歌声でした。若干23歳という彼女なだけに、どちらかというと「キュート」な歌声をイメージしていたのですが、聴こえてきたのは全く異なるタイプ。比較的トーンは低め。非常に渋みのあるボーカルで感情たっぷりに聴かせてくれます。これがデビューアルバムとは思えないような、ともすれば「老成している」とすら感じさせるスモーキーなボーカル。落ち着きのあるその声で、その歌をしっかりと聴かせてくれています。

そんな彼女の楽曲のスタイルは、基本的にアコースティック主体のシンプルでフォーキーな作風がメイン。「詩人」としての実績もある彼女なだけに、なによりも「歌」を聴かせるスタイルを主軸に置いているように感じます。ただユニークなのは、アコギで静かに聴かせるスタイルから、曲の中に徐々にサウンドが変化してくる点でした。

例えば先行シングルとなった「no fun/party」は最初はアコギのみで静かに聴かせるスタイル。それが中盤にはピアノやストリングスも入り、アコースティックな作風は変わらないものの、徐々にサウンドは分厚くなってきます。一方、最後にはまるで彼女が浜辺で静かに一人でアコギを奏でているような雰囲気で締めくくっています。

それに続く「dickhead blus」も、最初はアコギでしんみりスタートするものの、中盤ではストリングスを入れてきたり、ジャジーなバンドサウンドが入ったり、全体的にフォーキーな雰囲気は変わらないものの、1曲を通じて変化していく作風がユニークに感じます。

その後も「pawnshop」ではどこか幻想な雰囲気を醸し出すサウンドを入れてきたり、「rat」でもアコギのアルペジオから静かにスタートしながら、後半ではストリングスをダイナミックに聴かせたり、タイトルチューンの「why does the earth give us people to love?」でもフォーキーに聴かせる序盤から、終盤はストリングスとピアノで荘厳さを聴かせたりと、バラエティーある展開が非常にユニークに感じました。

もっとも、バラエティーがあるといっても基本的には前にも書いた通り、アコースティックギターやピアノ、ストリングスとアコースティックなギターがメインとなっており、全体的に歌を主軸としたスタイルという点も共通。そういう意味では全体的にオーガニックさを感じさせるスタイルでアルバムとしてのまとまりもしっかりと感じられました。

スモーキーでいい意味で大人の味わいを感じさせるボーカルと、それにピッタリとマッチしたフォーキーでアコースティックな楽曲が非常に魅力的な作品。派手さはないものの、しっかりと心に残るアルバムに仕上がっていました。これから徐々に知名度が高まり、注目も集まりそう。これからが非常に楽しみになるSSWのデビュー作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

72 Seasons/Metallica

ヘヴィーメタルの大御所的バンド、メタリカの約6年ぶりとなるアルバム。基本的には疾走感あるメタルサウンドをギュンギュン聴かせる、正統派なヘヴィーメタルの作品といった印象。ある意味、大いなるマンネリといった感じもあるのですが、楽曲の安定感は抜群で、いい意味で安心して聴ける作品になっています。前作もそうだったのですが、聴き終わって「メタリカを聴いたなぁ」とファンならずとも満足感を覚える1枚でした。

評価:★★★★

METALLICA 過去の作品
DEATH MAGNETIC
LuLu(LOU REED&METALLICA)
Hardwired…To Self-Destruct

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2023年5月15日 (月)

歌手としての実力のすごさを感じる

Title:アニソンデビュー50周年記念ベスト 絶唱 -Z Show-
Musician:水木一郎

昨年12月、74歳でこの世を去った水木一郎。ご存じ「アニメソング界の帝王」と呼ばれ、アニソン歌手の先駆け的存在として、多くのアニメファンの熱狂的な支持を集めてきました。本作は、そんな彼のアニソンデビュー50周年を記念してリリースされたベスト盤。リリースが1月だったので、おそらくは逝去のニュースとは関係なく進められてきた企画だとは思うのですが・・・この訃報と相まって、チャートでのベスト10入りするヒットを記録しています。

さて、今回、やはりアニソン界の帝王の業績をチェックしておきたいと、このベストアルバムを聴いてみました。ネガティブな方の印象から。彼のアニソンの代表曲が並べられているのですが、「アニソンの帝王」と言われている彼ですが、その知名度の割には、有名なアニソンが少ないな、というのが正直な感想です。「マジンガーZ」が彼の代表曲なのですが、今でもお茶の間レベルで知られている曲というのが、これといってありません。特にDisc1は、似たような特撮モノ、ヒーローモノが並んでいます。ここらへんの特撮モノ、ヒーローモノのアニメ自体の評価が今、どのようなものかはわからないのですが、アニメ自体の地位が今より低かった時代、アニメソングの扱われ方も含めて、雑だったのではないか、という印象を受けてしまいました。

一方、ポジティブな方の印象。一般的に水木一郎って、声を張り上げて歌う「雄たけび」のイメージがあるのですが、めちゃくちゃ歌が上手いですね!特に「ルパン三世 愛のテーマ」「ムーへ飛べ」などの哀愁たっぷりに歌い上げる曲に関しては、声量やピッチもさることながら、表現力も抜群で、日本人歌手の中でも歌が上手いとされる松山千春や玉置浩二あたりと比べて全く遜色ない歌手としての実力を感じさせます。

「雄たけび」系の曲が彼の特徴だったのですが、「雄たけび」系の曲は声量は求められるもの、微妙な表現力はそこまで求められていないような印象があります。これだけの表現力があるのに、「雄たけび」系の曲ばかり求められていたというのは、例えるならば、繊細な料理を作れるプロの和食料理人が、二郎系や家系ラーメンばかりを作らされていたという感じでしょうか・・・。一言でアニメソングといっても様々なバリエーションが出てきた今の時代に彼がデビューしたら、もっとその表現力を生かした素晴らしい曲もたくさん歌えたのでは?ということをふと感じてしまいました。

水木一郎といえばアニソン、アニソンといえば水木一郎・・・なのでベスト盤としてアニソン集になるのは当然なのですが、その一方で、それ以外の曲も含めた水木一郎のベストアルバムも聴いてみたいという印象も受けました。まあ、個人的には、彼の代表曲(???)の「燃えよ!ドラゴンズ」もベスト盤の中に含めてほしいなぁ、という非常に自分の趣味に従った要望があるのですが(笑)。今回のベスト盤で、なにより水木一郎の歌手としての実力のすごさを実感することが出来ました。あらためて、ご冥福をお祈り申し上げます。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

TEENAGE DREAMS/TAKESHI UEDA

現在は主にAA=名義で活動を続けている上田剛士が、初めて本名名義でリリースするカバーアルバム。彼のルーツともいえる洋楽・邦楽曲をカバー。主にスターリン、あぶらだこ、アレルギーなどアングラ系のパンクバンドがメインな中、YMOのカバーも収録されているのがユニーク。どの曲もAA=と同様、エフェクトをかけたボーカルにノイジーなギターサウンドで聴かせるスタイルなのですが、意外とメロディアスにまとめあげているのもAA=と同じ感じ。ただ一方、楽曲としてパンキッシュながらも高揚感が薄く、抑制された感じになっているのがちょっと物足りなさを感じます。この高揚感、THE MAD CAPSULE MARKETSに強く感じつつ、AA=には感じられない点だったので、彼はソロとなってからあえて高揚感を避けているのか・・・。その点がちょっと気に係るカバーアルバムでした。

評価:★★★★

AA= 過去の作品
#1
#2
#
4

#5
(re:Rec)
THE OIO DAY
#6
story of Suite #19
LIVE story of Suite #19 AT LIQUIDROOM 20220226

実家の鍵/neco眠る

実に約6年ぶりとなるneco眠るのニューアルバム。どこかおとぼけたユーモラスのあるアルバムタイトルも印象的ですが、アルバムとしても肩の力が抜けたサウンドを、シンセやエレピを使いつつ表現。そんな電子系の楽器を使いながらも、どこか暖かさを感じさせるサウンドも特徴的。また、今回のアルバムはどこかエキゾチックなつくりとなっており、どこか郷愁感ある懐かしさを感じさせつつ、同時にどこか別世界感の新鮮味も感じさせる、そんな独特の作風のアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

neco眠る 過去の作品
EVEN KICK SOYSAUCE
Boy
Typical

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2023年5月14日 (日)

