ウルフルズの実力を感じるカップリング&カバー曲集
Title:30th Anniversary レアトラックス・コンプリートBOX「こっちもええねん」
Musician:ウルフルズ
1992年のメジャーデビューから、昨年30周年を迎えたウルフルズ。そんな記念すべき30周年イヤーのラストにリリースされたのが、この4枚組からなるセレクションアルバム。Disc1から3は「SINGLE ANOTHER SIDE COLLECTION」と題してシングルのカップリング曲を網羅。Disc4は「COVER SONG COLLECTION」と題して、彼らのカバー曲が収録されています。
「SINGLE ANOTHER SIDE COLLECTION」の方は、過去のシングルカップリング曲のうち、一部インスト曲を除いてほぼ収録されています。8曲が収録され、今でいえば「EP盤」のような「ブギウギ'96」も表題曲の「ツギハギブギウギ」を除いて収録されていますし、アルバム未収録だった「コマソンNo.1」は表題曲がそのまま収録されています。資料的価値という意味合いもありますし、ファンとしてはうれしい企画盤と言えるでしょう。まあ、「網羅」ならば、一部インストで未収録になっているものもありますし、カラオケも未収録なので、こちらも入れてほしかったかも、という感じもしますが・・・。
さて、まず彼らのカップリング曲集ですが、こちらについては非常に自由度が高い、ということをまずは感じます。ウルフルズといえばルーツ志向のロックやソウル、ファンクなどからの影響が強いバンドなのですが、カップリング曲についてはそれに留まらない自由度を感じます。そもそも1曲目「パパイヤ・ママイヤ」からして裏打ちのリズムがレゲエ風ですし、「あの娘に会いたい」はギターのアルペジオのイントロはフォーキーな要素も感じます。「安産ママ」も軽快なロックンロールなのですが、タイトル通りの歌詞もユニーク。
Disc2も「マイアミ旅情(べつにえーやんけ)」は演歌調のお遊びソング。「ヤング ソウル ダイナマイト(DYNAMITE MIX 〜脈打つ鼓動編)」はディスコ調のアレンジになっているなど、バラエティー豊かな作風で、お遊び的な要素も強く、聴いていて素直に楽しくなります。
ただ、よくよく考えると、カップリング曲で「遊ぶ」という方向性はウルフルズ独自ではなく、90年代のJ-POPのシングルが元気だったころ、こういうカップリング曲で「遊ぶ」ミュージシャンは少なくなかったよなぁ、ということをふと感じました。それだけシーンに余裕があったということでしょう。また比較的最近のDisc3になると、そのようなお遊びソングが少なくなってきますので、シーン全体として徐々に余裕がなくなってきたのかもしれません。もっとも、そんな点を差し引いても、彼らのカップリング曲はいい意味で幅が広く、「お遊び」の要素もより強いのですが。
そしてもうひとつ特筆したいのがDisc4のカバー曲。これがどのカバーも、楽曲をウルフルズのテリトリーに無理やり入れて、ウルフルズ色たっぷりのカバーに仕上げています。特に「春一番」などは爽やかな原曲の雰囲気がガラリと変わる、非常にソウルフルなカバーに。最近、この手の歌謡曲のカバーは多いのですが、原曲のイメージをあまりいじらない「カラオケ」のようなカバーは少なくありません。そんな中、ウルフルズのカバーは間違いなく、ウルフルズにしか出来ないカバーに仕上げています。カバーという側面を通じても、非常に個性的なウルフルズの魅力を強く感じました。
4枚組というのはなかなかフルボリュームで、そういう意味ではファン向けアイテムと言えるかもしれません。しかしカップリング曲もカバー曲もユニークな作品が多く、飽きることなく一気に楽しめるアルバムに仕上がっていました。決してファン向けに留まらず、ウルフルズに興味がある方は要チェックのアルバムと言えるでしょう。彼らの実力がしっかりとわかる作品でした。
評価:★★★★★
ウルフルズ 過去の作品
KEEP ON,MOVING ON
ONE MIND
赤盤だぜ!
ボンツビワイワイ
人生
ウ!!!
ウル盤
フル盤
ズ盤
楽しいお仕事愛好会
ほかに聴いたアルバム
バレンタインが今年もやってくる/miwa
4曲入りのEP盤。男女デゥオ、打ち込み、バラード、アコギ弾き語りと4通りの曲調でラブソングを切なく聴かせる作品。わずか4曲のみの中で、バリエーションを持たせてmiwaというミュージシャンを様々な切り口で聴かせるスタイルは彼女の実力も感じさせます。こういうタイトルのラブソングEPをさらっと作ってしまうあたりも、良くも悪くも彼女らしさを感じるのですが。
評価:★★★★
miwa 過去の作品
guitarium
Delight
ONENESS
SPLASH☆WORLD
miwa THE BEST
Sparkle
君に恋したときから
THE YANK ROCK HEROES/氣志團
前作「Oneway Generation」は筒美京平楽曲のカバー、前々作「万謡集」は20周年の記念盤ということで、純然たるオリジナルアルバムそていは「不良品」以来、実に7年ぶりとなる新作。今回も彼ららしい80年代バンドブームの匂いを残したギターロックを主軸に、パンク、ラテン、歌謡曲などの要素を入れたスタイルが魅力的。ただ今回、綾小路翔意外のメンバーがそれぞれリードボーカルを取った曲も収録された結果、全体としてちょっと取っ散らかったという印象を受けるアルバムになってしまっています。氣志團らしさはしっかりと感じられ、メロディーにはインパクトもあるとは思うのですが。
評価:★★★★
氣志團 過去の作品
房総魂~Song For Route 127
木更津グラフィティ
蔑衆斗 呼麗苦衝音
日本人
氣志團入門
不良品
万謡集
Oneway Generation
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