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2023年4月18日 (火)

結成20周年のオールタイムベスト

Title:the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-
Musician:the GazettE

90年代のブームは遥か彼方に去ってしまったものの、現在でも一部の層で根強い支持を得て、日本の音楽シーンの一角で確固たる地位を占めるようになったヴィジュアル系というジャンル。ただ、多くのバンドは一部の熱狂的なファンの人気に留まり、ヒットシーンの中心に出てくることはありません。とはいえ、そんな中でもヒットチャートの上位に顔を覗かせるバンドもあり、そのうちの一組が今回紹介するthe GazettE。個人的にもオリジナルアルバムをコンスタントに追っているミュージシャンの一組でもあるのですが、今回紹介するのは結成20周年を迎えた彼らの、オールタイムベストとなります。

今回のアルバムは3枚組に分かれていて、それぞれにコンセプトがあるのですが、Disc1がSINGLES、Disc2はABYSS、Disc3はLUCYというサブタイトルが付されています。「SINGLES」はタイトル通り、シングル曲を、「深淵」を意味する「ABYSS」はある意味ヴィジュアル系らしい、耽美さを前に押し出したナンバーを、「LUCY」はヘヴィーなサウンドを聴かせる楽曲がメインとなっているそうです。

一応、毎回オリジナルアルバムはチェックしているものの、今回のアルバムであらためて彼らの曲をまとめて聴いたのですが、彼らがヴィジュアル系の中でも高い人気を誇るのは納得するような、良いバランスの取れた音楽性を持つバンドということを強く感じました。

まず彼らは非常にインパクトのあるポップなメロを書いてきています。本作の冒頭を飾る「Cassis」の最初に流れてくるピアノのフレーズは絶品。このセンスには一流のものを感じますし、「REGRET」も哀愁感たっぷりのサビのメロが冒頭に飛び込んでおり、大きなインパクトを持っています。特にDisc1に収録されているシングル曲は、そんなメロディーラインが大きなインパクトとなる曲が並んでいます。良くも悪くも「ベタ」な感もあるのですが、その点を含めて、しっかりと壺をついたフックの効いたメロを書いてくる点は彼らの大きな実力と言えるでしょう。

そんなインパクトのあるメロディーラインを書きつつ、ヘヴィーなバンドサウンドにハードコア的な要素も取り入れている点も彼らの大きな特徴で、シングル曲でも「REMEMBER THE URGE」のようにデス声が飛び込んでくるような曲もあったりしますし、特に顕著なのがDisc3の「LUCY」で、「GABRIEL ON THE GALLOWS」のようなデジタルテイストも取り入れたハードコアの楽曲もありますし、他にもハードな楽曲が並びます。「ATTITUDE」のようなデジタルビートを取り入れた曲もありますし、このDisc3はハードコアが好きなリスナー層にも楽しめそうな作品となっています。

ただ一方、良くも悪くもなのが楽曲に共通する、いかにもヴィジュアル系的な耽美的なメロディーライン。この点はDisc2の楽曲により顕著なのですが、マイナーコード主体でメランコリックさをこれでもかというほど押し出したメロディーラインは、正直なところリスナー層を選びそう。もちろん、彼らのファンが「こういうメロが良い!」のでしょうから否定は出来ないのですが、ただその点を差し引いても、この耽美的という方向性があまりに一本調子で、似た曲が多い、という印象も受けてしまいます。

もっとも、上でも書いた通り、メロディーラインにはセンスも感じますし、この一本調子さはヴィジュアル系バンドである故の宿命なのかもしれません。彼らがもし、90年代のように、ヴィジュアル系が一部のリスナーではなく幅広い層が聴いていた頃だったら、おそらく、そんな幅広いリスナー層に合わせてメロディーラインもよりバラエティーの富んだものとなっていたのでは?と感じてしまいます。また、その時代だったら、おそらくGLAYやラルクにも匹敵するような人気も確保できていたのかもとも想像してしまいました。

とはいえ、似たような曲が多いとはいえ、全3枚フルボリュームのアルバムを、比較的ダレることなく十分楽しめる内容になっていました。特にDisc3については、普段ヴィジュアル系を聴かないようなロックリスナーも楽しめそう。それだけに楽曲によってはより広い層の支持も得られそうな予感もします。これからも彼らの活動には注目していきたいところです。

評価:★★★★

the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
BEAUTIFUL DEFORMITY
DOGMA
TRACES VOL.2
NINTH
MASS


ほかに聴いたアルバム

Naked/家入レオ

ここ最近はムーディーな歌謡曲路線にシフトしてきており、このまま「大人なムード歌謡歌手」にシフトするのかとも思われた家入レオ。ただ新作はピアノ弾き語りや打ち込み、ハードロック路線やドリーミーなポップなどバリエーションのある作風に再びシフトしてきました。結果としては良くも悪くも今時の売れ線路線といったイメージに。ちょっと取っ散らかってしまった感もあります。迷走気味とまではいかないものの、デビューから10年を経過して、もうちょっと家入レオ独自の色合いを増した方がいいとは思うのですが。

評価:★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE
5th Anniversary Best
TIME
DUO
Answer
10th Anniversary Best

コントラスト/Uru

実に約3年ぶりとなる女性シンガーソングライターUruのニューアルバム。清涼感のある歌声は魅力的で、アコースティックなサウンド主体で聴かせるオリジナル曲は魅力ではあるものの、全体的にこれといった特徴もなく、前作に引き続き平凡さは否めない印象が・・・。ただ一方、カバー曲に関しては、彼女の歌声が実に魅力的な絶品カバーに仕上がっています。ここらへんは前作と同様。ボーカリストとして魅力的なだけに、もうちょっとオリジナル曲を、と思ってしまうのですが・・・。

評価:★★★★

Uru 過去のアルバム
オリオンブルー

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