斉藤和義らしい作品

Title:PINEAPPLE
Musician:斉藤和義

約2年ぶりとなる斉藤和義のニューアルバム。オリジナルアルバムとしての前作「55 STONES」は、その作成の頃、ある意味ピークを迎えていたコロナ禍の社会情勢がストレートに反映されたアルバムになっていました。それから約2年。コロナ禍もようやく落ち着いてくる中、全13曲1時間超えとなった今回のアルバムは、そのボリューミーな内容な中に斉藤和義らしさが詰まったアルバムになっていました。

まず序盤は、彼らしい社会派な歌詞の曲が並びます。「BUN BUN DAN DAN」はタイトル通り、様々な階層における「分断」をストレートにテーマとしたアイロニックな内容。続く「問わず語りの子守唄」もかなりストレートな社会批判の曲。序盤から、ある意味ちょっとヘヴィーな雰囲気でアルバムはスタートします。

しかし3曲目から雰囲気がガラリと変わり、タイトルチューンの「Pineapple(I'm always on your side)」は藤原さくらをゲストに迎えた、全英語詞のカントリー風の楽曲。「寝ぼけた街に」は軽快なギターロックながらも、切なさを感じさせるメロディーラインが特徴的な、いかにもせっちゃんらしいギターロックになっています。

ノスタルジックさがあふれるブルージーな「君のうしろ姿」もいかにも彼らしさを感じるナンバー。バンドサウンドを分厚く聴かせつつ、切なさを感じる歌を聴かせてくれる「朝焼け」も彼らしいですし、ロックンロール讃歌の「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」も斉藤和義のロック愛のわかる楽曲に仕上がっています。

そしてなんといってもせっちゃんのファンにとってはうれしく感じさせるのが「100年サンシャイン」でしょう。軽快なモータウンビートの明るさを感じさせるこの曲は、彼の名曲「歩いて帰ろう」を彷彿とさせるような楽曲で、聴いていてウキウキ楽しくなってきます。

このようにアルバム全体としては、いかにも斉藤和義らしい曲が並んでおり、そういう意味で目新しさはほとんど感じられません。ただ一方、彼らしさを感じさせるバラエティーのある楽曲で並んでおり、斉藤和義らしいと一言で言っても、あらためて彼が幅広い音楽性を聴かせてくれるミュージシャンであることを認識することが出来ました。

全13曲というボリューム感あるアルバムの中身として、彼の手の内をすべてさらけ出した、とも言える作品。斉藤和義のファンならば、満足感を覚える作品になっていたと思いますし、ファンでなくても彼がどういうミュージシャンなのか、よくわかる1枚になっていたかと思います。彼の実力と魅力をあらためて実感した1枚でした。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020
55 STONES
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2020 "202020" 幻のセットリストで2日間開催!~万事休すも起死回生~ Live at 中野サンプラザホール 2021.4.28
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31


ほかに聴いたアルバム

Sunset Rain/西寺郷太

西寺郷太が、大瀧詠一や大貫妙子、オリジナル・ラヴといった日本の楽曲をカバーしたカバーアルバム。ただ、全体的にメロウでファンキーに仕上げており、自分のフィールドに引きずり込んだ上でのカバーというのがなかなかユニーク。完全に西寺郷太色に染まったカバーになっているのがらしいといえばらしい感じ。また、こういう解釈をできるあたり、彼の深い音楽への知識も垣間見れるカバーアルバムとなっていました。

評価:★★★★

西寺郷太 過去の作品
Funkvision

Balcony/Penthouse

これがデビューアルバムとなる6人組バンド。自称「シティ・ソウル」バンドと名乗っており、「シティポップのキャッチーさとソウルのパワフルさを兼ね備える」という意味で作られた造語だとか。昨年のフジロックに出演したほか、このアルバムもビルボードチャートで12位にランクインするなど、ブレイク直前といった様相になっています。ちなみに結成のきっかけが東大の音楽サークルだそうで、6人中5人が東大生という優等生バンド。残りの一人が女性で青学出身という部分が若干もやるのですが。

楽曲としてAORの要素を多分に入れつつ、ジャジーにまとめあげているポップソング。「優等生バンド」というイメージに戸惑わされているのかもしれませんが、全体的には非常によくまとまっていると感じる反面、まとまりすぎという印象を受けてしまうのが気になるところ。ボーカル担当の女性メンバー、大島真帆は、ドリカムの吉田美和から強い影響を受けたそうですが、まさに歌い方が吉田美和そのまんまで、その点も気になります。良く出来ているのですが、逆に良く出来すぎていて、あまり面白みもない印象も。もうひとつ、殻を打ち破ってほしいのですが。

評価:★★★

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2023年5月13日 (土)

狂気を秘めたダンスパフォーマンスが注目を集めるグループ

Title:一時帰国
Musician:新しい学校のリーダーズ

Gakkou

最近、急速に注目を集めている4人組グループ、新しい学校のリーダーズ。セーラー服姿の女性4人組ということで、よくありがちなアイドルグループ・・・かと思いきや、少々狂気を帯びたようなキレッキレの前衛的なダンスパフォーマンスが注目を集めているダンスグループだそうで(ただ、一応、「アイドルグループ」というカテゴライズにも入っているようですが)、私もYouTubeで彼女たちのパフォーマンス動画を視聴し、一気にその魅力にはまりました。

公式YouTubeチャンネルでPVも配信されていますが、どちらかというとライブ動画の方が彼女たちがどんなグループか、わかるようなに思います。

本作は、そんな彼女たちの配信限定でのEP盤。メインの曲となっている「オトナブルー」はビルボードチャートでもベスト10入り。本作も同じくビルボードのアルバムチャートでベスト10入りするなど、一気にブレイクを果たしました。みんな同じタイミングで注目しちゃうんですね・・・。その「オトナブルー」はセクシャルな側面を前面に押し出した歌謡曲路線の曲。ちょっと時代を感じるようなセクシー歌謡曲が、前衛的な彼女たちのパフォーマンスともマッチして、インパクト満載の曲に仕上がっています。

ただ、とはいえ正直なところ、アルバム自体にはさほど期待していませんでした。どちらかというとダンスパフォーマンスが彼女たちのセールスポイントで、楽曲自体は悪くはないけど無難な売れ線ではないか、と思っていました。実際、本作の1曲目「じゃないんだよ」はマイナーコード主体の、ボカロ系によくありがちな楽曲といった感じでしたし(実際に作曲はボカロPのjon-YAKITORY)、続く「青春を切り裂く波動」はよくありがちな売れ線のギターロック路線だし、冒頭2曲は、いかにも「売れる」ことを狙ってきた平凡なJ-POPという印象を強く受けました。

しかしユニークだったのが中盤から後半にかけてで、3曲目「Giri Giri」はエレクトロサウンドの強いビートがインパクトのあるダンスチューンで、歌謡曲的なメロと上手く組み合わせた作風。「Suki Lie」も、今風のトラップ風のリズムと、こちらも歌謡曲的な怪しげなメランコリックなメロがうまく融合しています。

後半の「乙女の美学」「踊る本能001」も、こちらもメランコリックな歌謡曲なメロにインパクトを持たせつつ、ちょっとアバンギャルドさとジャズの要素も感じるバンドサウンドもユニーク。こちら、かつて東京事変のメンバーだったH ZETT M作曲によるナンバーなのですが、さすがといった印象です。

彼女たちが直接作曲に参加している訳ではないのですが、それでもこれだけ充実した曲がそろうというあたりに、グループとして、今、もっとも良い状態であることを感じさせます。正直、どちらかというと曲だけを楽しむというよりもパフォーマンスを楽しみたいグループなだけに、一度ライブも見てみたい!ただ、これだけ一気に売れると、チケットが取りにくくなりそうだなぁ。おそらく今後も、まだまだ人気は伸びそう。今、もっとも要注目のグループです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Paint Like a Child/秦基博

秦基博の新作のアルバムタイトルは、ピカソの名言「It took me four years to paint like Raphael, but a lifetime to paint like a child.(ラファイルのように描くには4年かかったが、子供のように描くには一生涯かかった)」から取られたものだそうです。老境に至ってようやく、子供のように、邪心なく絵を描くことが出来た、ということなのでしょうか。さすがに秦基博がこの境地に至るには若すぎるのでしょうが、ただ、全体的には必要以上に「売れ線」を狙うことなく、彼の自然体がそのままあらわれたような作品になっています。派手さや新鮮さはありませんが、秦基博らしい暖かさを感じる作品になっていました。あと何年か経つと、彼も「Sing Like a Child」の境地に至るのでしょうか?

評価:★★★★

秦基博 過去の作品
コントラスト
ALRIGHT
BEST OF GREEN MIND '09
Documentary
Signed POP
ひとみみぼれ
evergreen
青の光景
All Time Best ハタモトヒロ
コペルニクス
evergreen2
BEST OF GREEN MIND 2021

パレードが続くなら/YUKI

ソロデビュー20周年を迎えたYUKIが、20周年イヤーのラストでリリースするオリジナルアルバム。鐘も鳴り響き、明るい雰囲気のスタートを醸し出すタイトルチューンから、爽快なギターサウンドで疾走感もって明るく聴かせる「タイムカプセル」に、パンキッシュな「My Vision」と、バラエティーはありつつ、どこかつかみどころのない自由さはYUKIらしい感じ。ジャケット写真も明るい雰囲気ですが、全体的に祝祭色も強く明るい印象のアルバムに仕上がっています。アルバムタイトルはやはり20年を超えた今後の活動を踏まえてのことなのでしょうか。彼女が奏でる明るいパレードは、まだまだこれからも続きそうです。

評価:★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
YUKI RENTAL SELECTION
すてきな15才
forme
echo(Chara+YUKI)
Terminal
YUKI 20th Anniversary The Singles Collection 2002-2022「Tears of JOY」
YUKI 20th Anniversary Coupling + Remix Collection 2002-2022「Ode to JOY」

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2023年5月12日 (金)

5年ぶりの新譜

Title:last aurorally
Musician:凛として時雨

純粋なオリジナルアルバムとしては実に約5年ぶりとなる凛として時雨のニューアルバム。その間、TKのソロとしてのアルバムのリリースはあり、基本的にTKのソロ作も凛として時雨と同じ方向性の作品になっていたとはいえ、やはりファンにとっては待ちに待った新作と言っていいでしょう。

凛として時雨の楽曲というと、基本的にTKのボーカルをベースとして345のサブボーカルが重なるスタイル。どちらも甲高い声が特徴的で、非常にインパクトがあります。加えて、メロディーラインはマイナーコード主体のこれでもかというほど叙情的な作風。ここにヘヴィーな分厚いバンドサウンドがのり、これまたメランコリックな様相を強調するようなスタイルとなっています。

そして5年ぶりの凛として時雨のニューアルバムでは、このスタイルは一切変わっていません。いや、むしろいままで以上に振り切っているといった感があるのが今回の作品の大きな特徴。序盤からこれでもかといほどのメランコリックなサウンドを展開させていくのですが、特に印象的なのが中盤の「laser beamer」。TKのシャウト気味のボーカルに、ある意味、ベタさすら感じるレーザー音のエレクトロサウンドが重なるスタイルで、これでもかというほどサウンドを積み重ねています。

続く「self-hacking」こそ、前半はミディアムテンポで抑え気味のTKのボーカルになっているものの、途中からの345のボーカルと加わり、こちらも狂おしいほどのメランコリックさを感じさせる作品に。後半の「Perfake Perfect」ではハードコアの要素も加わり、まさに感情が爆発するようなスタイルに展開していきます。

楽曲としてはともすれば一本調子で、大いなるマンネリ感はあるのですが、ただ、楽曲としては叙情的な方向にこれでもかというほど振り切れており、もう、ここまでやられると脱帽!というのが正直な感想。アルバムの長さも全9曲42分と、一気に聴き切るにはちょうどよい長さとなっています。

久々のリリースの合間にリリースされたTKのソロ作も、正直言って同じようなスタイルだったのですが、凛として時雨のアルバムでは、やはり345のボーカルが大きなインパクト。TKも345もどちらもハイトーンボイスで、普通だったら似たようなボーカル2人というスタイルは避けるのですが、彼らの場合、似たボーカルが重なることが楽曲に厚みを加えて、叙情的な方向性がより増している結果となっています。

また今回のアルバムでは345のボーカルが以前により、より増した感があり、この点はTKのソロとの差をつけた結果なのか、という印象を受けました。まあ、TKのソロもバンドの作品も似たような曲ばかりで、音楽性に関して言えば、狭いといった感じになってしまうのですが、それをここまで突き詰めていた結果、非常に魅力的な作品が出来上がっているのが面白いところです。

そんな訳で、いい意味で大きなるマンネリを突き詰めた、凛として時雨らしいアルバム。これだけの内容をリリースされれば、絶賛せざるを得ないでしょう。これでもかというメランコリックさの洪水に酔いしれた1枚でした。

評価:★★★★★

凛として時雨 過去の作品
just A moment
still a Sigure virgin?
i'mperfect
Best of Tornado
es or s
#5
#4 -Retornado-


ほかに聴いたアルバム

多面態/Yuuki Tani

配信限定のシングル「W/X/Y」が大ヒットを記録し、一躍ブレイクした男性シンガーソングライター、Tani Yuukiのオリジナルアルバム。これが2枚目のフルアルバムのようです。全体的にピアノをバックにメランコリックなメロディーラインの曲を聴かせるタイプの曲が多いのですが・・・正直言って、これといった特徴がないのが辛いところ。メロディーがはまれば「W/X/Y」のようなヒットも飛ばせるのでしょうが、この内容だとそれに続くのは厳しい感じも。悪いアルバムではないのですが、全体的に「無難」という印象を受けてしまう1枚でした。

評価:★★★

私飽きぬ私/キュウソネコカミ

約2年2ヶ月ぶりとなるキュウソネコカミのニューアルバム。シンセで聴かせる独特のサウンドに疾走感あるパンクロックというスタイルはいつも通り。勢いで一気に押し切るようなタイプの曲で、全10曲35分という短さで駆け抜けていきます。ここらへんはいつもの彼らといった感じなのですが、若干、これといった核となるインパクトある作品がないのは残念。一方、本作の中で異色的で印象深かったのが「Tくん」。お金を貸したまま消えてしまった友人へのメッセージソングなのですが(実話??)、切ない歌詞が胸に響きます。アルバムの中で一番印象に残る1曲でした。

評価:★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
にゅ~うぇいぶ
ギリ平成
ハリネズミズム
モルモットラボ

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2023年5月11日 (木)

韓国勢がベスト3を占拠

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はベスト3に韓国のアイドルグループが並びました。

まず今週1位は韓国の女性アイドルグループLE SSERAFIM「UNFORGIVEN」が獲得。これが彼女たち初のフルアルバムとなります。CD販売数及びダウンロード数共に1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上8万8千枚で1位初登場。直近のリリースはミニアルバムの「ANTIFRAGILE」で同作の初動2万4千枚(2位)よりアップしています。

2位もK-POP勢。先週1位を獲得した男性アイドルグループSEVENTEEN「FML」がワンランクダウンでベスト3をキープしています。また3位も韓国の男性アイドルグループStray Kids「THE SOUND」が先週から同順位をキープし、ベスト3入りを続けています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず6位に山下達郎「FOR YOU」がランクインです。こちら、彼が1982年にリリースした6枚目のオリジナルアルバムで、今回、最新リマスタリングされたアナログ盤がリリース。見事ベスト10入りとなりました。ちなみに個別のランクインではCD販売数で6位となっていますが、「CD」ではなく「レコード」ですね。ちなみにカセットテープも同時リリースされているのですが、CDでのリリースはなし。最新リマスタリングがCDではなくレコード&カセットのみというあたりに、今の時代を感じさせます。

7位にはEd Sheeran「ー」がランクイン。ご存じイギリスで国民的人気を誇るシンガーソングライターによる最新作。いままでアルバムタイトルが「+」「×」「÷」と算術記号が続いており、次は「-」かと思いきや、意表をついて「=」でした。当然、次は「-」だとうと思っていたのですが、今回は予想通り、アルバムタイトルが「-」に落ち着いて(?)います。ちなみに「サブトラクト」と読むそうです。CD販売数9位、ダウンロード数2位。オリコンでは初動売上4千枚で8位初登場。前作「=」の8千枚(9位)からダウン。さて、次のアルバムタイトルは何になるんでしょうか?「≠」か「≒」か「<」か「>」か「√」か・・・?

8位にはLDHの新女性アイドルグループMOONCHILD「DELICIOUS POISON」がランクインです。MOONCHILDというと、1997年に「Escape」がヒットを飛ばしたロックバンドを思い出すのですが、そういうエクスキューズなしに「MOONCHILD」という言葉がアイドルの名前に使われちゃうあたり、バンドのMOON CHILDは完全に過去に埋もれてしまったんだなぁ、と複雑な気持ちになります。CD販売数7位、ダウンロード数22位。オリコンでは初動売上4千枚で9位に初登場。

9位初登場は女性声優大西亜玖璃「Do you agree?」。本作がアルバムとしてはデビュー作となります。CD販売数8位、ダウンロード数95位。オリコンでは初動売上5千枚で7位初登場。

最後10位には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 オーサム・ミックス Vol.3 オリジナル・サウンドトラック」がランクイン。タイトル通り、このGWから劇場公開している映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVOLUME3」のサントラ盤ですが、収録曲がRADIOHEADの「クリープ」からはじまり、レインボーやアース・ウィンド&ファイアーと豪華ミュージシャンによる曲が並んでいます。洋楽のオムニバス的に楽しめそう。CD販売数は18位でしたが、ダウンロード数が3位となり総合順位でベスト10入り。オリコンでは初動売上1千枚で22位にランクインしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年5月10日 (水)

4週連続

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も1位は・・・

Yoasobiidle

1位はYOASOBI「アイドル」が4週連続で獲得。今週はダウンロード数も2位から1位にアップし、ストリーミング数、YouTube再生回数共に1位をキープ。ラジオオンエア数4位、カラオケ歌唱回数3位と、軒並み上位にランクインという結果になりました。

続く2位は初登場。LDH所属の男性ダンスグループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「16BOOSTERZ」が獲得。CD販売数及びラジオオンエア数は2位でしたが、ダウンロード数86位、ストリーミング数45位に留まり、総合順位は2位に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上19万5千枚で2位初登場。前作「ROUND UP」の初動2万6千枚(6位)から大きくアップしています。

3位は先週2位のBE:FIRST「Smile Again」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ダウンロード数は1位から20位、CD販売数も2位から5位、ストリーミング数も2位から4位と軒並みダウンしていますが、ラジオオンエア数1位、YouTube再生回数2位は先週から同順位をキープしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は1曲のみ。ジャニーズ系男性アイドルグループSexy Zone「Cream」が5位にランクイン。テレビ東京系ドラマ「隣の男はよく食べる」挿入歌。CD販売数で1位を獲得しましたが、そのほか、ラジオオンエア数10位、YouTube再生回数55位となり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上21万4千枚で1位初登場。前作「Trust Me,Trust You.」の21万3千枚(1位)から若干のアップ。

続いてロングヒット曲ですが、まずVaundy「怪獣の花唄」は8位から6位に再度アップ。カラオケ歌唱回数が10週連続で1位をキープしているほか、ストリーミング数も6位から3位にアップ。そのほか、ダウンロード数も20位から14位、YouTube再生回数も16位から14位にアップし、再び持ち直してきています。これでベスト10ヒットは18週連続となります。

Official髭男dism「Subtitle」は先週から変わらず9位をキープ。ストリーミング数5位、YouTube再生回数9位は先週から変わらず。これでベスト10ヒットは連続30週になりました。またヒゲダンは今週も「TATOO」が6位から10位にダウンしたもののベスト10をキープ。2週連続の2曲同時ランクインとなっています。

さて、今週まで4週連続1位となったYOASOBI「アイドル」は今後、長くヒットを続けそうですが、その他、ロングヒット候補だったスピッツ「美しい鰭」は今週は4位にダウン。とはいえ、ストリーミング数は3位から2位、ダウンロード数も8位から6位にアップしており、こちらもロングヒットとなりそう。YouTube再生回数のみ、13位→17位→21位→22位と右肩下がりなのが気になりますが・・・。

一方、MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」は今週は7位までダウン。とはいえストリーミング数は7位から6位、ダウンロード数も3位をキープ。こちらもYouTube再生回数は4位→7位→11位と右肩下がりなのですが、まだヒットは続きそう。ただし、以前ほど「鬼滅の刃」のタイアップ効果は強くなさそうな印象はあります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年5月 9日 (火)

ボサ・ノヴァの歴史を学ぶ

Title:中村とうようの「ボサ・ノーヴァ物語」●青春篇 ●源流篇 ●放浪篇

今日紹介するのは、タイトルからもそのままわかるように、「ミュージックマガジン」の創始者であり、音楽評論家として活躍していた中村とうようが編集を行った、日本でも人気の高いブラジルの大衆音楽、ボサ・ノヴァの編集盤。もともと1990年代に、「青春篇」「源流篇」「放浪篇」と、それぞれ別々にリリースされていたようですが、現在は廃盤。2011年に亡くなってから13回忌にあたる今年に、あらためて彼の仕事ぶりを見つめなおすために再発企画が行われ、今回、ボックスセットとしてリリースされたそうです。

今回は、その3枚のアルバムがひとつのボックスセットとしてまとめられ、さらに当時の解説も1冊にまとめられてついてきています。解説は当時のままですが、これを読むことにより、楽曲の背景やボサ・ノヴァの歴史を学ぶことが出来る内容となっています。個人的にはボサ・ノヴァという音楽については、もちろんジャンルとして知っているのですが、「おしゃれな大人のムード音楽」というイメージがあり、あまり好んで聴くジャンルではありません。ただ、以前から雑食的にいろいろな音楽に触手を伸ばしている身としては、やはりボサ・ノヴァについても(お勉強的になるとはいえ)聴いておきたい・・・ということで、この3枚組のボックスセットをチェックしてみました。

まず「青春篇」。こちらはいわゆるボサ・ノヴァのスタンダードな楽曲が収録されているようです。典型的なのは、おそらくボサ・ノヴァの曲の中で最も知名度が高いと思われる「イパネーマの娘」。一般的にはスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのコラボによるアルバム「ゲッツ/ジルベルト」の収録されているヴァージョンですが、ジャズの名盤とも言われている同作に、中村とうようはかなり酷評しているようで、本作ではバーデン・パウエルによる録音のバージョンとなっています。

また個人的にはマルコス・ヴァリの「夏のサンバ」も、どこかで聴き覚えのあるような・・・。他に私でも名前を知っているようなジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンなどといった大御所も名前をつらている同作。ボサ・ノヴァのまさに入門書とも言える内容になっています。全体的にはギターの音色をメインに優雅な雰囲気の楽曲というのはボサ・ノヴァのイメージどおりではあるのですが、一方でエリゼッチ・カルドーゾの「想いあふれて」やマルコス・ヴァリの「もっと愛を」など、その感傷的なボーカルに惹き込まれましたし、またポリリズム的なオスカル・カストロ・ネヴィスの「悲しみの涙」やパーカッションのリズムがユニークなタンバ・トリオの「静かな愛」など、ユニークなリズムの曲も。たんなる「おしゃれな大人のムード音楽」とだけは片づけきれないボサ・ノヴァの魅力もしっかり感じることが出来ました。

一方「源流篇」はタイトル通り、ボサ・ノヴァの源流となった楽曲を集めた曲。同ボックスセットの紹介では中村とうようの独自性が発揮されたのが本作ということですが、サンバやマンボ、ジャズといったジャンルの中に感じるボサ・ノヴァの萌芽がユニークな感じ。ただ、ボサ・ノヴァというとブラジルに古くからある音楽の形態・・・と勝手に思い込んでいたのですが、この源流篇に収録された曲を聴くと、思ったよりは最近の曲(といっても、50年以上前の曲ですが・・・)が多く、ボサ・ノヴァという音楽の形が出来上がったのは意外と最近なんだな、ということを感じます。

で、最後の「放浪篇」は、ボサ・ノヴァという音楽の成立後、どのように拡散していったのかを追った1枚。ジャズやポップスにボサ・ノヴァがどのように流布していったのかがわかる1枚で、ちょっと意外なところでバート・バカラックの「小さな祈り」のような曲も収録されており、ボサ・ノヴァの意外な影響力も感じます。

このボックスセットでボサ・ノヴァという音楽の源流からスタンダード、そしてその後の影響まで一気通貫的に知ることが出来る作品。ただ、選曲的にはかなり中村とうようの癖が強いところがありそうで、良くも悪くも「中村とうよう史観」といった感じになるのでしょうか。特に「放浪篇」では選曲も玉石混交と語っており、かなり毒舌込みの解説になっています。中村とうようのポップスに対する姿勢は「売れること」自体を否定的にとらえているように感じる部分があり、個人的にはそこに違和感を覚えているのですが、今回の解説でも、売れ線に対する否定的な感覚が毒舌の裏側に感じられ、解説をそのまま受け取れないかも、と思った部分はありました。彼の口調って、悪い意味で団塊の世代的な雰囲気を感じてしまうんですよね・・・その下の世代からすると、少々受け入れがたい部分も感じてしまいます。

そんないかにも中村とうよう的な部分は良くも悪くもですが、とはいえ、音楽評論家としてのその選曲は文句なしですし、あらためてボサ・ノヴァという音楽の奥深さを感じられる作品となっていました。ちなみにこのシリーズ、5月には第2弾としてワールドミュージック編も予定されているようで、そちらもチェックしてみたい・・・。ボサ・ノヴァやブラジル音楽に興味があれば要チェックのボックスセットでした。

評価:★★★★★

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2023年5月 8日 (月)

シンプルなエレクトロサウンドとウィスパーボイスが魅力

Title:With a Hammer
Musician:Yaeji

今回紹介するのはニューヨーク出身でニューヨークはブルックリンを拠点に活動を続けるDJ、プロデューサーのYaeji(イェジ)のデビューアルバム。韓国系アメリカ人である彼女は、2020年にリリースしたミックステープ「What We Drew 우리가 그려왔던」が大きな話題となり、チャーリーXCXやデュア・リパのリミックスに参加するなど、今、もっとも注目を集めているミュージシャンの一人だそうです。

そんな彼女の楽曲の特徴は非常にシンプルなエレクトロサウンド。ドリーミーにスタートする冒頭の「Submerge FM」も音数を絞ったシンプルなサウンド構成が特徴的ですし、タイトル曲である「With a Hammer」もメタリックなサウンドながらも音数は少な目。その後も、リズミカルなエレクトロビートと共に空間を聴かせるような楽曲が続きます。

そしてもう一つの大きな特徴が、彼女のウィスパー気味のキュートなボーカルでしょう。アルバムを通じて、彼女がそのウィスパー気味のボーカルを聴かせてくれる歌モノとなっているのですが、温度感の低いキュートなボーカルが大きな魅力に。シンプルなエレクトロサウンドともピッタリな相性で、ドリーミーでかわいらしいポップチューンに仕上がっています。さらに彼女のボーカルの特徴として、韓国語を巧みに取り込んできているという点。英語のリズムとも少々異なる韓国語のリズムが非常にユニークで、なおかつちょっとしたエスニックな雰囲気も醸し出しています。

一方、シンプルなエレクトロサウンドながらも、時としていきなり強いビートが入ってくるメリハリある展開も大きな魅力で、特に印象的なのは先行シングルにもなっている「For Granted」。最初は静かなエレクトロサウンドに静かな彼女の歌でスタートするのですが、中盤からいきなりドラムンベースのヘヴィーなリズムにチェンジします。「Michin」も同じく、イントロこそ静かにスタートするのですが、途中からジャングルのヘヴィーなエレクトロビートへと展開。前半が一種の「ため」となって後半で一気に開放される展開は聴いていて爽快さすら感じさせます。

その他にも「Done(Let's Get It)」はR&B風ですし、「1 Thing To Smash」は荘厳な雰囲気の曲になっていますし、全体的にHIP HOP的な作品も目立ちますし、シンプルなエレクトロサウンドで共通項があるものの、意外と多彩な音楽性も垣間見れるバラエティーある内容になっていました。

そのキュートなボーカルの歌モノがメインということもあって、決して小難しい感じはありませんし、今後さらなる注目を集めていきそう。まだ、メインチャートでの上位ランクインはないのですが、次回作以降、一気にブレイクする可能性もあるミュージシャン。先取りしたい方は要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

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2023年5月 7日 (日)

シューゲイザーとカントリー

Title:Raw Saw God
Musician:Wednesday

アメリカのインディーロックバンド、Wednesdayの5作目となるニューアルバム。今回のアルバムは国内盤もリリースされるようで、日本でも話題となっています。はて、Wednesdayというバンド、どこかでその名前を聴いたような・・・過去にアルバムを聴いていたなぁ・・・と、当サイトの過去ログをあさっていて思い出しました。昨年の洋楽私的ベストアルバムで3位に選んだMJ Lendermanが所属していたバンドだ!ということを。

個人的にそのMJ Lendermanのアルバム「Boat Songs」はシューゲイザー直系のバンドながらも、一方では70年代のロックともつながっているような音楽性が非常にユニークで、個人的にも壺にはまった1枚でした。そのアルバムにはまった時、Wednesdayの楽曲も何曲か視聴してみて、その内容にはまったのですが、今回、あらためて彼女たちのニューアルバムを聴くと、まさに個人的に壺にはまるアルバムになっていました。

ただ、アルバムの冒頭は、シューゲイザーというよりも80年代のインディーロック(…ってシューゲイザーも80年代のインディーロックか)。特にPixiesからの影響を強く感じました。特に1曲目「Hot Rotta Grass Smell」など、ギターの使い方が完全にPixiesのそれですし、続く「Bull Believer」も同じく、アメリカのインディーロックの影響を感じます。

この雰囲気がガラリと変わるのが4曲目「Formula One」で、しんみりとギターで聴かせるフォークロックに。続く「Chosen to Deserve」も、ヘヴィーに鳴り響くギターリフの中、ヘヴィーなサウンドのバックで鳴る、伸びやかなギターサウンドやメロディーラインはむしろカントリー風。序盤の雰囲気とは大きく変わります。

しかしその後「Bath County」「Quarry」は、ダイナミックなギターノイズにシューゲイザーからの影響を感じさせつつ、郷愁感あるメロはどこかフォーキー。ラスト前の「What's So Funny」はギターで静かに聴かせるフォークソングになったかと思えば、ラストを飾る「TV in the Gas Pump」はギターのサイケなノイズが鳴り響く中、ウィスパー気味のボーカルによる歌が非常にキュートでポップな作品。最後の最後で、またここまでの楽曲とは異なるWednesdayの魅力を聴かせてくれています。

シューゲイザーやインディーロックの路線とカントリー、フォークの路線を、時には対比させながら、時には融合させながら、バラエティー富んだ展開で聴かせるアルバム。懐かしく、耳なじみのあるメロやサウンドながらも一方では新しさも感じさせる内容となっており、非常にユニークな傑作となっていました。

MJ Lendermanのアルバムにもかなりはまりましたが、個人的にはそのアルバムに勝るとも劣らない傑作アルバムだったと思います。もちろん、このアルバムも年間ベスト候補の作品でしょう。シューゲイザー、インディーロック好きなら間違いなくはまりそうな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love In Exile/Arooj Aftab,Vijay Iyer&Shahzad Ismaily

以前、当サイトでも紹介したことがあるニューヨーク・ブルックリンで活躍するパキスタン出身の女性シンガーソングライターArooj Aftabと、同じくニューヨークを拠点に活躍するインド系アメリカ人のVijay Iyer、パキスタン系アメリカ人のShahzad Ismailyが組んだユニット。爽やかさを感じるピアノの音色に、トライバルなボーカルが重なるスタイルが特徴的で、Arooj Aftabの清涼感あるボーカルが不思議な空気感を醸し出しています。エレクトロサウンドも時折挟みつつ、シンプルな音数でトライバルで幽玄的な雰囲気を作り出している作品。その世界に聴き入ってしまう1枚でした。

評価:★★★★★

Afrooj Aftab 過去の作品
Vulture Prince

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2023年5月 6日 (土)

個性がありまくり

Title:URBANGARDE CLASICK~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~
Musician:アーバンギャルド

2007年のデビュー後、デビュー15周年を迎えた男女3人組ポップスバンド、アーバンギャルド。タイトル通り、オールタイムベストとなります。デビュー以来、コンスタントにアルバムのリリースを続ける彼ら。個人的には、基本的にアルバムをチェックしてきたのですが、ここ数作のアルバムは知らないうちにスルーしていました・・・。彼らの作品は2015年にリリースされた「昭和九十年」以来。その後もオリジナルアルバムや、企画モノのアルバムなどがリリースしていたのですが、ノーチェックでした。

あらためて彼らの曲を聴いてみると、非常に癖のつよいポップチューンというイメージを持ちます。基本的にエレクトロチューンメインのサウンド。楽曲によっては、ギターサウンドを入れてきたり、ニューウェーヴ風だったり、AOR風だったり、プログレの色合いも感じたりとバリエーションも感じるのですが、基本的にはちょっとチープさも感じる、いかにもなエレクトロチューンがメイン。

そしてもうひとつ大きな特徴なのが非常に対照的なツインボーカル。メインボーカルの浜崎容子はハイトーンで、若干アニメボイス寄りの声を持っていて、サブボーカルの松永天馬は野太い声と対照的。こちらもある種の「アニメボイス寄り」と言えるかもしれませんが。ちょっと陳腐な表現だと「美女と野獣」とでも言うような組み合わせで、2人のボーカルのギャップもまた、アーバンギャルドの大きな特徴となっています。

さらにアーバンギャルドというバンドを形作るさらなる大きな特徴といえばその歌詞。女性、それも女子高生あたりの若者の「心の闇」や「孤独」にクローズアップした内容に、サブカルチャー、あるいはアングラ文化を取り込んだような内容も特徴的。曲によっては、80年代や、むしろ全共闘をモチーフとしたような歌詞も含まれており、彼ら、いったいいくつなんだ?と思ってしまうような歌詞も散見されます。また、「くちびるデモクラシー」のような社会派な内容が含まれる曲もあったりして、意外と(?)硬派な側面も感じれます。

そんな感じで非常にいろいろな側面で特徴的なのがアーバンギャルドの持ち味で、いろいろな方向に尖りまくっているバンド。それだけに一度聴いたら忘れられないような強いインパクトを持っています。ある意味、個性がありまくり、出まくりなのがアーバンギャルドというバンドの大きな特徴と言えるでしょう。

ただ、それだけ癖のある楽曲が並んでいるだけにリスナーは選びそう・・・。これだけ個性的な曲が並んでいるにも関わらず、ヒットという側面から恵まれなかったのは、そういった要素が大きいのかもしれません。また、強い個性を持っているのですが、ベスト盤でシングル曲を並べて聴くと、どうしても似たようなタイプの曲が並んでしまっている印象も。この点については、最近の作品になればなるほど、特にサウンドの側面でバラエティーが出てきているのですが。

そういうちょっと気になる点はありつつ、ただユニークな曲の連続に、やはり3枚組とはいえ十分楽しめるベスト盤になっていました。次のオリジナルアルバムはスルーしないでちゃんとチェックしなくては。これからも彼らの活躍に注目していきたいです。

評価:★★★★★

アーバンギャルド 過去の作品
少女の証明
メンタルヘルズ
ガイガーカウンターカルチャー
恋と革命とアーバンギャルド
鬱くしい国
昭和九十年


ほかに聴いたアルバム

弐/優里

タイトルそのまま2作目となる優里のニューアルバム。前作でも感じたのですが、良くも悪くも「売れ線」の壺をついたメロディーラインとサウンドが特徴的。ほどよくメランコリックで、サウンドもバンドサウンドを軸としつつ、あまり激しくなく、ピアノを上手く取り入れて耳障りよく聴かせています。良くも悪くも器用さを感じるシンガーで、いかにも売れそうだな、と感じる一方、楽曲として個性は薄く、癖の薄さを感じてしまいます。そこもまた、今どき「売れる」理由なのかもしれませんが・・・。また「ビリミリオン」みたいに、あまりに説明過多な歌詞も気になってしまいます。ここらへんもいかにも今時なのでしょうが。次回作を聴くか、といわれると「うーん」と思ってしまいます・・・。

評価:★★★

優里 過去の作品

だからそれは真実/クリープハイプ

前述の優里と比べると、ある意味、癖のかたまりのようなボーカルが特徴的の、クリープハイプの5曲入りのEP盤。まあ、全体的には若干一本調子な部分が否めないのですが・・・。今回のアルバムも、非常に感傷的に歌い上げるスタイルがいつものクリープハイプといった印象。ただ一方、どこかコミカルさも加味されているのもユニークで、その点、聴いていて楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に
どうにかなる日々
夜にしがみついて、朝で溶かして

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2023年5月 5日 (金)

「アルバム」ではなく「画集」

Title:幻燈
Musician:ヨルシカ

ヨルシカの今回の新作は、非常にユニークな試みがされています。今回の作品にCDはついてきておらず、イラストレーターの加藤隆氏が描いた絵によって構成される画集というスタイルになっています。その絵を、スマートフォンかタブレットのカメラをかざすと、専用のストリーミングサイトにアクセスできる仕様となっており、そこで曲を聴けるという構成になっています。

こちらの画集では、全25曲の作品が聴けるようになっているとか。ストリーミングによる音楽再生が一般的となる中、逆にレコード盤の需要が高まっている現在。「音楽を所有する」ことの意味を投げかける作品となっています。ただ、残念ながらこの画集、1冊8千円以上というなかなかなお値段。さすがにちょっと手が出ませんでした。通常のアルバムの3千円程度ならば買おうかと思ったのですが・・・。この25曲のうち10曲が、Spotifyをはじめとする一般のストリーミングサイトでも開放されていますので、今回はそちらを聴いての感想ということになります。ご了承ください。

さて、以前のヨルシカのレビューでも書いたのですが、最近、お茶の間レベルでヒットを出すようになったボカロP出身のミュージシャンたちの中で、米津玄師と並んで頭ひとつ出ているのが彼らだと思っています。メランコリックなメロと、無駄に音を詰め込んだ、いかにもJ-POP的なサウンド、少々中二病的な世界観も入った歌詞の世界と、良くも悪くも少々ワンパターン化している部分もあるシーンの中で(もちろん、そうでない曲がたくさんあることも知っています)、特に音の使い方については他のボカロ系のミュージシャンとは明らかに一線を画するサウンドを聴かせてくれますし、今回の作品では、そのサウンドがより洗練されているようにも感じました。

例えば「ブレーメン」ではギターサウンドに味付けされているピアノの音色が微妙にジャジーで印象的ですし、「第一夜」もピアノとパーカッションでシンプルなサウンドが特徴的。一番印象的だったのは「月に吠える」で、シンプルなサウンドの中で絶妙なタイミングでサンプリング的な音を入れており、バランス良く考えられたサウンドが印象に残ります。

メロディーラインについては、正直、いかにもボカロ系らしいメランコリックなものが目立つのですが、ただその中でも「又三郎」のようにギターロックで爽快さを感じるメロディーを聴かせてくれたり、ラストの「第一夜」のようなフォーキーで温かみのあるメロを聴かせてくれたりとバラエティーを感じさせます。

一方、歌詞はタイトルを見て察する人も少なくないかと思いますが、文学作品をオマージュした作品となっています。これ、まさかと思うけど、小説に基づいた曲をつくっているYOASOBIを意識していない???まあ、これは邪推に過ぎないのですが。また、ボーカルsuisについても言及する必要があるでしょう。以前に増して、より大人の落ち着きを感じさせる声となっており、こちらもより成長した感があります。今回のヨルシカの曲の魅力の要因として大きなポイントとなっていました。

全25曲のうちの10曲のみですが、ただ、以前の作品に比べてヨルシカのミュージシャンとしての進化が感じられる作品になっていたと思います。ボカロ系という枠組みを超える作品になっていたのは間違いありません。今後、さらに活躍が広がりそうな予感のある作品でした。

なお、この販売形態でひとつ気になっていたのが、ストリーミングサイトのサービス終了の件。既にアナウンスされているように、発売日から3年間はストリーミングで聴くことが出来るのですが、その後は一定期間、ダウンロード可能という形になるようです。ただ、そうすると、それ以降は、現在配信されている曲以外は、アルバムの曲を聴くことが不可能となってしまうということでしょうか・・・。ひょっとしたら、そのタイミングで、現在、未配信となっている15曲も配信リリースされるのかもしれませんが、永続的にこの画集と音楽を楽しめないというのは、ちょっと残念な感じもします・・・。

評価:★★★★★

ヨルシカ 過去の作品
エルマ
盗作
創作


ほかに聴いたアルバム

幸せにしてくれいーぴー/THE KEBABS

a flood or circleの佐々木亮介と、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也を中心とする4人組バンドTHE KEBABS。もともとthe pillowsの30周年記念映画「王様になれ」の中の架空のバンドとして結成されたものの、よほど相性が良かったのか、その後も継続的に活動が続いてきます。確かに、ヘヴィーなガレージサウンドには定評があるものの、メロがいまひとつというイメージのあるa flood of circleと、ロックバンドとしてのイメージはないものの、ポップなメロが魅力的なUNISON SQUARE GARDENの組み合わせは、いかにも相性が良さそう。今回のアルバムも5曲入りのEPですが、ポップでインパクトのあるメロが次々と流れ出します。ただ一方、ヘヴィーなサウンドという意味ではちょっと後ろに下がってしまっている感があるのが残念なのですが。ただ、バンドとしての結束力も感じられるだけに、THE KEBABSの活動はこれからも長く続きそうです。

評価:★★★★

THE KEBABS 過去の作品
THE KEBABS
セカンド

Happenings Nine Months Time Ago in June 2022/ムーンライダーズ

2016年に活動を休止したものの、昨年、実に11年ぶりとなるオリジナルアルバムをリリースし、本格的に活動を再開したムーンライダーズ。本作はそのリリースから2ヶ月後にメンバーがスタジオに集まり、即興で音楽を鳴らした作品。かなり実験的な作風となっているのですが、全体的なイメージとしては非常にプログレ色の強い作風で、良くも悪くも「時代」を感じてしまう作品になっています。一方、おそらくボーカロイドを用いた曲もあったりして、ここらへんの感覚に彼らの「若さ」を感じさせる部分も。万人向けな感じの作品ではありませんし、奏でているサウンドについても決して斬新といった感じでもありませんが、ムーンライダーズのファンにとっては聴きどころの多い作品になっているかと思います。

評価:★★★★

ムーンライダーズ 過去の作品
Ciao!
moonriders Final Banquet 2016 ~最後の饗宴~
It's the moooonriders

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2023年5月 4日 (木)

アイドル系とゲーム系のみ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のアルバムチャートは全10枚、すべてアイドル系もしくはゲームソングという少々極端なチャートとなっています。

まず1位初登場は韓国の男性アイドルグループSEVENTEENのミニアルバム「FML」が獲得。CD販売数及びダウンロード数共に1位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上55万1千枚で1位初登場。直近作は国内販売のEP盤「DREAM」で、同作の初動49万7千枚(1位)よりアップしています。

2位は先週1位のジャニーズ系男性アイドルグループKing&Prince「Mr.5」がワンランクダウンでベスト3をキープ。

3位にはこちらも韓国の男性アイドルグループStray Kids「THE SOUND」が先週の82位から一気にランクアップ。6週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。4月30日に京都でイベントが開催されたようですが、その影響でしょうか。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位は「アイドリッシュセブン Collection Album vol.3」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数26位。女性向けアイドル育成ゲーム「アイドリッシュセブン」に使用された曲を集めたアルバム。オリコンでは初動売上9千枚で6位初登場。同シリーズの前作「アイドリッシュセブン Collection Album vol.2」の初動1万7千枚(2位)よりダウン。

6位はWACK所属の女性アイドルグループASP「DELiCiOUS ViCiOUS」がランクイン。CD販売数5位。5曲入りのEP盤。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。前作「PLACEBO」の初動6千枚(6位)からアップ。

7位にはNCT DOJAEJUNG「Perfume」が初登場。CD販売数6位、ダウンロード数60位。韓国の男性アイドルグループNCTからの派生ユニットによるデビュー作。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。

8位初登場は「Splatoon3 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune3-」。CD販売数7位。タイトル通り、人気アクションゲーム「スプラトゥーン3」の楽曲を集めたサントラ盤。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。

9位には「Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album Vol.3」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数13位。こちらは「ファイナル・ファンタジー XIV」に使用された曲をオーケストラで演奏したアルバム。オリコンでは初動売上4千枚で11位初登場。同シリーズの前作「Eorzean Symphony:FINAL FANTASY XIV Orchestral Album Vol.2」の初動8千枚(10位)よりダウンしています。

最後10位には「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 12」がランクイン。こちらも人気ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」で使用された曲を集めたサントラ盤。CD販売数11位、ダウンロード数14位。オリコンでは初動売上3千枚で12位初登場。同シリーズの前作「11」はシングル扱いだったので、アルバムでの前作は「10」。同作の初動5千枚(7位)からはダウンとなっています。

初登場盤は以上ですが、その他に5位にはBTSのメンバーAgues D「D-DAY」がランクインしているため、ベスト10のうち6枚がアイドル系、4枚がゲーム系となった今回のチャート。最近の傾向ですが、シングルだとCD売上があまりチャート上反映されず、ヒットにつながらないため、アイドルグッズとして売上枚数をコントロールしやすく、チャート上位にも食い込みやすいアルバムに、アイドルの戦場がシフトしている影響でしょうか。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2023年5月 3日 (水)

見事、3連覇

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週で3週連続の1位となりました。

Yoasobiidle

今週も1位はYOASOBI「アイドル」が獲得。これで3週連続の1位となりました。ストリーミング数及びYouTube再生回数は先週から引き続きの1位。ダウンロード数こそ1位から2位にダウンしましたが、総合順位では堂々の1位獲得です。

一方、先週のチャートで、新たなロングヒット候補としてあげたスピッツ「美しい鰭」は2位から4位、MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」は4位から5位といずれもダウン。ただ、「美しい鰭」はストリーミング数3位、「絆ノ奇跡」はダウンロード数3位、ストリーミング数7位、YouTube再生回数7位といずれも上位にランクインしており、まだまだ今後の伸びも期待できそうです。

これらの曲に割って入ったのがいずれも初登場曲。まず2位には男性アイドルグループBE:FIRST「Smile Again」がランクイン。ダウンロード数、ラジオオンエア数は1位、CD販売数、ストリーミング数及びYouTube再生回数2位といういずれのチャートでも上位にランクインしています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万4千枚で2位初登場。前作「Bye-Good-Bye」の初動13万8千枚(3位)から若干のダウンとなっています。

3位にはAKB48「どうしても君が好きだ」がランクイン。CD販売数こそ1位でしたが、ダウンロード数92位、ラジオオンエア数49位。オリコンでは初動売上32万7千枚で1位初登場。まだ一応30万枚以上売り上げれるんだ・・・とも思ってしまうのですが、なんとなく楽曲タイトルのやっつけ感が否めないのですが。前作「久しぶりのリップグロス」の初動31万8千枚(1位)からこちらは若干のアップ。

続いて4位以下の初登場曲です。まず6位にOfficial髭男dism「TATOO」が先週の18位からランクアップし、ベスト10に初登場。ダウンロード数4位、ストリーミング数9位、ラジオオンエア数2位、YouTube再生回数22位。TBS系ドラマ「ペンディングトレインー8時23分、明日 君と」主題歌。ちなみにヒゲダンは「Subtitle」も今週、6位からダウンしているものの9位をキープ。2曲同時のベスト10入りを果たしています。こちらは29週連続のベスト10ヒット。

7位には韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「Super」がランクイン。ストリーミング数4位、YouTube再生回数3位、ダウンロード数34位。今週のアルバムチャートにランクインしているミニアルバム「FML」からのナンバー。

最後10位にはMrs.GREEN APPLE「ケセラセラ」が初登場。ダウンロード数6位、ストリーミング数19位、ラジオオンエア数8位、YouTube再生回数10位で総合順位でベスト10入り。テレビ朝日系ドラマ「日曜の夜ぐらいは…」主題歌。

一方、ロングヒット曲は、前述の「Subtitle」の他は、あと1曲、7位から8位にダウンしたVaundy「怪獣の花唄」のみという、ちょっと珍しい結果となっています。こちらもカラオケ歌唱回数は9週連続の1位ながらもストリーミング数は4位から6位にダウン。ただ、ダウンロード数は26位から20位、YouTube再生回数も20位から16位にアップしています。これで17週連続のベスト10ヒットとなりました。

また、先週ベスト10に返り咲いた10-FEET「第ゼロ感」は今週8位から12位に再びダウン。ベスト10ヒットは通算19週でまたストップとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2023年5月 2日 (火)

スーパーグループとして理想的な傑作

Title:the record
Musician:boygenius

それぞれが個々にシンガーソングライターとして活躍しているPhoebe Bridgers, Julien Baker, Lucy Dacusの3人が集まって結成されたboygenius。EP盤だったセルフタイトルの前作「boygenius」がリリースされた頃は、まだまだ日本では無名のグループだったのですが、その後、徐々に知名度を集め、今回のアルバムでは、なんとイギリスのナショナルチャートで1位を獲得。アメリカのビルボードチャートでも4位を記録するなど、一気に人気を集め、日本でも国内盤のリリースもあり、その名前を聞く機会もグッと増えました。

楽曲は、正統派のオルタナ系ギターロック路線の曲と、アコースティックでフォーキーな作品が同居する独特の構成。例えば中盤の「Satanist」はかなりヘヴィーでノイジーなギターサウンドを聴かせるギターロックの作品で、the pillowsあたりが好きなギターロックリスナーには壺をつきそう。「Not Strong Enough」もギターサウンドをバックとしたメロディアスなガールズポップに仕上がっており、ここらへんはYUIとかmiwaあたりが好きな人ははまりそう。かと思えば「Cool About It」ではアコギのアルペジオでしんみり聴かせるフォーキーな作風になっており、ギターロック路線とは全く異なる方向性ながらも、メランコリックなメロディーラインは聴き入る人も多いかも。いずれのタイプの曲もメロディーラインにインパクトもあり、いい意味で広い層に支持されそうなポピュラリティーを持っています。

前回のアルバムでは、3人の個性の違いを生かしつつ、一方では共通項も生かした作風が特徴的と記載しました。今回のアルバムもそれぞれの個性が生きた作風を感じます。作詞作曲のクレジットはいずれもboygenius名義なのですが、おそらく個々がリードボーカルを取った作品では、メインとなって曲作りを手掛けたのではないでしょうか。実際、Julien Bakerがメインボーカルを取る「$20」「Anti-Curse」ではヘヴィーでダウナーなギターサウンドが特徴的。Lucy Dacusがメインボーカルを取る「True Blue」「Leonard Cohen」ではどこか渋さを感じる大人な雰囲気の作風が魅力的ですし、Phoebe Bridgersがメインボーカルの「Emily I'm Sorry」「Letter To An Old Poet」ではフォーキーで、かつどこか幻想的な作風が魅力的となっています。

3人の個性がアルバムの音楽の幅となり、リスナーに対してはバリエーションを楽しませつつ、一方、3人の共通項としてのポップなメロディーラインや、3人のSSWの音楽性からいずれも感じるフォークやギターロックからの影響がアルバムに統一感をもたらしています。3人のうち1人が目立つわけではなく、3人ともそれぞれアルバムの重要要素を提供しているという意味で、それぞれが個々に活躍しているSSWによるスーパーグループ的なユニットとしては理想的なアルバムと言えるかもしれません。

前作に続き本作も個人的にはかなり壺にはまったアルバムで、個人的には年間ベストクラスの傑作アルバムになっていたと思います。この手のスーパーグループは、個性のぶつかり合いが起きがちで、なかなか長続きはしないだけに、このバンドもどこまで続くのかは不明なのですが、でもアルバムを聴く限り、3人の相性もいいみたいですし、今後も長く活動を続けてほしいなぁ。ギターロックのアルバムとして理想的な傑作でした。

評価:★★★★★

boygenius 過去の作品
boygenius


ほかに聴いたアルバム

So Much (For) Stardust/FALL OUT BOY

実に約5年2ヶ月ぶりとなるFALL OUT BOYSの新作。基本的にはいままでのFOBと同様に、分厚いギターロックにメロディアスなメロを聴かせてくれるポップパンクチューンの連続。メランコリックさを感じるメロディーラインも印象的。「The Pink Seashell」のようなオーケストラアレンジの曲でバラエティー感を持たせつつ、ただ全体的にはいつものFOBと安心して聴ける作品になっていました。

評価:★★★★

Fall Out Boy 過去の作品
infinity on high
American Beauty/American Psycho
MANIA

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2023年5月 1日 (月)

自由度の高いポップアルバム

Title:添春編
Musician:クラムボン

2015年にメジャーレーベルを離れて活動の場をインディーズに移した3人組ポップバンド、クラムボン。ただ、それ以降は若干、マスに向けた活動は後ろに下がってしまったように思います。特に新作のリリースに関しては、ライブ会場及び委託販売限定という形でのミニアルバムのリリースが続き、2019年にそれらのミニアルバムをまとめた形でのアルバムがストリーミングでリリースされたのみ。一般流通のアルバムは少々ご無沙汰という形になっていました。

そして、ようやくリリースされた一般流通でリリースされたフルアルバムが本作。通常のリリース形態のアルバムとしては2015年の「trilogy」以来、実に約8年ぶりとなるニューアルバムとなりました。

さてクラムボンと言えば、爽快でキュートなポップソングを奏でているかと思えば、特にメジャー後半の作品についていえば、ポストロック的な要素も強く取り入れていた、実験的な方向性も強いバンドでした。それだけにインディーズに移行後は、その実験的な方向性も強くなるかと思いきや・・・ストリーミング限定でリリースされた前作「モメントl.p.」もそうだったのでうが、インディーズに移行した後はむしろポップの傾向が強くなったように感じます。

加えて、今回のニューアルバムにおいては、自由度の高く、かなり肩の力の抜けたポップソングが目立つアルバムになったように感じます。切なさを感じるメロをエレクトロサウンドにのせて歌いあげる「夜見人知れず」から、ムーディーなカバー曲「ウイスキーが、お好きでしょ」からスタートする本作序盤は、非常にメランコリックなイメージの強いスタートとなりました。

しかしここから一転、続く「1,000,000,000,000,000,000,000,000 LOVE」(0の数、合ってるよな・・・)は、アルバムの中で新たなオープニングのような、スケール感あるエレクトロチューンで盛り上がります。しかし、その後は再びインターリュードを挟み、アコースティックな「まさかね」「ソナタ」へと雰囲気がガラッと変わります。そしてそれに続く「Somewhen,Somwhere…」「Utopia」はピアノやストリングスの音色を入れつつも、バンドサウンドも合わせてスケール感を出した爽快なポップチューン。いかにもクラムボンらしい楽曲を聴かせてくれます。

そしてラスト「ピリオドとプレリュード」は再びエレクトロチューンに。こちらも爽快ながらもちょっとメランコリックなメロディーラインが印象的なポップチューンで締めくくっています。

このように、アルバムの中で様々なタイプの曲が並んでいる今回のアルバム。非常に自由度も高く感じますし、また、この自由度はインディーズに移行して、必要以上に「売れる」ことを求められなくなった結果、肩の力が抜けた創作活動の結果、生まれてきた楽曲のように感じます。

アルバムリリースのスパンが開いてしまいましたが、マイペースな活動が出来たからこそ、このようなポップなアルバムが産まれてきたのではないでしょうか。メロのインパクトという面ではちょっと薄めな感じは否めないのですが、ポップなメロからは十分すぎるほどクラムボンの魅力を感じることが出来ます。今後もこのようなマイペースな活動が続くのでしょうが、それゆえに彼らの描く素晴らしいポップソングをこれからも楽しめそうです。

評価:★★★★★

クラムボン 過去の作品
Re-clammbon2
JAPANESE MANNER ep
2010

ワーナーベスト
columbia best

3peace2
LOVER ALBUM 2
triology
モメントl.p.


ほかに聴いたアルバム

Fanfare/Little Glee Monster

メンバー3人が追加され、6人組となった新生Little Glee Monsterによる全6曲入りのEP盤。あらたなスタートを象徴するかのような、全体的に明るく爽快なポップチューンが並ぶ6曲。はじめての6名体制ながらもしっかりとしたコーラスラインを聴かせてくれており、その実力を感じさせる内容に。今後の希望も感じさせるアルバムになっています。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster
juice
FLAVA
I Feel The Light
BRIGHT NEW WORLD
GRADTI∞N
Journey

Sugar Salt Pepper Green/sumika[camp session]

sumikaのアコースティック編成によるsumika[camp session]名義による初のアルバム。アコースティックアレンジによる5曲と、それらの曲のインスト版5曲の計10曲入りのアルバム。フォーキーな作風でなおかつ爽快さを感じさせるsumikaの作品はアコースティックなアレンジとマッチ。ひょっとしたらバンドアレンジよりこちらのスタイルの方がバンドの楽曲の方向性に合ってないか?とすら感じさせるような作風になっていました。今後もコンスタントにこの形態でのアルバムも期待したいところ。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia
Chime
Harmonize e.p
AMUSIC
For.

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